シュウホウがサリテ村の一員となり、はや四ヶ月ほど。
狩猟だけでなく野良仕事にも積極的に従事し、よく働く彼は、身元不明の余所者という怪しげなレッテルなど苦ともせず、極めて順調にコミュニティへと溶け込んでいた。
「こっちの
「おお、相変わらず早いな」
「そっちも手伝おう」
「いんや、あと少しで終わるから大丈夫だ。ひと休みしてな」
「そうか」
駆け寄ってきた村娘に手ぬぐいを渡され、軽く礼を告げたのち、額や首筋の汗を拭う。
次いで彼は、畑の隅に転がる岩を椅子代わりにくつろぐウルスラへと視線を向けた。
「暇なら、お前も身体を動かしたらどうだ」
「やーよ」
にべもない返答。
だったら何故
「アンタの方こそ、なんでわざわざ畑仕事にまで出てるんだか。もう狩猟だけでも十分やっていけるのに」
「交友を深めるなら、同じ仕事をするのが一番いい」
労働量の差を鑑みれば当然だが、サリテ村は狩人よりも農家の方が圧倒的に多い。
そして、同じ釜の飯を食う──この島国には存在しない言葉だけれど、苦楽を共にした集団の中で結束が生まれるのは、どこの世界であっても変わらない。
「だからって、ちょっと働き過ぎよ」
「俺は新入りだからな。すでに完成した枠組みの恩恵に与るなら、然るべきだ」
「あっそ」
襟巻きの奥で溜息をつくウルスラ。
そんな頃合、村の方から歩いてきた老婆が、声を上げた。
「シュウホウや。お昼を持ってきたよ」
「ああ、ありがとう婆様。ちょうど一段落したところだ。一緒に食べよう」
耕し終えたばかりの黒土に
お前もどうだ、とウルスラに尋ねるも、彼女はふるふると首を振った。
「──ねえ、シュウホウ。明日の予定は?」
「特に決まってない」
「じゃあ付き合いなさい。村の近くで熊の痕跡を見付けたの」
「熊狩りか。大仕事だな。分かった、同行しよう」
シュウホウの了承に対し、満足げな頷きを打ったのち、軽快な所作で岩から降りるウルスラ。
ひらひらと手を振り、立ち去る彼女の背を見やった老婆が、面食らったような表情となる。
「あの跳ねっ返りのへそ曲がりが、自分から人を誘うなんてね。どういう風の吹き回しだい」
「交友を深めるなら、同じ仕事をするのが一番いい」
先程ウルスラに向けた言葉を再び繰り返すシュウホウ。
後日、二人が持ち帰った大熊の肉は、村中に振る舞われた。