スクライド二次   作:銀髪赤目のアンドロイドと女軍人が好き

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二話

 バチバチと何かが燃える音する。焦げ臭い匂いがカズマの鼻孔をくすぐり、覚醒を促した。

 

「……目を覚ましたか」

その声を聴いた瞬間、寝ぼけた意識が急速に切り替わる。胸の奥の魂にまで刻まれた、あの男の声。

 

「あんたは。……劉鳳」

視線を向けた先には、枯れ木を折り、火をくべている劉鳳の姿があった。

 

「入り江に倒れてるのを発見して、介抱した。何があった?」

必要最低限の治療がなされてるみたいで、カズマの身体には包帯が巻かれていた。

 

「……礼は言わねぇぞ」

「ハナから期待していない。それより、質問に答えろ」

「命令すんなっ!!」

 

 手当を受けた手前、ばつの悪そうな顔をしながらカズマは口を開く。

 

「……ここに来たってことは、あんたも聴いたんだろ?」

「あぁ、声ともとれる漠然としたメッセージようなものを、だな」

 

「それで向かってみれば、柱みてぇなアルターが居やがった」

「何だかわかんねぇが、そいつがヤベェということが解ったんで……」

 

「返り討ちに遭ったわけか」

 

「負けてねぇ!!」

 

反射的にカズマが吠える。

 

「だが、お前ほどの男がそこまで追い詰められたんだ。何かあったと思う方が自然だ」

劉鳳はただ、事実を確認するように淡々と口を開く。

 

「……ケッ!」

カズマも、劉鳳が嘲りの意図で言ったわけではないのはわかっていた。

だが、それとは別に納得できない気持ちもあった。

 

「もう一度聞く。カズマ、何があった?」

劉鳳の鋭く赤い瞳がカズマを見据える。有無を言わせない、確かな圧力がそこにあった。

 

「……認めるのは、しゃくだが、引き分けだ」

カズマが絞り出すように言った。

「コイツ(シェルブリット)を叩き込んで、仕留めたと思ったら、形を変えて復活しやがった」

拳を握り締めながらカズマは呟いた。

 

「巨大な継ぎ接ぎだらけの人型なりやがった。そいつと真正面からの拳の打ち合いをして、この様だ」

拳を手のひらに重ねながら、悔しそうに表情を歪めた。

 

(話を聞いた限りでは、並みのアルターではない。本土の新手か?)

(それにしては、あのメッセージは……。ロストグラウンドいるアルター能力者全体に向けての発信……)

 

カズマの話を聞き終えた劉鳳は、静かに思案する。

 

「カズマ、本体は確認できたか?」

 

「あん? いや、見てねぇ」

 

「……そうか。もしかしたら」

 

「おい、勝手に一人で納得すんな!」

カズマが急かす。

 

「お前が戦ったアルター。もしかしたら、向こう側からやってきた存在かもしれん」

 

「向こう側の!?」

カズマの脳裏に過るのは、白と黒の腕持ち、燃えるような頭髪をしたアルター。無常矜持に吸収され、尖兵と化したアルター結晶体。劉鳳との因縁浅からぬ存在。

 

「そうだ、俺の倒した個体とは別の存在かもしれん」

「かつてジグマール隊長が語っていた。あれは強いアルター能力者に惹かれるらしい」

「あれと同様、俺やお前を求めて、向こう側から迷い出たのかもしれん」

 

戦いの最中で、幾度か見せたこちらを試すような行動。こちらの様子を観察するようなザワついた感覚。あのアルターがみせた不可解な行動に、全て合点がいく。

 

「見下しやがって……!!」

カズマは、沸々と怒りの感情が昂ぶるのを感じた。

 

劉鳳が不意にこちらに何かを投げる。受け止めると、栄養食のバーとペットボトルに詰められた水だった。

 

「お前はそれを食べて、休んでいろ」

背中を向けながら、車へと歩を進める。

 

「……あんたは?」

 

「俺は様子を見てくる」

 

「横取りするつもりかっ!?」

 

「安心しろ、あくまで偵察だ」

 

「それが嫌なら、早く身体を万全に整えろ」

劉鳳は、そう言葉を残し、車を発進させた。

 

「……無茶苦茶、言いやがって。上等だ…」

 

包装紙を乱暴に剥がし、バーを掻っ込むように食べる。ペットボトルの蓋を開け、口に残ったものを流し込むように水を飲んだ。

 

 

継ぎ接ぎの巨人が海面に膝を突いたまま、微動だにせずに沈黙を保っていた。カズマに受けたダメージを修復するために休眠状態に入っていた。

 

だが、その瞳に光が宿る。感じているのだ、猛きアルター使いが近づいていることに。

 

膝を突いている海面が激しく揺らせながら、巨人は立ち上がる。

 

一方、劉鳳は入り江付近に近づいていくにつれ、海の向こうの存在感が強くなっている感覚を覚えた。

カズマを回収したときには、感じなかった圧力。

 

恐らくはカズマが思ったよりも、深手を与えていたのでだろう。

カズマのアルター≪シェルブリット≫は相手を確実に仕留める。それは劉鳳が一番よく知っていた。

幾度となく、拳を交え、その身に味わったのだから。

 

偵察と、カズマにはそう言ったが、それで済まないだろう。確信があった。恐らくは戦いになる。

何より、向こうが誘っているのだ。力を示せ、と。

 

劉鳳は車を降り、右手の指先を伸ばし、手刀の形をつくる。横に一閃するように振るう。

その瞬間、周囲の地面が抉れ、虹色の粒子が満たされた。劉鳳の身体にまとわりつくように収束し、紫紺の鎧と化す。両肩にプラスとマイナスの意匠を持つ刃を背負い、頭にはヘッドギアが形成される。

劉鳳のアルター≪絶影≫を纏った姿だ。

 

戦闘は一方的だった。その名の通りの影すら映さなない超高速移動による攪乱と、研ぎ澄まされた斬撃は巨人を追いつめていた。

巨人の拳は劉鳳を捉えるまで至らず、すれ違いざまに外皮を切り裂いていく。

何度目かの交錯。紋様が蠢く右巨腕に一際、鋭い一撃が炸裂した。

 

(……腕を両断するつもりだったが。やはり、あの右腕の頑強さは際立っている)

 

右巨腕の紋様が明滅し始める。劉鳳よってつけられた傷が一斉に結晶化し砕け、一瞬にして修復された。

 

(……何だ、これは。アルターの再構築による修復ではない!?)

 

多重に残像を残しながら、空を翔ける劉鳳。

 

巨人の目が劉鳳の動きを追っていた。

 

再び、右巨腕の拳を劉鳳に放つ。

真正面から襲い掛る巨人の拳を躱そうとした瞬間、劉鳳の真横から出現した。

 

「……ッ!?」

 

残像を発生させ、間合い図ろうとするが―――。

真後ろから左手が現れ、劉鳳を捉えた。

 

「―――舐めるなっ!!」

巨人が力を込める前に左手の五指を両断し、脱出した。

指を残らず切り落とされた左手を眺める巨人。劉鳳は距離を大きく取る。

 

(……追撃はない。どうやら、あのワープ攻撃の射程はそんなに長くはないらしい)

 

「―――ならばっ!!」

 

劉鳳がジグザグの機動を取り始める。先読みしやすい直線的な移動はやめ、複雑な動きで攪乱する。

 

巨人は左手を修復させながらも、劉鳳の動きから視線を外さない。

 

劉鳳の姿が蜃気楼のようにブレる。

 

現れたのは遥か頭上。太陽を背に受けながら劉鳳は、両肩の刃をパージし、手甲に刃を装着する。

左右の刃を重ね合わせ、そのまま振り下ろした。

 

「切り裂かれて塵となれッ―――!!」

大上段からの斬撃が巨人に炸裂する。

 

頭から股下までに閃光が走る。斬撃の余波が海を割った。

 

左右に分断された巨人。押し出された海水が崩れて、爆音と共に戻ろうとする。

 

その瞬間。分断された巨人が発光する。その光は世界を白一色に塗りつぶすほど、暴力的なものだった。

 

 

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