「はぁ……はぁ……」
どんどん夜が更けていく中、ヒスイは荒く呼吸を重ねながら、歯を食いしばって前に進んだ。
なお、ただ闇雲に歩いているのかと言えば、実のところ、そうでもない。
およそ数時間の
「……あった……」
狩人が日を跨いだ狩りを行う際、拠点とする小屋。
直接訪れたことはなかったけれど、サリテ村の四方に一箇所ずつ建てられているという話を、前に聞き及んでいたのだ。
「良かった……小さいけど、近くに川も流れてる……」
ひとまず水の心配は無い。
これだけ離れていれば、先程の賊がヒスイたちを探し回ろうとも、簡単には見付けられない。
「っ」
安心しかけた途端、ヒスイの脚から力が抜けかける。
シュウホウを背負い、絶えず追っ手や獣の影を警戒しながら何時間も森の中を歩き通した彼女の体力は、もはや限界だった。
「ん、んんっ……!」
あと、ひと踏ん張り。
己を鼓舞し、脚を前に出し、小屋へと入る。
中を見て、ヒスイは目を丸くした。
「わ……」
てっきり簡素なベッドとテーブルが置かれているくらいかと思いきや、以外にも充実した内装。
「ここなら……」
しばらくの腰掛けには申し分ない。
ヒスイは胸を撫で下ろしつつ、シュウホウをベッドに寝かせた。
そして、改めて容態を
「シュウホウさん……」
呼吸が浅く、体温も低い。
失血によるものか、あるいはトラバサミに仕込まれた痺れ毒の影響なのか。
どちらであるにせよ、このままでは危険。
早急に暖めなければならない。
「でも、どうしよう……」
薪の量こそ十分。
だけれど現状を
いかに夜半とはいえ、今夜は月が明るい。
だからこそヒスイも獣に遭遇することなく森を突っ切れたのだが、
「……あう」
しばらく考えた末に思いついた、ひとつの案。
ヒスイは頬を赤らめ、非常時だから、と何度か口の中で繰り返したのち──破かれてしまった服を脱ぎ捨て、足元に落とした。
「こういう時は、直接、肌を重ねた方がいいって……聞いた、から」
一糸まとわぬ姿となり、ベッドで眠るシュウホウに手を伸ばすヒスイ。
できるだけ見ないよう彼の服も脱がせ、毛布を被せた。
「し……失礼、しますっ」
同じベッドに潜り込み、寄り添う。
羞恥心か、はたまた他の理由からか、身体に火がついたかのような心地だった。
「…………は、ふ」
心臓が早鐘を打つ胸をシュウホウの胸元に密着させ、手脚を絡ませる。
言うまでもないが、先程ガルドに触れられた時のような不快感や嫌悪感などは、微塵も感じなかった。
代わりに押し寄せるのは、柔らかな安堵と、少しの後ろめたさと、強烈な眠気。
程なくヒスイは瞼を閉じ、すぐに意識を手放した。