Ⅴ:お外を見ると、ニンゲンだらけ
「さて、ここからは私のトップ・シークレットよ。心して入りなさい。」
地下に部屋を持つ、彼女の妹であるフランドールすら見下ろすほどの紅魔館の地下2階、そこには、メイドである咲夜すら入ったことのないレミリア・スカーレットの倉庫があるらしい。そこには、彼女の見られてはならないトップ・シークレットが眠っているらしい。
「良い?絶対に中を覗いてはダメよ。でないと…私の尊厳が…」
要するに、彼女の黒歴史が眠る場所ってことですね。
「えっと、これは違う!これも違う!なっ…お父様!何でこんな物を残してあるのよ!あ、あった!これよ!」
レミリアさんが、数あるガラクタの中から取り出したのは、一つの写真であった。威厳に満ちた彼女とは裏腹に、いや、むしろ威厳に満ちた彼女であるからこそ、数多くの黒歴史が存在するのかもしれない。
その写真には、彼女と妹であるフランドール、それに、父親らしい人物と、二匹の悪魔が映っていた。
そういえばこの悪魔、先ほど紅魔館で会った気がする。確か、メイドの咲夜さんと部屋を掃除していたような…
「私とフラン、それに、私のお父様のブラッデル、それに、悪魔の姉妹であるライテアルとネオティスアよ。」
「ネオティスア?でも彼女、紅魔館に居たような…」
「ええ、まあ…お金が無いって言うから働かせてるわ。本人には、話したら殺すと伝えてあるわ…そ、そんなことはどうでも良いのよ!姉よ、姉の方を見て!こいつ、昨日の襲撃犯によく似てるわ!きっと、紅魔館を襲撃したのはライテアル・スカーレットよ!」
彼女はそう言って、ネオティスアの隣に映っている金髪の女性を指差した。彼女曰わく、そのライテアル・スカーレットは彼女達の故郷であるブラッド・ワールドに居るらしい。このまま彼女を野放しにしておいては、いずれ紅魔館は崩落してしまう。そう言う訳で、彼女達はこれからブラッド・ワールドへ出発するらしい。
「結衣、私達も行くわよ。」
「えっ…?」
「霊夢から依頼されたチルノ・ブリザードセルの件だけれど、彼女もブラッド・ワールドの出身らしいの。」
「で、でも…まさか家には居ないんじゃないですか?」
そう言って、レミリアさん達とブラッド・ワールドへ行くことを遠回しに止めてはみたが、どうせ幻想郷には居ないのだから、そこへ行って手がかりを掴むのも悪くないと言われ、結局ブラッド・ワールドへ行くこととなった。
今日の晩御飯は紅魔館でご馳走になったのだが、私はあまり食事をする気にならなかった。
主であるレミリアさんはさとりさんといい感じになっているし、フランドールさんも食事が終わるとさっさと席を離れてしまうしで、何となく私の居場所が無い気がした。アリスさんですら、メイドの咲夜と話して来ると言って席を立ったきり戻ってこない。もう席を立ってから数十分たつのに。
「ねえお姉ちゃん、私と遊ぼ?」
そう言う声がしたので隣を見ると、フランドールさんが私の椅子の近くに立っていた。彼女は、友人もなかなか来ないし、一人で遊ぶのも飽きたと言って、私を地下にある自らの部屋に案内した。そこはかなりの広さがあり、様々な遊具があって、小さい公園のような場所となっていた。
「私、ずっとここに居たの。生まれてからずっと、パチェが来てからは、誰もここに近づけないように、パチェに皆をここから遠ざけてもらっていたの。」
彼女の話は、随分悲しげな物に聞こえた。それにしても、姉の友人にそこまでさせるとは。彼女は重度の引き籠もりと見て間違いないと思った。何故、外に出て遊ばなかったのかと聞くと、単に外がつまらなかったからと言うことと、外は人間ばかりで危険だから、無闇やたらに出れば人間に殺されてしまうと姉に言われたからと言うことらしい。実際、姉も外に出る時は父親と一緒であったと言うことらしい。
「私、魔理沙が来たときはびっくりした。人間ってこんなに優しいんだなって。お父様の嘘つき、お姉様の嘘つきって。けれどお姉様、明日には、その怖いニンゲンが居る所に行くって。だから、私にはここで待っていてって言ってた。」
レミリアさんは、彼女に待ってろと言ったらしい。確かに、聞いたところブラッド・ワールドは危険な場所で、とても彼女のような子供が行く場所ではない。
「わかってる。お姉様、本当は私のことが心配で仕方がないんだ。こいしのお兄さんが異変を起こした時も、心配してくれていたの。」
「それなら、フランはここで待っていたら良いんじゃ…」
「お願い、魔女のお姉さん!私をあのニンゲン達の所に連れて行って!私、お姉様達の力になりたい!」
突然、彼女の発言を聞いて驚いてしまったが、まあ言い出すとは思っていた。けれど、レミリアさんは彼女を連れて行きたがらないだろうから、彼女の願いをきくならば、レミリアさんを説得しなければならない。
そこで、戻ってきたアリスさんに事情を説明すると、パチュリーに頼めば何とかなるかも。とのことなので、この件は彼女に頼むとしよう。しかし、ブラッド・ワールドの人間はそれほどまでに危険なのだろうか。ここのメイドである十六夜咲夜さんもブラッド・ワールド出身らしいが、彼女に聞くのは少し自重しておけと私の勘が囁くので、止めておこう。
血郷結衣がちょうど紅魔館で夜を過ごして居る頃、博麗神社には二人の人影があった。彼女達は、二人とも黒と赤のオッドアイを持っているらしく、彼女達の赤い瞳は不気味に輝いている。
「あんた、お尋ね者じゃなかったの?こんな人目に付く所に居たら、捕まって何されるか解らないわよ?」
「大丈夫さ、相棒が一緒ならな。さて…相棒、どうする?あいつら紅魔館に行くってよ?」
「煩いわね、あなたには関係のないことでしょう?別に、私はあいつらを信用しているからね。」
「もしかしたら、死んじゃうかもしれないぜ?」
「この程度で死ぬなら、そこまでの人だったってだけよ。」
「ほう、相棒ちゃんはお友達に冷たいんだねえ。」
「針妙丸さんを棄てて逃げたあんたが、よくそんなこと言えるわね。」
二人のうちの一人は言わずとも知れた、闇に生きる妖怪。しかしもう一人の正体は、誰も知らない。最近幻想郷では、天邪鬼と思われる二人の影が見られると言う情報がある。一人はお尋ね者の天邪鬼、鬼人正邪と見て間違いないのだが、もう一人の天邪鬼の正体は誰も解らないのだ。
お尋ね者の彼女が異世界から援軍を呼んできたか、あるいは別の方法で仲間を連れてきたか…何故か、彼女にはどこか懐かしい面影があるような気がするのだ。いつも彼女が現れる性で、鬼人正邪を見失ってしまう。
この件について、残念ながら八雲紫からは適切なコメントを得ることができなかったらしい。天狗達は紫に何度もコメントを貰いに八雲亭へ行っているが、彼女は放っておけばそのうち大人しくなるだろうとだけ言って、この異変に関わることすら拒んでいるように見えるらしい。
いずれにせよ、この物語には関係のない話ではある。
次回から、1週間以上かかっても更新しない場合があるかもしれません。
と言うのは、少し先に試験を控えているので、それの勉強をしなければいけないので。
それでは、またいつか、幻想の世界でお会いしましょう。