××を殺す病   作:竜胆マサタカ

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76:Shuuhou

 

 

 

 

 

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 …………。

 

 サリテ村が黒い炎によって焼け落ちた、あの日。

 俺は、自分が何者だったのかを思い出した。

 

 自分が()()()()()()ことを、思い出した。

 

 ──『()絶望(きぼう)』。

 

 島国(ここ)とは異なる世界で作られた物語。

 無名の個人サークルが世に出した、短編ビジュアルノベルゲームへと(かん)された題名(タイトル)

 

 それ自体は、単なる空想の産物。

 しかしながら、この島国(せかい)の存在と、辿(たど)る未来を正確に(えが)いた、奇跡としか言いようがない偶然の上で成り立った作品。

 

 そして、その物語(ゲーム)を通じ、この島国(せかい)で巻き起こる数々の惨劇を観測したプレイヤーたち。

 

 成人版、四万二千三百四十九本。

 全年齢版、一万一千二百八十八本。

 

 俺が生まれた時──すなわちリリース半年時点での累計売上本数、五万三千六百三十七本。

 そいつを実際にプレイした、およそ六万人に及ぶ老若男女。

 

 彼等彼女等が『()絶望(きぼう)』という物語(ゲーム)に対して(いだ)いた悲哀と、(いきどお)りと、無念。

 そうした負の情念が渦を巻き、世界を越え、命と形を成した存在こそ、他ならぬ俺だった。

 

 若い男の姿と精神を(かたど)った理由は、おそらくプレイヤー層の(かたよ)りによるもの。

 仮に女性の方が多かったなら、心身ともに女の形を得ていたハズ。

 

 ──ゆえに俺は、知っている。

 

 まだ訪れていない、この島国(せかい)の行く末を、俺だけは先んじて知っている。

 

 観測者(プレイヤー)たちの悲哀から生まれた俺は、この島国(せかい)辿(たど)る運命を嘆いた。

 観測者(プレイヤー)たちの(いきどお)りから生まれた俺は、この島国(せかい)辿(たど)る運命を呪った。

 観測者(プレイヤー)たちの無念から生まれた俺は、この島国(せかい)辿(たど)る運命を(うれ)えた。

 

 ──否。それだけではない。

 

 誰でもなかった俺に名を与えてくれた人の最期を嘆いた。

 誰でもなかった俺に()を与えてくれた人の最期を呪った。

 この先、俺が出会うであろう人々の最期を(うれ)えた。

 

 だからこそ、未来を変えようとした。

 だからこそ、運命を(くつがえ)そうとした。

 

 変えなければならないと思った。

 (くつがえ)さなければならないと思った。

 

 変えられると信じた。

 (くつがえ)えせると信じた。

 

 だがしかし──足掻いたところで、無駄だった。

 無駄だと、悟った。

 

 ヒスイがガルド一味に(さら)われなかったことで断ち切れたハズの、ベルナとの出会い。

 ガルドの死によって起こり得ない出来事となるハズだった、ヒスイとベルナの拉致。

 

 そして──ベルナの死。

 

 そこに至るまでの過程や経緯こそ、多少なり変わった。

 けれども、シナリオそのものを捻じ曲げることは、(あた)わなかった。

 

 …………。

 そう。結局のところ、俺が何をしようとも筋書きは変わらない。変えられない。

 世界は手を変え品を変え、ただ粛々(しゅくしゅく)(わだち)をなぞるのだと、心底から思い知らされた。

 

 

 

 

 

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