正面きってぶつかり合う、二本の真剣。
金属同士の衝突音が、早朝の澄んだ空気に甲高く波紋する。
「ッく……!!」
片手用の
一方のベルナは、左手一本で
「……ふむ」
よく
すなわち、残る三指だけで
不自然かつ不安定な握り方。
これでは威力も剣速も、本来の半分すら引き出せないだろう。
「もう何度も言っていることだが……」
「ッッ」
にもかかわらず、数秒程度の拮抗を
「貴様に力押しは向かん」
互いが振るう剣自体の重量差。
そして何より、天地ほども
ほとんど予定調和と
「勝ち気は結構だが、すぐ正面から飛び込むのは悪癖でしかない。いい加減に治せ」
「きゃあッ……!?」
川辺で立ち会う二人の足場を占めるのは、主に石と砂利。
必然、バランスを崩しやすく、たたらを踏むヒスイ。
「シッ」
そこにベルナが、すかさず追撃を入れる。
その剣筋は急所こそ外せど、峰打ちでもなんでもない、正真正銘の斬撃。
無防備に受ければ、少なくとも痛いだけでは済まない一撃。
「────」
迫り来る
寸止めしてくれる、などといった甘い考えは、少なくともヒスイの頭には存在しない。
事実、すでに彼女の身体は
真剣を持ち出すようになって以降、ベルナは顔色ひとつ変えずに平然と斬りつけてくる。
切り口が恐ろしく鋭利なため、治りこそ早いし、ほとんど傷痕も残らない。
だがしかし、肌身を裂かれる痛みは、何度味わっても地獄だった。
加えて、出血に伴う悪寒は明確な『死』の息遣いを感じさせる。
避けられるものなら避けたいと思うのは、至極当然だろう。
「ほう」
無理やり足を踏ん張らせ、体幹が傾いたまま姿勢を維持し、剣を振るった。
「今の反応は悪くない」
二度目の甲高い衝突音。
この日ヒスイは初めて、ベルナからの攻撃を止めた。
「が、剣にばかり気を取られすぎだな」
もっとも、
「武器を手にした相手が、武器だけで攻撃してくるとは限らん」
「がッ……!?」
みぞおちに突き刺さる膝蹴り。
息を詰まらせたヒスイの視界が、一気に暗くなる。
「ふむ」
もともと無茶な体勢だったため、流石に
ただ、相変わらず剣を手放すことだけはしなかった。
「差し当たり、十点といったところか」
無論、百点満点でな。
そう淡々と言葉を続けながら、ベルナはヒスイの背中を浅く突き刺した。
「ぃぎっ……!!」
「立つのが遅い」
倒れたら一秒以内に起き上がり、臨戦態勢へと戻る。
出来なければ、容赦なく攻撃を加える。
修行を始めた当初から続く、暗黙のルールだった。