狐坂ワカモのステルス作戦 ~戦闘禁止の超高難度ミッション~ 作:やきそばVer2
バレンタイン四日前
【百鬼夜行自治区:チョコレート専門店】
「~~♪~~~♪」
口笛を吹きながら、狐耳の一人の少女が歩いている。
「この店の商品を使えば、最高のチョコレートが作れますわ。」
「あなた様がお喜びになるように、このワカモが頑張らせていただきます。」
和服のような制服に身を包んだ彼女、狐坂ワカモは大きなカバンを担いで専門店に入店する。
『災厄の狐』とも称される彼女は、愛する先生のために手作りチョコレートを作るつもりのようだ。
「あら、騒ぎが起きていますね。」
入店したワカモの耳に、言い争う声が聞こえてくる。
「店員さんよ~、早くチョコよこせよ!」
「そうだぜ~はやくくれないと、お姉さんたちなにするかわからないぜ。」
「お客様、お代を」
「お代だー?知るかそんなもん!」
「ただで寄越さねえと、この店爆破しちゃうかもな~」
二人のスケバンが、店員に無茶苦茶な要求を突きつける。
スケバンたちの脅迫におびえる店員。
ワカモは、その光景を横目に買い物を始める。
(相変わらずキヴォトスは騒がしいですね。)
(そのうち収まるでしょうし、買い物を続けましょう。)
ワカモがそう考えたときであった。
「SRTです!ただちに脅迫をやめなさい!」
一人の生徒がスケバンたちの前に出て、銃を突きつけながら警告する。
「SRTだ~?たしか廃校になってなかったか?」
「どうせ大した事ねえんだろ!そんな連中になにができるってんだ?」
「Rabbit4、援護をお願いします!私はこの方たちを制圧します!」
「Rabbit1わっわかりました......」
Rabbit1と呼ばれた生徒、月雪ミヤコはスケバンたちに突進する。
しかし、スケバンたちも黙っていない。
「これでも喰らいな!ウサギさん!」
ダダダダダダ!
ガガガガガガ!
言い終わる前に撃ちだされる無数の弾丸。
その全てがミヤコに襲い掛かる。
「Rabbit4!」
ミヤコが無線に叫びながら、近くの机の裏に隠れて弾丸を躱す。
と、同時に二つの銃声が店内に鳴り響く。
ダアン!ダアン!
「ガッ!」
「グワ!」
二人の頭に弾丸が直撃し、その場に倒れこむ。
「ミヤコちゃん、倒したよ。」
「よくやりましたRabbit4。ですが、作戦中はコールサインで呼んでください。」
無線機に話しかけながら、手際よく倒れたスケバン二人に手錠をかけるミヤコ。
「これで大丈夫ですね。」
「当初の予定通り、先生へのチョコを選びますよ。」
「ミユ、一緒......!?」
「そこにいるのは、災厄の狐!?」
目線を上げたミヤコが、買い物中のワカモの姿を捉える。
買い物かごの中には、大量の高級板チョコが入っていた。
とっさに武器を構えるミヤコ。
「この不良たちは、あなたが嗾けたのですか?」
「そんなことはしていませんよ。」
「しらを切るつもりですか......まあいいでしょう。」
「そのまま立ち去るのであれば、あなたの発言を信じて私は何もしません。」
「あなたをここで倒すよりも、チョコの確保が優先ですから。」
一旦銃を下ろすミヤコ。
「ですので、そのかごに入っているチョコを置いて帰ってください!(チョコを奪っていくつもりがなければ、彼女は大人しく従うはず。)」
「それはできませんわ、卑しいウサギさん。(この方も、あなた様にチョコを......私の持ってるチョコまで奪おうとするつもりですのね。)」
「なっ!......もう一度言います。ただちにチョコを置いて、出て行ってください。(『それはできない』ということは、やはり不良たちを囮にしたのですね!)」
だが、ワカモは動かない。
ミヤコは下ろした銃を再び上げながら、静かに告げる。
「最終警告です。早くかごを下ろ」
「これ以上の話し合いは無駄ですね。このワカモがお相手します。(もういいです、暴力で解決するのが手っ取り早いですね。話し合うだけ時間の無駄です。)」
「どきなさい!この泥棒ウサギ!(材料を奪われるわけにはいきません!)」
ミヤコの言葉を遮るワカモ。
言い終わるとともに、ミヤコに飛び掛かるワカモ。
負けじとワカモにサブマシンガンを乱射するミヤコ。
お互いに誤解しあったまま、戦いの火蓋が切られる。
ダダダ!ダダダダダ!
「効きません!」
体を捻り、ミヤコの射撃を躱す。
「次はこちらの番ですね!」
ダアン!ダアン!ダアン!
「グッ!やりますね......」
ワカモが放った弾丸の一つがミヤコに命中する。
勢いのまま、ミヤコに飛び掛かるワカモ。
銃床でミヤコに殴りかかろうとしたとき、ワカモの後ろから銃声が響く。
ダアン!
後頭部に弾丸を受け、バタリと倒れこむワカモ。
その隙を逃さず、ミヤコが手錠をかけようとする。
「なんとか捕まえr」
ドガッ!
油断したミヤコの腹部に、銃床が叩きつけられる。
「油断しましたね。この程度の攻撃で、七囚人の一人が無力化できるとでも?」
「グッ...Rabbit2......Rabbit3......災厄の狐が......」
ダアン!ダアン!
とどめの弾丸をミヤコに叩き込む。
ミヤコが気絶したのを確認し、ゆっくりと立ち上がって後ろをふり返る。
バアン!
ふり返ると同時に、次の弾丸が飛んでくる。
だが、ワカモはそれを難なく躱す。
「そこですね!」
射撃時の閃光から敵の位置を把握したワカモ。
光が放たれたゴミ箱に向けて射撃する。
ダアン!
「ひええ......ギャ!」
ゴミ箱が倒れて、中から一人の少女が投げ出される。
念のために、近づいて無力化したことを確認する。
脅威が完全に排除されたことを確認したワカモは、レジへと向かった。
「これを下さいませ。」
彼女は、笑顔で店員に話しかける。
「ひいっ......お助けを!お代は結構です!」
おびえる店員にワカモは告げる。
「そうは参りません。恐喝して手に入れたチョコなど、あの方は受け取ってくれませんもの。」
笑顔を崩さぬまま、代金をカウンターに置く。
商品をカバンに詰めて、店から出ようとするワカモ。
出る直前に、彼女はふと立ち止まる。
カバンから何かを取り出すワカモ。
(念のため、保険を掛けますか。)
~~~~
「やつが出てきたぞ!Rabbit3!」
サキが叫ぶと同時に、モエもその姿を確認する。
ミヤコからの無線を聞き、ヘリで急行してきた二人。
敵を確認すると同時に、攻撃を開始する。
「ミサイルを撃ち込んでくれ、その直後に私が降下してとどめを刺す。」
「了解!全弾発射~」
バシュ!バシュ!バシュ!
ドガアン!
二人の乗る武装ヘリから、いくつもの対戦車ミサイルが撃ちだされる。
降り注ぐミサイル。
店の前で大爆発が起き、あたりに土煙が立ち込める。
「Rabbit2、降下する!」
言うと同時に、ラぺリングして地上に降りるサキ。
土煙が消えると、ワカモが倒れ伏しているのが確認された。
警戒しつつ近づいていくサキ。
すぐそばまで近づいても、一切反撃をしてこない。
どうやら、完全に気絶したようだ。
手錠をかけようとした瞬間、ワカモのつけている仮面が外れる。
その顔をみたサキは、驚愕の声を上げる。
「なっ!災厄の狐じゃない!」
「Rabbit3!まだ奴は近くにいるは」
バシユ!
ドガアン!
言い終わる前に、店の裏からロケット弾が飛んでくる。
モエの操縦するヘリに直撃して、ヘリが爆散する。
「念のためにロケランを持ってきていたのは正解でした。」
「さて、残りはあなただけですね。」
店の裏から、本物の災厄の狐が現れる。
「おバカなウサギさんたち。」
「スケバンたちを囮にしただけですのに、こうも簡単に罠に引っかかるなんて。」
「私を捕まえた、あなた方の先輩たちとは大違いですね。」
余裕の表情を見せるワカモ。
彼女に対して、サキは全力で攻撃を仕掛けようとする。
「くそ!これでもく」
急いで射撃を行おうとするサキ。
だが、撃ち始める前にワカモが殴りかかった。
ガッ!カアーン!
サキの銃が地面に転がる。
抵抗するすべが無くなったサキに、ワカモは弾丸を叩き込む。
ダアン!
倒れ伏すサキ。
邪魔するものがいなくなったワカモは、家へと歩み始める。
(無事に材料が手に入りました。あとはチョコを作るだけですね。)
(あら、少し血が出ていますね。ですが、この程度大したことはありません。)
(待っていてくださいね、あなた様。)
~~~~
バレンタイン三日前
【百鬼夜行自治区:ワカモ宅】
「できました!渾身の出来です!」
少しでも良いものを作ろうとしたため、チョコが完成したのは次の日になってからであった。
時間はかかったものの、あとは愛しの先生のもとへ届けるだけだ。
そう思って、玄関の扉を開いたときその先生からモモトークが届く。
「ワカモ、また街中で暴れたそうじゃないか。」
「Rabbit小隊のみんなから話を聞いたよ。誤解があったみたいだね。」
「今回は彼女たちの早とちりが原因だったみたいだから、叱っておいたよ。」
先生は続ける。
「でも、君は途中で話し合いを放棄して攻撃したんだよね。」
「その結果として、周りに多大な迷惑もかかったんだよ。」
「これは駄目だよ。最後まで話し合えば、誤解を解くこともできたんじゃないかな。」
「面倒だからって、話し合わずに安易に暴力に走るのはよくないよ。」
「それに、戦ったりしたらワカモも傷つくでしょ。私は君が傷つくのは見たくない。」
ワカモは返事を送る。
愛する先生に叱られたことで、先ほど受けた傷が少し痛む。
「あなた様へ贈るプレゼントを守るためなのですが。」
すぐに返事が来る。
「君の気持ち自体はうれしいよ。」
「でもどんな理由であれ、私のために暴力を振るってほしくない。」
「そんなことを続けるようなら、君のことを嫌いになってしまうかもしれない。」
「もしも、私のせいなのであれば、しばらく君と会うことはやめるよ。」
「それでも暴力を振るい続けるなら、私はキヴォトスを去ることも考えるよ。」
先生の返事に驚くワカモ。
『先生に嫌われる』『自分のせいで先生がいなくなる』
強いショックを受け、涙目になるワカモ。
少しの間放心状態になる。
放心状態から治ったとき、ワカモの目には決意が浮かんでいた。
「あなた様のお気持ちはわかりました。」
「ワカモは、あなた様のために変わることを決意いたしました。」
「決意を示すために、あなた様にワカモ特製のチョコをお届けします。」
「ただし、誰とも争うことなく穏便にです!」
ワカモは続ける。
「指名手配されているので、少し時間はかかるかもしれませんが。」
「バレンタインデーの日に、そちらに伺わせていただきます!」
「どうか、ワカモの決意をご覧になってください!」
ワカモは全ての武器をその場に置いた。
だが、さすがに銃を持たずに外出すると怪しまれる。
そのことに気づいたワカモは、愛銃と念のためにスモークグレネードを拾う。
『戦わない』そう決意したワカモ。
彼女は玄関から飛び出し、シャーレへと向かった。
はたして、戦闘を避けつつシャーレにたどり着けるのか?
ワカモのステルス作戦が幕を開ける。
第二話に続く。