「……あ……っ」
シュウホウが再び意識を取り戻したのは、ちょうど正午に差し掛かった時間帯。
目覚めて最初に視界へと収めた光景は、己を心配そうに見下ろす、赤と黒の
「シュウホウさん……!」
瞳を
良かった、良かった、と繰り返す彼女を傍らに、シュウホウはゆっくりと身を起こす。
「……すまなかったな」
決して短くない沈黙を挟み、最初に発した言葉は、重々しい謝罪。
昨晩ベルナから受けた苦言を思い返しつつ、ほぼ三日間寝たきりで固まった関節を
「色々、気を揉ませてしまった。迷惑をかけた。本当に申し訳ない」
「そ、そんな……そんなこと……!!」
一方のヒスイは、そんなシュウホウの様子に慌てふためいた。
「元はと言えば、わたっ、私の……!!」
ここ数日、ひたすら溜め込んでいた
むしろ謝るべきは自分の方だとばかりに、たどたどしく
「私……私が……」
左腕だけではない。
脚の怪我も、ガルド一味の前で震えることしかできなかったヒスイを守るべくして負ったもの。
「私のせい……私が、もっと強ければ……!!」
自分の弱さが、シュウホウを傷付けた。
自分の不甲斐なさが、シュウホウを危険に晒した。
さながら
それでも、せめて涙だけは流すまいと、ヒスイは
そうして、しばらくの間──耳鳴りを伴うような静けさだけが、その場を満たした。
「……………………シュウホウ、さん」
長い
顔を上げたヒスイが、涙の収まった眼差しをシュウホウへと向けやる。
「私、強くなるから」
深く噛み締めるような宣言だった。
「村の皆を殺した魔術師にだって勝てるくらい、強くなるから」
神への祈りや誓いにも似た、確固たる決意を
「もう貴方に守られなくても大丈夫なくらい、強くなるから」
単なる偶然か、はたまた別の理由か。
壁に立て掛けられた女神の
「貴方を守れるくらい、強くなるから」
硬く握られる両の拳。
シュウホウの膝に顔をうずめ、ヒスイは言葉で、胸の内で、何度も告げる。
強くなる、と。
「だから、だからっ──」
…………。
シュウホウは、気付かなかった。
気付くことができなかった。
もしも気付けていれば、何かが変わったかもしれない。
あるいは気付けていたところで、何も変わらなかったかもしれない。
もっとも、それを論じたところで意味は無い。
何故ならシュウホウは、気付けなかったのだから。
「────けひっ」
薄気味悪い、引きつった笑い声が、ヒスイの喉から