「♪」
小屋の近くに流れる沢の前でしゃがみ、鼻歌交じりに水を汲むヒスイ。
「ふふっ……」
無事、シュウホウが目覚めたことに対する安堵。
ガルド一味から逃げ果せてなお張り詰め続けていた心が、ようやく緩んだ模様。
「……でも、どうせなら、あと一日か二日くらい眠っててくれても良かったかも」
シュウホウと
異性と寝所を共にするという生まれて初めての経験を思い返し、頬を赤らめつつ、そんな冗談を
もっとも、果たしてどこまでが冗談なのかは、本人のみぞ知るところだが。
「はぁっ……」
熱と甘さを帯びた吐息。
濡れた指先を首筋に添え、ほてりを冷ます。
ややあって、ヒスイは目を細めた。
赤と黒の瞳が、きらきらと陽光を照り返す水面を、静かに見つめる。
「……強く、ならないと」
先程までとは打って変わった、硬い声音。
膝に添えた両手を緩やかに握り締め、拳を作る。
「私がちゃんと動けていれば、シュウホウさんは、あんな目に遭わなくて済んだ」
いくら夜半で暗かったとはいえ、十分な月明かりはあった。
にもかかわらずシュウホウがトラバサミに気付けなかったのは、自分を担ぎながら走ったことで、足元への注意が散漫になったせい。
少なくともヒスイ自身は、そう捉えていた。
「私が強ければ、あんな奴等に、村を好き勝手にされなくて済んだ」
次いで、我が物顔でサリテ村の跡地に居座っているだろうガルド一味の姿を思い浮かばせ、渋面を作る。
焼け朽ちてしまった家々は、今頃さらに荒らされているに違いない。
ともすれば、皆の墓も滅茶苦茶にされているやもしれなかった。
「私が、もっと……私が……!!」
賊にすら敵わないほど弱い自分が悔しかった。
苦しみ抜いた末に死んだ皆の眠りを
ヒスイは奥歯を噛み締め、己の膝に顔をうずめる。
…………。
やがて、胸の奥で渦巻く
「ッ……!!」
ガルドに捕まり、服を裂かれ、弄ばれた記憶がフラッシュバックする。
ざらついた手の感触が、肌へと浮かび上がるかのごとく、克明に蘇った。
「気持ち悪い……気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いッッ……!!」
身体中で
鳥肌が立った二の腕を掴み、爪を立てる。
そして。恐ろしく冷たい、抑揚の無い声音で、
「────ああいう奴こそ、骨まで焼かれて死ねばいいのに」