「クソォ! 逃したか!」
草原を駆け抜ける怪しげな魔法使いたちの一団。
その先頭を走る男が、悔しげに吐き捨てた。
彼らは一見すると魔法使いの集団に見える。だが、その装備は統一されており、身につけている衣服や鎧は明らかに高品質な魔法装備だった。
その中でも一際目立つ男がいた。
頬を斜めに走る一本の傷。
鋭い眼光。
そして部隊を率いる者としての落ち着いた態度。
彼の名は――ニグン・グリッド・ルーイン。
陽光聖典を率いる隊長である。
「それにしても、隊長! あの王国最強の戦士であるガゼフ・ストロノーフの抹殺なんて、本当にできるのでしょうか?」
部下の一人が尋ねる。
ニグンは走りながら答えた。
「我々は軍人だ。上がやれと言うなら、やるしかない」
「しかし……」
「心配するな。今回、ガゼフ・ストロノーフの武装は万全ではない」
ニグンは不敵に笑う。
「我が国の工作員によって思考誘導された愚かな貴族どもが妨害してくれたからな。さらに、本国から切り札まで預かっている」
「おお! 本国から切り札!」
「それは頼もしいですね!」
「隊長がそう言うのでしたら大丈夫でしょう!」
「王国も愚かなものです」
隊員たちは口々に笑う。
ニグンもまた、作戦の成功を確信していた。
「もう少し先回りするべきだな」
ニグンは速度を上げる。
「総員、行動を開始せよ!」
そして――。
「作戦を開始する!」
その声とともに、陽光聖典の一団は次の村へと向かった。
だが。
彼らの頭上には、誰にも見えない存在が浮かんでいた。
完全不可知化によって姿を消しているアンデッド。
その名は――オーバーロード・ワイズマン。
モモンガによって召喚されたレベル90のアンデッドである。
彼は陽光聖典の一団を発見して以来、彼らの行動を監視していた。
そして、彼らの会話をすべて聞いていた。
その情報は即座に主人へと伝達される。
だが、その最中だった。
ニグンが何かを感じ取った。
「……上空」
足を止める。
「警戒しろ」
隊員たちが一斉に上を見上げる。
そこには――漆黒の影が浮かんでいた。
「エルダーリッチ……?」
誰かが呟く。
オーバーロード・ワイズマン。
その姿は、確かに強大なアンデッドを思わせるものだった。
「なぜエルダーリッチがこんなところに……」
ニグンは警戒する。
だが、すぐに思考を切り替えた。
「構わん!」
そして叫ぶ。
「上空! 警戒!」
「エルダーリッチを発見した!」
「天使を召喚せよ!」
ニグンの命令に従い、隊員たちは次々と魔法を発動する。
「人類の敵を討ち取るのだ!」
光が生まれる。
天使たちが次々と召喚されていく。
しかし――。
オーバーロード・ワイズマンは、そんな彼らを見下ろしていた。
そして、ふと気づく。
「……主から、ご命令を賜り……」
嬉しさのあまり。
完全不可知化が解けてしまっていた。
「……しまったな」
オーバーロード•ワイズマンが呟く。
「主だと!?」
ニグンの顔から血の気が引く。
エルダーリッチを従える存在。
つまり――このアンデッドの背後には、さらに強大な何者かがいる。
「まずい……!」
ニグンの脳裏に警鐘が鳴り響く。
これは人類の脅威だ。
一刻も早く本国へ知らせなければならない。
だが――。
その瞬間。
漆黒の無数の槍が空から降り注いだ。
ズドドドドドドッ!!
「――――ッ!?」
召喚された天使たちが一瞬で貫かれる。
魔法が発動した。
そう認識するよりも早い。
「天使たちは!?」
「どこに……!」
「まさか……やられた!?」
「いつの間に!?」
「漆黒の光が走ったと思ったら……!」
隊員たちが混乱する。
ニグンは辛うじて、その正体を目で追った。
無数の槍。
天から降り注ぐ漆黒の攻撃。
そして――天使たちを一撃で葬る圧倒的な魔法力。
(なんだ……これは……)
ニグンは戦慄する。
(本当にエルダーリッチなのか!?)
いや。
違う。
自分たちは今――。
一体、何を相手にしている?
だが、ニグンはすぐに冷静さを取り戻した。
「……落ち着け」
自分自身に言い聞かせる。
こちらには切り札がある。
最上位天使。
本国から預かった、それがある限り――。
(私は負けない!)
ニグンは懐から魔封じの水晶を取り出した。
最上位天使を召喚する。
その瞬間だった。
「《タイム・ストップ》」
時間が止まった。
世界が静止する。
オーバーロード・ワイズマンは、ニグンが魔封じの水晶を取り出した瞬間に判断していた。
最上位天使が召喚されれば不味い。
ならば――。
その前に奪えばいい。
停止した時間の中を、ワイズマンが動く。
ニグンの懐から魔封じの水晶を奪い取る。
そして――。
「《停滞捕縛》」
全体化。
時間が動き始めた。
「――え?」
何が起きたのか。
誰にも理解できなかった。
陽光聖典の隊員たちは、いつの間にか拘束されていた。
身体が思うように動かない。
まるで時間そのものが停滞しているかのように、彼らはゆっくりとしか動けない。
オーバーロード・ワイズマンは、彼らを見下ろす。
彼らは――貴重な情報源なのだから。
一方、その頃。
モモンガはカルネ村にいた。
村人たちを前に、静かに口を開く。
「実に嘆かわしい」
村長から聞いた話。
度重なる重税。
貴族による横暴。
民を人間ではなく、搾取するための道具のように扱う者たち。
モモンガは腕を組み、考え込む。
そして――。
「それならば、私がこの地……カルネ村の王になって、皆を幸福へ導こうと思うのだが」
村人たちがざわめく。
「……王に?」
「そんな方法が……」
「独立するなんて、考えたこともなかった」
モモンガは頷く。
「どうかね?」
村人たちは互いに顔を見合わせる。
そして――。
「流石、モモンガ様だ!」
「ぜひお願いします!」
「私たちはモモンガ様についていきます!」
次々と声が上がる。
モモンガは少し満足そうに頷いた。
だが、ふと考える。
(待てよ)
(国を作るなら名前が必要だよな)
(モモンガって名前だけだと……なんか格好がつかない)
少し考える。
そして――。
「そうだな」
モモンガは村人たちへ告げる。
「私の本当の名は――」
一拍。
「モモンガ・アインズ・ウール・ゴウンだ」
そして堂々と宣言した。
「よって、ここに――アインズ・ウール・ゴウン国の建国を宣言する!」
「おおおおおっ!」
歓声が上がった。
「是非、私たちを民に迎え入れてください!」
「もちろんとも」
モモンガは微笑む。
「私はこれから、襲撃者の捕虜たちに、なぜカルネ村を襲撃したのかを聞き出さなければならない」
「我が国を襲った不届き者が誰なのか――それを知らなければならないからな」
村人たちは真剣に頷く。
「後日、改めて打ち合わせをしようじゃないか」
そして、安心させるように続ける。
「ああ、心配する必要はない」
「すでに私の配下の者が、影ながらこの村を護衛している」
モモンガは村を見渡した。
「もう、このカルネ村は私の領土だからな」
その言葉を聞いた村人たちは――。
「これで救われる……」
「王国の重税から逃れられる」
「これなら次の冬も越せる……!」
「モモンガ様……」
「私たちの救世主様だ!」
「モモンガ様、万歳!」
口々に感謝を叫び始めた。
モモンガはそんな村人たちを見ながら、静かに頷いた。
カルネ村から帰還したモモンガは、玉座の間へ向かった。
そしてNPCたちを招集する。
玉座の間に集まった者たちを前に、モモンガは口を開いた。
「まず、私が独断で村を救いに行ったことを詫びよう」
「心配させたな」
NPCたちは一斉に首を振る。
だが、モモンガはそのまま続けた。
「それでだ」
「私は、あの村を保護しようと考えている」
「もはや王国は、領土をまともに統治できていない」
「それならば――私があの領土をもらってもいいだろう」
そして、はっきりと告げる。
「私は、アインズ・ウール・ゴウン国の建国を宣言する」
「それに伴い、私は名を改めた」
「これから私は――」
「モモンガ・アインズ・ウール・ゴウンだ」
その瞬間。
NPCたちが一斉に跪いた。
「ご尊名、しかと承りました!」
「モモンガ・アインズ・ウール・ゴウン様、万歳!」
「いと尊きお方――モモンガ・アインズ・ウール・ゴウン様!」
「ナザリック地下大墳墓の全ての者より、絶対の忠誠を!」
玉座の間に声が響き渡る。
モモンガは少しだけ苦笑した。
(やっぱりこうなるよな……)
そして、話を続ける。
「実効支配を通じて、周囲に知らしめていくのだ」
「民が望む王が、その地の王となる」
「誰が何と言おうと、その地に住む民が満場一致で私を王に望むのであれば――私はその願いに応えなければなるまい」
「おお……!」
デミウルゴスが感嘆の声を漏らす。
「素晴らしいご計画かと存じます、アインズ様」
「やはり――端倪すべからずとは、モモンガ様のことでございますな」
(だからデミウルゴス!)
モモンガは心の中で叫んだ。
(その『端倪すべからず』ってどういうことなんだよ!)
(何度も言ってるけど、設定に『モモンガは端倪すべからず』って書いてあるのか!?)
しかし、表情には出さない。
魔王然とした威厳を保ったまま、次の言葉を口にする。
「アインズ・ウール・ゴウンを――不変の伝説にせよ」
「世界に幸福をもたらした名にするのだ」
その命令に、NPCたちは一斉に頭を下げた。
「はっ!」
新生アインズ・ウール・ゴウン。
ナザリック地下大墳墓。
そこに属する者たちは、今――。
同じ目標へ向かって動き始めた。
理不尽を撲滅する。
世界に幸福をもたらす。
そのための新たなる国を作る。
玉座の間に集まったNPCたちから、歓声が上がる。
「流石、アインズ様!」
「我らも理想郷を作り上げましょう!」
モモンガはその様子を眺めながら、心の中で静かに思った。
(まずは、皆が幸せに暮らせる場所を作る)
(そのためにも……万全な状態にしておかないとな)
モモンガはふと、何かを思い出した。
「最後に――パンドラズ・アクター」
「はい! 父上!」
元気よく返事をするパンドラズ・アクター。
「宝物殿にあるアイテムの整理確認は、そろそろ終わりそうか?」
「明日には終了する予定でございます」
「そうか」
モモンガは頷いた。
「ならば次は――」
少しだけ言葉を選ぶ。
「かつての仲間たちの部屋も整理しなければならないな」
「……なんと!」
NPCたちの表情が変わる。
「至高の御方々の部屋を……」
「そうだ」
モモンガは静かに答えた。
「もう、戻ってこないのだから」
その言葉は少し寂しげだった。
「新生アインズ・ウール・ゴウンが、有効活用しなければならない」
「それをお前たちに伝えておきたかった」
パンドラズ・アクターは深く頭を下げる。
「問題ございません」
「至高の御方も、きっと――アインズ・ウール・ゴウンのためになるのであれば、反対なされないでしょう」
「そうか」
モモンガは少し笑った。
「そうだよな」
そして、玉座の間を後にした。
扉が閉まる。
その瞬間。
モモンガが放っていた圧倒的なオーラが霧散した。
NPCたちは一斉に息を吐き出す。
「……今日のモモンガ様も、すごかったね」
アウラが呟いた。
「当たり前でありんす」
シャルティアが胸を張る。
「モモンガ様の真のオーラを初めて感じたときは、気絶するという失態を犯してしまったでありんすが……」
「今では、ゾクゾクと楽しめるようになりんした」
「ちょっと!」
アウラが呆れた顔をする。
「あんたね!」
「楽しむって……モモンガ様に失礼じゃないの?」
「それに、あの時は本当に心配したんだからね!」
「それは……」
シャルティアが少し黙る。
「まあいいよ」
アウラは肩をすくめる。
「悪気はないと思うしね」
その時。
デミウルゴスが口を開いた。
「さて」
「ここで重大な話をしましょう」
二人がデミウルゴスを見る。
「私、デミウルゴスはモモンガ様に尋ねました」
「国を建国するのであれば、王妃が必要なのではないですか、と」
「王妃!?」
アウラとシャルティアの表情が変わる。
デミウルゴスは楽しそうに続けた。
「すると御方は――」
「『それもいいかもな。しかし、相手がいないよな。アルベド? うーん。シャルティア? アウラ?? それはダメだよな。子供だ』」
「……と、おっしゃりました」
「――――!」
三人の守護者の顔が一瞬で真っ赤になる。
アルベドは今まで、守護者統括としてモモンガに不敬を働かないよう、自分の欲望を必死に抑えていた。
だが。
(モモンガ様が……お望みなら……)
瞳が輝く。
(今日の夜くらいに、モモンガ様の寝室へ……)
(これは確か……夜這い、でしたよね?)
一方、シャルティア。
(モモンガ様ぁ……)
(わらわを求めてくださるのでありんすかぁ?)
(アウラの名前が一瞬でも上がったのは気に入らないでありんすが……)
(ペロロンチーノ様……)
(わたしはあなたのエロゲーキャラではなく、モモンガ様のものになりそうでありんすぅ……)
頭の中で勝手に物語を展開させる。
その結果――。
シャルティアの様子はさらに大変なことになっていた。
そしてアウラは――。
頬も耳も真っ赤。
「え……」
「モモンガ様……」
「私を……そんなふうに……?」
「えー……どうしよう……」
「モモンガ様が……」
完全にウブな少女の反応だった。
そんな三人を眺めながら。
デミウルゴスは――。
ニヤニヤと笑っていた。
それからしばらくして。
カルネ村へ、一団が到着した。
先頭に立つ男。
ガゼフ・ストロノーフ。
王国戦士長。
その後ろには王国戦士団が続いている。
カルネ村を護衛するため、モモンガが残していった召喚モンスターたちは彼らを警戒していた。
だが――。
敵性反応はない。
そのため、彼らは様子を見るに留めていた。
ガゼフは村の前で馬を止める。
そして声を張り上げた。
「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長――ガゼフ・ストロノーフ!」
「この近隣を荒らし回っている帝国の騎士たちを討伐するため、王命を受け、村々を回っている者である!」
村長が代表して前へ出た。
「王国戦士長様……」
「村を救いに来てくださって、ありがとうございます」
ガゼフは頷く。
「それで――襲撃者はどこへ行った?」
村長は答える。
「実は……」
「この村は、すでに襲撃された後なのです」
ガゼフの顔が険しくなる。
辺りには、まだ血の匂いが残っていた。
「襲撃者はいったいどこへ?」
村長は深々と頭を下げた。
「我らカルネ村の救世主」
「そして、新たなる主――」
「偉大なる魔法詠唱者、モモンガ・アインズ・ウール・ゴウン様に救われたのです」
「……何?」
ガゼフが目を見開く。
村長は続ける。
「私は村長として宣言します」
「只今をもちまして――」
「カルネ村は、アインズ・ウール・ゴウン国の一員となります!」
「…………」
ガゼフは言葉を失った。
「それは……どういう?」
村長は説明する。
「私たちは、ゴウン様に救われたのです」
「もう、王国の民としてはやっていけません」
「度重なる重税」
「そして、貴族たちによる横暴」
「もう、限界なのです」
ガゼフは黙り込む。
王の剣として。
王国戦士長として。
王国民が離反するのであれば、それを止めるべきなのか。
しかし――。
王国の現状を知らないわけではない。
村人たちの言い分も理解できる。
そして何より。
「モモンガ・アインズ・ウール・ゴウン……」
その人物がどれほどの強者なのか。
今の話だけでは分からない。
下手に敵対するのは危険だ。
ガゼフ一人の判断で決めていい問題ではない。
「意思は変わらないか?」
「はい」
「……そうか」
ガゼフは少しだけ目を伏せる。
「仕方がない」
そして言った。
「その魔法使い様には――」
「王国の民……」
一瞬、言葉に詰まる。
「いや」
「もう、王国の民ではないのだったな」
「だが――」
「かつて王国の民だった者たちを救ってくれたことには、感謝していると伝えてくれ」
村長は頭を下げる。
「はい」
「次にお会いしたとき、しかとお伝えいたします」
「そうか」
ガゼフは振り返る。
「いくぞ!」
王国戦士団が動き出す。
彼らもまた、村人たちの心情を理解していた。
今の王国の状況なら――。
より良い条件を提示された者たちが、国を変えたいと思うのも無理はない。
馬を走らせながら、ガゼフは考えていた。
漆黒の魔法使いが村を救った。
そして――。
カルネ村は、その者の支配下に入った。
アインズ・ウール・ゴウン国。
聞いたことのない国。
いや。
今、誕生したばかりなのだろう。
(これは……不味いことになった)
ガゼフは眉をひそめる。
どれほどの実力者なのか分からない。
だが――。
王と名乗るほどの人物だ。
しかも、その者が村を襲った敵を倒したという。
(もし、どこかの国が私を始末するために集めた戦力さえ倒したのだとすれば……)
(その強さはいかほどなのだ?)
王国には、魔法使いを侮る風潮がある。
愚かな貴族たちが暴走して――。
カルネ村へ軍を差し向ける可能性もある。
だが、今のカルネ村は違う。
あの魔法使いの領土なのだ。
(勝てるのか?)
しかも。
村人全員がアインズ・ウール・ゴウン国の民になることを望んでいる。
やりようはある。
だが――。
相手にも、十分な言い分がある。
「……」
ガゼフは黙って馬を走らせた。
その背後。
王国戦士団の副長もまた、カルネ村を振り返っていた。
副長は苦々しく呟いた。
(こうなることは……分かっていたんだ)
(むしろ、遅かったくらいだ)
今の王国。
腐敗した貴族。
重税。
民を顧みない政治。
このままなら――。
「クソォ……!」
拳を握る。
(このまま王国は……瓦解してしまうのか)
その頃。
ナザリック地下大墳墓。
捕虜として連れてこられた陽光聖典の者たちは、拷問官ニューロニストによって尋問されていた。
「……」
怒り。
それは静かな怒りだった。
「こんな……」
「ふざけた計画を立てたのは誰だ?」
モモンガの周囲から、異様な気配が立ち上る。
捕虜たちに施されていた誓約魔法。
陽光聖典の者たちは、情報を漏らせば即死するような誓約をかけられていた。
だが――。
(ワールドネガティブタッチなら……解除できるかもしれない)
試してみる。
結果――。
解除できた。
ワールドエネミー化したモモンガの力は、元々のゲーム時代の常識すら超え始めている。
そのため、尋問によって情報を引き出すことができた。
少しずつ真実が暴かれていく。
今回の作戦。
ガゼフ暗殺。
カルネ村を含む周辺村落の襲撃。
そして――。
その背後にある国。
法国。
そして真相を知ったモモンガは――。
ゆっくりと立ち上がった。
モモンガがオーラを解放する。
瞬間。
捕虜たちの顔色が変わった。
「……神……」
「神よ!」
「あなたこそが……偉大なる御方……!」
陽光聖典の隊員たちは、その圧倒的な気配を前に、モモンガを神そのものと錯覚する。
「違う」
モモンガは冷たく否定した。
「私は神ではない」
そして――。
「お前たちのような薄汚い連中の神になるつもりもない」
円卓の間。
新生アインズ・ウール・ゴウンのメンバーが集まっていた。
中央には、今回の事件に関する資料が並べられている。
デミウルゴスが資料を手に取り、静かに口を開いた。
「アインズ様」
「この法国という国――」
一度言葉を切る。
「潰すべきでしょうか?」
モモンガは黙って聞いている。
デミウルゴスは続ける。
「もちろん、この国に住む全ての人々が今回の行為を望んでいるとは思いません」
「少なくとも――」
「今回の作戦を主導した上層部は始末するべきかと」
「そして、私たちの手によって、より綺麗な国へと変える」
「それが最善ではないでしょうか」
モモンガは腕を組む。
(法国……)
(今回の件を考えると、放置はできない)
(だが、国民全員を敵にする必要はない)
「……デミウルゴス」
「はっ」
「まずは情報を集める」
「今回の一件に関与した者を特定し、その責任を明確にする」
「そして――」
モモンガは資料を見る。
「二度と同じことをさせないための手段を考える」
「御意」
こうして。
モモンガとデミウルゴスの意見を擦り合わせながら――。
一つの計画書が作られていく。
その名も――。
『法国包囲網計画書』
そして最後。
円卓の間で新たな議題が上がった。
アイテム整理についてである。
パンドラズ・アクターが資料を手に、モモンガへ報告する。
「モモンガ様」
「宝物殿の整理が完了しました」
「そして現在は――」
一瞬だけ言葉を詰まらせる。
「至高の御方々の自室を、恐れ多くも整理させていただいております」
モモンガは頷く。
「そうか」
「そこで――」
パンドラズ・アクターが妙に嬉しそうな顔をする。
「ワールドアイテムを発見しました」
「……何?」
モモンガの目が見開かれる。
パンドラズ・アクターは両手を広げ――。
「ワールドアイテム!」
「――世界を変える――!」
「…………」
円卓の間に沈黙が落ちる。
モモンガのこめかみに青筋が浮かぶ。
「パンドラズ・アクター」
「はい!」
「ふざけている場合ではない」
「失礼いたしました!」
モモンガは身を乗り出す。
「誰の部屋から見つかった?」
パンドラズ・アクターは資料を確認する。
そして――。
「ああ」
「るし☆ふぁー様ですね」
「…………」
モモンガの脳裏に、かつての記憶が蘇る。
ギルドメンバーたち。
アインズ・ウール・ゴウン。
そして――。
るし☆ふぁー。
「……あの野郎」
モモンガは少しだけイラッとした。
「俺たちに黙っていたのか?」
円卓の間にいたNPCたちは、その言葉を聞いて一斉に緊張する。
しかしモモンガは、昔の仲間を思い出しながら――。
ほんの少しだけ懐かしそうに笑っていた。