東方吸血精   作:tesorus

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Ⅹ:妖精嬢は氷刀がお好き

深夜になると、妖精メイド達も少なくなり、抜け出そうと思えば抜け出せるくらいになった。このままサニーを連れて逃げ出すこともできるが、前記の通り、私はこの城が好きだ。逃げ出すどころか、このままずっと居たいくらいだ。

 

城の地下室は暗く、視界が悪い。頭上から水漏れもしていて、地上とは真反対で、不清潔な部屋になっている。

 

探索を続けていると、床が畳で覆われた大広間に辿り着いた。中は明るく、清潔感の漂う部屋になっていた。中にはリディ様がいらっしゃっていた。リディ様は私に、ここに来るまでに何かあったか、と聞いた。その理由をお伺いすると、彼女は、そこのトイレに鏡があるから、見てみなさいと言い、私をトイレに案内した。私は、そこで見た自分の姿を見て、愕然とした。

 

「これって……血?」

 

白と黒の清楚なメイド服と、私の顔には、血の赤い染みがあった。

 

急に、この空間に居るのが怖くなってきた。まさか、あの通りの、私の頭上には死体があった?誰かが首を括って死んでいた?そう思うと、怖くて仕方がない。

 

「どうしたの?何かあったの?」

 

「い、いえ…それより、リディ様は何故、私をここに?」

 

咄嗟に、そんなことを答えた。先ほど通った道のことを考えたくない、それだけだ。早くこんなことは忘れて、さっさと仕事に戻りたいだけだ。

 

「ああ、そうだった。君、魔法使いだよね。私と勝負しない?勝ったら、君をここから解放する。負けたら、君はここから出て行く。どう?」

 

「勝っても負けても、変わらないじゃないですか。と言うか、そんなに私が嫌いですか?」

 

「別にそういう訳じゃない。ただ、君がこんな場所でいつまでも使用人をしているのは、勿体無い気がしてならないからだよ。それに、君には仲間も居る。そうでしょ?」

 

そうだ、そういえばそうだった。妖精達に匿われているアリスさん達が、まだ街に残っていた。けれど、流石に負けても何もないと言うのは、何だか萎えてくる。

 

私は、もし負けたのなら、私を一生ここに捕らえてくれ、と言った。リディ様は最初、それだと、君はワザと負けるからダメ、と言おうとしたように見えたが、気持ちを察してくださったのか、それを許可してくれた。

 

「じゃあ、待った無しで。行くよ!」

 

目の前から、一瞬にして彼女が消えた。どこに行ったのか見回したが、一向に姿が見当たらない。次に彼女が見えたのは、私の腹から血が噴き出した時だった。

 

「私の刀は、ダイヤモンドよりも硬い氷でできているの。今は致命傷を避けて斬ったけれど、今の攻撃で、あなたの首をはねることもできた。」

 

そう言われた後に、身体の中心から痛みを感じた。血は暫くして収まった。しかし、これほどまでに差があるとは思わなかった。このままでは、私はリディ様に殺されてしまうかもしれない。

 

「負けたら捕らえる、という約束だったけれど、このままじゃあ、君を生け捕りで済ませるかどうかも怪しいわよ?もう少し、本気になりなさい。」

 

そうだ、私は勝たねばならない。勝って、チルノも救って、みんなを守らねばならない。それならば、私も、リディ様を殺すくらいの勢いで戦わねばならない。

 

次に彼女が消えたとき、私は氷のバリアで身を守った。しかもそれは、身を守るだけではない。バリアに触れると、バリアから氷の槍を放つ、特殊なバリア。

 

《氷槍「クリア・サウザンド》

 

案の定、バリアは簡単に斬られたが、槍の動きは、魔法生物のようなものであり、私でも動きを全ては理解しきれない。その為のバリアでもあったのだが、それが斬られた今、私のラックに賭けるしかない。

 

賭けは半分成功。氷はリディ様目掛けて襲いかかってくる。けれど、もう半分は私目掛けて襲いかかってくる。とりあえず、一つ当たりの威力は弱いので、熱魔法で処理しようと思えば処理できる。

 

 

《熱符「マントル・シート」》

 

これを使えば、この盾に触れたものは、例え鉄だろうと溶かす。想真戦では結構役に立ったが、そんな想真メタの為に作った訳ではなく、元々このクリア・サウザンドが破られた時のために作った魔術だ。

 

けれど、このマントル・シート、と言うか、熱魔法はあまり得意じゃなく、しかもこんな威力が高い術を出したら、制御できずに、敵を攻撃していたクリア・サウザンドも…

 

「やる気あるの?自分の魔法、自分で破って。まあいいや、私の氷刀なんて、水蒸気さえあればいくらでも作れるし。そろそろ、終わりだね。」

 

どうしよう、氷の力比べでは、絶対に彼女に敵わない。かと言って、他の魔法はどれも火力に乏しい。もう、あの魔法しかない。

 

《「E・F・カオスコール」》

 

私の魔力を全て使用して使う魔法、それがこのE・F魔法。身体への負担も相当なもので、他の魔法との併用はできないが、その分、威力は私の魔法の中でも群を抜く。

 

冷気に触れた場所からは、知能を持つ氷の龍が召喚され、相手を襲う。そして、その龍は、ある程度私が操ることができる。適切な角度から撃ち込めば、まず私が襲われることはない。彼女は剣で対処するが、それに間に合うほどの量ではない。しかし、それでも彼女は対抗し、剣が効かないのならばと魔術で対処する。

 

《氷銃「アイシクル・フォール・スナイプ」》

 

勿論、この魔術は無敵ではない。対処しようと思えば対処できる。同等の魔術を使用すれば相殺も可能だ。流石に、こんな小細工で倒れる相手でないことはわかっている。そこで試されるのが、こちらの身体能力。身体の力を抜き、縦横無尽に駆け回る。

 

「へえ、魔法の力は見せかけで、私のことは魔法抜きで倒す気?」

 

彼女の言葉も聞かずに、腹を目掛けて急降下する。アイシクル・フォール・スナイプで対処しなければ、カオスコールの龍達を止めることはできないし、かと言ってその処理に集中すれば物理攻撃を受ける。

 

「まったく、あなたは下品な戦い方をするのね。」

 

私は、アイシクル・フォール・スナイプの最後に放った弾に止められた。しかし、こちらを止めれば、カオスコールの龍を止めることはできない。彼女は氷龍の攻撃をもろに受けた。

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