次の日、やはり想真が昨日の出来事を話してきた。やはり、アリスや学園長との仲は本当であった。そして、想真がなんとか止めてくれるだろうと言う甘い期待はかき消された。
「嫌だ。何で想真も断ってくれなかったの?」
「まあ、俺は関係ないしな。そうだ。お前、魔理沙さんの教え子なんだってな。それなら、今晩に俺と一回戦わないか?」
「はあ?」
まさか、こいつ馬鹿なの?本気でそう思った。だって、私は非科学的なモノを使う魔法使いで、あいつはただの非力な人間ではないか。
「わかったな。勝った方が負けた方の言うことを聞く。これで良いな?」
「ええ。どんな武器を使うのかは知らないけれど、魔法使いに戦いを挑むなんて、変な人。場所はどこにする?」
「ああ、そうだな。魔理沙さんに頼んで、お前の魔法学校の闘技場でも開けてもらっている。そこで落ち合おう。」
想真の馬鹿、ただ恥曝しをしになど来るはずがないじゃないか。
結局、闘技場には来たものの、まだ私はそのような感情を抱いている。けれど、アリスさんは「必ず来る」と言って、彼が来ることを信じて疑わない。
そう思って闘技場へ上がると、愚かにも彼はそこに居た。
「さて、始めようか。勝負は30分で、先に俺かお前のどちらかが首から上を地面に付けたら負け。それがお前らのやり方だと魔理沙さんから聞いたが。」
「え、ええ。それで良いわ。あなた本気なの?銃刀法が敷かれている今の世の中じゃ、ろくな武器も揃わないでしょうに。」
「いや、俺が使う武器は…こいつらだけだ。」
想真が指をならすと、地中から4本の巨大な鎖が生物のように這い出てきた。
「え、な…ちょっと!あなた人間じゃないの!?こんな風に鎖が勝手に動くわけ…」
「いくぞ血郷、魔理沙さんの弟子なら、俺くらい退けて当たり前というくらいの実力を見せてくれ!」
「試合開始!」
どこからともなく聞こえてきた試合開始の合図、声は多分アリスさん。あなたどこに居るの?
《地獄変「サイコパス・アーティスト」》
鎖が天空を舞い、それがバラバラに外れて、鉄の雨になって降り注いできた。一つ一つの威力は弱いが、何十も当たると流石に身体がもたない。
《熱符「マントル・シート」》
マントル・シート、地中に高熱のバリアを張る魔法。これで鉄の雨を溶かせば、なんとか対象できる魔法のようだ。
その戦がどちらを勝者へ誘うのかは誰も知らず、悲劇のアラームは鳴り止むことを知らない。
紅魔館、幻想郷に佇む赤い城。そこの主はレミリア・スカーレットと言って、長い年月を生きてきたと言うには幼すぎる外見を持つ吸血鬼が居る。
ああ、彼女のことが欲しいと思ったのは何年前からだろう。あの異変の後、優しく接してくれた時以来、私は彼女の全てが欲しいと思ってやまない。もはや、地底に籠もってなど居られなくなった。誰もかれも眠った後に、必ず私はここに来てしまう。
紅魔館のこの部屋に来るのに、大した時間はかからない。私に宿る《無限》の力で得た「無意識を操る程度の能力」さえ使えば、誰にも見つからずにこの部屋まで来られる。
「レミィ、寝ている時も可愛い…」
目的はただ一つ。私の友人、レミリア・スカーレットと濃厚な愛を確かめ合う為だ。私は二年前から、すっかり彼女の虜となってしまった。とにかくベッドに入り、レミィと一緒に寝るためだけにここに来た。
「レミィ…」
「また来たの?美鈴ったら、何をしているのかしら。まあ、あなたの能力を使ったら楽勝でしょうね。」
彼女の微笑みは、とても美しくて優しい微笑みだ。普段ではあまり見ることができないほどに、明るい表情。
「レミィ、もう少しこっちに…」
「もう、さとりは甘えん坊ね。同い年だなんて考えられないわ。良いわ、今夜は舌も入れてあげるわ。」
唇を繋げると、彼女の息づかいや血の流れ、全てが伝わってくる。私の息づかいや血の流れも彼女に伝わってきているのかと思うと、心がドキドキする。
そのようにして、私がレミィといい感じになっていると、急にガラスが割れる音がした。それから、ガタガタと言う慌ただしい物音や、何かが暴れているような物騒な物音が聞こえてきたので、甘い口づけを解いて、思い切ってレミィに話しかけた。
「レミィ、何か下がとてつもないことになっている気がするのだけれど。」
「本当ね。鼠が迷い込んだのかしら?少し行ってくるから、先に寝ていて。」
レミィは、そうとだけ言ってから、部屋を出て行ってしまった。私が言えたことではないが、こんな夜中に物騒にも入り込むなんて、よほどの怖いもの知らずだろう。宵闇の妖怪が、ただ前が見えずに突っ込んできて、暴れていると言うような内容なら良いが。万が一、襲撃のようなものならレミィが心配だ。
やはり、私も行かなければ。
レミィの部屋を出てから、階段で1階のリビングへ向かう。途中で、彼女の雇っている妖精のメイド達が倒れていたあたり、やはり襲撃と見て間違いないだろう。
リビングまであと少し、そんな所で私は、赤い髪をした悪魔とばったり出会った。
「あなたは確か、地下の書斎に住んでいる悪魔じゃない。この襲撃に、あなたも駆けつけてきたの?」
私がそのように問うと、彼女は顔に少し涙を浮かべた。その後彼女は、自分はこの襲撃の犯人を知っている。もう犯人は帰ったと言った。そして、もう大丈夫です、レミリアも心配するでしょうから、今日はごゆっくりお休みくださいとだけ言ってその場を去った。
私は去り際に、何故知っているのならレミィを助けなかったのか。そして何故、従者であるレミィをあなたは呼び捨てにするのかを聞いた。前者は今思いついた質問で、後者は前から聞きたかった質問だ。
彼女は、私がこうして夜中から昼にかけて遊びに来ている間に見た限りでは、彼女はレミィをレミリア、と呼び捨てにしている。何故パチェには敬称をつけるのに、と言うことも聞きたかった。
「…わかりました。教えましょう。その前に、後者の質問に答えると最悪の場合、私が殺される可能性があるので、レミリアやパチュリー様に仰るのはご遠慮願えますか?」
「ええ、わかったわ。古明地さとりの名にかけて、決してレミィ達には言わないわ。」
「わかりました。では、まず一つ目の質問にお答えしましょう。今回の襲撃事件の犯人、それは私の姉であるライテアル・スカーレットと申す者です。きっと、「あちらの世界」に、私達が幻想郷に居ることがバレたのでしょう。」
「ライテアル・スカーレット?と言うことは、襲撃の犯人は吸血鬼と言うことなのかしら?」
「いいえ。スカーレット家は、吸血鬼たるブラッデルと、悪魔であるネカクルスが主を勤める名家。そして、彼らの血が濃い者ほど、強い吸血鬼だったり、強い悪魔となるのです。」
「姉がライテアル…と言うことは、あなたもスカーレット家の人間なの?」
「まあ、そんな所ですね。私や姉は、ネカクルス様からは本当に遠い親戚なので、力も大したことのない「小悪魔」ですがね。まあ、そんな私でも、何か親戚にあたるレミリアに敬称は癪なので。それだけです。」
彼女の話をさらに聞くと、ブラッデルとネカクルスは兄弟らしい。しかし、何故彼らと血縁が遠いと力が弱まるのか、また、何故ネカクルスのと血縁が近い者は悪魔で、ブラッデルと血縁が近い者は吸血鬼なのかは誰も知らないらしい。唯一わかっているのは、ブラッデルとネカクルスは仲が悪いと言うことと、フランとレミィがブラッデルの実の子供だと言うことだけらしい。
そして、ブラッデルは実の子供であるレミィを処刑すると明言していること。
こぁの過去については、意外な線でいきました。パチェ召喚説とかいろいろありますよね。私の小説ではとりあえず、レミィの親戚ってことで。
それでは、また次回。