最強はポットクリン(別題:その無敵性を絞り上げる) 作:淵岳 月夫
サブタイトルについて
複数日をまたぐ回もありますが、その場合のサブタイトルはメインの出来事の日付を記載します。
原作に倣った形です。
ランキング掲載ありがとうございます!
9月1日①
「おい、逃がし屋」
「なんだ? スクワラ」
「お前、今朝
「オレがァ?」
ヨークシンに向かう道すがら。彼らのボスであるネオン=ノストラードの護送の最中。
ネオンの車の前を走る、護衛団のみの車の中で助手席からあたりを警戒していたクラピカの耳に後部座席のやり取りが入ってきた。
「んなことするかよ。手鏡が落ちてたから渡しただけだ」
「思いっきりナンパの手口じゃねぇかよ、えぇ?」
「ちげえっつってんだろ。手鏡はボスのだよ。
お前それ言うためにこの車乗ってきたのか? こっちの膝まで犬でパンパンなんだけど?」
「ああ、ナンパ野郎の喉仏を噛み切るためにな」
「マルチーズにそんなんさせんなよ……」
……なんて下らない話題なんだ。
クラピカはそう嘆息した。彼の膝の上でスクワラのビーグルが首を傾げる。
「なあお前ら、これナンパだよな? コナかけてるよな?」
「知らねぇな。凄くどうでも良くないか?」
「私もバショウと同意見だ。
強いて言うならば、パートナーの仕事相手にも噛み付く男の器の小ささと、それを予測して行動できない男の思慮の浅さを嘆くよ」
「クラピカさん口悪くない?」
事実を言ったまでだが、とクラピカ。
「そもそも、私たちではなくセンリツに聞けばいいだろう。
私とは違い彼女は聴いただけで嘘が分かるのだから」
クラピカの言葉に、一同の目線は後部座席でミチノリとスクワラに挟まれたセンリツに集まる。
「そうねぇ、別に嘘はついてなさそうだわ」
「ほらな?」
「ぐぬぬ……」
「でもなにか誤魔化してそうね」
「オイ」
「ちげえって!」
男二人の揉め合いに挟まれたセンリツと、彼女の膝に座るチワワは鬱陶しそうにしていた。
「護送中の車内とは思えないな」
「雑談で警戒怠る馬鹿じゃない、さ。好きにさせておいてやろうぜ」
クラピカはその指摘に口をしかめる。
少なくとも、今口論している内の一人は、この中で最も実力のあるものであったからだ。
(逃がし屋ミチノリ──)
クラピカと同じ雇用試験によりノストラードファミリーの護衛団に雇われた男。
バショウ、センリツを含めて彼らがクラピカの同期といえる。
『避けられる弾を鎖で弾くのは止めておけよ』
ひと月前から行われた雇用試験の開始時、全員で館の脱出を試みる中でミチノリはクラピカにそう声をかけた。
トチーノの放った
『たとえば操作系の能力者の場合、獲物の接触をトリガーに発動する能力が多い。
弾丸なんて当たれば有効、
(あのような真似をしておいて──)
迫る銃弾を鎖で受け切ったのはクラピカだけだった。
対して、迫る弾丸をその腕ひとつで受け切ったのもそう話しかける男だけであった。
『それか目に
避けるか
『余計なお世話だ』
クラピカはぴしゃりとミチノリの話を断ち切った。
『余計ってオマエ『理由は二つある』
2本の指を立ててクラピカは続ける。
『一つは初撃であったこと。
消耗品に一撃必殺の
確実に当てるためにはまず攻撃に対する相手の対応を確認することになる』
たとえば操作系強制型であれば、消耗品を媒体とするのはそれだけで
具現化系であっても、防御の上から効果のある弾丸はそう無駄撃ちできないだろうとクラピカは考えた。
『もう一つはこれが
試験でそこまでの
それに護衛は対象を守る仕事だ。自身だけ避けて、守りも迎え撃ちもしない対応はウケが悪い』
たとえ自らが凶弾に
それが護衛に求められる姿勢であった。
『と、この二点から
助言によるマウンティングは結構だが、貴様のそれは相手の視野を狭めるものにしかなっていない。
少しは言い方を気をつけた方がいい』
『オレコイツ嫌い!』
『嘘の音ね』
そう怒鳴って会話を止めたミチノリを見て、クラピカは内心安堵する。
(恐ろしい男だ)
実のところ、男の指摘そのものは的外れであった。
クラピカは決して、
目への
身についていないものも多いが、一定の実力者であれば目を
クラピカの師匠であるイズナビも、幻影旅団という明確な
であればクラピカにそれが身に付かなかったのか。否。
彼はその類稀な才能で早々に
それは、
原理的に不可能ではない。そも、強いオーラを
ある意味オーラを集めただけの
しかし、一度安定させた
実戦で通用するまでに
ゆえに、これには相応に恩恵があった。
戦闘の駆け引きにおいて、相手がどれほど自分に対する情報を持っているのかを測ることは重要な要素だ。
それの指針の一つが相手の
自身の
それらは手練れであれば相手の目の
ゆえに、相手が手練れであるほどクラピカの実力を
クラピカはその効果に気づき、鎖という
全ては蜘蛛を絡め取り、跪かせるため。
そして、ミチノリはクラピカの鎖での防御についてわざわざ忠告まがいの言及をした。
ミチノリ自身が目に
つまり、彼の忠告には字面以外の意味が含まれていた。
──
(
クラピカが
さらにミチノリの腕での防御。具現化物によるそれだと考えれば得心がいく。
おそらくこの推測までも含めた、自身に向けた自己紹介と助言なのだとクラピカは受け取った。
仕事上のビジネスパートナーであり、ボスの信頼を得るという意味では競合相手でもある男。
クラピカにとってミチノリはどこまでも油断できない相手であった。
「センリツさん真実を言ってやってくださいよ。
オレはスクワラの彼女なんか微塵も興味がありません。ホラ!」
「ンだとコラァ! それはそれで失礼だろうが!」
……たとえ、彼が後部座席で下らない口喧嘩にあけくれていても、である。
「犬よりも、やんやうるさい輩だぜ」
「この子たちが利口であることが、せめてもの救いだよ」
膝の上のビーグルを撫でると、その犬はバウ、と控えめに鳴いた。
オークション前日。8/31の車内での出来事であった。
◇
オレは原作の開始にあたり、その介入をヨークシン編一つに定めた。
そうすることが最も高いパフォーマンスを生むと踏んだからだ。
まず前提として、スタンスの話。
オレは既存に連載されていた原作への介入について、ある程度の改変を許容している。
これは己への不殺の誓約を発見したときからとくに変更のないものだ。
要は、暗黒大陸編が始まる際にそれぞれの要素が成立していればよく、その過程については深くは問わない。
しかし、この改変というのも厄介なもので、特にある編までの介入には細心の注意が必要になる。
よってオレのスタンスは、「ほどほどに原作にちょっかいを出してほどほどにリターンを得よう」というなんともしょうもないものになった。
オレが得ようとしているリターンはシンプル。
暗黒大陸に行く手段と仲間だ。
手段は原作の続きを見るため、仲間は生き延びるために必須になる。
手段の方は原作の渡航組、ビヨンド側か協会側かのどちらかにコネクションを作り、同行する形になる。
ハンターになったのも協会側に近づく一環だな。
仲間の方は、基本的にどちらかの陣営の信頼を得る形で仲間に加わりながら、どちらの陣営にも入らなそうな原作キャラを入った陣営にスカウトしていく方針だ。
自分が率いる側に回ることはない。そもそもの目的が、原作の続きを見ることだからな。
積極的に状況を変えるモチベーションがない人間にリーダーは務まらない。
まあ、ハンタ好きにとっては原作に立ち会えるだけでリターンなんで、こづかい超人よろしくゴン達の周りでステーション・バーしているだけでも良いんだが。
といっても、オレが立ち会える状況は限られる。
一つは念獣のストック、一つはハンター
念獣のストックは介入できる回数を縛る。
オレの戦闘には先に述べたようにストックによる制限があり、現状のストックは9,000匹ほど。
この調子だとあと一年ほどで最低限のノルマに達するが、ジャンプよろしく連戦に次ぐ連戦、となった場合には中々厳しいのが現状だ。
そして、ハンター
半分程度流れで合格してしまったハンター試験によって、ゴンたちのハンター試験に立ち会う名目がまるでないのだ。
ハンターなりたてで試験官になることもできないしなあ。
それらの縛りも含めて各編に対する介入への評価を見積もった結果、以下のようになった。
①ハンター試験編……×。
前述の通り。
②ゾルディック家訪問編……×。
友達でもないオッサンが家族問題にかけつけても……、なため。
③天空闘技場編……×。
渡航組がおらず、あとヒソカに追い回されそう。
④ヨークシン編……◯。
本命。渡航組になるクラピカたちとのコネができる。
⑤
渡航組へのスカウトにあたりゴレイヌさんやビスケとの繋がりは欲しい。欲しいが……、後述の懸念により△に。
⑥キメラ=アント編……△。
④と同じく協会側にコネができる。しかし、暗黒大陸渡航に必須な上に流れが緻密すぎる。できれば触りたくない。
⑦選挙・アルカ編……×。
協会組は渡航が決まっており、ゾルディック家はアルカを知るが故に渡航組に引き込みにくい。
⑧
未知数。協会側なら巻き込まれ、ビヨンド側ならまず関わらない。
こうして見ると、介入する利益のある場面が少ないことがわかる。
目的が原作の続きを見る、というものなのだから当然といえば当然だ。
この中で迷ったのが④ヨークシン編と⑤
原作から来る懸念ではなく、オレ自身の特性によるものだ。
オレの
これは、
ここでの念による攻撃とは、原作でクラピカが説明していた通り、回復や補助といった念による能力全般も含まれる。
ヒソカの
そして、この特性は
もし乾眠状態のクマムシを持ったまま
ただ死ぬだけではない。入れ子状に格納された念獣から収納物はすべて排出され、戦闘用に起爆寸前にセットされてある爆発物は当然すべて起爆する。
それに誘引される形で様々な兵器が爆破、拡散され、あたり一帯に甚大な被害をもたらすだろう。
……悪夢以外のなにものでもない。
まあ、これはあくまでもしもの話だ。
これが示唆する仮説は二つ。
一つは
もう一つは座標移動についてはすべての
後者であればオレは何不自由なく
そして残念なことに、コイツについてはなんの検証もできていない。
オレが原作キャラ以外に関心を示せて、信頼できる相手を作れたら別だったんだろうが、残念なことに
少しは折れろよチクショウ。
どちらの場合も、最外殻の念獣を通常状態にすれば
だろうが、一つのミスで致命的な環境破壊を起こす危険を負って向かうほどのモチベーションはこの編にはなかった。
また、⑥キメラ=アント編についても同様の懸念がある。
ノヴさんの
瞬間的な移動ではないから問題は少ないと思うが……、一か八かで検証はしたくないな。
敬愛した人物と能力のかみ合わせが悪くなるというのもつらいところがある。
それに、この編は介入自体が危険だ。
上手くいけばノヴさんやモラウさんといった強力で信頼できる相手との絆を作ることができるが、全ての要素が紙一重で回っている。
突入組の死者がネテロ一名だったというのも奇跡に近い。
そして、そのアイザック=ネテロの死がこの先の暗黒大陸編には必須要素になる。
彼に抑えられていたビヨンド=ネテロが動き出し、ナスビ=ホイコーロがそれに協力する。その流れを切ってはいけない。
上手くいきすぎても駄目、下手をこいても駄目。リターンに対してあまりにリスクが大きい。
もう一つ懸念もある。
オレは多分、
人間の遺伝子を受け継ぎ、言語を話せ、記憶があり、友情や愛情を築くことのできる生き物。
それをヒトではないと言い切ることはオレには難しかった。
そもそも魔獣も殺したことがないからな、オレ。
少なくとも、彼らは原作ではゴンたちと同じ、読者の感情を動かすキャラクターとして扱われていた。
そして
そんなオレがゴンたちについて行っても、戦闘員としてはお荷物になる未来しか見えない。
よって、オレは④ヨークシン編へ、主にクラピカとのコネクションを求めて介入する。
これが上手くいけば、オレはハンター協会側で渡航に参加する。
彼とのコネクションは協会側として暗黒大陸渡航に参加する時に有用になるだろう。
協会は破天荒に見えて組織然とした組織だ。故に内部の派閥や縁故というのは重要になる。
ただの一ハンターとして協会と関わるより、十二支んの一人と強い繋がりがある方が渡航に際して得られる裁量は大きくなるだろう。
というより、裁量の大きいクラピカの人事権に介入できる、というのが正しいか。
どちらにせよ、より中心に近いポジションで原作の続きに立ち会えるわけだな。
ビヨンド側ではなく協会側を選んだ理由としては、どれだけオレが求められるか、というのもある。
協会は明確に輸送係を必要としている。
何十年も前から綿密に暗黒大陸への渡航を計画していたビヨンド側と違って、協会側は半ば場当たり的に渡航を決定した。
その分、協会側は準備が足りず、大きさに制限があるが大量の物資を携行できるオレという人材を明確に欲することが予想できる。
ま、それだけだと輸送係に付きっきりになる可能性も高いから、クラピカとのコネクションが欲しいことに変わりはないんだがな。
(その介入の方法としては……)
「私トイレー。エリザ、女同士だからって覗かないでよ?」
「ふふ、分かっていますよお嬢様」
思考を整理していると、ガチャリと扉が開く音が聞こえた。
ようやく待ち人が来たようだ。
「よう、ボス」
「!! ……すごい、ほんとにいる」
大きな洗面台のついた、トイレと浴室につながる化粧室。
アジトとして貸し切ったホテルの、彼女の部屋と直通するこの部屋でオレとボス、ネオン=ノストラードは顔を合わせた。
「鏡に書いた通りだからな」
──9月1日 日付が変わった頃に化粧室へ
これが、エリザに手渡したボスの手鏡に
手鏡であれば女性なら朝のどこかで見るし、オーラの文字は
放出系は苦手なためオーラはすぐに消えるが、秘密の伝言の場合そっちの方が都合がよかった。
「ダルツォルネの目を掻い潜って会いに来れた人なんて初めて!」
ボスは小声で話しながらも、その声色は確かに高揚していた。
たしかに、ボスの部屋の前には護衛団のリーダーであるダルツォルネが今も陣取っている。
これが普段だというのなら、今までの侵入者は返り討ちにあってるのだろう。
「どうやったの?」
「簡単、ダクトを通ったんだよ。浴室なら必ずあるだろ?」
「へー……? でもダクトって小さいし、映画みたいに人が通れる隙間はないよ?」
「そこは企業秘密だな」
「ケチ」
ボスはそう頬を膨らませたが、勘弁してくれ。能力が関わるので無闇に話せねえんだわ。
オレの
念獣に入ることで、オレ自身も小さなダクトでも通ることができる。
しかし、この念獣は中から操れるようにも、あらかじめ命令できるようにもなっていない。
そこで使ったのが、内視鏡にも使われるワイヤスコープだ。
これを別の部屋のダクトから押し入れることで浴室まで通し、ワイヤスコープの先端につけた牽引糸と小型のモーターで念獣を巻き取る。
給餌時間を調整することで通常状態の念獣は餓死し、オレはそのまま浴室に排出されるという技だ。
排出の方向を上手くやれば、フィルターなんかの薄い障害物をすり抜けて侵入することすら可能である。
デメリットは円を使われたら一発でバレること、ダクト内でワイヤスコープをぶつけても物音でバレること、ダクト内部につっかかって排出されたら閉じ込められることなど色々ある。
しかしまあ、そこはオレの腕を信じて欲しい。
職業柄、軟禁された依頼人を連れ出したことは山ほどある。
そこで培った侵入・脱出の手口の一つがこれだった。
「まあいいや。それより、
「私に
わざわざ9月になってから会いたいくらいだものね」
「ご名答」
ボスの言葉にオレはニヤリと笑った。
そう、オレの目的は
特質系の能力で、相手のその月の週ごとの未来を占える。
抽象的だが100%当たると言われる予知能力であり、悪い予言も警告を守れば回避できる。
この能力を使う機会があることも、ヨークシン編への介入が成立しやすい理由の一つでもある。
介入した結果の悪い部分をあらかじめ知ることができる。
それは転生者であるオレにとって喉から手が出るほど欲しい情報だった。
「言っとくけど、私の占いは安くないよ?
あなたが試験で持ってきたものなんかよりよっぽど貴重じゃなきゃ、
「そうかい。ま、これを見れば手のひらを返すさ」
クロロの場合は恩があったとはいえロハで占ったくせによ、やっぱ顔か?
という心の声を抑えながら、オレは手元にあるものを排出した。
目の前の少女は人体蒐集家だ。
マニアックでアングラな趣味であることから、求められる物品のレベルは高い。
しかし、オレには彼女を必ず黙らせられるほどの逸品があった。
「──なに、これ。縄……?」
「いいや? これは
腕で抱えられる程度のそれは、万力で捻られたような人間の腕だった。
肘の付け根から指の先までのすべてが縄状に歪んでいる。
それはこの世において、まずあり得ない現象であった。
「数年前、ある地域を中心に少なくとも67人の人間が、全身をひとりでに捻られるようにして死んだ事件があった。
これはその一部だ」
「知らない、そんなの……」
「厳格な情報規制があったからな」
この死体の正体はゾルディック家の第四子、アルカの能力の代償によるものだ。
アルカの中の「ナニカ」はおよそ際限なく願いをかなえることができるが、対価として「おねだり」を要求する。
「おねだり」を達成できなかった場合、本人や最愛のもの、長く過ごしたものが死ぬ。
そしてこの「ナニカ」が暗黒大陸由来のものであることは、原作にて示されているも同然であった。
ゆえに
オレも、あらかじめその事件が起きることを知らなかったらこれを得られることはなかっただろう。
といっても、オレが欲しかったわけではなく、今回のような状況のための下準備であったのだが。
「気に入ったか?」
「うん、うん……! すごいねコレ、本当にすごい……!」
「ボス、静かにな」
明らかに声のトーンが上がったボスをなだめる。
外の警護を忘れるほど気に入ったのなら問題ないだろう。
「ボス、
「あっ、うん。成立、占ってあげる!
なにか書くものある?」
そういってボールペンを取り出すボスに、用意していた用紙を手渡す。
「ペンも用意していたが、持ち歩いてるんだな」
「うん。お気に入りのものの方がしっくり来るんだよね。
じゃあ、名前と誕生日、血液型を教えて?」
「……名前って本名?」
「ペンネームでもいいよ〜」
よかった……。親に付けられた名前とか認識できなかったからな。
誕生日と血液型も国際人民データの情報を行政の窓口で貰って初めて知ったくらいだし。
「……で、名前はミチノリと。ヘンな名前」
「うるせえ。気に入ってんだよ」
「ふーん、じゃあ占ってみるね」
──
すると、ペンを構えたボスの腕に天使の羽が生えた、ブサカワ系のマスコットのような念獣が現れた。
ボスはうつろな目のまま、紙にこれから起きるだろう予言を書き連ねていく。
未来予知。特質系の中でも相当特殊だが、型としてはしっかりしているよな。
予言や神託は古くから秘技として多くの宗教・風習に組み込まれたものだ。
自身の未来を占えないという制約や、自身は占いの結果を見ないという無意識の誓約も多くの予言に共通する型となっている。
それらの共通のイメージが下支えとなり、的中率100%と言われるまでの完成度の
「ハイ終わり」
「おう、じゃあ見せてもらうぜ」
そう手渡された紙に記された予言を見る。
つってもオレがやろうとしていることからはそんな大した予言なんて書かれて──。
あなたは赤い灯をかかえて林檎の樹を登るかを迫られる
拾える実があるなら拾い、落ち葉は遠ざけなさい
時が来たら誰よりも雄弁でありなさい
全てに届けば全てが手に入る
蔦は境にしか現れない
蔦は境にしか現れない
樹を登れず蔦もつかめなかったあなたは
残る樹を枯らさないために
六つの棺と共に眠りにつくだろう
「なあボス、あんたの予言ってその月の週ごとに起きることを占うんだよな?」
「うん。よく知ってるね」
「おお……」
原作のクロロのような漫画表現としての省略ではなく、本当に二つの詩しかないみたいだ。
……うん、つまりなんだ。今の段階で一つだけわかることがある。