「ねえ」
「ねーえ。ねえ」
そんな殺伐とした現場に響く、文字通り場違いなほど明るい呼び声。
「随分と楽しそうね」
ほぼ一斉、
見とめたのは、コツコツと小気味良い足音を鳴らし、大通りから歩いてくる二人組。
「ね、ね、ね。なーにしてるの?」
色あせたマントを着込んだ、手入れの行き届いた
人形じみた球体関節で構成された左腕が目を引く、褐色の肌と金色の瞳を持つ青年。
両名とも
おそらくは観光客か、出稼ぎの地方人。
声をかけられた際、すわ
次いで一人が、苛立った様子で怒鳴りつけた。
「なんだテメェら! 見せもんじゃねぇぞ! さっさと消えろ!」
「あら怖い。息を吐くような
そう言って肩をすくめつつも、女は
そして、きっかり三歩分の間合いで足を止めると、小首を傾げさせた。
「ねえ。利き手はどっち?」
「あぁ!? なにワケ分かんねぇこと言ってや──」
ただでさえ頭に血が上っていた男は、ますます激昂し、女に掴みかかろうとする。
が、しかし。
「──そう。そっちね」
ほんの一瞬、女の纏うマントがはためき、薄闇の中を何かが
直後。突き出した男の右腕が、だらりと垂れ下がった。
「は……は?」
どんなに力を篭めようとも、ピクリとさえ動かない。
男は呆然と、肩からぶら下がるだけの塊と化した己の腕を見下ろす。
程なく生温い水が肌身を伝い、指先から
それが血の雫であると遅れて気付き、
「
事もなげに告げる女。
いつの間にか彼女の手中には、古めかしい
そして、告げられた言葉の意味を男が理解するよりも先、更に三度、女は剣を振るう。
もっとも、あまりにも速過ぎて、男たちには何かが
「左手、右脚、左脚」
ぷし、ぷし、ぷしっ。
ほぼ同時、右腕を斬られた男の仲間たちから立ち上る、三つの小さな血飛沫。
斬撃の速さと鋭さゆえか、傷の深さに対して、出血量は驚くほど少ない。
ただし斬り付けられた手足は、いずれも、まったく動かなくなった。
「四人で仲良く一本ずつ」
仲間なら苦楽を分かち合わないとね。
そう
「貴方たちは、この先ずーっと不自由な身体で過ごすの。平然と暴力を振るおうとするあたり、さぞ腕っ節に自信があったんでしょうけど、残念ね。二度と使い物にならないわ」
情けなく悲鳴を上げ、おのおの手や足を引きずり、不格好に逃げ去る男たち。
彼等の後ろ姿へと冷たい眼差しを送りながら、女──ヒスイは、吐き捨てた。
「ああいう手合いは自分が痛い目に遭わなければ、他人の痛みを想像できない。一方的に踏み付けられる側にならなければ、犯した罪すら自覚できない。どこの町や村に行ってもほとんど必ず見かけるけど、愚かしいを通り越して、いっそ
言葉尻と共に、振り返る。
一瞬前までの険しい表情から一転、甘やかな笑みを、後ろに立つ青年へと注ぐ。
「ねえ、シュウホウ?」
「……ああ。そうだな」
静かな返答には、浅く溜息が混じっていた。