あっという間の出来事だった。
「な、なんだテメ──」
一切の躊躇なく草むらを飛び越え、焼け朽ちたサリテ村へと
「ふうぅぅ」
鉄製の
最も近場に居た賊が彼女を見とめたのは、すでに間合いまで踏み込まれた半秒後。
致命的な出遅れ。
否。よしんば、もっと早く察せていたところで、結果は何も変わらなかっただろう。
「シッ」
噛み締めた歯の隙間から漏れ出た、吐息に等しい声。
腰に
「──はげびっ」
ぴっ、と賊の顔に赤い線が走った。
頭部の鼻から上がズリ落ち、地面を転がる。
一拍ばかりの間を挟み、二本の足で立ったままの身体の断面から、噴水のごとく弾ける鮮血。
まるで自分が死んだことに気付いていないかのように、三歩四歩とフラフラ歩いたのち、力なく倒れ伏した。
「ひとつ」
一方のベルナは、賊の頭が地面に落ちるよりも先、早々と次の標的に迫っていた。
すでに殺した相手の死に目に、いちいち立ち会う趣味は無いらしい。
「あぺっ──」
離れた場所から、つまり全容を見て取れる立ち位置にあるハズのシュウホウの視界にさえ、切っ先がブレて映った剣筋。
それを腹に受けた賊の上半身と下半身が、いともあっさり分断された。
「ふたつ」
確実に二人を斬ったベルナの剣は、しかしまったく血で濡れていなかった。
おそろしく速く、おそろしく正確に
肉も骨も構わず断ち斬る神業じみた剣技と、人体構造への深い
「シイィッ」
更に斬殺は続く。
絶えず、途切れず、ほぼ等間隔に。
三人。
四人。
五人、六人、七人、八人、九人、十人──
「シィアッッ!!」
ベルナが剣を振るうたび、誰かの手が、足が、胴が、首が飛ぶ。
ぽん、ぽん、ぽん、ぽんと、
「……実際、彼女にとっては連中なんて
唖然と口元を強張らせながら、シュウホウが呟く。
「まあ、そりゃそうだ」
いかに場慣れした賊と言えど、所詮は
真っ当な練兵を受けたワケではない。
日々を武芸の
ただ、生まれつき平均より体格に秀で、平均より力が強かっただけ。
そんな、半端者に過ぎない
「役者が違う」
ベルナは、ただの予備兵などではない。
五年に一度、首都で
優勝者には
その第十七回、すなわち六年前に開催された前大会の覇者こそが、ベルナなのだ。
「アレが半分引退した人間の動きか……?」
正規兵を辞し、はや三年。
最強の称号も、去年の第十八回優勝者に引き継がれた。
とはいえ、それによって彼女の力量が衰えたのかと問われれば、答えは否。
むしろ一線を退いた身にもかかわらず、依然として技の冴えは最盛。
仮にもし、前大会にも出場していたならば、連覇とて狙えただろう大器。
であれば、そこらの賊ごときが二十人三十人と束になったところで、
かつて最強と呼ばれた女。
先代『
「ひぎっ……!?」
瞬く間、二十一人が、破れた血袋と化す。
そしてベルナは、尻餅をついた最後の一人──
「……久しいな」
耳にするだけで身震いしそうなほど冷たい声。
「こうして会うのは、貴様がディルジット隊長を殺し、軍から逃げて以来か」
視線を注ぐ先が焼け焦げそうなほど激しい瞳。
「なあ。ガルド」
上官殺しの脱走兵。
ベルナの上官でもあった人の命を奪った憎き