東方吸血精   作:tesorus

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Ⅳ:現れる竹取の姫

竹林を飛ぶこと数分、小さい小屋が姿を現した。アリスさんは数年前、ここに異変解決に来たという。

 

姫は、どうやらここに住んでいるらしい。例えあの話が現実であったことだとしても、何故月へ帰った罪人の姫がこの地球に居るのか。まあそれも、姫に遭えば解ることだろう。

 

アリスさんと、姫の従者らしき人の会話を聞くと、彼女は滅多に外出をしないらしく、例えアリスさんの友人だと言えど、姫が出てくれるかどうかは怪しいとのこと。

 

別に出してくれなくても良い、魔力の無駄遣いは嫌だと言う心と、姫の姿を見れるなど一生に二度と無い経験だ。こうなったら、姫を見るまで帰ることをやめない。と言う気持ちが葛藤している。

 

アリスさんの交渉が終わり、姿を見せてくれるのかを聞くと、待っていれば解るとのこと。

 

しかし、竹取の姫など実在するのだろうか。月にはだいぶ前に人間が着陸したが、月に人間など居なかった。

 

やはり、アリスさんに騙されたのだろうか。思えば、私も馬鹿だったかもしれない。輝夜姫など実在するはずがないのだから。

 

「おはようございます、今日はとても美しく、今夜はさぞ美しい夜になるのでしょうね。」

 

「いやああああ!姫様あああ!」

 

と、思っていた時期が私にもありました。アリスさんが嘘をつかないことは、学校でも有名な話。つまり、輝夜姫は実在すると言うことになる。さらに、竹取の姫である彼女は今、私の目の前に居る。

 

「あ…え…?輝夜姫?」

 

「あら、ごきげんよう。あなたが、私に会いたがっていたお方?あら嫌だ、月からの使者であったらいかがいたしましょう。」

 

「つ、月の人間ではありません!地球の人間です!」

 

長く伸ばした黒い髪、和服のように着飾った服、そして何より、この美しい清楚な顔立ち。姫らしいオーラが出ていて、彼女を前にしたらまず跪いてしまうくらいに綺麗だ。

 

「そう、ならば安心ですわ。それで、従者の鈴仙からお聞きしたのですが、私に何か聞きたいことがあるとか。」

 

「は、はい!あの…その…」

 

緊張してしまって、良い質問が思い浮かばない。姫を前にして、頭の中が真っ白になっている。何せ彼女は、皇帝の心すら射止めた平安の美女。もはや、言葉すら出てこない。

 

「あの…そういえばですね、姫様は月で何をなさって地球に?」

 

かろうじて出てきたのが、この質問一つだけであった。パニックのあまり、他のことは忘れてしまった。

 

「あら、昔のことを聞き出すなんて、随分とまあ品のないお方。」

 

「そ、そうです!私には品がありません!ごめんなさい!」

 

「安心なさい、冗談よ。私の罪…蓬莱の薬を飲んでしまったの。それは月では禁忌とされていて、その罪で私は地上へ下ったの。」

 

「そ、それで…皇帝の心を射止めた後に月へお帰りになったのですか?」

 

「まあ、迎えは来たけれど、軽く蹴散らしてやったわ。だって、月の連中の弱いこと弱いこと!それで、今は逃亡中と言った所かしら。」

 

なんか、色々と突っ込んではいけない気がする。

 

「まあ、正々堂々と戦った訳ではないわ。月の使者に、スパイを潜り込ませておいたわ。月になんて、帰りたくもないしね。ああ、そうそう。少し前に、人間が月に来たことがあったと聞いたわ。まさか、あそこに月の住民が居ると思っているのかしら?違うわよ。あそこは、あくまで《月》へと通じる異次元の穴があるだけの、ただの惑星よ。そうでなければ、どうして、私達があのような狭い場所に住まなければならないのでしょう?ふう…月を背に、月を間違う愚か者。夜に消え去り還らぬ者なり。」

 

平安貴族は、よく和歌を読むと聞いていたが、輝夜姫もそういう癖があるのだろうか。見事な和歌を読んでみせた。還らぬ者とは、竹取の翁のことだろうか。

 

「はあ…私、久し振りに人前へ出て疲れてしまいました。それでは、幻想郷を楽しんでいってください。」

 

「は、はい!」

 

もう少し、もう少しだけ話したかったが、姫様がお疲れになったと言うことなら仕方ない。このまま、浮遊魔法を使って紅魔館に…

 

「輝夜さん、そのお方、まだあなたと話したがっていますわ。」

 

ちょうど満足して帰ろうとしたその時、後ろから甘い声がした。

 

桃色の髪を靡かせて眼鏡をかけている少女と、青い髪で黒い翼を生やした悪魔のような少女が歩いてきた。

 

彼女達、よく見ると地に足がついていない。浮遊魔法でも使っているのだろうか。

 

「あら、いきなりすみません。私は地霊殿の主の古明地さとりと申します。こちらは、紅魔館の主にして、偉大なる吸血鬼…ブラッデル・スカーレットの娘でおらせられる、レミリア・スカーレット様です。」

 

口調と言動を聞くと、彼女達はどこかのお嬢様だろうか。こんな金持ち3人を相手にして、貧乏人が二人。これ、学校なら絶対にいじめられるよね。

 

「あら、どうやら貧乏人はあなただけのようですよ?血郷結衣さん。」

 

「そ、そんなことはありませんよ!ねえ、アリスさん…」

 

「これはまた、ご丁寧にありがとうございます。私は、魔郷賽の令嬢のアリス・マーガトロイドと申します。」

 

「魔郷賽、変な場所の生まれなのね。確か、あの世界の王家の城…」

 

「うわああん!」

 

絶対にいじめられる。こう、携帯を無理やりはぎ取られて、お電話!?これが!?みたいなことを言われていじめられるんだ。

 

「ああ、あなたの腰についてる、それがお電話ですか?随分と貧相な…」

 

「うわああん!煩い、煩い!」

 

「ふふふ…面白い。すみませんね、心が読めて。」

 

 

 

今回の異変、紅魔館の襲撃とチルノ失踪の原因は、ブラッド・ワールドと言う世界にあるとレミリアは言った。ブラッド・ワールドとは、人間と悪魔、それに吸血鬼が対立している世界らしく、彼女達はそこから幻想郷に逃げてきたらしい。

 

実に意味が解らない話ではあるが、私達が今居る幻想郷と言う場所自体、意味が解らない。第一、幻想郷なんて誰が何の目的で作ったのか、何故、この一カ所だけ結界が張られているのか。それすらも解らない。

 

その謎の答えは、きっと彼女が…博麗霊夢が知っているはずだ。けれど、彼女があんな調子じゃ答えてくれそうにない。仕方がないから、彼女の機嫌が戻った時にでも聞いてみるか。

 

輝夜姫の居る館から飛んで数十分、今回の異変が絡んでいる紅魔館に到着した。この紅魔館は、本来は幻想郷にはなく、とある日に突然、この幻想郷に現れたと言う。

紅魔館は、主であるレミリア・スカーレットが所有する館である。この館には、彼女の他にも、妹であるフランドール、彼女達のメイドである十六夜咲夜、門番の美鈴、そしてパチュリー・ノーレッジと言う魔法使い、それに、彼女に仕えている悪魔、ネオティスアが居る。

 

全てさとりさんから聞いた話だが、こんなに大家族なのかと思うと、金持ちとは何かを思い知らされている気がする。

 

 

 

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