あれから1年が経ち、多くのLBXがこの世に生み出されていく中、俺の計画は意外と順調に進んでいた────半年前までは。
半年前のある日、その日は第3段階へと計画を進める流れであった。ようやく念願叶ってバッファのアーマーフレームが完成し、早速取り付けて動かそうとした時、LBXが全く操作を受け付けなかったのだ。まぁ、この時は他に何か問題でもあったのだろうかと思い、考える限りの調整を施して再トライした。でも動かない。
プラズマジェットエンジンの重さがネックとなって動かないと仮定し、軽量化できる部分は軽量化した。
動かない。
CPUへの負荷が大きくて動かないと仮定し、処理速度がより速い物に変えた。
動かない。
バッテリー容量が不足していると仮定し、容量の多いものに変更した。
動かない。
飛行への移行シークエンスにCPUが対処しきれてないと仮定しプログラムを修正し改良を施した。
動かない。
コアスケルトン側の出力が低いと仮定し、出力限界まで性能を上昇させた。
動かない。
プラズマジェットエンジンが発生する磁場によって通信障害が発生していると仮定し、磁場の封じ込めとCCMとバッファ間の通信電波を強化させた。
動かない。
全体的なコアメモリの性能不足が問題になっていると仮定し、いっそのことバッテリーやモーターなどを自作して搭載させた。
動かない。
多くの問題があると仮定して、出来うる限りの対処はした。全くうんともすんとも言わない。何をやってもぜーんぜん動かない。
詰んだんだが?(^q^)
何やっても解決しないんだが?(^q^)
どどどどどーすんの どーーすんの?\(^q^)/
いやマジでどーしたらいいんだよこれ? この問題に半年間かかりきりでモチベが奈落行きなんだわ今。解決策がまーったく思いつかんのだが?
確かに、プロジェクトに何かしらの支障が起きるのも当然とは思っていたし、ここまでトントン拍子に進められたのはある意味凄い奇跡なんだろうけどさ…………あれ、そう考えると滅茶苦茶早いペースで進んでない? この計画。
そして只今絶賛項垂れ中ですわ。
「こりゃ重症だな、坊ちゃんにいつもの元気がねぇ」
「今までが順調過ぎたんですよ。第1段階のプラズマジェットエンジン、3ヶ月とちょっとで出来上がったでしょう? 変な話、皺寄せが来てもおかしくないだろうなと感じましたもん」
「……の、割には新しく買ってきたLBXを組み立ててるから、今のところ大丈夫とは思うが」
内心はそうでも無いんだよテツさん、確かに新しく発売されたジョーカーを組み立ててるけども。何の解決策も思い浮かばないせいで、このままだとプロジェクトそのものが水泡に帰すことになる。それは駄目だ、絶対に駄目だ。だからといってどうしたら良いのか……ハァ。
そして今日も今日とて解決策は思い浮かばず、折角の休日は会社に来て延々と考えただけで何も進まず、夕飯でさえも上の空。ベッドの上で寝転び天井を見上げる日々へと移行していくのだ。
「……まーじで、どうすりゃいい?」
ここまで考えうる限りの改善と改良を重ねてきた、その事実はプラズマジェットエンジンの効率やアーマーフレームの性能上昇、LBXの操作性に顕著に現れている。でも肝心のバッファが動かなければ、なんの意味も無いのだ。
寝返りをうつ。視界に今まで買ったLBXコレクションが入った。コアスケルトンが高いので、アーマーフレームのみを飾るコレクションスタンドに取り付けられているそれらは、我ながら圧巻と称していい。ウォーリアー、ムシャ、グラディエーターは勿論のこと、まさかゲームに登場したトゥルーパーまであったのは驚いた。
じいっと購入したLBX達をみつめる。そういえば多少動かしたぐらいで以降全然触ってないわ、こんなんでLBX好きを名乗れるもんだろうか? まぁそれはともかくとしてだ、やっぱデザイン良いなー。幾らでも見ていたいし触って────あっ。
「あるじゃん、解決策」
というか、俺はこんな事も思いつかなくなるほど頭が回ってなかったのか? そうとなれば早速今までのデータを集めてあれやこれやを揃えないと……!
所変わってタイニーオービット社LBX研究開発室。ここではLBXの産みの親、山野淳一郎を主導に日夜開発が行われている。しかし昨今のLBXによる負傷事故の影響で世間からの不買運動の声が起き、その存在が危ぶまれていた。そこに所属している彼、山野淳一郎宛に2通の郵便が届く。1通の手紙に書かれた差出人の名には霧島 暁とあった。
彼は覚えの無い何者かからの贈り物に訝しみながらも、封を開けて手紙を読んだ。
《拝啓 山野淳一郎様》
突然のお手紙申し訳ありません。今回、こうして手紙を送った理由は、私が現在制作中のLBXに関するアドバイスを求めての事です。お恥ずかしながら、今の私では解決できない問題に衝突し、助言をいただければと思いご連絡しました。同じく送った茶封筒の中に資料が封入されていますので、可能であればお返事をいただければ幸いです。
見ようによっては失礼さが抜けきっていない文面ではあったものの、その内容に思わず笑みが溢れる。大胆にも自作LBXのアドバイスを求められる事など無かった為に、少しばかりの興味を持って彼は茶封筒を開けて、資料を確認した。
「名前は──バッファというのか。しかし、自作にしては中々それらしい計画書だ。ふむ、内容は………………むっ?」
確認して、違和感に気付く。単純な変形機構を備えた飛行可能LBXという時代を先取ったような代物の概要、本来設定されていたコアスケルトンの出力規定値を限界まで引き伸ばしている数値、空力的に優れた装甲素材、飛行させる為に多くの機能をオミットさせたことを示すデータ、CPUに投入させた飛行制御プログラム、プラズマジェットエンジンの推進効率改善などなど。
その計画書は、やけに本格的すぎた。どこかの会社のプロジェクトとして見ても不思議では無い出来栄えであった為に、彼の中に言いようのない衝動が湧き上がる。
「住所はハチオウジタウンか。今から行けば14時半頃に到着できるな」
手紙の送り先を確認し、山野淳一郎はいそいそと外出の準備を済ませて、タイニーオービットを後にした。目指すはハチオウジタウンの霧島暁なる人物。
あぁ〜^、リューターの音が気持ちいいんじゃあ〜。この削れる音が中々心地よくてたまらん。え? 何してるかって? 今やれる所をやってるのよ装甲の軽量化を。取り敢えず確認したらほんの少し削っても良い箇所があったのでそこをやってる。
「アカツキ君一体何したの!?」
うおびっくりした。そんなに慌ててどうしたんすか松本さん? 俺警察のお世話になるようなこと何一つしてないんですけど。
いや、この世界だとイノベーターもとい海道義光のせいで冤罪かけられてもおかしく無さそうだけど。
「警察じゃなくて! とにかく呼んでるから応接室に来て!」
警察じゃない? じゃあ誰よ? というかここアスカ工業なのに社長じゃなくて俺を呼ぶ奴って……正味ヤバい奴では? やばっ、変な汗出てきた。
松本さんの言う通りに応接室へと足を運び、待ち人が居る室内へ繋がる扉を開ける。
ッスゥ-…………あの、見間違いじゃなければ、山野淳一郎博士じゃないですか? 返事貰えるか試しただけなんですけど。
何で本人が居るんですかね?(^q^)