「……昔は、もう少しマシな奴だった」
草をむしりながら、不意にベルナが呟く。
誰のことだ、などと問い返すほど、シュウホウは察しの悪い男ではなかった。
「ガルドは中央に居た頃の同期でな。お互い、新兵時代は拷問じみた指導を受けた」
年々と予算を削られ、軍縮が進んでいる現代の国軍では、屈強な精兵をこそ求められる。
「自分で言うと背中が
入隊当初から突出していた存在。
「他の皆が、ひたすらに私を特別視する中……奴だけは張り合ってきた」
ただでさえ実力差は歴然な上、月日を追う
にもかかわらず、何十回何百回と打ちのめされてなお、ガルドはベルナに向かって行った。
「訓練期間を終え、同じ隊に配属となってからも、しょっちゅう絡まれた」
あの時まで、と紡いだのち、一度ベルナは口を閉じた。
しばし、沈黙が挟まる。
「……奴が道を外れ始めたのは、六年前。私が
その大舞台で剣を振るうベルナの姿を、本気で戦う彼女の姿を初めて目にしたガルドは、
…………。
結局のところ、それ以前までの彼は、自分とベルナの差を正しく推し量れておらず、ゆえにこそ食って掛かっていたに過ぎなかったのだ。
そして、ようやく現実を理解すると同時──ぽっきりと、折れてしまった。
「素行が悪くなり、問題行動も増え、後ろ暗い連中との付き合いまで噂されるようになった」
実際、その噂は事実だったのだが、当時のベルナは信じようとしなかった。
「そうして三年前に軍費の横領が発覚し、捕縛命令が出された」
発令時、ベルナは中央に居なかった。
「奴はディルジット隊長……私にとって上官であり、
脱走兵ガルド誕生に至った経緯。
ベルナが事態の
「夫の死を苦とした姉さんは、自ら命を絶った」
本当は軍そのものを辞めるつもりだった。
けれど、せめて軍籍だけは残してくれと上層部に
「とんだ笑い話だ。
「…………」
ひたすらな失意の中、ただ剣を磨いて過ごした三年間を振り返ったのか、ベルナが奥歯を噛み締める。
引き抜いた雑草が、手の中で握り潰された。
「ああ……今にして思えば、ヒスイの指導を
故郷を奪った魔術師への復讐。
ただ一人残った
言われてみれば、確かに通ずるところがあった。
「……守りたかった人……か」
ふとシュウホウが、耳についた
おそらく無意識に、木彫りの耳飾りへと触れながら。
「…………」
金色の瞳が、そよ風で流れる銀髪を捉える。
ほんの一瞬、ベルナの