「──へぇ、ぁ?」
あまりにも容易く、バターでも切り分けるかのごとく
足元に転がる自分の腕を見下ろしたガルドは、なんとも間の抜けた声を上げ、やがて押し寄せる痛みと共に状況を理解したのか、野太い悲鳴を
「あ、お、ひぎっ──ぎっ、が、ああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!? う、うで、腕、俺の腕がぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
切断から十秒近く遅れて噴き出す鮮血。
ヒスイの両腕を吊し上げていた方の手で断面を押さえ、転げ回るガルド。
彼の手下たちも慌てふためき、一気に蜂の巣をつついたような騒ぎと化す。
一方、解放されて尻餅をついたヒスイは、苦しげに呼吸を繰り返しながら、目の前に突き立った
「はっ……はっ……」
血で濡れてもなお、鏡さながらに周囲の景色を映す、磨き抜かれた
けれどもヒスイやシュウホウ、そして賊たちの姿だけは、まったく映り込んでいない。
唯一の例外は、ナイフを握ったまま転がった、ガルドの腕。
すでに生きていない、単なる肉と骨の塊。
「はぁ、はっ、早く……! 早く、手当てしろ……!!」
「し、しかし
「ならさっさと連れて行け……!! 俺を殺す気かァ……!?」
ガルドの叫びに、血相を変える手下たち。
数人がかりで彼を支え、運ぼうと持ち上げた。
その最中、ふと誰かがヒスイとシュウホウを指差し、尋ねた。
「あ、あいつらはどうし──」
言葉尻を待たず、額に
「急げぇッ!! くそ、目が霞んできやがった……血が、血が止まらねぇ……!!」
不手際を仕出かせば顔が腫れ上がるほど殴られ、
そんな恐ろしい存在だが、ちゃんと命令通りに動いてさえいれば、美味い汁も吸わせてくれる。
何より、真っ当なコミュニティには属せない
他に
場が静まり返った頃合、ヒスイがハッと我に返る。
「シュウホウさん……!」
彼の足首に食い込んだトラバサミを外し、破かれた衣服で素早く止血。
次いで、まだ肌に残るガルドの手の感触を思い出して身震いしつつ、女神の
「早く、遠くまで逃げないと……!」
ぐずぐずしていたら、また捕まってしまう。
ヒスイは当分目覚める様子の無いシュウホウの身体をどうにか背負うと、ガルドたちが向かった方角とは、まったく逆方向へと歩き始めた。