「さあ、幻想郷へ行くわよ。」
結局、どうしたら想真に勝てたのだろうか。ひたすらに鉄の鎖を熱魔法で溶かしたが、それでも勝ちへの方程式が見つからなかった。彼曰わく、幻想郷に居る早苗に力を借り、チルノとか言う幻想郷の妖精の師匠に鍛えられた結果だとか。
「あの、本当に私…幻想郷へ行かなければならないのでしょうか?」
「ダメよ。それに、紅魔館も襲撃されたと、パチュリーから連絡が入ったの。流石に心配になってきたわ、同一犯かしら?」
そういえば、早苗は幻想郷に居るらしい。彼女は四年前に私達の高校から姿を消してから、まったく警察も手がかりがつかめずに死亡扱いとなっている。そんな彼女と、想真は二年前に会っていたと言うから驚きだ。
あのリア充共はさらに、今でもメル友だと言う。あの巨乳女め、幻想郷に行ったら、まずは彼女から胸を削いで…
「アリスさん!早く幻想郷に行きましょう!」
「お、やる気になったわね。それじゃあ、私の魔法で幻想郷へ飛んでいくから、魔法陣から出ちゃあいけないわよ!」
《時空用神人形「タイムスペース・ドール」》
時を司る人形が宙を舞うと、私達は不思議な空間へ放り出された。全てが水色のベールに包まれた、不思議な世界。
数分もすると、その不思議な世界も消え去って、初夏の風が吹き、蝉の声が煩く聞こえてきた。こちらの世界でも、今は夏と言うことだろうか。
「さて、着いたわ。ここが幻想郷よ。」
「凄く、田舎なのですね。ここがアリスさんの故郷ですか?」
「いいえ。私はあくまで、少し前まで、ここに身を寄せていただけよ。私の故郷は、こんなに和やかな場所じゃなくて…もっと…」
アリスさんが急にシリアスな顔をしたので、これ以上は触れてはいけないと察した。話を切り替えて、私にこの幻想郷を案内して欲しいと言ってみた。
「ええ、まずはあいつに挨拶をしないと面倒くさいわ。」
あいつ、とは誰のことだろう。アリスさんの友人であることは確かだが、どのような人か楽しみだ。
「ごきげんよう、霊夢。」
「ああ、はいはい。二年も外界で何やってるのよ。電子の海に潜って遊んでいるのかしら?」
彼女は、名を博麗霊夢と言って、幻想郷を守護する巫女らしい。
頭の中で、巫女は清楚な紅白の着物と言うイメージがあるが、彼女は黒と赤の巫女服を着ている。これらは、確か不吉な色として忌み嫌われているはずだが、それを敢えて彼女が着ていることには理由が何かしらあるのだろうか。
「あの、博麗さん。ちょっと聞きたいことが…」
「服のこと?色合いが不吉だとか言いたいのね。私も、ちょっと旅に出ていた前までは紅白を着ていたのだけれど、もう…ダメなの。私は、決して許される身ではなくなってしまった。もう、巫女としては死んだも同然よ。」
「何言ってるの!博麗の巫女と言ったら、あなたを他にして誰が居るの!」
「そう…けれど、次元が違うのよ。あなたが考えるそれとは。まあ、紫に巫女の座を降ろされるまでは、博麗の巫女をやっているつもりよ。あと、あなたに頼まれたから探したけれど、やっぱりチルノは見つからないわね。魔界にでも行ったのかしら?昔を思い出すわね。」
博麗の巫女、霊夢さんはとても優しく、彼女が犯した罪など知る由もない。まさか、不倫とか?そういえば、竹取物語で書かれる想像上の人物、かの輝夜姫は不倫の罪を背負っていたと言う。もし、輝夜姫に出会う機会があるなら、その審議も聞きたいと強く願っている所存だ。
アリスさんは、紅魔館へ行こうと足を急がせたので、博麗神社を出て、急いで彼女についていく。何故急ぐのか、と彼女に聞いたら、異変が起きているのに、こんな場所でのんびりしている暇はないと言われた。
「こんなんじゃ、日が暮れちゃうわ!由衣、浮遊魔法を使いなさい。」
「嫌です!変に魔力を消費したくありません!」
「わかったわ、何でも願いを一つだけ叶えてあげるから、その代わりに浮遊魔法を使いなさい。」
「じゃあ、あと十回叶えて…」
「殺すわよ?」
「ひぃぃ…」
冗談は通じないらしい。でも、あまり良さげな願いが思い浮かばない。それならと、完全に不可能なことを押しつけて、浮遊魔法を使わずに彼女を困らせることも良いかもしれない。
「わかりました、じゃあ、かの竹取物語に出てくる輝夜姫に会わせてください。何でもと言うのなら、叶えてくれますよね?」
「輝夜姫に?今日は彼女、予定とか無いかしら。ええ、良いわ。」
……は?いやいや、空想上の人物なのですが。彼女に会うなど、魔法を使っても無理なはずなのですが。
今回は繋ぎ的な章なので、若干短め。
次回、姫降臨。