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…………んー、思い付かない。思い付けない。いやこういうのどうかなって考えたりするけど、イマイチぴんと来ない。前に思いついてた四脚型LBXの構想も確認したけど、確かにビジュアル的に強めの印象を与えるとはいえ、どうにもしっくり来ないんだよな。
それに、四脚型のコアスケルトンがそもそも無いから無理。作るにしても配線なり動作用のプログラムなりを組み込む事を加味して準備期間の4ヶ月でできる可能性がほぼ皆無。ただでさえバッファのコアスケルトン作るのに2年近く掛かったし、1人で四脚タイプ作るとしたら何年掛かるやら。
とにかく、既存のタイプでどうにかする必要があるんだけども……ぜーんぜん思い付かない。というか、コレジャナイ感が頭から離れないのよなー。
手詰まり感。バッファの時は“飛行するLBX”をコンセプトにしてた分、機体にどういった要素を組み込むのかってのが分かりやすかった。でも今回のはコンテスト用LBXという大雑把な条件だけしかない。美プラ風にするのか、カッコ良さ全開にするのか、ネタ機体みたいな形にするのか、シチュエーションを主軸にするのか。それさえ全然決まってないし。
大きく溜め息をついて、椅子に深く背中を預ける。
どーしたもんかなー……。
そういえばオタクロスは出してたな、サクラ零号機。行き詰まったら先達に聞いてみるとしますか。前と同じように。
「なに? 儂がLコンに参加した時のLBXを見せて欲しいじゃと? 良いじゃろう、オヌシにもサクラタンを紹介しておくデヨ!」
あっさり話進んだな。ま、オタクロスも自分の好きな物を人に全て語り尽くしたい側の人間だし、こういうのに興味持ったら教えてくれるわなそりゃ。
「見るが良い! これぞ儂が作り上げた伝説のLBX、サクラ零号機デヨ!!」
「おぉー」
「見るデヨこの細部にまで拘った究極とも称せしサクラタンの姿を! パーツのバリエーションの少なさを解消するためにアーマーパーツは全てフルスクラッチ、徹底的にディテールに拘りつつ可動域に不自由さを持たせない緻密な設計、そしてアキハバラの代名詞ともいうべきメイドのモデルにした儂のセンス! どうじゃどうじゃ!? ええじゃろー! ええじゃろー!」
「ほーこれは確かに」
「お触り厳禁デヨ」
「はいはい」
しっかし、生で見るとこれは中々。言ってたようにディテールも精巧だし、かなり見応えがある。んでサラッと動かしてアピールも忘れてない。ふーむ人気が出る要素ではあるんだろうが。
「オタクロス、1つ聞いていいか?」
「何デヨ?」
「このサクラ零号機が出てた、前のLコンの動画を見たんだが、かなり人だかりがあったんだわ。見物人は何に惹かれてこのサクラ零号機に集まったのか、聞きたくてさ」
「なんじゃそれ。そんなもん決まっとろう、サクラタンのメイド姿に皆惚れ惚れしておったからデヨ」
「それはその通りなんだけどさ、本当にそれだけなのかなって」
「────ほう」
ん? 何か反応が違ってたような……予想を聞いて感心したような声色だったような……。でもすぐにオタクロスはいつもの雰囲気に戻る。
「それ以外にあーるわけ無かろう! ほれほれ、儂も忙しいんじゃ」
「えー」
「儂は忙しいからの、これ以上は知っとる者に聞けば良かろう」
「知ってる奴?」
「それは自分で探すデヨ。ほーれ行った行った」
「えぇー」
オタクロスに急かされて俺はエレベーターへと向かうことになった。教えてはくれないのかよ。
はぁ、仕方ない。知ってる奴を探すしかないか。つっても知ってる奴ねぇ……知り合いから探すとなると、いや知り合いって言ってもオタクロス以外だとオタレンジャーぐらい────あぁ、そうか。俺オタクロスに頼りきってばっかだわ。他にも頼れる人が居るのに、オタクロスにだけ頼ろうとしてたわ。
全く、この先思いやられる。昔は他にも頼れる人に頼ってばっかりだったろ、多くの人を頼って良いんだよ俺は。そうと決まれば早速メッセージを送って────
メッセージを送って少しして、相談相手にオタブルーさんがやって来てくれた。
そこで俺の疑問に対する答えは案外早く見つかった。過去のLコンを知ってるオタブルーさんは、ファミレスで作ったミックスドリンクを飲みながら教えてくれた。
「Lコンで師匠のLBXが人気であった理由。それはアキハバラを代表するメイドというモデルであった事に加え、
「動かせる機体? LBXは動かせるでしょうに」
「そう、普通の認識ならそれで間違いない。だが、ことLコンに限って言えば、その常識に当てはまらないのだよ」
ストローを使ってドリンクを飲み、一息。
「そもそもLコンは専らデザインに重きを置いているイベントだ。自作したアーマーパーツを装備させたり、改造したパーツを装備させたりして数多のデザインを楽しむのが目的となっている」
「ふむ」
「ところが、実際に自作パーツを装備させた状態で動かそうとした者が居た。そこで事件は起きた」
「事件?」
「アーマーパーツが
「溶けた?」
「そう。文字通り、溶けてしまったんだ」
溶けたって、なんぞ?
「自作パーツを装備させ、動かそうとしたその当人曰く。起動させた少しあとにLBXが誤作動を起こし、遂には発火。運良く大事には至らなかったものの、ゴムの焼けた匂いが部屋中に付き、暫く異臭に悩まされたらしい。当のLBXは、アーマーパーツとコアスケルトンが癒着して使い物にならなくなったそうだ」
はぇー、そんな事が。
「また、改造パーツを装着して動かした者は被害という被害は無かったものの、パーツ同士の干渉が発生し、本来LBXにあった自由さが失われた。これら事例が多発し、LコンではLBXを動かさないのが当たり前となった。しかし」
「それを覆したのが、オタクロスだったってわけですね」
「そうだ。師匠が作られたサクラ零号機は、その失敗事例を乗り越えて生み出された、伝説のLBXとも称すべき物であったのだ」
はぁー! 色々タメになったわ。
今の話を踏まえると、Lコンでは自作や改造を施したパーツを着けて動かすだけでも評価点になりそうだな。
しっかし、肝心のデザインが何にも思い付いてない。それについての相談もついでにしてみると、意外な場所を提案された。
「アイデアが思い付かないのであれば、1度アートギャラリー展に向かってみるのもありかもしれないぞ」
「アート、か」
「この近辺でも、葛飾北斎展が行われる美術館もあるようだ。行ってみるのも1つの手だと思うぞ」
「葛飾北斎ですか」
そうだわなー。インスピレーションの元になるなら、どんな所でも行った方が良いよな。そうしてみるか。
相談事と他愛のない話をして、オタブルーと別れてエレベーターまでの道を歩く。葛飾北斎、ねぇ。色々と名前を変えて活動してたのは覚えてるけど。画狂老人卍とか。鉄棒ぬらぬらとか。どんな絵書いてたんだ?
浮世絵師で、役者絵、美人画、花鳥画────春画。ふむ、鉄棒ぬらぬら……春画……そういや覚えのある絵画の名前に蛸と海女ってあったな。誰のだ? ……あ、これも葛飾北斎なのね。
蛸……海女……。ふーむ? なんか、なんか思い付いてきたぞ? でもあとちょっと一押し、何かが足りてない。
そんなことを考えながら歩いていると、ふと視界の端にフィギュア専門店が入った。ふらふら〜っと入ってみた先で、俺はある物を見て閃きに至った。そして真っ先にオタクロスに電話する。
『はいもしもし』
「オタクロス、俺だ。ちょっと力を貸して欲しいんだ」
『儂の知り合いに俺という者はおらんデヨ』
「今そういうの良いから。実はあるフィギュアを買ってほしくて」
『なに、フィギュアじゃと?』
「Lコン用のLBXの参考資料になる物を見つけてさ。頼む!」
『ふ〜む……』
少しのあいだ唸って考えていたオタクロス。しかし悩む時間はそう長くはなかった。
『えぇじゃろう。参考資料程度なら買ってやるデヨ』
「ありがとう、オタクロス」
『で、どんなフィギュアを買いたいんじゃ?』
「えーっと…………女性の身体に触手が纏わりついてるヤツを」
『ちょっと待て』