村の広場に、新しい墓標を立てる。
ただし、ここに本人の亡骸は無い。
あの洞窟は火の勢いで完全に崩れてしまって、とても掘り返すなど不可能だった。
「…………」
ナイフを一本、墓前に供える。
細やかな装飾が施された、姉妹剣の片割れ。
もう一方は、本人の遺言となった要望通り、俺の腰へと
何故こいつを俺に持たせたがったのか……その理由が分からないほど、愚鈍ではないつもりだ。
「すまない」
そう呟き、腰を上げる。
「…………」
風ではためく、黒焦げとなった襟巻き。
そして──赤い宝石が嵌め込まれた、銀の指輪。
昔、森で見付けたガーネットの原石を行商人に預け、加工させたもの。
贈った時に見せてくれた顔は、きっと生涯忘れないだろう。
「……っ」
ふと、後ろを振り返る。
少し離れたところに立ったヒスイが、生気の無い表情で、ベルナの墓を見つめていた。
「…………」
ベルナが居なくなった日。
命からがら洞窟を出て以降、気を失うまでの一連を、ヒスイは何も覚えていなかった。
まあ、当然だろう。
「…………」
ボロボロに引き裂かれた上、賊の血が大量に染み込み、着られなくなった
サリテ村が守り続けてきた秘密を
もっとも、今のヒスイは何も知らないけれど。
「…………」
ヒスイは失った
国軍の制服に、より動きやすく改造を施したもの。
元の持ち主との体格差ゆえか、まだヒスイには少しばかり大きい。
だが、そのうち丁度良くなるだろう。
俺を形作る核となった
…………。
今回の一件を
痛感させられた、と言い換えてもいい。
──運命は、すでに定められている。
神ならざる身で捻じ曲げることなど、
小魚が激流を
──であれば、どうすべきか。
「決まってる」
いっそ
流され、流され、流され続けて進めばいい。
全身を冷え切らせながら、血と痛みを受け容れながら、
「これが俺の役割か。だとしたら随分と相応しい名を貰ったものだ」
シュウホウ。
転じて、
最後の幕引きを
「……すまない」
はためく襟巻きを撫ぜる。
次いで、木彫りの耳飾りへと触れる。
「許……いや。許さなくていい」
ヒスイが時折、嫌なものを見る眼差しを向けていると知りながらも、
それを、そっと外す。
…………。
俺は。
「彼女を愛そう」
俺は。
「彼女に寄り添おう」
俺は。
「彼女の全てを肯定しよう」
俺は。
俺が──
──