マッドティーパーティーが往く!! 作:ユメ先生
「……」
「“アリス、なんでお説教なのか、分かるかい?”」
その日、アリスはシャーレのオフィスで正座をさせられていた。
「つーん。アリスは先生の言うことを聞きません」
「“!?”」
「アリスは知ってます!! 先生、愚かな加齢は堕落です!! 啓蒙が低すぎます!!」
「“ぐはッ!?”」
アリスはそっぽを向いてそう言った。
まさかあんな純粋無垢なアリスからの暴言に、先生は……ついでに作者とその他大勢に無差別攻撃を放つアリスの言葉に撃沈した……。
「おほん」
倒れた先生のフォローをするように、カヤが前に出た。
「天童さん。あなたは今日何をしましたか?」
「カイザー本社を襲撃しました!! 今日のアリスはワタリガラスの傭兵ですから!!」
「では何で攻撃したんです?」
「?? 企業はだいたい悪い人たちでは? アリスは依頼を受けて、カイザー本社襲撃のミッションを受けました!!」
「そして、その後依頼主のライバル企業を壊滅させた」
「はい!! 『騙して悪いが』と依頼料を踏み倒されたので、依頼主の企業も全部襲撃しました!!」
「うーん、この」
「頭部に瞳ユニットを頂いたアリスは啓蒙がアップしているので、これは裏切りだと気づきました!! どこもかしこも、獣ばかりです!!」
カヤはリンの方を見た。
リンも力無く首を振った。
「“……アリス、そんなことしちゃ危ないでしょ?”」
「先生、貴方はもう狂ってます!!」
「“え……”」
「稼ぎ周回プレイは巡り、終わらないものじゃありませんか!!」
アリスの主張に、先生も困り果てている。
「要するに、お金が無いということでしょう?」
シャーレの経費を厳しくチェック中のアオイがそう言った。
「ついでに思思春期特有の反抗期が来ている感じですね」
カヤがそうぼやいた。キヴォトスは学生社会なので、反抗期なんて麻疹のようなものだ。
「“えーと、なんでお金がないのかな?”」
「つーん」
「“ぐはッ”」
元々反抗的な生徒は数多く目にしてきた先生だったが、知り合いの生徒の反抗期に直撃ダメージを受けてしまった。
アリスは元々純真無垢だったのだから猶更である。
「ユウカも言ってました!! 愚かな出費も堕落だって!! なのに……」
「“ぐはッ”」
アリスの発言に、またもや先生が被弾した。
先生の人徳が通用しない反抗期アリスに、皆が困り果てていると。
その時、シャーレのオフィスの自動ドアが開いた。
「皆さん、今戻りました」
「あ、会長。外回りお疲れ様です」
現れた人物を認めて、リンがそう言った。
彼女はシャーレの生徒会の、生徒会長。
白いシャーレの制服と金髪を揺らして入室し、おや、とつんつんしているアリスを見やった。
「アリスさん、こんにちは。先生にお説教をされているのですか?」
「アリスは悪くありません。みんなの思考の次元が低すぎるのです!!」
会長は、なるほど、とアリスよりもよほど人形めいた表情で頷いた。そして、そのもちもちしてそうな頬に笑みを浮かべた。
「アリスさんの人間性もそこまでのようですね」
「!?」
「あなたもどうせ、そうなるのでしょう?」
「むむむ……」
アリスは腕を組んで唸った。
「……先生は正しいです」
そして、肩を落としてそう呟いた。
それからアリスは訥々と話し出した。
事の発端は、ゲーム開発部にリトルシスターがやってきたことだった。
「えっへっへ、部費で買っちゃった。アリスが喜ぶと思って!!」
「まあいいんじゃない? ゲームに友人は付随してないしね」
モモイの衝動買いだったが、ミドリはその買い物を肯定した。
「お姉様とご一緒できて、アリスはとっても嬉しいです、とアリス10032号はオリジナルに媚びを売ります!!」
「はい、アリスも妹が沢山出来て嬉しいです!!」
最初はアリスも喜んでいたのだが。
「な、何て呼べばいいかな。リトルシスター、は商品名だし」
「単純に、妹アリスでいいんじゃない?」
「……そこでアリス妹にしないだけ理性を感じたよ」
部室に新しい仲間が参入したことに、ユズたちも純粋に喜んでいた。
「あ、モモイ、新しいゲームを買ったんですか? アリスもやりたいです!!」
あくる日、モモイは妹アリスと新作RPGをプレイしていた。
「うん、今妹アリスと対戦中だからちょっと待ってて!!」
「モモイ、ボスモンスターの登場です、とアリス10032号は警告します!!」
「わぁ、本当だ、サポートお願い!!」
「了解です!!」
その後、モモイは妹アリスのサポートを受けて無事クリアした。
「いやぁ、妹アリスはすごいよね、サポートも的確だし」
「自分のやりたい自機を譲ってくれるしね」
横から観戦していたミドリが若干拗ねたようにそう言った。
「はい、アリスは皆さんのサポートのために開発されましたから、モモイは自由なキャラを選んで構いません、とアリス10032号は一歩引いた立場で言いました!!」
「いやぁ、友達が買えるなんて良い時代になったね!!」
モモイは妹アリスに抱き着いてそう言った。
それを見たアリスは、言いようのない思考論理のバグを検出した。
「よし、勝った。妹アリスちゃん、AIの強さを上げて」
「はい、ユズ。人間の限界まで反応速度や判断基準を上昇させます、とアリス10032号はユズのプレイスキルに戦慄しながら歯ごたえのある対戦相手を務めます!!」
ある時はユズと一緒に極限まで対戦ゲームをしたり。
「ほら、これどう? 新しい服を買って来たんだ」
「わぁ、ミドリ、ありがとうございます!! と、アリス10032号は感謝を示します!!」
「妹アリスは生徒じゃないから、幾らでもオシャレできて羨ましいなぁ。同じ妹同士、仲良くしようね」
「はい、妹同盟の結成です、とアリス10032号はミドリと盟約を結びました!!」
ある時はミドリと仲良くしていた。
「……」
アリスの思考ルーチンに、そして感情回路に度々ノイズが発生する。
そして、その日。
「お姉ちゃん、なにこれ!?」
ミドリが部室に突入してきて、そう叫んだ。
「え、なにって?」
「ほらこれ!!」
「あッ」
ミドリが突き付けたのは、リトルシスターの請求書だった。
「部費で買ったって言ってたのに、なんで請求書がくるの!?」
「えーと、それは……」
「アリスが説明します!! このアリス10032号の購入方法はリボルビング払いになっており、あと11回の支払いが残っています、とアリス10032号は残酷な現実を突き付けます!!」
妹アリスの言葉に、ミドリは膝を突いた。
「こんなお金、払えるわけが」
「話は聞かせてもらったわ」
するとその時、部室のロッカーからヌッとユウカが現れた。
ちなみにこの部室のロッカーに居たのは、ユズ成分を補給していたからである。
「げッ、ユウカ……」
双言が恐怖に慄く。
「そうね、モモイ。一か月私の妹メイドになって、私の身の回りの御世話をしてくれたらリトルシスターの代金は全額立て替えてあげるわ」
「そ、そんな……」
「まさかユウカ、これを狙って……」
「なんのことかしらね、ミドリ」
ふふふ、とユウカは笑みを崩さない。
「ミドリも一緒で構わないわよ。それなら半分の期間になるけれど、その場合ミドリは私の姉メイドとして、毎日仕事に疲れた私を甘やかしてもらうわ」
「まさかの双子の姉妹逆転プレイ……アリス10032号はユウカの要求に恐れ戦きます……」
大魔王の要求に、双子が屈服しようとした時だった。
「あ、そうだ、アリス助けて!! たしかリトルシスターの開発協力して、凄いマージンをもらったって言ってたよね!!」
「……はい」
モモイが縋るようにアリスにそう言った。
アリスはセミナーの量産型アリス計画に協力し、十年は遊んで暮らせるだけのマージンが振り込まれていた。
「呆れた。友人の財布を当てにするなんて」
「だって、アリスの妹だし……」
「お姉ちゃん、流石にそれは引くよ……」
「うぐぐ……」
これにはユウカも実の妹も呆れていた。
「お姉さま、お金のやり取りは友情を崩壊させる最たるものです、とアリス10032号は主張します」
「……アリスは、アリスは……」
アリスは言った。言ってしまった。
「アリスは、妹なんていりません」
アリスの話を聞いて、シャーレのオフィスは沈黙に包まれた。
「なるほど、反抗期の正体はそれでしたか」
「ですがそれは誰もが通る道です。ある意味では心の成長に伴う痛みのようなものです」
カヤが口火を切り、会長は頷きながらそう言った。
「だから、アリスさん個人ではなく、ゲーム開発部としてお金を稼ごうとしている、そういう訳ですね」
「はい……。ユズも格闘ゲームの大会の優勝賞金で資金を調達するつもりのようです。
アリスの妹のために、モモイとミドリはドラゴンが待ち受ける洞窟に囚われてしまいました……」
しゅんとなったアリスは、そう呟いた。
「“だったら、私達も協力できるね”」
「先生?」
復活した先生が、悪戯っぽく笑ってこう言った。
それから。
『……ミッションの概要を説明します』
アリスの視界に、モニターが表示され、通信が入る。
『依頼主はトリニティ総合学園。
依頼内容は、最近トリニティで勢力を伸ばしつつあるテロ組織の壊滅。
主にトリニティ生を中心に活動しており、生徒会はこれを醜聞として正義実現委員会の出動を渋っています。
そこで、我々の出番というわけですね。彼女達が捕まえれば、記録に残りますが我々は違います。
この件を片付ければ、アリスさんへトリニティの覚えが良くなると思われますので、悪い話ではないでしょう。
では、この程度の相手に手こずるとは思えませんが、健闘を祈ります』
「了解しました、アリス、出撃です!!」
シャーレの会長の声に、アリスは飛び立った。
リトルシスターのマージンを全てつぎ込み、リオとエンジニア部によって魔改造と新武装を引っ提げ、飛行ユニットを装備したアリスがトリニティ自治区へと降り立った。
「システム、索敵モード!!」
『はいはい、向こうから共有したエネミータグを表示するよー』
気の抜けたモモイの声が通信越しに聞こえ、アリスの視界のマップに敵性存在がタグ付けされた。
『まだ距離がありますが、エネルギーは節約して接近するべきでしょう。油断はしないように』
「了解です!!」
カヤの通信に、アリスは答えて両足に装着したブーストユニットを小刻みに吹かしてぴょんぴょんジャンプしながら現場の方へと向かう。
すると、目的地付近のビルが爆発した。
『鎮圧対象の活動が活発になっているようですね。
テロ組織ということは、何らかの思想があると思われますが、相手方の主張はなんでしょうか?』
『ええと、資料によると──』
リンの声に、アユムが答えようとした時だった。
「モモフレンズ2、制作はんたーい!!」
ドカーン、とアリスの近くで榴弾が炸裂した。
射線の先から、戦車にハッチから紙袋を被って顔を隠した生徒が、メガホンで喚いていた。
「コンテンツを食いつぶす、悪徳監督の交代を我々は赦しません!!」
「前監督を呼び戻せ!!」
「スポンサーの意向なんて知るか!!」
「私達は、私達のモモフレンズを取り戻すまで抵抗を諦めません!!」
主犯らしき生徒に同調して、随伴している生徒達が叫んだ。
『……頭のオカシイ人たちのようです』
『“うーん、気持ちはわかるけどなぁ……”』
『先生?』
『“……なんでもないです”』
通信越しに先生がリンに睨まれる気配がしていた。
当然、テロ組織の暴走に民衆は逃げ惑っていた。
「ズルッ、ズルズルッ」
「アツコ。蕎麦なんてすすっている場合か。退避するぞ」
偶然立ち食いそばの屋台に居た一般通過サオリが、暢気に器を持ってそばを啜っているアツコの肩を揺すった。
「ああ、すごく美味しい。暗く濁ったそばつゆにそばが合うね」
「言ってる場合か」
器に口を付けてそばつゆを啜って湿った音を響かせながら、アツコはサオリに連れられ退避していった。
『目標を視認。攻撃を開始してください』
「はい、今日の為に新調してきた新武装のお披露目です!!」
アリスは歩兵用とは思えないクソデカレーザーライフルを構え、引き金を引いた。
「導きの月光よ!!」
カァコォン!! と独特の発射音と共に、レーザー弾が敵戦車に着弾した。
爆音と共に戦車がひっくり返る。
テロ組織はやはり烏合の衆だったのか、アリスの圧倒的な火力によって凱旋一色。
あっという間に一掃され、鎮圧された。
『テロ組織の壊滅を確認。ミッション終了です。
アリスさん、こちらに帰投してください』
「了解です、アリス帰投します!!」
目的を達したアリスは、背中のブーストユニットを吹かして飛んで行った。
「折角ウタハ先輩達に導きの聖剣を作って貰っていますし、この調子なら、次のミッションはブレードオンリー、ブレオンのアセンでも大丈夫そうです!! アリスは高ランクのミッション目標達成を目指します!!」
『あの連中はホント……』
楽しそうにしているアリスの声に、カヤの溜息が聞こえる。
シャーレに帰投し、装備を外したアリスがロッカールームにカバンを取りに向かった。
「あれ、このロッカー、使用中です……」
いつもは誰も使用していないロッカールームに、ネームプレートが付けられていた。
名前は、『空崎ヒナ』とある。
「はッ、これはなにかアイテムが隠されている予感です!!」
アリスは勇者行為を行おうと、ロッカーに手を伸ばした。
が、その腕は掴まれた。
「ロッカー漁りとは感心しないわね」
「わわッ」
いつの間にか背後にいたヒナが、アリスの腕を掴んだのだ。
「でも分かるわ。他人の私物は気になるわよね」
「あわ、あわわ……」
「……?」
アリスは何らかのトラウマを刺激されたのか、しばらくプルプルと震えていたのだった。
言動で最近何のゲームをプレイしたか分かるタイプのアリス。
最後のシーンはナギサじゃないんかい、という。
皆さんがちりばめたネタを拾ってくれて嬉しいです!!
作者もパロディ全開で楽しいですね!!