マッドティーパーティーが往く!!   作:ユメ先生

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ナギサとロールちゃん

 

 

 

 あくる日、桐藤ナギサは調理設備が充実したセーフハウスの厨房で、明日のお茶会に出すロールケーキの生地を焼いていた。

 

 焼き上がった生地の粗熱を取り、端を切って正方形に形作る。

 そうして出来たスポンジに生クリームを塗り、小さく切った色とりどりのフルーツを乗せたりして、生地を巻く。

 

 プロ顔負けの出来栄えだったが、ナギサの顔は優れない。

 

「マンネリですね……」

 

 ロールケーキに妙なこだわりを抱いているナギサにとって、この作品は凡庸な出来に過ぎなかった。

 

 彼女は溜め息を吐いて、棚にある洋菓子のレシピ本やネットに上がっているロールケーキのレシピを読み漁る。

 

 どれもこれもありきたりで、目新しいものは何一つなかった。

 

 どうすればもっと斬新で奇抜な、革新的なロールケーキを作れるだろうか。ナギサは苦悩する。

 脳内の幼馴染に意見を求めると、「だったら巻かないロールケーキでも作ればいいじゃんね」みたいな適当なことを言い始めた。これだからミカさんはダメなのです、とこちらも勝手な物言いで溜め息を吐いた。

 

 そうして思い悩んでいると、偶然スマホにニュースアプリのトピックが表示された。

 

 そこには、ゲヘナで起こった騒動が記事になっていた。

 その見出しを見て、ナギサは思った。

 

 ────これだ、と。

 

 

 

 後日、ナギサはシャーレの事務室の床に正座させられていた。

 

「“ナギサ。どうして呼ばれたか、わかるかな?”」

「先生。聞いてください」

 

 ナギサの後ろには、ミカとセイアが仁王像のように腕を組んでブチギレていた。

 

「“うん、言ってみて”」

「ゲヘナの給食部には、ジュリさんという生きた料理を作る方がおります。

 先日、彼女の作ったパンケーキがゲヘナ学内で大暴れしたというニュース記事を見て、私は思ったのです」

 

 ナギサは不敵な笑みでこう言った。

 

「──パンケーキちゃんがあるなら、ロールケーキちゃんがあってもいいのではないか、と」

「“ナギサ。お説教だよ”」

 

 一応話しを聞く構えだった先生は、ナギサにお説教を開始した。

 

 話しは昨日にまで遡る。

 

 

 

「ヒナさん、筋が良いですね!!」

「そうなの? なら嬉しいわ」

 

 ゲヘナ学園の給食部に仮入部しているヒナに、ジュリが野菜の下ごしらえを手伝っていた。

 

 ここ数日、食堂は平和だった。

 西部劇に登場する酒場もびっくりな騒がしさを誇るこの学校の食堂で、ヒナが働いていると知った生徒達は少なくとも騒ぎを起こさなくなったからである。

 

 どっかのバカ四人組がフウカを攫いに来た時は、ヒナと目が合った瞬間に尻尾を巻いて逃げ出したのを見て、フウカは指を差して笑ったくらいである。

 

「ヒナさん、ずっとここに居てくれていいからね!!」

「う、うん……考えておくわ」

 

 フウカに両手で握手をされて、その時は困惑したヒナだった。

 そのヒナも、生来の真面目さと才能で、メキメキと料理の腕が上がっている。

 

 なにせ、給食部は一日中調理をしているのだ。

 嫌でも基礎が身に付く。大人数の料理を作るので、効率を考えて行動せざるをえなくなる。

 

 フウカを見て、ヒナは理解した。料理は如何に手を抜くか、であると。

 例えば、和食は引き算であるとされる。最低限の食材や調味料で、最大限の素材の良さを引き出す。

 逆にフレンチや中華は足し算だ。フレンチはシェフの自己主張であり、料理の味でどのシェフが作ったか分かるとされるほどである。中華も多くの食材の良さを調和させる技術と言える。

 

 つまるところ、ヒナは料理というのは丁寧なモノであると思っていた。

 いかに労力を掛け、努力を重ね、美味しさを引き出すのか、それが料理の真髄であると。

 

 しかし、フウカは違った。

 いかに最小限の労力で、最大限の数量を生み出せるか。それが身体に染みついていた。

 

「ハルナの奴は料理には全力投球するべき、みたいなことを言うでしょうけど、そんな生き方を出来るのはプロ中のプロだけよ。

 料理に真剣なのと、料理に全てを捧げるのは違うわ」

 

 と、ヒナを見て逃げたバカ四人を見てフウカはそんなことを口にした。

 

 フウカは真剣に手を抜いていた。ただ、それは妥協ではなかったのだ。

 和食が引き算で、フレンチや中華が足し算なら、フウカの料理は最大公約数を求める計算だった。

 それは彼女なりの思いやりを最大化させる手法であり、食堂の料理の味が微妙だと言われる所以だった。

 あと、単純に人手が足りなすぎる。それが全てであった。

 

 そして放課後、食材の調達するフウカにヒナが同行しに行った。

 つまり、ジュリがフリーになった。

 

「ヒナさん、すごい早さで上達してるな……」

 

 大型新人の到来に、ジュリはある種の疎外感を抱いていた。

 新人なので付きっ切りであるとも言えるが、食材の調達などいつもフウカが一人でやっている。

 それにジュリが声を掛けられたことはなかった。

 

「やっぱり、私が作る料理は……。ううん、そんなのは技術を磨かない理由にはならないよね!!

 今日は新しくできたパン屋さんに行って、どんな味か勉強しないと!!」

 

 自らの特異な体質に苦悩しつつも、ジュリは己を奮起させた。

 そんな彼女が、最近自治区に出来たパン屋に赴いて、好きなパンを買って帰ったそんな時だった。

 

「ジュリさんですね?」

 

 宿舎に帰る途中、ジュリの目の前に白い制服が躍り出た。

 

「え、あなたは、たしか、ナギサさん?」

「ええ。先日はご迷惑をお掛けしました。今日はその謝罪へと」

 

 ナギサの事は、ジュリも知っていた。

 校内でも派手な万魔殿と、ずっと仲が悪いトリニティの生徒として有名だからだ。

 

「実は、私もお菓子作りなどを趣味にしておりまして」

「え、本当ですか!!」

 

 自分と同じ料理好きの登場に、ジュリは純粋に喜んでいたのだが。

 

「ええ、ゲヘナでも名高い給食部の部員であるジュリさんに、よろしければお菓子作りをご一緒しませんか、とお誘いしたく存じますわ」

「そんな、お誘いはとても嬉しいですけど……」

「ではぜひ、今からでも!!」

 

 ナギサの押しの強さに、ジュリは思わず頷いてしまった。

 それが騒動の引き金だった。

 

 

「こ、こんな最新の調理器具を好きに使って良いんですか!?」

 

 ナギサの案内したゲヘナ内の彼女のセーフハウスには、最新の調理器具が揃っていた。

 大型の冷蔵庫や食材の保管庫が完備され、とても個人用とは思えない設備だった。

 

「ええ、他ならぬジュリさんなら、いつでもここを使用してもらって構いません」

「そんな、私なんかにもったいないですよ!!」

 

 ジュリはてっきりキッチンスタジオでも借りたのかと思っていたが、これが個人所有だと聞いて恐れ多くなったのだ。

 

「それこそまさかですよ。

 料理に情熱の有る者が、その腕を磨くことになんの躊躇いがあるのですか?

 これは先日のヒナさんの件でご迷惑をお掛けした給食部の皆さんに対する、私なりの謝意の表れなのです」

 

 ナギサは柔和な笑みでそうジュリに告げた。

 彼女の脳内の幼馴染が、「相手を利用しようとしてるくせに、これで善意が全く無い訳じゃないのがキモいじゃんね」と言っているが、うるさいですよミカさん、と妄想のミカを思考から追いやった。

 

 そうして、二人のお菓子作りが始まった。

 

「生地が焼き上がりました!!」

 

 オーブンを見ていたジュリが、完成を想像して顔をほころばせる。

 

「今日はクリームだけの、シンプルなロールケーキにしましょう。

 お店のように上にクリームや果物でデコレーションをしても良いですが、まずはお互いの技量を確かめるのがいいかと」

「そうですね!! 作ってみたいお料理やお菓子は沢山ありますし」

 

 そうして、二人のロールケーキ作りも佳境に入った。

 たっぷりのクリームを巻いて、最後に粉砂糖を振りかけ、完成だ。

 

 おや、とナギサは首を捻った。聞いていた話と違う。

 自分が手伝ったからだろうか。ロールケーキに何の変化も無かった。

 

「それじゃあ、早速食べてみましょう」

「そうですね。では紅茶を入れましょう」

 

 ナギサがお茶を用意しに行っているのを見て、ジュリはこっそり安堵の息を吐いた。

 彼女は彼女で、経験則で自分が何をしたら料理がモンスターと化すのか、ある程度把握していた。

 ただそれですべてコントロール出来るのなら、彼女は自分の体質について悩んではいない。

 

「せっかくですし、冷蔵庫にあったサクランボでもどうぞ。今日はシンプルなロールケーキですが、色味は欲しいですからね」

「あ、ありがとうございます」

 

 お湯を沸かしている間、カラスの更に盛られたサクランボをナギサが持って来た。

 ジュリはテーブルに置かれたサクランボのひとつを摘まみ上げた。

 

 が。

 

 つるん、とジュリの指先が滑り、サクランボがロールケーキの皿の上に落ちた。

 

「あ」

「え?」

 

 紅茶を入れることに集中していたナギサが振り返る。

 

 そこには、毒々しい色合いになったロールケーキが、彼女を襲う瞬間だった。

 

 

 その後、モンスターと化したロールケーキは食糧庫の食材を貪り、その質量を大幅に増大させセーフハウスを半壊にし、脱走したのだった。

 

 

 

 

 その日、ゲヘナ学園に“それ”は現れた。

 

「ん。何の音?」

「なんか変な匂いしない? なんだか甘ったるいような……」

 

 ゲヘナの生徒達が異変に気付いた時は遅かった。

 

「あ、あれ!!」

 

 生徒の一人が指を差した。

 他の生徒達が、そちらを向いた。

 

 ゲヘナの分校舎の奥から、のっそりとそれはゲヘナ校内を見下ろしていたのだ。

 

 毒々しい色の太く長いそれは、先端から甘ったるい粘液を垂れ流し、獲物を物色していた。

 

「ば、化け物だ!!」

「今度はロールケーキの化け物かよ!!」

 

 怪物は器用に校舎を乗り越え、生徒達に襲い掛かった!!

 

 

「な、なんですか、あの卑猥な化け物は!!」

 

 現場に駆け付けたアコは雄々しくそそり立つロールケーキの化け物の見上げ、そう叫んだ。

 

 肥大化したチェリーが、まるで古代のチャリオットの車輪のようにぎゅるぎゅると回転し、怪物は地面を走破する。

 その造形は、その、婦女子には口にできないちょっと卑猥な形状を想起させていた。

 

「アコちゃん、思ってても口にしないでよ!! もうそうにしか見えないじゃん!!」

 

 暴れる怪物を見て、イオリが顔を真っ赤にしてそう言った。

 

「“一体何の騒ぎ!?”」

 

 偶々、風紀委員会の業務改善の協力に来ていた先生が駆けつける。

 

「“あ、あれってまさか……”」

 

 ロールケーキの化け物を見て、先生は察した。

 こんなことが出来るのはジュリしか居ない、と。

 

 その時、怪物の視線、視線? がアコに向いた。

 

「え?」

 

 怪物はぎゅるぎゅるとチェリーの車輪をもう回転し、アコにその巨体で突進をした。

 その猛烈な勢いに、アコはあっさりと吹っ飛ばされた。

 

「あ、アコちゃーん!!」

 

 イオリが漫画みたいに吹っ飛ぶアコをただ見ているほかなかった。

 そんな彼女の頭上に、影が迫る。

 

「あ、いや、やめッ」

 

 怪物が、ロールケーキの断面のクリーム部分をまるで口のようにしながら、逃げ出そうと背を向けるイオリの背後を捉えた。

 

 じゅぷ、じゅぷ、と粘液を垂らしながらイオリの両足が怪物の口元で上下する。

 それはまるで、獲物をしゃぶって弄ぶかのようだった。

 

「“なんて羨ましいッ!!(イオリ、大丈夫!?)”」

 

「うるさい、バカ!! 変態!! 本音と建前が逆だ!!」

 

 イオリの下半身をしゃぶりつくした怪物は、ぺっとイオリを吐き捨てた。

 

「一体何の騒ぎだ? ん、ぎゃあああぁぁぁ!!」

 

 その後、一般通過マコトが頭から怪物に喰われ、彼女を粘液塗れにして吐き出した。

 

「マコト先輩!? そんな……顔と肉体ぐらいしか取り柄の無いひとでしたけど、私やみんなを遺して逝ってしまうなんて」

 

 マコトの惨状を見て、駆けつけたイロハが涙する。

 

「キッキッキ……黄色マテリア」

「マコト先輩、まさか息が!? 今すぐ救急医療部に運びますね!!」

 

 マコトの謎のうめき声に生存を確認したイロハが、背負っていく。

 

 ゲヘナ学園はカオスの渦に叩き込まれていた。

 

 が、それはゲヘナの新たな守護者の前には関係のないことだった。

 

『未知の敵対生命体を確認』

 

「“あ、あれは!!”」

 

 上空からバーニアを吹かし、ブリキの塊が現れる!!

 

『学内の生徒への危害を確認。排除を実行します』

 

「“ブリキアバンギャルド君だ!!”」

 

 冷徹な機械音声と共に、猛攻を加えるブリキアバンギャルド君。

 その圧倒的な瞬間火力に、ロールケーキの怪物はひるみ、その場から逃げ出した。

 

『敵対生命体の逃走を確認。

 追撃を開始します』

 

 ブリキアヴァンギャルド君は逃走する怪物の追撃に移った。

 それが、新たな悲劇を生むとは、誰も思わなかった。

 

「く、今は学内の混乱を収めるのが先ですッ。

 あの化け物はブリキアヴァンギャルド君に任せましょう」

「“そ、そうだね……”」

 

 復活したアコは怒り心頭の様子だったが、冷静に判断をした。

 

「誰か、イオリを新校舎の温泉に」

「“私が連れて行くよ”」

 

 キリッとした表情で先生はアコに言った。ぐったりしているイオリを抱え、粘液でシャツが汚れるのも厭わずに。その姿に生徒達はなんて生徒想いなんだ、とさえ思った。

 ちなみに先日倒壊した本校舎だったが、生徒会は温泉開発部と悪魔の契約を行った。

 

 即ち、本校舎を撤去し、温泉に入りながら授業を受けられる校舎にすることを。

 カスミ達はすぐにそれに乗ったのだ。

 

 温泉開発部は瞬く間に新校舎を建築し、去って行ったのだった。

 

 

 

 一方、その頃、ブリキアバンギャルドはロールケーキの怪物を追い立てていた。

 

 悲鳴と粘液を撒き散らしながら猛進する怪物が、ゲヘナ自治区を蹂躙する。

 

『攻撃の有効を確認。攻撃の継続を実行』

 

 ブリキアヴァンギャルド君が容赦なく攻撃を加えているが、その手が止まる。

 

『未知の敵対生命体の、ゲヘナ自治区より脱出。追撃は中止』

 

 怪物がゲヘナ自治区から、トリニティ自治区への境界を逸脱したのだ。

 つまり、知らん、管轄外だ!! になったのである。

 

『当機体はゲヘナ学園へと帰還する』

 

 ブリキアヴァンギャルド君は、バーニアを吹かせて帰還していく。

 怪物をトリニティに押し付けて。

 

 

 

 当然、トリニティ自治区は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。

 

 自治区を守らんと自警団が迎撃するも蹴散らされ、その進路は学園へと向けられていった。

 

「総員、迎撃用意!!」

 

 学園を守らんと、正義実現委員会の面々が隊列を成して銃砲を向ける。

 

「来た、来たッ、なんて卑猥な化け物なんだ……」

「あれがゲヘナから来た怪物……なんて恐ろしい姿なのッ!?」

 

 部員たちが家屋を薙ぎ倒して猛進する怪物を見て、震えあがる。

 

「攻撃、開始!!」

 

 部隊長が攻撃を指示した、その時だった。

 

「みなさん、待ってください!!」

 

 横並びに展開している正義実現委員会の部隊の前に、なんとナギサが躍り出たではないか。

 彼女は全身毒々しい粘液塗れだった。

 

「あの子は、ロールちゃんは、何の罪もありません!!

 ただ攻撃されて、怯えているだけなのです!!」

 

 ナギサの必死の訴えに、部員たちは困惑した。

 

「ロールちゃんはただ産まれてしまっただけです、それがいったいなんの罪だと言うのですか!?

 我らの聖典にも、生命の誕生は祝福されるべきだと、そう書いてあります。そうですよね、サクラコさん!!」

 

 急に水を向けられた一般通過サクラコが、えッとなった。

 偶然この場に居合わせていた彼女は市民の避難誘導をしていたのである。

 

「え、ええ、生命の誕生は尊いものですが……」

「ほら!! 皆さんはあの子を殺すおつもりですか!!」

「あ、あの、なんで私、そちら側にされているんですか……?」

 

 困惑するサクラコ。

 そうしているうちに、ロールケーキの怪物は間近に迫っている!!

 

「あれ、ナギちゃん!? 連絡取れないと思ったら、こんなところで何をしてるの!?」

 

 その時である。愛車を繰るセイアと共に、ミカが現れた。

 自治区に怪物が現れたと言うので物見遊山にやってきたのである。要するに、野次馬だった。

 

「お二人共、丁度いいところに!!

 あのロールちゃんを皆さんが殺そうとするのです、手伝ってください!!」

「ナギサ、いったいどうしたと言うんだい?」

「あれは私とジュリさんが手がけた、言わば愛娘のようなモノ!!

 我が子に愛を注がぬ母親が居ますか!?」

「ああ、ナギちゃん……紅茶とロールケーキをキメすぎて、壊れちゃった……。あんな卑猥な化け物を娘だなんて」

 

 やれやれ、と肩を竦めるセイアと、幼馴染の豹変に涙するミカ。

 

「ロールちゃん!!」

 

 ロールケーキの怪物の前に、ナギサが両手を広げて立ちはだかる。

 怪物が、創造主の片割れを前に、停止した。

 

「怯えているのですよね? さあ、私の腕の中に、誰もあなたを傷つけませんから……」

 

 慈愛の笑みを浮かべたナギサが、そう言った。

 怪物の先端の断面が、ゆっくりとナギサに、近づいて行く。

 

 あれ、これって尊い光景なのでは、と脳がバグり始めたサクラコが困惑していると。

 

 バグッ。

 ナギサがロールケーキの怪物に上半身を呑み込まれた。

 

「ナギちゃーーん!!」

 

 ミカの悲鳴が、周囲に響いたのだった。

 

 

 

 そして、話は冒頭に戻る。

 

「私達、すっごく大変だったんだからね?」

「あれを倒すのに、いったいどれだけの被害が出たことやら」

 

 後始末を突き合わされたミカとセイアは怒り心頭だった。

 

「ですから、被害金額は私が片手間に運用している事業を幾つか売却して補填するといっているではありませんか」

 

 シャーレの床で正座するナギサは、若干不貞腐れたようにそう呟いた。

 

「ふふふ。ですが、私は諦めませんよ。いずれ第二第三のロールちゃんを産み出し、究極のロールケーキを作り上げて見せます」

「完全に悪役の発言なんだけど……」

「“……ナギサ、お説教だよ”」

「まあまあ、先生。ここは怒りを収めて。先ほど、昨日作ったロールケーキをお詫びに用意しましたので、ご一緒にお茶などいかがでしょうか?」

「“今日はロールケーキはいいかな……”」

 

 ナギサのロールケーキへのこだわりは、留まるところを知らなかったのだった。

 

 なお、その後もナギサとジュリとの共同調理は続いているとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 




パンちゃんがいるなら、ロールちゃんも居てもいい。そんな発想から書きました。

ところで前回ですね、某ブリキミームばかりで、リトルシスターの元ネタに誰も触れないことにショックを受けました。
ブルアカのコラボ先のラノベなんて、今の人達は読んだりしないっすよね……。作者が読んでいたのも十年以上前ですし……。

悲しいのでちょっと横になります。続きはきっと高評価を頂ければたぶん近いうちに更新されるはずです……。

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