「んん、んぐっ、んんっ」
洞窟内の一角に
馬や人力で
「んっ……んん……ッ」
手足を縛られ、頭にズタ袋を被せられた格好で、その中へと放り込まれたヒスイ。
彼女はどうにか縄を解こうと足掻くも、相手は荒事慣れした賊徒の集団。
細身の少女が力を篭めた程度で抜け出せるほど、ぬるい縛り方はしていなかった。
「──ああ、ちくしょう。せっかく上物の女を捕まえたってのに、見てるだけとはよぉ」
「仕方ねぇだろ。売るんなら
そんな
ヒスイを見張る下っ端の一人が、連れ去られる際に服を引き裂かれ、あられもない姿となった彼女に好色な視線を向けやりつつ、愚痴を並べた。
「ちっ。どうするのか、さっさと意見を纏めて欲しいぜ。これじゃ生殺しだ」
「……そう言えば、銀髪の方はどうしたよ? 俺が見張りを交代した時には、もう居なかったみたいだが」
「さっき
「──ッッ!!」
息を殺して聞き取った内容に、ぎりっ、とヒスイの奥歯が
次いで──
ほんの、数時間前のこと。
サリテ村の広場で村人たちの墓を清めていたヒスイは、突如として数十人の男たちに取り囲まれた。
「……何か、私に御用ですか」
誰も彼も、いかにもゴロツキといった
警戒を忍ばせつつヒスイが用件を尋ねると、彼等はゲラゲラ笑い、何人かが
「ッッ!!」
背筋に悪寒を走らせたヒスイは、ほぼ反射で女神の
抜き打ちの一撃で、自分の肩を掴もうとしてきた一人の手首を、容赦なく切り落とした。
「──あ、ぐっ、ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!?」
周囲を
思いもよらなかったのだろう苛烈な抵抗に、しばし空気が呆ける。
…………。
そう。その数秒間こそが、逃げ
けれどもヒスイは、逃げなかった。
大の男が自分に斬られて情けなく転げ回る姿に、己の成長を強く実感した。
自分はベルナとの修行によって確かな力を得ているのだと──口さがなく言ってしまえば、
「やあぁぁッッ!!」
ゆえに判断を誤り、都合三十人以上ものゴロツキ相手に、無謀にも立ち向かう道を選んでしまった。
「小娘一人相手に何やってやがる! さっさと捕まえろ!」
実際問題、ヒスイは修行を始める前とは比較にならないほど強くなっていた。
一対一なら、そこらの賊に
「ぅぐっ……!? は、離してっ! 離して!!」
だが、
数人を斬り倒したところで、あえなく取り押さえられた。
「──貴様らァッ!!」
悲鳴や剣戟の音でベルナが駆け付けた頃には、ヒスイは完全に囚われの身だった。
ほとんど裸同然の格好へと剥かれた彼女の姿にベルナは激昂し、剣を取った。
「おっと、動くなよ。ま、この嬢ちゃんの命が惜しくなけりゃ、好きにしたらいいが」
「ッッ……!!」
が。ヒスイを人質に取られた状態では、さしもの先代
「武器を捨てろ。こっちの嬢ちゃんには五人もやられちまったからな、油断も隙もありゃしねぇ」
ベルナは命ぜられるまま、剣を放り投げた。
そして。
「あとは……そうだな。その服を一枚ずつ、脱いでって貰おうか?」
「…………分かった」
悪趣味極まる要求を突き付けられ、それにも従った。
従わざるを、得なかった。
「くそっ、駄目だ! もう我慢できねぇ!」
「馬鹿おめぇ、バレたら
「バレなきゃいいだけの話だろ!? こちとら、さっき銀髪ちゃんのストリップ見せ付けられた時から辛抱たまんねーんだよ!」
「そーかよ、ったく……」
ガチャガチャと金属の擦れる音と共に、荒っぽく檻の鍵が開けられる。
歩み寄ってくる足音を聞きながら、ヒスイは身を縮こまらせた。
──これは、罰だ。
震えながら、ヒスイは思った。
愚挙によって自分自身を
…………。
だがしかし、いつまで
「ぎぁ……!?」
「な、なんだ、おま──」
代わりに、何か鋭いもので骨肉を貫く音と、切り裂く音。
やや遅れて、二人分の断末魔。
「────ふぅ」
ズタ袋の口紐が解かれ、塞がれたヒスイの視界が露わとなる。
「大丈夫か?」
金色の瞳が、心配そうに彼女を見下ろしていた。