スクライド二次   作:銀髪赤目のアンドロイドと女軍人が好き

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三話

 その光を目撃した瞬間、カズマは身を乗り出して動いていた。

転がっている岩を分解し、傷口をアルター化させて強引に治したカズマは、光がした方向へ走り出す。

首筋にザワザワする感覚を抱きながら、カズマは戦場へと足を進めた。

 

 それは正に太陽だった。暴力的な光と熱量が劉鳳を襲う。

皮膚を焼き、身に纏っているアルターすらも融解させる。巨人が発光した瞬間、後方へと飛んだがそれでも尋常ではないダメージを被った。

 

「―――クゥッ!?」

苦悶の表情を浮かべながら、自身の状態を確認する。左右の刃は先端が溶け無くなっており、剥き出しになった顔は奇跡的に火傷で済んでいた。

 

 巨人の恒星化が瞬間的なものであったせいか、それともアルターによる肉体の強化・変質の恩恵かは判らないが―――。

光が収まり、周囲は海水が瞬時に蒸発したことによる蒸気が満ちていた。

 

 劉鳳の視界の先に、影が見える。そのシルエットから人型であることは同じだがサイズがスケールダウンしている。

 

 蒸気が晴れ、姿を現す。それは等身大の人型。より洗練され、よりコンパクトになったが、その身が発する圧力は変わらなかった。

 

 その白亜の身体に浮き上がる紋様を見れば、それがモノリス、巨人を経て、進化した形態だということがわかった。

 

『……見事だ。流石は門を開いた者達。その力は新世界創造をするに相応しい』

男女ともとれる声が、劉鳳の頭に直接、響く。

 

 それは、今まではハッキリとはしなかったが、白亜の人型が明確に意思を持つ存在という証左だった。

 

『"こちら側"へ踏み込んでも、人間であることを辞めない精神力。実に見事だ』

 

「―――貴様は、一体!?」

 

『私はお前たちの内なる願いが生み出した存在。お前たちが領域の世界と呼んだ力が、人の救われたいという願いによってカタチを為した』

 

『お前たちの概念でいえば、近い存在は神だったか』

 

『かと言って、本物の神ではない。わかりやすくいえば、私は人類全体が産み出したアルターなのだ』

白亜の人型、いや偽神は語る。

『苦痛に満ちたこの世界をアルター化させ、理想郷を創り出す』

 

『だが、所詮は私もアルターの域を出ない。だからこそ、強大なアルター使いが必要なのだ』

『カズマ、劉鳳、お前たちのような強靭な精神を持つ者を』

 

「人類の救済だぁ? 新世界創造だぁ? そんなモン、カンケェ―ねぇっ!!」

 

 不意に声が響いた。

 

カズマがシェルブリットを纏った姿で劉鳳の前に立つ。

 

「テメェとオレとの喧嘩に御大層なお題目なんて必要ねぇんだよ!!」

 

カズマが劉鳳に視線を寄せ、すぐに向き直る。

 

「選手交代ってやつだ。下がってな」

 

「後からやって来て、好き勝手言うな」

劉鳳は態勢を整えながら口を開く。

 

「元はオレの買った喧嘩だ!!」

 

「俺とて、このまま引き下がるつもりは毛頭無い」

 

「なら、好きにしなっ!!」

 

「あぁ、当然そうするっ!!」

 

『準備は整ったか?』

 

 先に仕掛けたのはカズマだった。獅子が獲物の首を狙いに定め、飛び掛かるように拳を振り上げた。

 

 偽神は防御も避ける素振りも見せず、顔面にカズマの拳が炸裂した。

偽神の首がへし折れるように曲がる。だが、すぐに巻き戻るかのように元に戻った。

 

 続けざまに拳を振り上げるが、それよりも早く偽神の拳がカズマの胴体へ突き刺さる。

 

「―――ギィッ!?」

後方に吹き飛ばされるカズマと入れ替わる形で、劉鳳が割り込んできた。

 

 両手に装着されたプラスとマイナスの刃が、偽神へ肉薄する。

 

 偽神の左腕が瞬時に結晶化し、砕け散る。

現れたのは鋭利な刀身。

その剣腕で、劉鳳の刃と切り結ぶ。

 

 金属がぶつかり合う甲高い音と火花を散らしながら、お互いの刃を交える。スピードは互角。手数は二刀流だけあって劉鳳が有利だった。

 

 だが、それでも偽神に刃を届けることができずにいた。

 

 偽神の横薙ぎを受け止め、弾き返す。

偽神に致命的な隙が生まれる。高速の突きが二段、腹と胴体に襲いかかるが―――。

 

 刃が沈み込んだまま、動かない。

 

 そのまま、沈み込んだ刃先から劉鳳に向かい結晶が侵食していく。

劉鳳の判断は早かった。両手に装着した刃を切り離し、後退する。

劉鳳の手から離れた瞬間、双つの刃は結晶に包まれ、砕け散った。

 

偽神は劉鳳に追撃をかけるために、剣腕を突き出したが、カズマの拳がそれを阻む。

強引に割り込んだ拳が、偽神の剣腕を弾き返した。

 

「もうグロッキーか、劉鳳?」

カズマが拳を構えながら、語りかける。

 

「ふざけるな!お前は自分の心配をしてろ」

二回目の再構成を始める劉鳳。

 

 カズマと劉鳳が発破の掛け合いをしている中。

 

 偽神は、己の剣腕に視線を向けていた。

先ほどのカズマの一撃で、刃が欠けていた。

 

 剣だった左腕が、再び結晶化して元の腕に戻る。カズマと劉鳳は、油断せずに偽神の動向を見守る。

 

『無粋だが、物量で攻めさせて貰う』

偽神の背中に光輪のようなものが浮かび上がる。背中の光輪が激しく回転し、光を帯び始めた。

 

 そこから無数の光が走る。曲線を描きながら、二人に殺到した。

 

 カズマは両腕を交差させ、防御の姿勢を取りながら突撃する。

一方、劉鳳はジグザグの軌道を描きながら、光を躱し、偽神へと接近する。

 

 カズマの拳と、劉鳳の刃が左右同時に偽神へと襲いかかる。

 

 だが、拳は受け止められ、刃は指二本で止められた。

 

 力を込める二人だが、微動だにしなかった。

そこから結晶化による浸食が二人に襲いかかる。

 

 アルターは精神が具現化した力だ。それが侵食されるということは、エゴの押しつけ合いで負けたこと二他ならない。

ふざけるな。そのとき、二人の感情は一致していた。

他者に救いを求める奴らに負けるなんて、断じて、在り得ない、と。

 

「うぉぉぉぉっ―――!!」

「はぁぁぁぁっ―――!!」

 

 二人の咆哮が重なり合いながら、金と銀の光に包まれる。二人の反骨心に反応するように輝きを増す。

 

 パキン、と音を立てながら侵食していた結晶が止まり、弾け飛んだ。

ググ、と拳と刃が進み始める。

 

 己を倒せるとしたら、目の前にいる男のみ。

断じて、他者の願いで動く空っぽの神様では無い。

 

 その溢れんばかりの力の奔流が、光の柱となって天を穿つ。

空間が歪み、"向こう側"の領域の世界の入口が開かれた。

 

 二人は瞬時に、偽神を"向こう側"へと押し入れるように突っ込んだ。

領域の門から流入する力が再び、再隆起を起こす前に門を閉じるために。

 

 三人が通り抜けた後、萎むように開いていた孔は閉じられた。先ほどの激闘が嘘のように静寂に包まれたまま……。

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