「これを」
ヒスイの縄を解いたのち、自分の上着を肩にかけてやるシュウホウ。
へたり込んだまま呆然と彼を見上げていたヒスイは、やがて我に返ると自分が裸同然の格好であったことを思い出す。
顔を真っ赤に染め、慌てて袖を通した。
「あ……」
獣の鼻を
ヒスイにとってはシュウホウの存在そのものを想起させる、いわば彼の匂い。
恐怖と後悔で冷え切り、張り詰めていた精神が一気に緩む。
しばし彼女は、震えながら
「あ、あの……どうして、ここが……?」
ややあって気を取り直したヒスイの第一声。
当然と言えば、至極当然の疑問だった。
「……君たちが連れ去られるのを、影から見ていた」
対するシュウホウは、道中で考えておいた方便を並べる。
騙すようで少しばかり心苦しかったけれど、まさか真実など伝えられるワケもない。
致し方ないと、割り切った。
「隙を
「あ、謝らないで下さい……! そもそも、こんなことになってしまったのは、全部私の──」
シュウホウの言葉を疑いもせず信じ、首と両手を振るヒスイ。
けれども
「──し、シュウホウさん!
歯の根が合わない、たどたどしい金切り声。
シュウホウは大声を
「いつ頃だ」
「え、えっと、えっと……たぶん、三十分も
「落ち着け」
二度三度、シュウホウがヒスイの背中を優しく叩く。
どうにか肩の力が抜けた頃合を見計らい、まっすぐ彼女の目を見つめながら語りかけた。
「
昔、何度かウルスラと探検した
どんな経験がどこで役立つかなど、その時になってみなければ分からないものである。
「腰を下ろしてくつろげる空間は、そう多くない」
加えて、奥に進むほど道は細く、荒く、入り組んだ構造となっている。
「俺の知る限り、村の周辺一帯に人が居た痕跡はなかった。これだけの人数だ、見過ごすなんてあり得ない」
つまりヒスイとベルナを
土地勘の無い人間が、広い上に複雑な洞窟の深部まで足を踏み入れるとは考えにくい。
「ボスとやらの居所も、だいたいの目星はつく」
すなわち、地の利は
けれども、数は相手側が圧倒的に勝る。
「
「…………」
淡々と諭されたヒスイは、静かに拳を握り締める。
村で囲まれた際、状況も
「心配は要らない。ベルナなら、きっと大丈夫だ」
決して確証のある言葉ではなかったが、あえてシュウホウは断言した。
無闇にヒスイを不安がらせないため。
あるいは彼自身、信じたかったのだろう。
ベルナがまだ、無事であることを。
「まずは息を整えて、段取りを組もう」
「は、はいっ……」
頷くヒスイを尻目に、シュウホウは賊の死体から
義手の方で握り、何度か振り回し、使えそうだと目を細めた。
「ヒスイ。こっちは君が」
「はい……!」
腰の
「ッッ……」
剣を手渡す際、シュウホウは
幸いと言うべきか、ヒスイには気付かれなかった。
…………。
先程、賊二人の命を奪うべく、女神の
その手のひらは──ひどく、焼け