カサブタだらけの情熱を忘れたくないので初投稿です。
前話を投稿して色々と心配ではありましたが、ひとまず安心できそうで良かったです。
悲しみと怒りの同居した決意は、儂にも憶えはある。
かつて、オタクの持つ“好き”を“気持ち悪い”と蔑まれ、好きであることを悪とされてた時代を生きた事がある儂にとって、此奴の心情は察して余りあるものとハッキリ分かった。
「アイツは、俺がどれだけLBXを好きか、ずっと見てたハズなのに……! 俺が、父さんたちと一緒に、LBXを一丸となって作ってきたことを、知ってるくせに! なんでそうも簡単に…………あんな事が」
堪えきれなかった涙が溢れ、小僧の衣服に落ちる。まだ年端もいかない子どもに、ここまでの決断をさせてしまうとは……。
無論、此奴の発言もあくまで本人の主観によるもので、正確に話を理解するには小僧の母親からも話を聞かねばならん。じゃが、ここまで話を聞いておいてさようなら、と判断を下せる訳にはいかなかった。
暫く泣いて、泣いて、鼻をかんだりして幾らか落ち着いた頃を見計らって、訊いてみる。
「家出と言っておったが、アテはあるのか?」
「……無い」
まぁ、じゃろうな。8時間もの間ずっとアキハバラにおったのじゃ、そこまで都合よく用意なぞしておらんわな。
で、あれば。儂も腹をくくろう。
「オヌシ、言っておったな。LBXを預かってほしいと」
「……うん」
「その願い、叶えてやらんでもないデヨ」
「ッ、本当か?」
「本当デヨ。じゃが、1つ訊きたい」
「? なんだ」
「
そう訊ねてみた途端、小僧は充血した目を開き驚いた顔をした。その質問の意図に気付いたのか、驚きが崩れぬまま下へと視線が移っていく。
「オヌシの願いは分かった。じゃが、本当に預けるだけで良いのか?
LBXが好きなのじゃろう? 儂に全てを預けて、はいおしまい。などという終わり方で本当に良いのか?
LBXを預け、ほとぼりが冷めるまでただひたすら待つだけの人生で、本当に良いのか?」
「…………そんなの」
拳を作り、力がグッと込められた。
「そんなの、嫌に決まってるだろ!」
ほれ出た、本当にしたいことが。
「俺はまだ、LBXを作りたい! ただ無為に過ごして、嫌な奴の機嫌を取って暮らす平穏な生活なんて真っ平御免だ! 新しいアイディアがどんどん湧き上がるのに、それを一時的にでも形にできない人生なんて死んでも嫌だ! 何より、大好きな父さんたちの思い出を、こんな形で眠らせるのなんか、本当はものすごく嫌だ!」
「それが、オヌシの望みなのじゃな」
無言の首肯。それを見たかった。
「ならば、荷物を持って付いてくるデヨ」
悪いな、小僧。
今から儂は、オヌシを試させてもらう。
色々な思いを吐露したあと、俺はオタクロスの後に続いていた。
「そういえばオヌシ、名はなんと?」
「き──
「ふむ。ではアカツキ、これからオヌシにはある試練を受けてもらうデヨ」
「試練?」
試練……一体何をさせるつもりなんだ? そう訝しみながらエレベーターで下の階層へと降りて行き、到着した先で待っていた暗闇の空間に足を踏み入れる。オタクロスが持っている杖のボタンを押した瞬間、目の前の景色が一変した。
部屋がライトアップされ、現れたのは小さなスタジアムのような物。しかしその大きさは目測で直径15mはあると見た。これはまさか……。
「かつてLBXが発売されていた当時、儂らもその危険性は周知しておった。じゃが、それでもなおLBX同士が織り成す戦いの一時は、何物にも代えがたい時間じゃった」
オタクロスがそのスタジアムに手を触れ、縁を沿ってゆっくりと外周を周り始める。
「危険であるというのなら、危険を可能な限り抑え込めば良い。そう考えて作ったのがこの、外径約50m、内径約48m、厚さ1mのLBX専用バトルフィールドデヨ」
でっっっか。こんなのLBX何体入るんだこれ? というかLBX以外のホビー大会で使ったら超興奮するやつじゃん。近付いて覗いて見たら、まあまあ深さもあるわこれ。なるべくLBXからの被害を抑えるためとはいえ、ここまでの物にするには相当時間も資金も労力も掛かったはず。
これを作るまでに至ったであろう過去を想起しながら、俺はゆっくりとそのバトルフィールドの縁に手を添えた。伝わる冷たさが、やけに鮮明に感じられる。
「試練の内容じゃが」
いつの間にか俺と正反対の場所に立っていたオタクロスが、杖の先をこちらに向けた。
「オヌシと儂で、LBXバトルをする事じゃ!」
「バトルを?」
それが試練、なのか? でもなぜバトルを?
「なぜ戦うのか、と頭の中で問うておろう? 今からそれを教えてしんぜよう」
流石にこの程度の考えは見透かされるか。
「オヌシは先程、儂に対して本当の思いを吐き出した。LBXを愛し、LBXへの情熱を見せ、LBXと共に生きようとする覚悟を見せてもらった。で、ここから少々厳しい事を言ってしまうが────その覚悟が真であるか、見定めるためデヨ」
「見定める……」
「そう。幾らオヌシが思いを吐露し、その覚悟を宣言したとしても、それが口だけの出まかせと判断されれば話は変わってくるデヨ。その場合、オヌシの望みを全面的に拒否しなければならん」
正直、聞いていて怒りも湧いてくる。同時に、その判断が正しい事も理解した。
俺だって昔、同級生が“夏休みの自由研究で1番を取ったら何でも言うことを聞く”って言ってたから最優秀賞取って約束を果たしてもらおうとしたのに、あろうことか自分が宣言したことを無かったことにして、俺が虐めてくるとか抜かしてた時は滅茶苦茶腹立ったし。
ま、その同級生とのいざこざは色々あって溜飲は下がったから別に良いんだが。
「幾らオヌシが言葉を尽くそうと、幾らオヌシが自身の過去を語り同情を狙おうと、あくまでそれらはオヌシの主観に基づくもので、完全な真実とはいかん。それを全面的に信じるには、まだ証明が足りておらんのデヨ!」
「その証明のために、バトルをするんだな」
「そうデヨ。オヌシの覚悟や願いが本物であるという証明を、このLBXバトルで示すこと。それがオヌシに与える試練である! 無事認められれば、オヌシの願いを聞き届けよう!」
それを聞き終えて、俺は自然と目を閉じた。ここでオタクロスと対決し、認められれば俺の願いは叶う。それをしない理由はどこにも無い。だが躊躇してしまう理由はあった。
俺は、
そんな体たらくで、本当に証明出来るのか。
オタクロスは凄腕のLBXプレイヤーだ。生半可な覚悟で挑んでも絶対勝てない。だというのに、俺自身に戦いの経験値は全くない。
本当に、勝てるのだろうか────
「ふんッ!!」
両手で思い切り自分の頬を叩き、不安な考えを黙らせる。
違うだろ。今この時しかないんだ、俺の覚悟を証明する時は。だったら俺は、その覚悟を決めるしかないだろ!
戦いの経験が無い? それで相手が情けを掛けてくれるとでも? 冗談じゃない。
たとえ戦ったことがなくても、たとえ勝てるかどうか不安に感じても、このチャンスを捨てたら何もかもが無駄になる。無駄になるぐらいなら、玉砕覚悟で突っ込むしか無いだろ!
「わかった。やろう!」
「よろしい。では、LBXを用意するデヨ!」
俺はすぐにスーツケースを開けて、1番下に収納しているジュラルミンケースを取り出し、その中に収められている相棒を取り出す。
アスカ工業が倒産するまでの間、せっせと調整したこの機体と武器で、俺はオタクロスに証明するんだ!
相棒の隣に収納していた、大型のプラズマジェットエンジンを背部に取り付け、武装を両方の手に装備させたあと、CCMとの同期を開始。稼働準備はこれで出来た。
「準備は出来たかの?」
「ああ、出来た」
「よろしい。では行け! ZXII1号機、2号機、3号機!」
ZXII? ZXIIIの前身か? まさかこの時点で合体変形が可能なLBXを作ってたとは、スゲェやオタクロスは。
「3機同時でやるのか?」
「心配するなデヨ。まずはオヌシの実力を測るため、2号機単体で相手するデヨ」
となると、この1体1の時にどれぐらい経験値を稼げるかが鍵になりそうだ。
「さぁ、オヌシのLBXを出すデヨ!」
「言われなくても! ────バッファ、テイクオフ!」
その掛け声と共に、俺はバッファを戦場に降り立たせる。
さぁ、ぶっつけ本番の時間だ! 派手に行くぞ!
LBX【B.A.F.F.A.(以降、バッファと呼称)】概要
・【ASK-00】
LBXバッファに使用されているナイトフレーム対応コアスケルトン。バッファを飛行させる為に造られたコアスケルトンであり、完成段階では一般販売されている物より性能が高い。
名前の由来は、このLBX開発に関わったアスカ工業への恩義から。
・【B.A.F.F.A. C-K-F】ナイトフレーム
LBXバッファのヘッドパーツ。戦闘機のガラス(キャノピー)のように周囲を四角錐状の透明な強化プラスチックで覆われており、コアスケルトンのヘッドが丸見えとなっている。
本LBXの特徴として、新幹線のヘッドにも採用されたカワセミのクチバシの形状を採用し、空気抵抗の減少と揚力の増加を図っている。
・【B.A.F.F.A. F-T-S】ナイトフレーム
LBXバッファのボディパーツ。ボディ前面に赤い目をした青い牛の頭部という特徴を持つ。
“牛は空を飛べる”という知識を有していた本作主人公が、LBXのデザイン差別化を図るために採用。
背面には飛行させるための大型プラズマジェットエンジンを搭載。改良を重ね、推力が計画段階より12%上昇している。
・【B.A.F.F.A. W-A-S(L/R)】ナイトフレーム
LBXバッファのアームパーツ。肩部装甲の真横に飛行翼が接続されており、平時は折りたたまれている。飛行の際にはこれが起き上がり自在な航行を可能にする。
・【B.A.F.F.A. F-A-L】ナイトフレーム
LBXバッファのレッグパーツ。飛行用の揚力確保のため、前面の装甲は空気抵抗を可能な限り発生させない形状をしており、後面には飛行補助用のブースターが両脚合わせて4つ取り付けられている。
・【D37】
LBXバッファの射撃武装。片手で撃てるAMRというコンセプトを元に設計されており、重量はAMRにしては軽く、それでいて一撃の威力は高い。反面連射性は低く、運用するには命中精度に特化させたCPUでないと性能を発揮できない。
バッファはこれを片手で使用するため、銃のストック底部に強化ダンボール製のショックアブソーバーを組み込んで反動を極限まで抑え込んでいる。
モデルはゲパードGM6 Lynx
・【ビームカッター】
LBXバッファの近接武装。普段は腕部装甲に内蔵される形で仕舞われている。使用時は腕部装甲がスライドし、小型のビーム発生器が出現。そこから長さ3cm程のビームの刃を生み出す。
弾切れや故障等、射撃武装が何かしらの形で使えなくなった場合に使用することが多い。