狐坂ワカモのステルス作戦 ~戦闘禁止の超高難度ミッション~   作:やきそばVer2

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第三話:ヴァルキューレの警備をかいくぐれ、DU地区を突破するのだ!

バレンタイン前日

【DU地区:大通り】

ガヤガヤガヤ

 

「そのチョコは私のよ。」

「いいえ、あたしの!渡さないわよ!」

 

「ん、これ全部売るべき。」

「お嬢ちゃん、お金が足りないよ」

「わかった。でも、これだと抜け駆けできない。」

 

「やっと買えたわ。」

「いいね!かわいいじゃん。」

 

 

バレンタインを目前に控えたキヴォトス。

中心部であるDU地区では、大勢の生徒がチョコレートを買いに来ていた。

あまりの混雑ぶりに、視界が遮られるほどだった。

そして、あちらこちらから生徒たちの声が聞こえてくる。

大通りは、お祭り騒ぎになっていた。

 

ワカモは、人混みに紛れながら歩みを進めていた。

大きな段ボール箱を抱えながら。

 

(これなら、なんとかなりそうですね。)

(他の生徒に変装するのではなく、配達員を装うのは効果的ですね。)

 

段ボール箱で顔を隠し、さらに私服に着替えることで正体を隠す。

他の生徒の変装をしないことにより、その生徒の知り合いと出会ってボロを出すことも防ぐ。

前回の苦い経験を生かし、より効果的な方法を編み出したのだ。

 

 

(この感じなら、無事にシャーレに辿り着けそうです。)

(あなた様、待っていてください。あと少し、あと少しです。)

 

今度こそ、作戦がうまくいったと安心したワカモ。

 

実際に、何度かヴァルキューレの生徒の前を通ることがあった。

しかし、前を通っても何も起きなかった。

てっきり、職務質問くらいは受けるものと思っていたワカモ。

心配とは裏腹に、無事に通過することができてしまっていた。

 

しかし、この成功体験のせいで、彼女は油断してしまう。

そして、致命的な判断ミスを犯すことになる。

 

 

(このまま大通りを歩いていくと、時間がかかりすぎます。)

(ヴァルキューレの警戒も大したことないですし、時間短縮しましょう。)

(あそこの裏通りが空いていますし、あの道を通るほうが良いでしょう。)

 

慢心したワカモは、人混みから出てしまう。

そして、人気のない裏通りへと入っていく。

 

だが、普通の生徒がわざわざそんなところを通るだろうか?

安心しきったワカモは、そのことに気づかずに進んでいく。

 

裏通りを抜けたとき、次なる試練が現れてしまう。

 

 

「そこの人、何をしているんですか?」

「裏通りで何やってたの?」

「それにやけに大きい段ボールを持ってるし、怪しいなー。」

「中身爆弾とかだったりしない?」

 

ヴァルキューレ生活安全局のキリノとフブキだ。

混乱に乗じたテロを防ぐべく、警備にあたっていた。

 

(判断ミスでした......こんな箱を持って裏通りから出てきたら、怪しまれるのは当然です。)

(こうなったら、念のために用意したあれを使うときですね。)

警戒する二人に話しかける。

 

「FOX EATSのバイト中です。」

「こちら、試供品のドーナツです。よろしければどうぞ。」

 

そう言って、ごまかそうとするワカモ。

フブキの好物であるドーナツ。

これを使えば、フブキは警戒を緩めてくれるかもしれない。

キリノには効果がないかもしれないが、片方だけならなんとかなるかもしれない。

 

しかし、ワカモの甘い見通しに反して、二人は警戒を解かなかった。

フブキの表情は緩んだように見えたが、怪しむ目つきは変わっていない。

 

 

「怪しいねー、FOX EATSって料理の配達サービスだよね?」

「なんで、こんな大きな箱を持っているのかな?それに裏通りを通る必要も無いよね?」

「そんなところ通ったら、料理にほこり入っちゃわない?」

 

フブキがドーナツを受け取りながらも、質問を投げかける。

 

彼女たちの警戒を解かせるために、フブキの質問に答える。

 

「実は......二週間くらい前から宅配便サービスも始めました。」

「大通りは混雑しているので、裏通りを抜けてきました。」

 

(まずいです、とっさに適当なことを言ってしまいました。)

(二人が詳しい業務内容を知っていたら、余計に怪しまれてしまいます。)

(というか、宅配サービスなんてあるわけないでしょう。)

(自分で言ったことですが、無茶苦茶です!)

(このまま問答を続けるのはまずいです。すぐにボロが出てしまいます!)

 

苦し紛れの言い訳をするワカモ。

 

彼女の返事を聞いて、ひとまず納得したようだ。

しかし、それでもなおワカモに対する警戒は続く。

 

「ふーん、そっか。」

「でも念のため、学生証見せて。そしたら先行っていいから。」

「ついこの間『災厄の狐』が暴れたらしいから、念のために身分証の確認をお願いしてるの。」

 

 

(迂闊でした。周りから見たら怪しく思われるのは当然です。)

(学生証なんて見せられません!一発でバレてしまいます!)

 

(それに、あきらかに私を警戒しています......ならば!)

(この二人なら、全力で走れば逃げ切れます......しかし、すぐに応援を呼ばれてしまいます。)

(ここで捕まるわけには行きません。先生へチョコを贈ることができなくなってしまいます。)

 

(ですが、この様子だと......ごまかしも効かないでしょう。)

(こうなったら......やるしかありません!)

 

覚悟を決めるワカモ。

二人に気づかれないように、逃走経路を探す。

そして、返事をしない様子をみて、不信感を募らせる二人。

ワカモは、危険を承知で駆け出そうとする。

 

彼女が走り出そうとした瞬間、救いの手は唐突に現れた。

 

 

「キリノ、フブキ、緊急事態だ!」

「DU郊外のカイザー系列の銀行で、銀行強盗が発生した。」

「相手は、特別警戒対象の『覆面水着団』の一員と思われる。」

「公安局だけでは人手が足りない、お前たちも今すぐ来てくれ!」

 

「了解です局長。」

「怪しい点が多いけど......それどころじゃないから行っていいよ。」

「怪しいだけの相手よりも、銀行強盗を防ぐ方が大事だし。」

「ただし、変なことはしないでね。サボれなくなるから。」

 

緊急無線を聞いた二人。

ワカモにそう告げて、走り去っていく。

突然舞い降りた幸運に、少しの間放心状態になるワカモ。

だが、すぐに行動を再開する。

 

(助かりました。)

(ありがとうございます。名も知らぬ『覆面水着団』の方。)

(そういえば、変な喋り方をする生徒がいましたね。)

(大量のチョコを買おうとしていましたが......まさか?)

(いえ、単なる偶然でしょう。)

 

(とにかく先を急ぎましょう。)

 

念のため、大通りの人混みの中に戻るワカモ。

時間はかかるが、見つかる可能性は低くなる。

 

逸る気持ちを抑えつつ、彼女はシャーレへと向かっていく。

 

(シャーレまであと少しです。)

(待っていてくださいね、あなた様。)

 

 

~~~~

思いもよらぬ幸運によって、危機を脱したワカモ。

ヴァルキューレの警備をかいくぐり、DUを突破することに成功する。

 

シャーレまであと少しだ。

だが、まだ試練は続く。

 

 

 

 

次回最終話。

 

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