難産でしたので初投稿です。
極わずかに残された、勝利への可能性。暁はそれに踏み切った。
メガサンダークロスを受ける中で、緊急稼働状態から通常航行システムへと戻し、終わった途端にプラズマジェットエンジンを最後に吹かす。その場から動くことが出来なくなったパーフェクトZXIIに突撃し、真っ直ぐ突き進みながら腕部内蔵のビームカッターを装甲の隙間に刺した。
「落ぉちろォオオオオオオ!!」
目減りするZXIIのライフポイント。今にも自壊しそうなプラズマジェットエンジン。轟々と響く噴射音と、アカツキの殺意の乗った叫び。
緊迫した一瞬の最中、機体が停止される。
「なっ」
同時に、バッファから力が抜け落ちていく。プラズマジェットエンジンも停止し、ビームカッターは刃を生成できなくなった。
即座にオタクロスが入力し、パーフェクトZXIIがバッファを引き剥がして投げ飛ばす。呆気なく地面を転がったバッファから、最後に一瞬の発光と電子音が響き渡った。
バッファがブレイクオーバーに至ったのである。
アカツキの敗北であった。
「……バッテリー切れ」
自身の敗因を、アカツキはただ茫然と見続けていた。
…………終わったデヨ? ふぃ〜〜ッ。一時はどうなるかと思ったが、何とか勝てたデヨ。
しっかし、彼奴には驚かされてばかりだった気がするの。飛行するLBXは勿論のこと、バトルフィールドを利用した跳弾、飛行技術、判断力、そして執念。持ちうる全てを絞り切った戦いは、久方ぶりに堪能できたデヨ。
じゃが、最後のアラート。記憶に違いが無ければ、あれはバッテリー切れを起こした時の音じゃったな。おそらく、あの機体の背中にある推進器は、エネルギーを多く使うのじゃろう。加えて最後の突進の時、壊れかけの状態で使っておったせいで、消費量が更に増えていたのじゃろうな。
普通バッテリー切れで決着がつくことなど無いからのぉ。珍しい物も見させてもらったわい。
さて、彼奴の様子は…………って。
「オヌシ、何そのまま帰ろうとしとるんじゃ!?」
「えっ?」
いやいやいやビックリしたわ! 急に背を向けてエレベーターに向かおうとしておったぞ此奴!
「だって、俺、負けて……」
「この勝負はあくまで、オヌシ自身の覚悟を見定めるものデヨ! バトルの勝敗そのものは全く関係無いデヨ!」
「へっ?」
キョトンとした顔になったアカツキは、少しして膝から崩れ落ちて、変な笑い声を出した。
「しょ……勝敗関係無いって……先に行ってくれよ」
「いや儂、一言もオヌシが勝てばとか言うておらんかったではないか」
「そう、だっけ」
「そうデヨ」
今度は背中から倒れて天井を見上げたかと思えば、両目を押さえたまま動きを止める。
「俺さ。さっきのバトル、すっごい楽しかったんだ」
「うむ」
「絶対に勝つって思いながら戦ってて、いつの間にか、変に誤解してたみたい」
「ふむ」
「勝たなきゃいけないって。
勝たなきゃ意味が無いって」
「ままある事じゃの」
「良かった。
最後の方は分かりやすく、泣いておった。悲しみよりも、安堵の感情が強く出ている。
ティッシュ箱を持って儂はアカツキの隣に腰掛け、それを此奴の目に見える範囲に置いた。暫く泣いていたアカツキじゃったが、息苦しさを感じた其奴が鼻をかんだりして落ち着きを取り戻す。
それから短い無言の間が過ぎた後、アカツキが儂に向かって訊いた。
「オタクロス」
「何デヨ?」
「俺は、どうだった。アンタに、俺の思いってヤツは、伝わったのか?」
「十二分に伝わってるデヨ」
上半身だけ起こしたアカツキが、儂を見る。どこか覚悟を決めたような目をしておるが……全く、そう堅くなるなデヨ。せっかくの吉報であるというのに。
「オヌシの覚悟、情熱、その大きさ、全て見せてもらったデヨ。アカツキ、儂はオヌシの願いを叶えてやるデヨ」
「────ありがとう、オタクロス」
満面の笑みが儂に向けられる。コロコロと急がしく変わる表情じゃのう。見ていて飽きはせんが。
そんな風に笑っていたアカツキの腹から、ぐぅ〜と鳴った。時間を見れば、もう6時近くになっておる。そりゃ腹の虫も鳴るデヨな。
「は、はは……安心したら、腹減ってきたや」
「では、飯にでもするかの。付いてくるデヨ」
オタクロスとの戦いが終わり、色々と安心してきたら腹の虫が盛大に主張したので、そのままアキバタワー内にある洋食店に入り、ハンバーグ定食をご馳走になっていた。
腹も膨れ、落ち着きがてらジュースを飲んでいると、チョコケーキを食べていたオタクロスが話題を切り出してきた。
「アカツキよ。オヌシの願いを叶える前に、1つやらねばならん事がある」
「やらないといけない事?」
「左様。アカツキ、改めて今のオヌシの状況を説明すると、家出した非行少年じゃ」
ぐうの音も出ないです、はい。
事実。今の俺は家出非行少年で、色々と冷静になって考えてみると、警察に通報されてもおかしくない立場だ。しかもその立場にあるのはオタクロスも同じ。
って、やべぇ原作キャラを犯罪者にしてるじゃんこれ! …………いやオタクロスはちょっと微妙な所か? 原作でもギリギリ社会的に犯罪やってないだけで。
「で、その家出した非行少年たるオヌシを預かるには、結局のところ保護者との相談が必要になってくる」
「まぁ、それはそうだけど……ん?」
「不服そうじゃな。ま、気持ちが分からん訳でもないデヨ」
「いやちょっと待て」
「何デヨ?」
「預かるって……俺を?」
「そうデヨ」
「俺、LBXだけ預けてくれればそれで」
「オヌシが言っておったじゃろう。LBXを作りたい、一時でもアイディアを形にできない人生は嫌じゃと」
「言った、けど。でも」
「なーんじゃ、嫌なのか?」
「そんな訳ない!」
だん、と机を叩いて椅子から勢いよく立ち上がり、ここが店であることを思い出して、申し訳なさを感じながら座った。
「でも、俺、そこまでされるような事は」
「してないと?」
首肯をする。ただ目の前に居るオタクロスは、ため息を吐いて呆れたように言葉をつむぎ始めた。
「良いかアカツキ、オヌシは儂に散々見せつけたではないか。オヌシが手掛けたLBXの可能性、オヌシ自身の高い戦闘能力に操作技術、そして情熱。これらを無視して、オヌシの持つ才能や今まで培った技術が蔑ろにされるのは考えられなくなってしもうた」
……結構、買ってくれるんだな。
「それ以上、自分を安く見るでない。堂々と胸を張るデヨ」
「…………分かった」
「さて、話を本題に戻そうかの」
俺についての話はそう切り上げて、俺とオタクロスは次にやる事を簡潔に、素早く決める。
俺は、1度家に帰る事になった。