スパイダーマン:ハーツ・オブ・ダークネス2010 作:ESP
溢れていた。空間を埋め尽くす
「なにこれ!いくらなんでも多すぎる!」
飛び掛かってきた黒緑の羽のないガーゴイルのような異形を右手に持った杖で粉砕しながらピーターは叫んだ。
何故か頭上から襲う習性をもった声を発しない不気味な塊が空から降ってくる。
「以前はこの倍はいた」
まるでゴミ掃除でもするかの様に大群を炎で焼き払い、燃える鎖を振り回して異形の存在を刈り尽くす。
燃える
「……うそでしょ?」
「ああ、嘘だ。倍の倍だ」
絶句するしかなかった。そして、スパイダーセンスがアラートを鳴らす。
全方位から異形が押し寄せる。
ピーターは一匹の異形にウェブシューターを放ち杖を地面に突き立てた。
「ジョニーさんの――真似っこだ!」
杖を軸にコマのように回転を始める。
糸に絡めとられた異形が遠心力により振り回され――隣の異形と衝突し粉砕。
次々迫り来る敵が壊れてくっつきを繰り返す。
それはまるで壊れては補充され続けるハンマーの先のように。
「良い使い方をする。自分の力を熟知しているな」
「お褒めに、預かり、大変、光栄、って、目が回ってきた……」
終わらない津波が押し寄せ続ける。
1体1体は弱くとも時間を稼ぐという点ではこれ以上に無い戦術。
自らの意思をもたぬ異形の軍団が声すら発せず群がる。
「問題ない。悪魔とも呼べぬ最下級の存在だ。5分もかからん」
巨大な炎が吹き上りすさまじい勢いで波を蒸発させていく。鎖と移動速度もそれに呼応するかのように増していった。
(……めちゃくちゃだ。強すぎない!?先生も大概だけどさ、この人も大概だよ!)
手際の良さもそうだが攻撃範囲が尋常ではない。
何より敵だけを焼き払い、砕く。
それなのに道路や公共物に被害が一切無い。
先程の倍の倍という言葉は偽りでは無い。そう感じさせるには十分すぎる説得力を放っていた。
回転を止め動ける空間を確保したピーターは機動力を生かす戦いに即座にシフト。
「ジョニーさん!そっちに集めて飛ばします!」
ウェブで多数の敵を絡めとり団子状にして規格外の戦いを見せる男に向かって放り投げる。
彼は振り返りすらしない。投げつけられた異形の団子が瞬時に焼かれ――消滅した。
「この方法が一番よさそうだ!」
「頭が回るな。想定以上の強さだ」
再度褒められて少し嬉しさが沸き上がるが、思いにふけっている場合ではない。
時間が、無い。外はまだ暗い。