××を殺す病   作:竜胆マサタカ

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 いざ村を()ったはいいものの、果たしてシュウホウは何処(いずこ)へと(おもむ)くつもりなのか。

 

 現場にあったのは、争った形跡のみ。

 (さら)われたヒスイとベルナの行き先についての有力な手掛かりなど、残ってはいなかった。

 

 ……もっとも、それは要らぬ心配。

 

 この世界が辿る筋書きを、シュウホウは知り得ている。

 主人公(ヒスイ)の周りで起こる出来事を、物語で(つづ)られていた限りにおいては、仔細余さず網羅(もうら)している。

 

 皮肉な話だが、必死に(くつがえ)そうと足掻いている筋書きのままに展開が進めばこそ、彼の先見が強く光を放つ道理。

 

 必然、二人の居所にも──ひとつアテがあった。

 

 

 

 

 

「ふうぅ……」

 

 サリテ村から徒歩で南に四半刻ほど進んだ地点。

 息を殺し、足音を伏せ、身を低く(かが)め、シュウホウは草むら越しに様子を(うかが)う。

 

 そして。安堵と苛立ちの両方が入り混じったような表情を、薄く浮かばせた。

 

「……居た」

 

 岩肌を大きく掘り抜いた、明らかに自然の産物とは異なる洞窟。

 かつてシュウホウが老婆より聞いた話(いわ)く、大昔に打ち捨てられた廃坑(はいこう)とのことだが、真偽のほどは定かではない。

 

 その洞窟の前に立ち、周囲を警戒する見張りが二人。

 先刻、村の広場で倒れていた男たちと、よく似た風体(ふうてい)

 

「やはり……ここだったか」

 

 本来の筋書きで、ガルド一味が二人を(さら)った折に拠点(アジト)とした場所。

 胸の奥に押し込めた疑念が再び顔を覗かせかけるも、強引に押し込めた。

 

「…………」

 

 どうするか、とシュウホウは思案する。

 

 まだ記憶がなかった頃、あの洞窟には何度か足を踏み入れる機会があった。

 廃坑(はいこう)見做(みな)されるだけあって中は広く、道も複数に(わた)り枝分かれしている。

 

「地形は覚えてる、が」

 

 相手の正確な人数は分からないけれど、いかにヒスイという人質ありきでも先代剣聖(けんせい)ベルナ・フォトンを取り押さえた事実を(かんが)みたなら、最低でも十数人は確定。

 闇雲に飛び込んだところで多勢に無勢。何かしらの作戦は立てねばならなかった。

 

 ……さりとて、あまり悠長に構えていれば、足踏みの数だけ二人の救出が遅れてしまう。

 

 今この瞬間すら、どのような目に遭わされているか。

 一秒でも早く助け出すことこそが、まずは大前提。

 

「…………よし」

 

 数秒ばかり頭を巡らせたのち、シュウホウは考えを纏める。

 

 間髪(かんはつ)()れず──見張りの片方に向け、クロスボウを放った。

 

「いぎぇっ」

 

 口の中に短矢(ボルト)を突き立たせた賊の男は、珍妙な断末魔と共に(たお)れる。

 背筋をのけぞらせて痙攣(けいれん)する様は、活け締め直後の魚に似ていた。

 

「…………はぁ?」

 

 もう一人の見張りは、あまりにも唐突で僅かな前触れすらなかった出来事に、ただ目を丸くさせるばかりであった。

 

「ッッ!!」

 

 そんな隙を見逃すほど、シュウホウは呑気ではない。

 すかさず草むらを飛び出し、残った賊を突き倒すと、馬乗りになった。

 

「俺の許可なく動けば殺す。俺の許可なく喋れば殺す。俺の許可なく呼吸以外の行為をしたら殺す」

 

 引き抜いた狩猟刀(ハンティングナイフ)を、首筋に押し当てる。

 薄刃が喉笛へと浅く食い込み、赤い血を(にじ)ませた。

 

「一度しか言わないから、よく聞け」

 

 三つ質問する。

 それぞれに三秒以内で答えなければ、やはり殺す。

 

 恐ろしく淡々と紡がれた口舌(くぜつ)

 ようやっと状況を理解し始めた見張りは、血の気を引かせながら何度も頷いた。

 

「ひとつ。仲間の数と、大まかな配置」

 

 必要な情報は、二点。

 

「ふたつ。貴様等が(さら)った女二人の居場所」

 

 ()()()()()()()情報が、一点。

 

「最後に──」

 

 一拍、空白を挟む。

 シュウホウは静かに息を吐きながら、ある意味で一番の疑問を、粛々(しゅくしゅく)と投げ掛けた。

 

 

 

 

 

「──()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

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