暗闇の中をもがくので初投稿です。
捏造設定が出てくるのでご容赦ください。
追記:最初の年月の箇所を諸事情により変更しました
2047年、1月。世間一般の学生の間では冬休み後半に入っている今日この頃、世間はとあるニュースで持ち切りになっていた。
LBXが、ホビーとして帰ってくるかもしれない。
LBXが好きな奴にとって、希望に溢れたニュースだ。その裏に隠された悪意を知る俺にとっては、手放しに喜べるものでは無いけれど。
で、その悪意に曝された1人である俺は今どうしてるかというと。
絶賛家出中です。
暁はアキハバラにて1人、流れる民衆を見ていた。自身の傍らにスーツケースを携えて、公園のベンチに座っている。都会に残された自然の仄かな匂いの中で、彼はこの状況になる前の事を思い出していた。
「────はぁッ」
強く、苛立ちを露わにしたような溜め息が出る。アスカ工業で笑顔や活気に満ち溢れていたあの頃と変わって、目付きは鋭いものの顔から表情が消えていた。
そして、どこか疲れたようにベンチの背もたれに身を預け、僅かに白んだ雲のある青空を見上げる。空の青さから目を背けるように両瞼を閉じた彼は、考え始めた。
(これから、どうする? 出てきたのは良い、会える可能性を信じてアキハバラに出てきたのも良い。だがこんな所で難航したのは予想外だ)
目頭を押さえ、頭の中の重さを軽減する。
(確かアニメとかじゃ、バンがそこら辺の奴に話しかけて捜していた。当人の居場所について知らなくても、向こうが自分を捜しているという事を認知したことで接触できた筈。……いや待て、アニメじゃ色々と知ってたから、直接見たり聞いたりしてたから接触したっていうのもあるか。それに比べて)
青空をもう一度見たあと、暁は姿勢を戻して自身の手を見た。
(俺は
CCMを開き、画面を確認する。非通知の電話が数えるのが億劫になるほど掛かってきているが、無視して時間を確認した。現在、17時20分。認知してもらう作戦を実行したのは、午前9時半。
約8時間もの時間を費やしていた。
「成果無し、だ。きっつ」
悪態を吐く。外聞など、気にしていられなかった。
(8時間、8時間だぞ。ここまでやって成果なしだ、流石に堪える。バッファの時とは違うベクトルでキツい。ここまで会えないもんか?…………いや、オタクロスなら案外有り得そうなんだよな。ただでさえ容姿の良い女子に贔屓しまくって、男は興味無しな所あるし)
「ッぁあ゙」
不満を纏った声が漏れ出ると同時に、ベンチから立ち上がる。スーツケースを持って暁は公園から立ち去った。
やがて、暁はアキハバラ探索の際に見つけた裏通りへと向かい、ぼうっとした様子でその風景を眺める。
(ここ、こんな感じなのか。実際に来てみると、思ったより暗くなくて、意外と店の灯りも目立つ。こういう所、アニメとかじゃ出てこなかったな。確か……そう、ゲームだ。ゲームの方で出てたんだっけ)
ケースを引きながら周囲を散策する暁。だが、他の者からしてみれば観光客に見える雰囲気の彼は、悪意ある者からすれば格好の的に見えるわけで。
「おい、そこのガキンチョ」
「あ?」
暁の進行方向の先に、3人組の不良がニヤニヤと嗤いながら壁を作っていた。関わるだけ面倒そうな相手を前に、彼の顔は一瞬で無表情になる。そんな反応に興味を示すことなく、不良の1人が前に出た。
「そんな大荷物でどこ行く気だよ。俺達が案内してやろーか?」
暁は荷物を自身の後ろに隠し、背後を見ずにケースのファスナーを一部開けて、自作のスタングレネードのピンを抜き、それを握りしめる。
「おいおい、そう怖がんなって。親切に道案内してやろうってのに」
「ならその薄汚い笑みを止めろカス。見ていて目が腐り落ちそうだ」
「あ゙?」
その煽りに3人に変化が現れる。まさか歳下に強めの罵倒をされるとは思ってもみなかったのか、怒りの表情を露わにした。
「テメエ、なに調子乗ってんだ。アアン?」
「ガキの癖に一丁前に強い言葉を使ってんじゃねぇよ。殺されたいか?」
「オレらは道案内してやるって言ってんだよ。歳上の言ったことは素直にしたがえや糞ガキ」
「顔に出てんだよボケ。“ちょうど良さげなカモが居るから荷物を奪ってやろう”って魂胆がよ。テメェらみてぇな性根の腐ったゴミの言うことなんざ誰が聞くか、整形行って出直してこい」
「調子こいてんじゃねぇぞ糞ガキ!」
不良の1人が彼の罵倒に耐えかねて実力行使に移り、迫り来る。暁はスーツケースを蹴って動かし、後ろに跳びながらスタングレネードを落と「待てぇい!!」────そうとして、突如やってきた男の声に全員気を取られた。
「とぉう!!」
暁の目の前に降りてきた人。否、黒い鳥頭の被り物を被った変人は、暁を守るように不良たちに立ち塞がり、名乗りを挙げる。
「愛と勇気と平和の使者、オタブラァッ!! 見参!」
「何だコイツ!?」
やけにドスの利いた声でそう名乗った変人。否オタブラックは、怒りの炎を身に纏ったかのような声色で不良達を追及した。
「子どもを相手に3人がかりで盗みを働こうなど笑止千万! 貴様ら、そこまでして物乞いをして恥ずかしいと思わないのか!?」
「んだとゴラァ!」
「勝手にしゃしゃり出てきてくっちゃべってんじゃねぇよアアン!?」
「オレ達が盗もうとした証拠を出せやイカレポンチ!」
そのやり取りの最中、暁はケースの中からスタングレネードのピンを見つけ、元あった位置に戻している。彼に背を向けているオタブラックは、法律に抵触している物があるとは露知らず。不敵な笑みを浮かべ、不良達に向けてCCMから音声を流した。
『あー、金ねぇなー』
『さっきスった奴の財布の中も素寒貧だったしよぉ。ケッ、やり損じゃねぇか』
『どいつもこいつも、オレ達に優しくないとかムカつくぜ』
内容は、その不良達の罪の自白であった。それを聞いた途端、冷や汗と悪寒が不良達に襲いかかる。
「ッ、テメエそれは!」
「驚くのはまだ早い。本命はもうすぐだ」
『おい、あれ見ろよ』
『あ? 何だありゃ、お上りさんってヤツか?』
『間違いねぇ、面白半分でやって来た観光客だぜあれは。しかもまだガキだ』
『あーんな大荷物でここに来るたぁ、狙ってくださいって言ってるようなモンだろ。なぁ?』
『じゃー俺達がその中身を有効活用してやろーぜ』
『いいねー、さんせー』
そこで音声は終了した。流れた音声を聞き、不良達は見るからに動揺しており、3人ともが僅かに後ろに退く。
オタブラックの仮面の奥にある素顔は、もう怒りに満ち溢れていた。が、努めて冷静になって不良達に問い掛ける。
「もう貴様らの顔も覚えた。今ここで退くというのなら、俺は何もしないことを約束しよう。だが、なお刃向かってくるというのであれば、容赦はせん!」
「テメエ…………ぶっ殺してやる!」
もはや体裁を取り繕わなくなった不良達は、今は禁止されているLBXを取り出した。
「良いだろう。貴様らがその気なら!」
オタブラックが指を鳴らす。直後、彼と不良達の間の地面が開き、地下から何かがせり上ってきた。それの全貌を見た暁は疑念に駆られたあと、すぐに自身で結論を出す。
(あれは、ドーム? 見るからに金属製だ。しかもかなり分厚い…………まさか、あれバトルフィールドか?)
「覚悟しろ悪党共! このオタブラックが、裁きの鉄槌をくだしてやる!」
「しゃらくせぇ! 行くぞ!」
「「おう!」」
不良達はそれぞれ、ウォーリアー、ムシャ、ズールCを繰り出し、戦場に降り立たせた。
「行け、ビビンバードX-V!」
オタブラックは、自身の被り物と同じ顔をしたLBXを繰り出す。
今ここで、LBXバトルが始まろうとしていた!
【バトルフィールド(2042〜2045ver.)】
かつてLBXの戦場であったもの。LBXの性能が危険である事を知りながら、それでもなおLBXバトルを追い求めた一部のプレイヤーたちが生み出した。
厚さ5cmの鉄製の囲いの中で行われた戦いは、しかし危険と隣り合わせでもあった。