「ぅ……く……ッ」
とても立ってなどいられなかった、けれど実際の時間にしてみれば僅か数秒の出来事。
それがひとまず収まった頃合、シュウホウは伏せていた顔を上げた。
「だ……大丈夫、か……?」
「うぅ、ぁ……は、はい……どこも、痛くはないです……」
咄嗟に覆い被さる形で守ったヒスイともども、身を起こす。
軽く周囲を見渡すと、直径十メートル近かった空間の八割ほどが、崩れた岩で埋め尽くされていた。
「……どうにか、上手くいったみたいだな」
この場に居た賊たちの
正確には一人だけ即死を
あれでは、いっそ死んだ方がマシだろう。
「ふぅぅ……こんな綱渡り、二度と御免だ……」
悪態と
が──ややあって、再び表情を張り詰めさせる。
ベルナの姿が、見当たらなかったのだ。
「ッッ……ベルナ!? ベルナ、どこだ!?」
崩落間際、我武者羅に懐へと引き寄せられたのはヒスイ一人だけ。
まさか巻き込まれたのかと、耳の奥で血の気が引く音を感じながら、シュウホウは声を張り上げる。
そして。
「──ああ。ここだ」
積み上がった岩の向こうから、くぐもった返事が聞こえてきた。
「ベルナ! 無事か!?」
「問題ない。まったく、無茶をやってくれる。しかし悪くない判断だった」
くつくつと笑いを含ませた、呆れ半分、感心半分の声色。
震えた吐息で
「俺たちの方は、なんとか通路側に抜けられそうだ」
「そうか。幸い
「分かった。今そっちに行く」
石片を払いのけながら立ち上がるシュウホウ。
次いでヒスイを助け起こし、どこから回り込もうかと思案する。
「──なあ。シュウホウ」
そんな
おもむろに、ベルナが声をかけてきた。
「私のナイフなんだが、二本とも村に置いてきてしまったんだ」
賊の前で
ひとつ間を挟み、ベルナは更に言葉を続けた。
「帰り着いたら、片方はキミが持っていてくれないか」
「……は……? こんな時に、いったい何を──ッ!?」
意図が掴めないとばかりの、疑問符を添えた
けれども途中で
「おい! アンタ本当に無事なんだろうな!?」
「
簡潔に答えているようで、どこか明言を避けた言い回し。
まだ思考が追い付いていないヒスイも異変を
「そんなことより……早く、脱出を。おそらく今ので洞窟全体の均衡が崩れた。もう長くはもたない」
私は構わなくていい、と。
力なく咳き込みながら、ベルナが言葉を絞り出す。
「ばっ……馬鹿野郎! すぐ助ける! 待ってろ!!」
「……ふふっ……まあ、キミなら……そう言うと思ったよ」
柔らかく、甘やかな語調。
直後、岩の向こうで、大量の粘ついた水が地面を
「だが──
カチッ、カチッ、と硬い物を叩く音。
火おこしの際、よく聞く音色。
「どうやら、ここは石炭の
「ッ!? まっ、待てベル──」
シュウホウが声を裏返らせながら制止するも、時すでに遅し。
「気に病まないでくれ。これは決してキミのせいではない」
空間を埋め尽くす大小様々な