ソードアート・オンライン -宵闇の大剣士-   作:炎狼

2 / 23
第二話

 七十四層の主街区、《カームデット》から五十層のアルゲードに転移したオレは真っ直ぐに目当ての店に向かった。

 

 街は多くのプレイヤーで賑わいを見せてはいるが、周囲の店や鍛冶の音が響く工房はなにやら怪しげな雰囲気を醸し出している。

 

 これがアルゲードの空気だ。簡単に言い表してしまえば中華系の街に若干ヨーロッパ風の建物を入れてみた感じだろうか。

 

 とまぁそんなことはどうでもいい。オレは大通りをある程度進んだところで裏路地に足を運ぶ。

 

 本来この行動は余り褒められたものではない。アルゲードは広大であるため少しでも道を違えると、すぐに迷って数日間出てこられなくなるらしい。中には追剥ぎめいたものに身包みはがされたプレイヤーもいるとか何とか。

 

 しかしオレからすればいつも通ってる道なので大したことはない。たまにガラの悪い連中に絡まれたりもするが、その時はそのときで力づくで通してもらう。一番いいのは話し合いなのだろうが、ネットゲーマーにマナーを求めるほうが面倒だ。

 

 そして表通りから路地に入り何度目かの角を曲がったところで目当ての店の前にやってきた。曇りガラスがはめ込まれた扉には『OPEN』の文字が刻まれたプレートが下げられている。

 

「こんな様子じゃ開いてるなんて思えねぇけどな」

 

 肩を竦めてドアノブに手をかけて回すと、ガチャリという小気味良い音と共にドアが開いた。同時にカランカランというドアベルの音が聞こえた。

 

 店内は薄暗く、壁際の照明は極僅かな光りしかない。天井の照明も何のためにあるのやらだ。しかし壁際の商品棚には所狭しとアイテムやら武器やらが並んでいる。

 

 しかしオレはそれらには目もくれずに誰もいないカウンターに声をかける。

 

「マシュー。いるんだろ」

 

 店内に声が響きしばらくすると、カウンターの奥から人のよさげな笑みを浮かべた男、マシューがやってきた。しかしその身長は百九十はくだらない。同じようにアルゲードに商店を構えている禿頭で浅黒い肌をしている知り合いにエギルという男がいるが、彼とどっこいだろう。

 

「一週間ぶりやなぁアウスト。ほんで、今日はどないなもん持って来たん?」

 

 笑みを浮かべながら本物の関西弁なのか、エセなのかわからない関西弁をしゃべるマシューは椅子にどっかりと座った。

 

 それに対しオレも適当な椅子を借りてトレードウィンドウを開いた。マシューはウィンドウに表示された素材やらを眺めて一息つく。

 

「お前さん今日も迷宮区に入り浸ってたみたいやな」

 

「まぁな」

 

 そう答えるとマシューは肩を竦めて苦笑した。

 

「気ぃつけーや。いくらお前さんがトッププレイヤー言うても、そろそろモンスターも強くなっとるやろ?」

 

「わーってるよ。だからそれなりに気をつけてる。つーかそんなこと言うならお前がオレに付き合えよ」

 

「ソイツはパスやな。エギルはんとちごうて俺ッちはソードスキルとか上げてへんし」

 

 ヒラヒラと手を振りながらいうマシューだが、オレはそれに「冗談だろ」と返した。

 

「アルゲードまで上がって、さらにはそれなりに信頼置かれてる商人であるお前が戦えないわけねぇだろ。槍使いのマシューさんよ」

 

「もう一年以上前の話やろ。っと、鑑定終了。ざっと六〇〇〇コルって感じやな」

 

「上等だ。大して集めなかったんだからそんなもんだろ。エギルのとこでうったらもっとボラれてた可能性あるしな」

 

「その言い方やと俺ッちがボっとるみたいやないか」

 

「事実ボッってるだろ。端数とか完全に切りおとしてんだろーが」

 

 ジト目で睨むとマシューは「はて?」とおどけた様子でトレード欄に金額を入力していった。オレはそれにやや呆れつつもOKボタンを押す。

 

「まいどどーも。あぁそうや、その剣もう大分長く使っとるけど変えへんの?」

 

「変えるったってなぁ……」

 

 マシューの質問に対しオレは苦い顔をする。

 

 元来オレが扱うこの片刃大剣は両手剣の派生で発動した《エクストラスキル》なのだ。エクストラスキルはただパラメータを上げただけでは発生しない、ランダムなものだ。

 

 しかしこの《片刃大剣》。両手剣よりもはるかに重量がある上に、筋力パラメータをかなり上げなければ満足に扱えないという勝手の悪さから、多くのプレイヤーから敬遠されがちなスキルだ。

 

 実際オレ以外に使っているやつなど一人や二人ぐらいしか見たことがない。またそのほかの理由としては大剣を作る際、高難度のクエストをクリアして素材をそろえなければならないのだ。

 

 けれども一度この片刃大剣を装備して使いこなすことが出来れば両手剣や大斧など以上の力を発揮することが出来る。

 

「最近クエストの話もきかねぇしな」

 

 ため息をつきながら言ってみるとマシューはニヤリと笑みを浮かべてオレに告げた。

 

「ほんならおもろそうな噂はいっとるんやけど、聞いてかへん?」

 

「噂?」

 

「うん、六十八層に『宵の冥窟(よいのめいくつ)』っていう洞窟があるのは知ってる?」

 

「まぁ知ってる」

 

 宵の冥窟。その名のとおり一切の光りが通らない常闇の洞窟だ。でもあの洞窟にはモンスターが出現することはなく、ただの観光地のようなものだったはずだが……。

 

「最近になってあの近くの小さな村でとあるクエストが出たらしいんや。クエスト名は『冥界からの来訪者』」

 

「冥界って……地下があるわけでもねぇのに随分と物々しい名前だな」

 

「せやな。まぁそれはどーでもええのよ。問題なのはクエストの内容、どうやら洞窟にはボスモンスターがおるらしくて、ソイツからは超希少な武具素材がドロップするんやそうや」

 

「へぇ。でもよそんなレア素材が出るやつなんてとっくにパーティでクリアされてるだろ」

 

 肩を竦めて言ってみるが、マシューは「チッチッチ」といいながら立てた人差し指を左右に振った。

 

「残念ながらこのクエストはパーティで挑むことはできひんらしくてなぁ。ソロクエストなんや。しかも武器は両手剣かお前みたいな大剣縛り」

 

「なるほどな、危険が大きすぎるってわけだ。ただでさえ両手剣は隙がでかいしな」

 

「そういうこっちゃ。でも俺ッちはお前さんならクリアできると思うとるんや、アウスト」

 

 口元に手を当てて不適な笑みを浮かべるマシューだが、決して脅していたり、試しているわけではない。目を見ればオレを信頼しての言葉だと理解できた。

 

 オレはそれに対し答えるように小さく笑みを浮かべると、マシューに告げた。

 

「じゃあ久々にやってみますかね。でも確か宵の冥窟って照明結晶が必要だった気がすんだけど、オレ持ってねぇぞ」

 

 そう、宵の冥窟は一寸先が闇であり、普通の状態では進むことさえ困難だ。なので一定時間プレイヤーの周囲を照らし出す《照明結晶》というアイテムが必要なのだ。

 

「それなら心配いらへん」

 

 マシューはそういうとトレードウインドウからこちらにアイテムを一方的に送ってきた。

 

 もらったアイテムを確認すると、それは案の定というべきか件の《照明結晶》だ。しかも個数は十個もある。

 

「いいのか?」

 

「もちのろん。せやけどタダってわけにはいかへん。そのクエストが終わってからでええから、後で指定するアイテム取って来てくれるか?」

 

「どーせそんなこったろうと思ったぜ。まぁ了解だ、今日はもう帰るから後でメッセでも送ってくれ」

 

「はいなー」

 

 マシューが答えたのを確認したオレは椅子から立ち上がって店を出るためにドアノブに手をかける。だが、そこである人物のことを思い出す。

 

「そういやヨミは最近来たか?」

 

「ん? あぁ昨日の昼頃顔出したで。お前のこと愚痴ってたでー。『いっつも一人で行ってあの馬鹿男!!』って」

 

「馬鹿男って……別に死んじゃいねぇんだからいいだろうに」

 

「そないなこというなやー。ヨミはお前さんのこと心配しとるんやで? ええなー、かわいい女の子に心配されて」

 

 ケタケタと笑うマシューだが、オレはそれに対して鼻で笑う。

 

「ハン、別にあの女に心配されてもうれしくないっつの」

 

「ほうほう……ヨミをあないな風に成長させたんはお前やのによく言うわ」

 

「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ! オレはただアイツが危なっかしかったから戦闘の手ほどきをしてやっただけだ!」

 

 若干ムキになりながら答えると、マシューはさらに面白げに笑った。オレは結局大きなため息をついた後に頭をガリガリと掻いて店を後にした。

 

 そのまま表通りに戻ったオレはメニューウインドウを展開し、とある鍛冶屋の少女にメッセージを送った。

 

 返信が帰ってくるまでの間、小腹を満たすために適当な軽食を買って転移門がある中央広場のベンチに座って食事をしていると、先ほどの返信が帰ってきた。どうやら今から行っても平気なようだ。

 

「さてとそんじゃリンダースに行きますか」

 

 

 

 

 

 リンダースはどこかのどかな風景が広がる田舎風の街だ。街のそこかしこには水車が回っており、昼間は風景を楽しむのも一興だろう。

 

 現在は夜だから街灯が幾つかついている状態だが、それでも水車の回る音と水のせせらぎは耳に心地よいものである。

 

 オレは転移門からしばらく道なりに歩き、目当ての家というか店の前に立った。店の名前は『リズベット武具店』。ある女性プレイヤーに紹介してもらった鍛冶屋だ。扉には『CLOSE』のプレートが下げられているが、実際オレが入るのは店のほうではなく、店の裏手にある工房だ。

 

「ばんはー、リズーいるかー?」

 

 軽くノックをしながら店主に声をかけると、中から声が聞こえた。その声に答えるようにドアノブを回して中に入る。

 

 工房内には鍛冶をするための設備が置かれており、壁には幾つか武器がかけられている。まさに鍛冶屋と言った感じだ。

 

 すると店主に声をかけられた。

 

「なにそこで固まってんのよ。話があるんならさっさと降りてきなさいって」

 

 視線をそちらに向けると、椅子に座ったこの武具店の店主、リズベットがいた。赤いワンピースに白のドレスエプロン、髪色はベビーピンク色という中々のカスタマイズ具合だ。顔にはそばかすもあるが、アクセント程度で普通に美少女系統に入るだろう。

 

 まぁそんなことは今はいい。

 

「それで今日は武器の整備? それとも武器の新調?」

 

 腰に手を当てながら聞いてくるリズに対し、オレは首を横に振った。

 

「武器の新調であることは変わりはねぇが、今日は予約だけ入れに来た」

 

「予約ってことはまだ素材は手に入ってないんだ。それにしてもアンタの剣っていつ見てもバカでっかいわね」

 

 嘆息気味にオレの背中に下がっている大剣を見るリズに対し、オレは小さく「ほっとけ」と告げた。同時にオレは鍛冶設備の裏に隠れているであろう人物に声をかけた。

 

「そこに隠れてるKoBの副団長様、そろそろ出て来いよ」

 

 KoBというのはSAOで最強の《ギルド》とされている『血盟騎士団』の略称のようなものだ。そして設備の影から若干バツが悪そうな表情をした少女が現れた。

 

 長い栗色の髪にしばみ色の瞳は輝いて見える。スッと通った鼻筋は凛とした雰囲気を持たせ、小さな卵型の顔は若干幼さを感じる。リズも美少女であることには代わりはないが、目の前の少女は彼女の上を行く。彼女の装備は白と赤を基調とした騎士風の装備で、剣帯からは細剣が下がっている。

 

 彼女こそKoBの副団長にしてSAOで『閃光』と呼ばれている女流剣士、アスナ嬢だ。

 

 アスナは若干申し訳なさそうにやや前傾姿勢でこちらにやってきた。

 

「えっと、いつから気付いてました?」

 

「入ったときにアンタのでかいケツが見えおわたぁ!?」

 

 オレが言い切るよりも早くオレの頬すれすれを細剣が駆け抜けていった。細剣の基本技であるリニアーだろう。まったく敏捷度の強化が半端なくて軌道すら見えなかったぞ。

 

 だがオレはすぐに両手を挙げて降参ポーズをとりながら彼女に告げる。

 

「嘘です、すんません。偶々アスナさんの腰マントの端が見えたんですはい」

 

「……本当に?」

 

「こんなことで嘘言ってどうするよ……」

 

 その言葉に納得が言ったのかアスナは細剣を引いてくれたが、彼女の隣ではリズが腹をおさえながら笑っていた。そんなに面白かっただろうか。オレからするとおっかなくてしょうがなかったが。

 

 すると、アスナが細剣を完全に鞘に収めてオレに告げてきた。

 

「とりあえずお久しぶりです、アウストさん」

 

「ああ、そっちも元気そうだな。真っ黒黒助は元気か?」

 

「真っ黒……あぁ彼ですか。私も最近会ってないんでわからないんですけど、多分元気でしょう」

 

「まぁちょっとやそっとじゃ死にそうにないタマだもんな」

 

 肩を竦めてアスナの意見に同意する。そこで、なにやらごそごそと準備をしていたリズがオレ達を呼んだ。

 

「とりあえず二人とも座って話さない? どうせ今日はもう何もないんでしょ?」

 

 見ると丸テーブルやら椅子を準備してくれたようだ。テーブルの上にはティーカップとポットまである。

 

「あ、ごめんねリズ。私も手伝うべきだったよね」

 

「いやそんな気にしなくて良いって。攻略組み同士話すこともあるんでしょうし。それにアウストとは新調する武器のことで話さないとだし」

 

「そうだな。そんじゃあお言葉に甘えるとしますかね」

 

 オレはメニュー画面を開き、武装を解除してラフな格好に戻る。椅子に座ると既にリズがお茶を入れてくれていたため、軽く会釈をしたのちそれを頂く。

 

「それでアンタが挑もうとしているクエストってどんなクエストなわけ?」

 

「六十八層の宵の冥窟である『冥界からの来訪者』っていう厨二病全開のクエスト。これだけ聞くと茅場ってネーミングセンスなさそうだよな」

 

「その辺は別の人がつけたんじゃない?」

 

 リズは言ってくるがその辺は実際のところどうでもいい。

 

「でも宵の冥窟って肝試し的な感じで使うスポットじゃなかったでしたっけ?」

 

「まぁな。でも情報源の話じゃ最深部にボスモンスターがいるんだってよ。しかもクエストの条件が両手剣か大剣じゃないとかいけないらしい」

 

「大分縛ったクエストですね。一人で行くんですか?」

 

「ああ、ソロクエストだしな。殺しにかかってるんじゃないかって思うぜ」

 

 小さく笑みを浮かべてみるもののアスナとリズの顔はどこか浮かない。まぁフレンドが死ぬかもしれないという状況で明るく振舞えというのが無理な話だが。

 

「浮かない顔しないでくれよ。女の子にそんな顔をされると寝覚めが悪い」

 

 若干おどけながら言ってみると二人も少しだけ気持ちが楽になったのか、笑みを見せてくれた。うん、やはり女の子は笑っているほうがいい。

 

 その後は適当にアスナから七十四層のボス攻略が何時ごろになるのかを聞いたり、リズに対して剣の注文をつけたりなどをしてからお開きとなった。

 

 

 

 

「それじゃあ明日頼むぞリズー」

 

 リズの店を出てアスナと並びながら転移門へ続く道を歩きながらオレはリズに向かって告げた。

 

「はいはい。わかってるわよー、アンタも死ぬんじゃないわよ」

 

「へいへい」

 

 軽く手を挙げた後オレはアスナと並んで転移門へと歩みを進める。因みに、なぜオレとアスナが並んで歩いているかというと、オレの家とアスナの家は同じ街にあるからだ。

 

 街の場所は六十一層のセルムブルク。湖の上に浮かぶ城塞都市で白亜の花崗岩で作られた家が並び、それなりに金持ちのプレイヤーが住む街だ。

 

「前から気になってましたけど、アウストさんって結構綺麗好きだったりします?」

 

「オレみたいなのがセルムブルクにいるのが不思議か?」

 

 アスナの問いに対してこちらも疑問系で返すと、彼女は小さく頷いた。

 

「そう思われちまうのも無理はねぇかもな。でもこう見えてオレはお前が言ったみたいに綺麗なところとか好きだぞ。セルムブルクは特にそれがどんぴしゃだったわけだ。湖の城塞都市なんて最高だ。

 まぁそのほかを上げるとするなら、二十二層の南西エリアにあるログハウスとか好きだな。けど流石に独り身でログハウスを買う勇気はない」

 

 呆れ気味の笑みを作りながら言うと、アスナもまた「確かに」とクスクス笑っている。

 

 そのままオレ達は他愛のない話をしながら転移門へ到着し、セルムブルクへと転移を行った。

 

 既に日はとっぷりと暮れているため、街には街灯がちらほらとついていた。また、湖面は街灯やそのほかの光りが反射し、キラキラと光っている。

 

「それじゃあ私はこっちなんで」

 

「おう、今度は攻略の時にでも会おうぜ」

 

 オレ達は転移門の前で別れるためそれぞれ手を挙げたが、そこでアスナが思い出したように手をパンとたたいた。

 

「そうだ! ヨミさんが探してましたよー」

 

「あの女……オレの交友関係全体に網張ってんじゃねぇよな?」

 

「さぁそれはどうですかねぇ。でも結構な剣幕でしたから連絡してあげたほうが良いですよ」

 

「心配ならあっちから来ればいいものを。何やってんだかアイツは」

 

 呆れ気味にため息をつきながらオレは頭を抱えた。そして軽く頭を掻いた後呟きを漏らす。

 

「……明日辺り連絡してみっか」

 

 だが聞こえないと思っていた言葉はアスナに見事に聞こえてしまったようだ。

 

「ふふふ、やっぱりヨミさんとアウストさんってお似合いのカップルですよね」

 

「うっせー。それを言うならアスナ、お前だってキリトといい感じだろうが」

 

「なっ!? わ、わたしとキリトくんはそんな関係じゃないです!」

 

 アスナは顔を真っ赤に染めながら反論してくるが、オレはまくし立てるように言葉を続けた。

 

「いいや、オレはちゃんと見てたぜ。五十六層の攻略の時、キリトが昼寝してるとこに突っかかって逆にアイツに窘められた上に、さらには添い寝までしちまったって言うところをな」

 

「な、なんでそのことを――ッ!?」

 

「フフン、それは簡単。偶々見てしまったからさ! いやぁそれにしても副団長様もなかなか大胆なことをしてらっしゃる」

 

 多分オレは中々に下種な笑みを浮かべていることだろう。しかし、からかわれたのだからからかい返さないと気がすまない。

 

 アスナはワナワナと震えたあと、悔しげな顔をしながらオレに対して中々に酷なことを言ってきた。

 

「も、もう知りません! そんなこと言うともうアメ作ってあげませんよ!」

 

「えっ!? マジでそれだけは勘弁! 謝るから許してくれよアスナ様!」

 

 流石にアメがなくなるのは大問題だ。あれがないと結構辛い。

 

「それじゃあちゃーんとヨミさんに連絡を入れるんですよ? そしたらまた作ってあげます」

 

 フンスと胸を張る彼女に対しオレはプライドなどをかなぐり捨てて頭を下げた。恐らく年下の女の子に頭を下げるのは中々にどうかと思うが、アメのためなら安いものだ。

 

 アスナも満足がいったのか、笑みを見せて手を振ってきた。

 

「それじゃあ今日はこの辺で」

 

「ああ。それじゃあな」

 

 オレもそれに答えながら踵を返して自宅への道を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の早朝。

 

 朝靄が蔓延る六十八層の小さな村のNPCから『冥界からの来訪者』のクエストを受けたオレは、件の《宵の冥窟》の目の前にやってきていた。

 

 《宵の冥窟》とは本当によく言ったもので、そこにはまるでぽっかりと穴が開いたような洞窟があった。どれだけ目を凝らしても真っ暗で明りも無しにあの穴へ飛び込んだら精神が発狂してしまうのではないだろうか。

 

 しかしこちらにはマシューからもらった照明結晶がある。時間内に戻ってくれば普通に帰還は出来る。それに聞いた話ではボス部屋までは一本道らしいので、もし照明結晶がなくなっても帰ってくることは出来るだろう。

 

「まぁ広さも奥行きも迷宮ほど長くはねぇだろうから、そこまで長く滞在することもないだろ」

 

 オレは照明結晶アイテムウインドウから取り出し、それに続いてアスナに作ってもらったアメを口に咥えた。

 

 リンゴのような甘酸っぱい味が口に広がり、思わず頬が緩みそうになる。しかし、甘味によって脳がすっきりとし、オレは目の前で口を開けている洞窟を見据えた後、《宵の冥窟》に足を踏み入れた。




はい、今回は原作キャラとオリキャラと絡ませました。

主人公は一応攻略組みですので、そのうちクラインやキリトとも出会うでしょう。
そしてたびたび出てきたヨミさんは次の話で登場します。

また、六十八層の《宵の冥窟》は完全に私の妄想ですのであまりお気になさらなくてもよろしいです。
因みに主人公は甘党というかアメとか咥えてるのがすきなのです。

では、感想などありましたらよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。