Ⅰ:霧雨式マジック・スクール
世界が、全てお菓子でできていれば良いのに。
ヘンゼルとグレーテルでは、お菓子の家と言うものが存在する。それは魔女の甘い罠であるというオチだが、私は例え魔女に食われても良いから、お菓子の家に入りたい。
そんなことを考えていると、もう空は橙色になっていて、授業は終わって放課後になっていた。
「おい血郷、また授業中、上の空だったぞ。」
「想真~、私お菓子の国に行きたい。」
「またか。そんなんだから、成績も伸びないんじゃないか?お菓子の国はなくても、世の中で幻と化した物がある場所なら知ってるぞ?」
「幻?興味ない。侍でも居るのかしら?あ、もうこんな時間。ちょっと!想真の性よ。私、魔法学校に遅れちゃう!」
界郷想真、今に見てなさい。あなたを私の氷魔法でギャフンと言わせてやるんだから!
大学からわずか数分歩くと、そこは非科学的な街へと繋がっている。ここら一体は、全て霧雨魔理沙と言う大魔法使いの土地なのである。
そこは、よくアニメなどでみる魔法学校を連想させるような世界で、開発当時は世界中の科学者達が駆けつけるほどの騒ぎであった。皆、いかなる化学変化を用いればこのようなことができるのかなどを模索したが、一向に回答は出なかった。結局、その秘密を霧雨魔理沙がぶちまける為に作られたのが、この魔法学校である。
「あら、結衣さんじゃない。こんばんは。」
「アリスさん!」
彼女はアリス・マーガトロイドと言う魔術師で、この魔法学校の首席。人形を操る魔術を得意としていて、付いたあだ名が《死の人形師》である。それこそ彼女は強力で、対峙したら生きている気がしない。現に、実技試験で殺されかけたと言う生徒が何人も居る。また、私もその一人である。
「アリスさん、どうしたらあなたみたいな魔術師になれますかね…やっぱり、アリスさんが努力家だからですか?」
「あなたには千年かかっても無理よ。諦めなさい。」
「そんな!教えてください!」
「じゃあ、あなたはクワガタに「人間になるにはどうしたら良いですか?」と聞かれたら、どう答えるのかしら?」
「えっと…わ、私はクワガタなんかじゃありません!」
「聞かれたら?ちゃんと質問に答えなさい。」
「…いや、なれないだろって答えます。普通に種族が違いますし。」
怖い。これでまだ反抗するようなら火で焼き尽くされるか、水で呼吸を止めるかされる。あれは人を殺す目だ。
「そういうこと。私とあなたじゃ違うの。何もかも。生きてきた環境も、何もかも。」
それ以上聞いたら、間違いなく殺されるので、大人しく教室に向かうことにした。授業はそれぞれ、魔法学校に勤める先生達が行い、霧雨学園長はどこに居るか解らないと言う。解るとすれば、アリスさんくらいしか居ないだろう。
アリスさんは魔理沙学園長の召使いだ。彼女はそのために、毎日学園長と帰ったりもしている。
魔法の授業は学校の授業以上に過酷で、これを十何年かで全て覚えた学園長は何者なのだろう。
学園長は、見た目は私と同じくらい年齢だが、その知識をみる限り、実は彼女は私達を遥かに上回る年齢なのだろうか。魔法特有の、長生きしても見た目は若いままとか。
「あら?もうバテたのかしら?もう夜9時だし、ご飯はおごるから、今日はうちに泊まっていかない?」
泊まっていかないって、どんな公開処刑だそれは。学園長、それに首席様と同じベッドで寝るなど言語道断ではないのだろうか。
「あ…あの…」
「決まり。じゃあ、早く行きましょうか。」
アリスさんの家は清潔で、汚れ一つ無い部屋だ。まるで新築であるかのような部屋。想真そっくりで嫌な感じがする。
何というか、魔理沙学園長の家での態度が酷すぎる。やはり、学園長と言えど必ず良い人、と言うわけではないらしい。
「どうした?家での私の振る舞いに退いたか?」
「い、いえ…でも、学園長は変わったお方だなと思いまして。」
「まあ、安心しろよ。退学にしたりはしないから。」
毎日、魔理沙学園長の世話をしているアリスさんは平気なのだろうか。これじゃあ本当に、アリスさんが過労死してしまいそうだ。
「そうだ血郷。お前、想真と同じ大学なんだってな。」
「えっ、学園長…想真と知り合いなんですか?」
「ああ、二年前に少し世話になってな。そういえば、またあそこで異変が起きたらしいぞ。おいアリス、ちょっとこっち来い。」
学園長が、掃除中のアリスさんに声をかけると、彼女は掃除を止めて学園長の前に正座した。本当に夫婦みたいだな、と思った。
「お呼びでしょうか?」
「ああ、パチュリーから連絡があってな。チルノが行方不明だから、幻想郷で探すのを手伝って欲しいって。」
「ええ、わかりました。出発は明日で良いわね。ちょうど良いわ。結衣、あなたも来なさい。」
絶対言うと思った。と言うか、絶対に学園長の仕組んだことでしょ。それで、私を雑用係に使うんだ。
「嫌です。」
「あら、用事でもあるのかしら?」
「何で、私がただの知り合いの頼みで拉致されなければならないのですか。」
「拉致は言い過ぎじゃないかしら?なら遠まわしに想真へ頼むよう言っても良くてよ?」
「はい、それでお願いします。」
想真ならばなんとかしてくれるだろう。異世界へ拉致されるなんてとんでもない。学園長には申し訳ないが、異世界へなど行きたくないので、今回はきっぱり断らさせてもらおう。
基本不定期更新です。1週間以上の間を空けて更新しないというのは無いのでご安心を。
それでは皆さん、また次回。