機動戦士ガンダム 因果巡合   作:霞 志輝

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第四話:因縁の始まり(前編)

 ジオン軍学徒兵は訓練終了後、ソロモンへ配属が内定していた。

しかし訓練も終わりに差し掛かった頃、ソロモン陥落の報が駆け抜ける。

そしてそれは、彼らの行き先が変わった瞬間でもあった。

宇宙要塞ア・バオア・クー。

ソロモンが陥落した今、連邦軍が次に狙う可能性がある拠点の一つである。

ジオン本国はこの拠点の防衛能力強化を決定。

空母ドロスおよび、ソロモンから脱出してきた空母ドロワが配置されることとなった。

 

空母『ドロス』

500メートルに迫る全長を持つ、宇宙世紀最大規模の艦艇である。

百機を超えるMSを格納、運用可能であるため空母というよりもはや移動要塞であった。

なおドロワは同型艦である。

 

ア・バオア・クーに到着したドロス・ドロワ両艦は早速防衛プランの打合せを行う。

そして教習期間を終えた学徒兵らが、曹長の任官と同時に申し渡された配属先。

それこそが空母ドロワであった。

迫る実戦を前に、母艦の周囲では学徒兵らが訓練に励む。

「もらったっ」

トリガを引き、相手の撃墜を知らせるシグナルが光る。

「くっそ。また負けた」

悔しがるのはカズト・カーディス。

彼を撃墜したのはエリーナ・ブライアであった。

「教科書通り過ぎるのよ。私の動きも読みやすいと言われるけど、貴方の動きも読みやすいわよ?」

「お前のは読めたところで当てられないんだよ。なんだその無茶な高速機動は」

「読まれるなら読まれる前提で動いてるだけよ」

当然でしょう、と言外に含めてエリーナは言い切った。

「読まれることを見越すのはいいが、別の機動を選ばずにそこから加速でなんとかしようとするとはな……」

教導役であり、部隊の隊長も担うことになったニック・タノウエ大尉があきれたように呟く。

「思い切りがいいのも良し悪しですね」

ニックの呟きを拾ったのはバル・ライアン。

彼も学徒兵ではあるが、その卓越した操縦技術でベテランと並んでの戦列を組む男である。

「隊長としてあれをフォローするのは骨が折れそうだ」

片や無鉄砲、片や型通り。

小隊として率いつつ、両方のカバーを行う大変さを想像して肩を落とすニック。

「俺は別小隊ですから助けられるかわかりません。なのでよろしくお願いしますよ。大事な友人たちなんで」

「人のこと心配してる場合か?まずは自分が生き残ることを考えろ。他は任せておけ」

ニックの返答に笑みを浮かべながら、バルは敬礼で返した。

 

 

 年の瀬も押し迫った12月の末。

ついに、地球連邦軍による総攻撃『星一号作戦』が開始された。

エルド小隊も出撃し、隊列を組んで要塞へ向かう。

そんな要塞へ向かう部隊の中で、見たことのない艦艇がカーク・ヴェルフィリアの目に映った。

「……あの艦影。そうか。あれが第十三独立戦隊」

第十三独立戦隊、いわゆるホワイトベース隊。

カークがシミュレーションでお世話になっている、ガンダムを擁する独立部隊である。

任務途中にジオンの襲撃を受け、乗組員のほとんどが民間人上がりで構成されているのも他とは異なる特徴だ。

その母艦から出撃したMSは、エルド隊の付近で隊列を組んで進軍に参加した。

「データで見たことはあったけど、あれがガンキャノンか」

 

RX-77『ガンキャノン』

連邦軍におけるMS開発計画、V作戦により作られた試作機。

重装甲、高火力の機体で、名前の通り両肩に240ミリキャノン砲を装備している。

 

「あれは中距離支援を目的に開発されたMSだ。出撃前のブリーフィング通り戦闘開始後は我々が先行することになる」

カークの独白に割り込んだのは隊長であるエルド・ワースであった。

「隊長の機体も支援型じゃないですか」

 

RGCー80『ジム・キャノン』

先述のガンキャノン同様、中距離での支援を主目的として開発されたMS。

その特徴は肩に備えられた240ミリロケット砲。

こちらも名前の通り、キャノン砲を備えたMSであった。

 

「小隊単位で見ればお前たちが突出しがちだからな。支援型の方が良かったのさ」

それはソロモン戦から得た教訓である。

初陣のジャブローでもそうだったが、小隊全員が乱戦に巻き込まれたときに各機が個別戦闘となってしまった。

援護に向かうには遠い位置に引き離されるという状況を作られたときでも、攻撃が届けば支援はできる。

そう考えたエルドは射程を伸ばす機体選択を行った。

「そういうカークは機体そのままで良かったの?」

元戦闘機乗りでもあるミーナ・ラックスマン中尉が疑問を投げかけた。

「シミュレーションで動きを身体に覚えさせましたからね。感覚がズレるのは避けたかったんです」

「器用な避け方するものねえ。加速力で引きはがすくらいでもいいでしょうに」

経歴ゆえか、ミーナは一撃離脱を得意とする。

そんな彼女からすれば、機体制御による回避行動よりも加速力の方が大事であった。

「向き不向きがありますから……」

中尉が大雑把すぎるんですよ。と口から出そうになったのをこらえ、話題をミーナの機体に変えるカーク。

「それよりどうです?要望してたチューンは」

「いい感じよ。加速力も上がってるし」

ミーナの機体はソロモン戦を経て、彼女の希望が取り入れられていた。

ジムには様々な派生機があり、その一つに機体を軽量化することで移動速度を上げるものがある。

いわゆるライトアーマーと呼ばれるものだが、その思想を一部取り入れるよう希望。

腕部や脚部のみに反映させ、生存性を下げないよう調整しつつ軽量化していたのである。

「無駄口はその辺にしておけ。そろそろ戦闘空域に入るぞ」

隊長の言葉で気を引き締め、操縦桿を握りなおす。

後に一年戦争と呼ばれたこの戦争、その最後の戦いが始まろうとしていた。

 

「出たわね。スカート付き!」

戦闘開始から間もなく、両軍はMS同士の戦闘に突入した。

事前の打合せ通り、前に出るエルド隊。

そこに襲い掛かってきたのはリック・ドムの部隊である。

突撃するミーナに追随し、ミーナ機の背後をとらせないよう立ち回るカーク。

そんなカークを狙おうとドムが動けば、エルドからの支援射撃が飛ぶ。

部隊としてお互いを補佐し合う連携で敵機に付け入る隙を与えない。

エルド小隊は部隊単位での連携がようやく完成した形となっていた。

しかし、だからといって敵機を圧倒できるわけでもない。

MS運用には一日の長があるジオン軍はさすが部隊単位での連携がよくとれていた。

「ここを突破しなきゃ要塞攻略も何もないってのに」

「焦るなカーク。我々でなくとも他の部隊がとりつけるならそれで良いんだ」

五分の戦いとなっていた戦況を、ソロモン戦のように一条のビームが一変させる。

「!?支援射撃?」

射線の元を辿ると、そこにはザクやリック・ドムをこともなげに撃ち落とすガンキャノンの姿があった。

108の機体番号を胸元につけたその機体へ感謝の通信を送る。

「助かりました」

「いいってことよ。持ちつ持たれつってね」

 

 敵の第一陣を倒した後、ホワイトベース隊と別進路での進軍となったエルド隊。

カークは遠ざかるガンキャノンに敬礼しつつ、次の戦場へ向かった。

そしてほどなく、初めての相手と遭遇する。

「新型……ビーム兵器だと!?」

回避機動をとる機体をかすめるように飛んだ光を見てカークに衝撃が走る。

だが、驚いていたのはカークばかりではない。

「外した!?ロックオンはしていたのに!」

ゲルググのコックピットでは、エリーナがカークと同様に驚愕の声を上げていた。

「さっきまでの3機とは違うってわけね……墜としてみせる!」

「待て。熱くなるなエリーナ!」

制止するニックの声を置き去りに、エリーナは機体を加速させた。

「やむを得ん。カズト!続くぞ!」

そんなエリーナを援護するべく、2機のゲルググが追随しカークへ襲い掛かろうとする。

「やらせるもんですか!」

しかし、そこにミーナのジムが突撃し隊列を崩す。

「ちっ!フォローが早い!散開しろ!」

エリーナの近くから離れることなくミーナに牽制射撃を放ちつつ指示を飛ばすニック。

「は、はい!教科書に載ってた回避行動の機動は確か……」

汗ばむ手が握る操縦桿を動かし、教導で覚えた回避行動をとるカズトのゲルググ。

カズト機が回避前にいた場所を、エルドのジム・キャノンが撃ったロケット弾が貫いてゆく。

それを見たニックは内心で舌打ちする。

「支援射撃も厄介だな。これじゃ迂闊に追いかけることもできん……エリーナが相手を倒すまで耐えるしかないか」

冷静さを失わないジオンの部隊を見て、エルドもまた内心で舌打ちをしていた。

「ミーナを追いかけて隊列を崩してくれればと思ったが……ミーナが自由に動けるだけ良しとするか」

 

 カークとエリーナを中心に、両部隊の戦いは膠着状態を続けていた。

「何で当たらないのよ!」

直線的だが躊躇いの無い加速による速さで襲い掛かるエリーナのゲルググ。

「ガンダムとのシミュレータ経験が無きゃ今頃はもう死んでたな……!」

AMBACという四肢を動かす姿勢制御を巧みに使い、回避し続けるカークのジム。

「ちょこまかちょこまかと!いい加減墜ちろよ!」

二人がかりでも当たらない相手に、エリーナと同様の苛立ちをカズトは抱く。

「焦るな!無暗に撃ったところで当たってくれる相手じゃないぞ!」

(巧みな機体制御。連邦はまだMS戦に慣れてないはずじゃないのか?)

口ではカズトをなだめていても、内心で似たような焦りを抱えるニック。

一方、連邦側も焦燥感は似たようなものである。

「速度負けはしてないと思うけど、近づけない!」

エリーナ機へ一撃離脱を仕掛けるミーナだが、ニックの迎撃がそれを阻む。

「遊撃手の速さも、この支援砲撃も侮れん!」

ミーナ機へ牽制しつつ回避機動すれば、真横を砲弾が駆け抜ける。

牽制により近づけないミーナを見つつエルドも判断に迷う。

「支援だけでは無理か?だが、ここで斬りこんでは逆に包囲されかねん」

「こちらを囲む位置どりは変えず、か。正しい判断だよ!くそっ」

エルドとニック、どちらの隊長も焦りを無理やり抑え込み、冷静に状況を判断しつつ隙を伺う。

ソロモン戦までと異なり、チームとして互角の戦いとなったこの戦い。

だが、その拮抗を破る出来事は意外なところから発生した。

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