「ええっ!?ダメだよ、そんなことしたら死んじゃうよ!」
私が朝食を終えたあと、サニー達の目を盗んで都市へ出ようとすると、サニーは私にしがみついて、離れなかった。
彼女は、私とネクロ兵との会話を知っていた。私が外に出ると言うことは、彼女達を止めに行こうとしていることだと悟ったのであろう。
実は彼女、私がネクロ兵と対峙している時、起きていたと言う。私がアリスさんのことで思い病んでいるのではないか、ひょっとしたら、自分を責め、自ら命を絶ってしまうのではないか。そうとも思い込み、私のことをずっと見ていたと言う。
「…解った、解ったから。でも、知っているのなら、尚更止めに行かなきゃダメだと思わない?」
「…うん、まあ。でもさ、それでもやっぱり、結衣のこと心配で…そうだ!じゃあ、二人で行こうよ!そうだ、旅は道連れ、世は情け!だから…私も結衣と一緒に、あの娘を止めたいなあ、なんて…」
自分で私を誘いながら、照れ隠しをするサニー。やはり子供だなと思いながら、それでも、何故だか私は、彼女に心を置くことができる気がする。
他の誰でもいけない、強い絆。私とサニーの間には、既にあるのかもしれない。
「解った。行こう!二人で!」
彼女を連れて、ホテルの外へ走り出す。扉を開けると、無限の光が溢れ出した。
晴れ渡る空、どこかから聞こえる、住民の笑い声。中には、市場で物を売る人々の声も混じっている。
街に出ると、どういう訳か、兵士は私達を見つけても、ガンを飛ばしたり、追ってきたりはしなかった。
やはり、昨日の女の子のおかげだろうか。おかしな話かもしれないが、私は兵士が駆け寄ってきた所で尋問しようと思っていたので、少し残念だ。
まあ、それはそれで、堂々と街を歩けて良いと言えば良いのかもしれない。
街は、兵士に対する恐怖はなくなったものの、やはり奇妙で異質なものを感じる。
国に忠誠を誓うものが生き延び、迫害されたり、反逆したりすれば滅ぶ。忠誠を誓ったものには穏やかな暮らしが約束され、そうでないものは殺される。
こんな生活は、やはり異質に見える。まあ、話した所で無駄ではあろうが。
お金は、昨日のさとりさんのおかげでたくさんあるので、私達はとりあえず、近くの空いているコーヒーハウスでお茶をすることにした。
街の中心にある、コーヒーハウス。この近くのコーヒーハウスは、朝方には満席と聞いたのだが、ここだけは空いている。
一体、何故ここだけ空いているのか。私は疑問で仕方なく、評判が悪いのか、はたまた、他のコーヒーハウスの評判が良すぎるのか、住民に聞いてみた。
すると、住民の一人が、入ってみれば分かると呟いた。私達はそれを聞いて、そのコーヒーハウスへと足を運んだ。
確かに、その理由はすぐに解った。中に入ると、数人の兵士達が円卓を囲み、作戦会議をしていた。
なるほど、ここはコーヒーハウスと言う一面の他に、兵士達の作戦会議場でもあるのか。それで、住民達は気を使って、この時間だけはここを避けているんだ。
私は関心し、ここを出ようとした。しかし、私は一人の女性に止められ、ここに留まった。
銀色の髪を持つ女性、その女性は、昨夜の女兵士だった。最近は女兵士によく出会う。ルイズさんも、そういえば、異世界の女兵士と言っていた。
女性は、昨日はごめんなさいと一礼をして、私達を兵士達の前まで案内した。
「あれから一日経って、私の話を聞いて、あなたに会って話をしたいと言う兵士がたくさん出たの。でも、もうここを旅立ったと思ってて…また逢えて嬉しいわ。」
女兵士は、名前をリリィと言うらしい。彼女と、ここで会議をしている五人の兵士、それから、シェリーと言う女性は幼馴染であり、昔から兵士を夢見て、彼女の母親が営むこの場所に集い、修行を続けていると言う。
しかしこのコーヒーハウス、ただそれだけの理由で人が居ないと言う訳ではないらしい。
兵士達と話し、20分くらいの時が経ったその時、扉の前で、何かが壊れる音がした。
何事かと席を立ち上がると、兵士達は来たか、と剣を片手に、物音のした方向へ向かっていく。
私も行くと言うと、リリィに行く手を阻まれ、止められた。
「え、これは…どういうこと?」
彼女を除く兵士達が立ち去り、誰もいなくなった部屋の前で剣を抜き、私の首に突きつけるリリィ。彼女曰く、これを見てしまったら、私が、誇り高い魔女として生きてきた生涯を汚すことになってしまうから、行くのはやめとほしいとのことらしい。
それでも行くなら、自分を倒してから。と言いたいらしい。
「…すみません。なんか、せっかく仲良くなったのに。いくよ、サニー!」
魔導書を取り出し、栞を挟んでおいたページを開く。開くと、ページの文字が光り、私の脳内にその文字が思い浮かぶ。
慎重に、殺さないように。いや、それじゃあここの住民には勝てない。
「彗星、ブレイジングスター!」
青白い星を手元に集め、彼女の元に高速で放つ。いくら弱い魔術とはいえ、当たれば内臓破壊待ったなしの星達だ。避けなければ、本気で死ぬ。
当然、彼女には避けられた。彼女は空中に飛び、円卓の上に着地する。星はガラスにぶつかり、ガラスはバラバラに砕けた。
一応、修復が聞くように、戦闘が終われば、戦闘前と同じようにバックアップできる結界は張ってあるが、彼女の傷までは元に戻らない。
「……う、ぐ!」
私が、そんな要らない心配をしていると、彼女は剣で私の体内を突き刺し、勢いよく引き抜いた。
私の服に、赤い血が漏れる。彼女は、次は首を跳ねる警告し、私と距離を置いた。
なるほど、向こうも殺す気か。ならば、私も本気を出さねば、彼女に失礼だ。
私はページをめくり、上級魔法を読み上げる用意をする。
「凍雷、フュージョン・ビームソード!」
手元に氷の剣を出現させ、彼女の前に構える。到底、彼女の剣技には及ばないだろうが、すばしっこい彼女を相手にするには、やはり接近戦しかないようだ。
剣技の差は、サニーに埋めてもらう。私が目で合図すると、サニーも、目で答えてくれた。
「俊足、アクセルフリーズ。」
彼女が向かってくる前に、こちらから攻める。私は円卓に足をかけ、息を止め、加速する魔法もかけ、彼女の目の前まで走る。
彼女のすばしっこい動きについて行くのは大変だが、目で彼女を見るのではなく、彼女から流れる、わずかなオーラを頼りにすれば、決して追いつけぬ域ではない。
彼女が一歩で宙を舞うならば、私は二歩でそれに追いつく。コスパが悪いようだが、訓練の差をそれで埋められるのならば、それで十分だ。
「くっ…させない!強襲、ブレイブクロス!」
彼女は戸惑い、遠距離からの攻撃による、私の足止めを模索する。恐らく、このブレイブクロスと言う魔法は、彼女本人による魔法ではなく、誰かによって仕込まれた魔法。
それが誰かは知らないが、それならば、それは常に、それが込められた何かによって動かされている。霧雨学園長がそう言っていた。
その先は、眼を凝らせばわかる域。そう、その先が解れば、それに対して封印の魔法を使えば、それを封じ込めることができる。
そう、その先は…彼女の左耳のピアス!
でも、同時に二つも使っている私は、これ以上の魔法を使うことは、身体に負担がかかる。
ならば、それを埋めるのは絆の力。頼むよとサニーに目配せすると、彼女は任せて、と返した。
「光牢、フラッシュロック!」
彼女のピアスに、光の鍵の形をした魔法がかかり、魔力の発生を阻害する。すると、私を追跡するナイフは動くことをやめ、地に落ちた。
「うっ…何で!ブレイブクロスは、避け続ける限り、止まることはないはずなのに…」
そうだ、魔法使いの人間以外が、解るはずがない。他人から譲り受けた魔力に、限界があるなど。
彼女がそれに気を取られていることで、その実力の差は縮まる。しかし、目の前に私が居れば、単純な攻撃は当たらない。何かで、それを阻害せねばならない。
「任せて!虹光、プリズムフラッシュ!」
サニーの右腕が光り、辺り一面を眩しい光が包む。よし、これならば、リリィの眼を封じつつ、彼女の懐へ潜り込める。
確かに私も、光で周りが見えないが、リリィのオーラさえ解れば、簡単にたどり着く。
「届け!E・F・フリーズ!」