「どうぞ……」
シチューを盛った深皿がテーブルに置かれ、温かそうな湯気を立ち上らせる。
昨晩ヒスイが作った分の残りに、ベルナの狩った兎肉を加えたもの。
味の保証はしませんけど、と小声で添えられる。
「素晴らしい。ありがたく頂戴しよう」
一方、仏頂面のヒスイに頭を下げ、祈りの所作をとるベルナ。
この島国で信仰される、風と地の
「──む」
ひとさじ口に入れた瞬間、目を見開かせる。
味付けは塩と香草のみだが、その
かれこれ何日も味気ない丸焼き肉と野草で飢えを
とどのつまり、とてつもなく美味しかった。
「はふっ、はふ……はぐっ……!」
ベルナは目に薄く涙すら滲ませ、食欲と衝動のまま、かっ込み始める。
あっという間に皿の底が見え、
「…………実に……実に、美味だった……」
万感を噛み締めるような
しばし呆気にとられていたヒスイは、ややあって、
「……欲しいなら、まだありますけど」
その言葉に、ベルナの瞳がヒスイを捉える。
そして。やたら仰々しい仕草でもって、皿を掲げた。
「是非とも、おかわりを頼めるだろうか」
「人間らしい食事をしたのは、幾日ぶりか……」
大盛りのシチュー四杯を平らげ、
「
「え……いえ、別に……そんな大したことをやったワケじゃ……」
気持ちの良い食べっぷりに、すっかり毒気を抜かれた様子で返すヒスイ。
丸一日眠り続けた状態から目覚めたばかりで胃が食べ物を受け付けず、
「
延々と
君たちに巡り会えて本当に良かった、と述べつつヒスイとシュウホウを交互に見やり、次いで申し訳なさそうに眉根を寄せた。
「何か礼をさせて欲しいところだが……生憎と任務中の身でな。恩人を後回しにするのは心苦しいが、どうかこの場は貸しということで手を打ってもらいたい」
「任務……?」
ヒスイが小首を傾げる。
「ああ。そう言えば
食事に夢中で忘れていた模様。
ベルナはバツが悪そうに頬を掻き、今度こそ話し始めた。
「ある男を追ってきた。上官殺しを筆頭に、多くの
荷物の中から、一枚の似顔絵を取り出す。
それを見たヒスイは、口元を引きつらせた。
「名を──ガルドという」