スパイダーマン:ハーツ・オブ・ダークネス2010 作:ESP
(しまった……)
ピーターが壁に吹き飛ばされ叩きつけられる。
それを見た悪魔が煽り返してきた。
「虫けらには殺虫剤がお似合いダ」
展望台室内に充満する黒い霧。
じわじわとピーターを蝕む回避不能の上級眷属が繰り出した地獄の魔術。
突進してきた眷属の攻撃を
杖は半ばからヒビが入り漏れ出した白いインクが水溜まりを作っていた。
地に伏しながら白い泉に右手を
(まだだ!僕が自分で描く!もう4回も見た。設計図の作成と思えばいい!)
絶対に諦めることを知らない親愛なる隣人が体を起こそうとする。
眷属が両手を前に突き出した。
出現する巨大な赤黒い魔力球。
避けることを許さない強烈な殺意がピーターに向けられた。
窓から朝の光が差し込む。
時間切れを告げるその直前――
地獄領域の拡大と敵の極大の殺意によりスパイダーセンスが臨界に達した。
突如ピーターの脳内に輝く蜘蛛のトーテム。
ウェブ・オブ・ライフ&デスティニー。
気が付けば何かの乗り物の中に自分は立っていた。
目に映る自分ではない大勢のスパイダーマン達、その一人が近づき、そっと僕の右手をとった。
傷つき限界を迎えていたはずの虫けら。それが得体の知れないナニカとなって立ち上がる。
悪魔は自らの力が消え失せ体が動かない状態からやっとの事で声を絞り出した。
「ダレダ……オマエハ!?」
「地獄からの使者!スパイダーマン!」
地獄が――反転する。
悪魔は見た。
壊れたオモチャの付いた左腕が目の前のナニカの口元に近づいていく。
「マーーーベラーーーーーー!」
空間が理解を超えたエネルギーに支配され――
悪魔の時間の因果は停止した。
「マーベラー・チェンジ・レオパルドン!」
両手を前に突き出した後、胸の前でクロスさせハの字におろした。
反転したエネルギーが立てた右手に収束――魂を通した極光が満ちる。
「レオパルドン!ソードビッカー!!」
腹に剣が突き刺さっていた。
ニューヨークの街に人々は、天から降り注ぐ積もらない雪をただただ見ていた。
雪が地面に触れるとひび割れた道路が傷口がふさがる様に修復されていく。
「ピーター無事か?」
ストレンジが壁にもたれ掛かり座っている宿題と試験に追われる高校生に向けて尋ねた。
「お腹がすいて死んじゃうかも」
腹の音を響かせながら疲れた声で答える。
「そうだ、ごめんなさい。杖壊しちゃいました」
ひび割れた部分を破ったスーツで縛り上げ補強した杖を返還する。
ポータルが開きブードゥーが姿を現した。
「大丈夫、ワタシが直す。問題無し」
威厳がある落ち着いた優しい声。
そっと杖を受け取って状態を見る。
すでに自己修復が始まっている。
表情が固まる。即座にストレンジにだけ聞こえる魔法を発動。
(ストレンジ。サンクタムの最重要保管施設に封印。絶対外に出さない。情報も封鎖)
(わかっている。あちらの連中に知れたらそれこそもう一度同じ規模の事件が起きる)
ピーターはセンスに走るノイズに疑問を持ちながらも、試験、宿題、おばさんになんて言おう。
それしか考えが浮かばなかった。
バイクのエンジン音が響いた。
ピーターが声をかける。
「ジョニーさん。お世話になりました。ありがとうございました」
男は背を向けたまま、
「ああ、またな」
短い言葉を残して去っていく。法定速度でその背中が遠ざかっていった。
この日、公式の気象情報に降雪の記録は無い。ただ人々の記憶にだけ降り積もった。
読了感謝いたします。本当にありがとうございました。
元ネタ「Ghost Rider/Wolverine/Punisher: Hearts of Darkness 」はキンドルで読めます。英語版のみですが素晴らしい作品です。
追記:ハーメルンの文化や空気、システムを知らずに投稿した自分が読みたい物が見つからなかったから書いたこの身勝手な作品。作者の想定を大きく上回る方々に閲覧していただけました。感無量です。触れてくださった全ての方々に重ねて感謝を申し上げます。
ありがとうございました。