七大厄災の最弱ですが、リーダーやってます。   作:霧夢龍人

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ホワイト企業

 

 

 

 

「んー!こりゃ凄い、ピッカピカだね。ゼタちゃんシゴデキ〜!」

 

「いえ、それほどでも」

 

綺麗になった中庭をアルカさんと眺めながら、私は謙虚に否定します。

 

それほどでもありますよ、勿論。

何せ私はジーベンスきっての綺麗好きですから。ですがここで謙遜することもまた、社会を生き抜いていく処世術です。

 

アルカさんの褒め言葉に内心ニヤニヤしながら、チェックシートに今日掃除した箇所に印を付けていきます。

 

中庭の清掃、完了。

ベンチの修繕、まる。

壊れた噴水の簡易修理、はなまる。

 

今日一日でかなりの仕事を片付けました。

 

「いやぁ、助かるよ。新人さんって普通はもっとゆっくり覚えるもんなんだけどね。ゼタちゃん、仕事覚えるの早いから教え甲斐があるよ」

 

「そうでしょうそうでしょう」

 

「あはは、そんな謙遜しなく……え?」

 

「いえ、アルカさんの教え方が上手いので覚えやすかっただけです」

 

「あ、あぁ。なるほどね」

 

褒められるのは大好きなので、危うく不自然な目を向けられるところでした。アルカさんはイマイチ納得してなさそうですが、ギリギリ誤魔化しきれたと思います。

 

上司はいい人だし、殺される心配をしなくてもいい。給料も出るし、間違いなく最高の職場ですね。やはりこのまま用務員に永久就職……いや、出来なさそう。

 

ジーベンスを辞めたところで逃げ切れる気がしません。特にリアから。

他の子たちも何故か私を慕ってくれているみたいなので、永久就職は難しいでしょうね。

 

ため息を吐きながら詰所に戻る私たち。ボロボロの詰所に辿り着くと、アルカさんは今日使った道具を手際よく片付け始めました。私も箒や雑巾を所定の位置へ戻し、チェックシートを提出します。

 

「よし、今日の仕事は一旦終わりかな」

 

「もうですか?」

 

「うん。ウチはホワイトだからね……ゼタちゃんは用務員寮でいいんだよね?鍵と地図渡しとくから、明日は九時から出勤してきて」

 

「かしこまりました」

 

なんということでしょう、もう仕事は終わりみたいです。

こんなので給料が発生しちゃうなんて最高すぎます。私が一番ジーベンスの中で貧乏なので、かなり有難いですよ。

 

何故お金が無いのかって?

推しの聖女ちゃんに投げ銭してるからですが、何か問題でも?ちなみに今の所持金は三百八十円です。うめえ棒三十本は買えますね、えへ。

 

「大丈夫?なんか今、物凄く情けない顔してたけど」

 

「気のせいです」

 

「そ、そう?ならいいけどさ」

 

私が情けない小心者なのは自分が一番知っていますよ……。

遠い目をしながらいそいそと私服に着替え、アルカさんから貰った鍵を手に取ります。

 

地図の通りに進んでいくと、寮が見えました。とは言っても、寮とは思えないくらいボロボロでしたが。住んでいる人の気配はあまり感じられませんし、お化け屋敷のようにしか見えません。

 

「おばけなんて居ないっさ、おばけなんてうっそさ〜」

 

ゴースト系の魔物は苦手なので、内心ビクビクしながら割り振られた部屋番号に入っていくと……中は思ったより綺麗のようです。ブルーベリー色の怪物もいないですし、やはり見た目がボロいだけですね。

 

四次元ポケ……ではなく、異空間保存袋から纏めといた荷物を取り出して床に直置き。そのままスプリング硬めのベッドにダイブします。

 

「これが自由ですか──最高ですね!」

 

我ながら気持ち悪い笑みになっていることでしょう。

それでも美人なのは疑いようのない事実ですけどね。ここテスト出ますよ?

 

労働の楽しさと青春の素晴らしさを痛感しながら、財布を開きます。中はやはり小銭の乾いた音が……あれ?待ってください。いつの間にかパンパンに万札が入っていますよこれ。

 

少し怖くなって万札を抜き取れば、間に白い紙が挟まっていました。しかも何か書かれています。

 

『リーダーへ。

お金がなさそうでしたので、個人のお金から入れておきました。ジーベンス共用の金庫からは一切捻出していません。これで任務に当たってくださいませ。

 

追記:聖女とかいうアバズレなんかより、あ・な・たの素晴らしい秘書が近くにいるので、その方とデートされた方が有意義にお金を使えると思います♡』

 

「……うん、これは捨てましょう」

 

見なかった事にして、そのお金を異空間保存袋にツッコミました。字面も内容も完全にリアからのでしたが、今の私はただの用務員さんなので無関係です。

 

私の辞書に七大厄災の文字はありません。

 

明日も頑張りますよー!

 

 

 

───☆

カリンside

 

 

 

この世界に来て約一週間。

私は今日も今日とて、中庭で鍛錬に勤しんでいた。後二日後には、私たちが入れるクラスが作られるらしいんだよね。つまり、学園に建立されている寮で過ごして、起きたら鍛錬するっていう生活とはおさらばになる。

 

授業を受けられるってことだよ!

 

「これでお金も入るとか、最高じゃん!」

 

「うわっ、びっくりした。いきなり叫ばないでよ」

 

「ごめん、アンジュ。でも学園側で私たちの食事とか負担してもらってたのに、ここからお給料まで入っちゃうとか有り難すぎてさ……学園長様々だよ」

 

「そりゃあ魔王を倒して貰いたいからじゃないの?かなり太っ腹だとは思うけれど」

 

そう言いながら杖を構えるアンジュは、転移したての時とは大違いに様になってる。私も少しは成長してると思うけど、まだ人と戦うのは苦手かなぁ。

 

とはいえ魔王を倒さないといけないし、大天使をいずれぶん殴るならもっともっと強くならなくちゃいけない。

 

「おい、お前たち。無駄口を叩く暇があるなら練習に打ち込めよー」

 

「っ、はい!ごめんなさい!」

「もう、カリンのせいで注意されたじゃないの」

 

動きの止まった私たちに野次が飛んだ。

学園側の受け入れが完了するより前に、クラスメート全員の面倒を見てくれた教師の声だ。

 

名前は、“グレルギオン=ザッカート”さん。長いから、皆はグレンさんって呼んでる。大雑把で厳しい人だけど、トップレベルの冒険者だったらしい。剣一つで孤児から成り上がったんだって。

 

ハンターランクは、確か『6』だったかな。

私たちにはまだよく分からないけど、普通の冒険者なら『3』まで行ければ一流みたい。つまり、かなり凄い人ってことだ

 

粗暴な感じではあるけどイケオジって雰囲気はあるから、他の女子たちが「いいよね、あぁいうオラオラ系……」なんて言ってた気がする。私はタイプじゃないけどね。

 

逆に男子たちは、“ステナ=バーバリー”さんっていう女性に首ったけだ。私が見て恥ずかしくなるくらい露出が激しい服を着てるからだとは思うけど、めちゃくちゃ美人さんだから納得かな。

 

まぁ、昨日出会った用務員さんが信じられないくらい美形だったから……それと比べるとって感じ。

 

「よーしやめ!お前らも授業を受けるみてーだから、基本的な動きは終わりだ。ここからの応用は学園でしっかりと習え」

 

「「はーい」」

 

グレンさんの問い掛けに数人が声を上げて返事をする。

それを見て満足そうな顔を浮かべた後、指を立てて大口を開いた。

 

「俺から伝えることは三つある!

一つは、お前らが魔王を倒してくれると期待してるから、学園側は受けて入れてる。つまり、勇者だからとかこつけて鍛錬しないようなら簡単に切り捨てられるぞ。

 

そして二つ目。

アルヴェインは貴族も王族も通う由緒正しき学園だ。

実力主義でカースト制度はないが、万が一失礼を買わないようにしとけ。いいか?権力はお前らが思ってるよりめんどいぞ」

 

確かに面倒くさそう、と私は頷いた。

 

グレン先生が言うには、今年の学園の応募者の中には他国の王太子も来てるらしいからね。とんでもないイケメンって聞いたけど、機嫌を損ねたらどうなるか分からないから……うーん、やっぱり興味より怖さが勝つかも。

 

私の『はいぱーさいきょーぶれーど』も上手に扱えない今は、下手に注目を浴びるよりもコツコツ鍛錬した方が良さそう。

 

「そして最後。これはどっちかって言うと警告だ。魔王を倒す使命を与えられたお前たちには、これからあらゆる困難が立ち塞がると思う。

勿論、ある程度は立ち向かえると思うが──。

 

七大厄災(ジーベンス)”と遭遇したら、何がなんでも逃げろ。

以上だ」

 

「……七大厄災(ジーベンス)?」

 

なんなんだろ、それ。

他のクラスメートも聞いた事ないのか、頭に疑問符を浮かべてる。けどグレン先生の顔は真剣で、それがまるで魔王よりも怖くて恐ろしいものみたいに言ってくる。

 

気になったクラスメート達が詳しく話を聞いてみたら──意味がわかんない情報が沢山出てきた。

 

数年前に存在していた最大勢力の魔王軍が、一夜で壊滅させられたとか。

十年以上続いていた大国同士の戦争が、数時間で終わらせられたとか。

大陸中で暴れていた魔物の群れが、ある日突然絶滅したとか。

 

……何それ、もうその人たちだけで良くない?

悪い人たちじゃないとは思うけど、グレン先生がこんなに危険視してるってことは、やっぱり危ない人たちなんだと思う。

 

この先どれだけ強くなっても、七大厄災とは関わらないようにしておこう……うん。絶対に。

 

私は胸にそう誓った。

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