新エリー都の守りし者 作:バルチャス最弱
《Where there is light,shadows lurk and fear reigns》
光あるところに、漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた。
《But by the blade of knights,man kind was given hope》
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ。
「
「そうそう!ニコの親分はこの噂、聞いたことあるか?」
六分街の通りのカフェ、COFF CAFEで一休み兼、次の仕事に向けた会議をしていた時、ウチの従業員のビリーがそんな話題を切り出してきた。
金色の甲冑を纏う騎士。話が耳に入ってきたことはある。
ただ、その内容はどれも眉唾もの。街中でエーテリアスに襲われたところを救われたとか、ホロウ内でエーテリアスとは違う感じの怪物に襲われた所を救われたとか、逆にその騎士に襲われたとか、金じゃなくて銀だったとか。
「噂話くらいはね。でもインターノットで調べてみても、どうも信憑性無いものばかりだし、デマじゃない?」
「だとしても!カッケーよなあ。重厚な鎧、重厚な剣で敵を切り伏せる!くぅ〜、シビれるぜぇ!」
「ならアンタも剣持てばいいんじゃない?」
「おいおい親分……剣には剣の浪漫が、銃には銃の浪漫があるんだぜ」
わかってねーなー、と、ビリーは手をヒラヒラと振りながら脱力する。
「まぁ、どうせなら居てくれた方が良いわよね。金色の騎士」
「お!ニコの親分もそう思うか!」
「ええ。金でできた鎧なんて、換金してくださいって言ってるようなもんじゃない!」
「えぇ……」
「もし見つけたら、剥ぎ取って売りさばいてやるわ!」
「親分……」
「ニコ、ビリー。そろそろ依頼の時間よ」
ずっとハンバーガーを頬張って黙っていた、ビリーと同じく従業員のアンビーが時計を指さす。いつの間にか依頼の時間が差し迫っているじゃない!
「もうこんな時間!?ビリー、アンビー!行くわよ!」
「おう!」
「ラジャー」
二人を引き連れて、COFF CAFEを後にした。
「……そういえばニコ、プロキシ先生は?」
「……きょ、今日は別の依頼があるから難しいって断られちゃったわ!」
「そう……」
本当はツケを払ってからじゃないと駄目って断られちゃったんだけど。
でも、一応キャロットは用意したし、いざって時のための保険は用意したわ。それに、本当の本当にいざって時はきっと助けてくれるはずよ!ええ!
この時のあたしは、想像もしていなかったわ。まさか本当に、金色の騎士が目の前に現れるなんて。
簡単な仕事のはずだった。小さな共生ホロウ内の物資回収。報酬は出来高で、集めた物資の一部がそのままあたしたちへの報酬となる。なんて事ない依頼だったのよ。
なのに──
「このエーテリアスの数はなんなのよぉー!!」
「ニコ、喋ってないで手と足を動かして」
「親分〜!このまま続くとマジにヤベぇぜ!……弾薬費が!」
「わかってるわよ!あーもぉー、弾もタダじゃないってのに!」
あたしたちの四方八方を囲むおびただしい数のエーテリアスども。このままじゃ埒が明かないわね。
「アンビー、ビリー!連携していくわよ!」
「ラジャー」
「了解!」
まずはアンビーが切り込み、エーテリアスどもが怯んだとこにあたしがシュガーボムを撃ち込んで拘束!纏まったやつらに──
「決めなさい、ビリー!」
「
何かの決めゼリフを叫びながらビリーがエーテリアスの近くまで一息に踏み込み、至近距離で弾丸を食らわせる。
「一匹あたり一発で間に合いそう?」
「問題ねーぜ親分!」
「良ーし!」
宣言通り、無駄弾なくエーテリアス掃除完了ね。
「ビリー、さっきので何発使ったかわかる?」
「んー、親分と俺のを合わせっと、大体100ちょいくらいだな」
「ギリ許容範囲内ね。これ以上の戦闘は避けたいわね──」
「ニコ!」
「親分危ねぇ!」
アンビーとビリーが叫んだのと同時に、耳を劈くような大きな音と衝撃があたし達を襲った。
舞い上がる砂埃の中に、巨大な影がくっきりと見える。
エーテリアスの変異体まで!?
「二人とも無事!?」
「平気よ」
「ピンピンだぜ!で、どうする親分!」
「どうするかって?そりゃあ逃げれるならとっくのとうにズラかってるわよ!」
「そりゃあそうだ!」
「戦闘準備──待ってニコ、前方……敵の後ろから
アンビーがあたしを庇うように前に出るのと同時に、それは起きたわ。
あたし達に襲いかからんと動き出した巨大なエーテリアスが、頭の頂点から真っ二つに分かれたの。
そして、それをやったのが、アンビーの言っていた高速で迫り来る
あのお武家ギツネかと見間違うかのような速度で跳び、その手の剣でエーテリアスを一刀両断した。
純白の、地面にまで届きそうな程のロングコート。腰には、既に赤い鞘に納められている剣。振り返った男は、顔立ちは整っているけど、眉間にはとんでもなく深いシワ。
その男は、ビリーが歓声をあげるより速くあたしとアンビーに接近し、あたし達の眼前に金属の何かを突き付け、その何かの蓋を開き火を着けた。緑色の不思議な炎が揺らめいていて、つい『綺麗ねー』と気の抜けた感想が浮かぶ。
あたし達が男の手にある何かをライターだと認識したのと、その男の後頭部にビリーが銃を向けたのはほぼ同時だった。
「オイ、アンタ。エーテリアスを倒してくれた事には礼を言うが、二人に手ェ出すンなら、容赦なくブチ抜くぞ」
「ま、待ちなさいビリー!あたし達は別に何も……」
今にも引鉄を引きそうなビリーを宥めていると、男はライターをしまい、コートを翻して去っていった。
「ここは危険だ。さっさと逃げろ」
と、それだけ言い残して。
あれからしばらく。
「どーーなってんのよー!このホロウは!?」
「もうキャロットは役に立ちそうにない。やっぱり土下座してでもプロキシ先生に頼むべきだった」
「し、仕方ないじゃない!別の仕事があるって言ってたんだから!」
本当は今までのツケのせいなのだけど。
「さっきの異常な数のエーテリアスといい、ホロウで何かしらの異変が起きているみてーだな。早いとこ出ないとマジにやべえかもだ、ニコの親分」
「分かってるわよ!あーもう!」
悪い事は立て続けに起こる。踏んだり蹴ったりってやつよ。
長いことホロウでぐだぐだしたせいで、エーテリアスを呼び寄せてしまった。それも、ホロウの主みたいなヤバそうなやつ。
しかも、ただヤバそうなだけじゃなくて、頭のコアを覆う恐ろしい異形のバケモノの顔がよりヤバそうな感じを醸し出している。
「コイツ、どっから!」
「応戦する!」
「いや、逃げるわよ二人とも!」
「逃げるったってどこに!キャロットも無しにホロウ走りまわんのはやべえだろ!」
「ビリーに同意。もしあれがこのホロウの主なら、倒せば何か変わるかも」
「でも、あんな明らかにヤバそうなやつ──!」
バケモノの顔を持つエーテリアスが
耳の奥を掻きむしるような高音と生理的嫌悪感が込み上げてきて、その場にへたり込んでしまった。ビリーは耐えたみたいだけど、アンビーもあたしと同じみたい。
それでも立ち続け、剣を離さないのは流石と言うべきかしら。
「親分!アンビー!マズイ──」
エーテリアスはもうあたし達の眼前まで迫り、その爪で引き裂かんと腕を振り上げている。
ビリーが間に割り込み、身代わりになろうとしてくれた。
終わりを確信したその時──
「逃げろと言ったはずだ、なぜ逃げなかった?」
「大方、目の前のコイツのせいでホロウがおかしくなったんだろう。責めるのは酷だぞ、鋼牙」
さっきも聞いたこの男の声と、どこからか聞こえる機械音ぽい声。誰かとスピーカーで通話でもしているのか、などと考えていたら、あたしとアンビーはビリーに抱えられ、エーテリアスとあの男から離れた。
「助かった
「必要ない」
男が剣を振り払うと、男の5倍はあろうエーテリアスの巨体が後方に飛ばされながら倒れ込んだ。
「アイツか、ザルバ」
「あぁ。間違いなく、俺達が追ってたホラーだ。エーテリアスに憑依するようなヤツもいると噂には聞いていたが、実際に目にするのは初めてだな」
「ホラーであれば、斬る。それだけだ」
攻撃されたことに激昂したエーテリアスが、男に向かって咆哮を上げながら向かっていく。
対して、男はエーテリアスはエーテリアスに向けていた剣を自らの頭上へと掲げた。
あたしは、あたしの目を疑ったわ。
男が剣の切っ先で頭上に円を描くと、それの軌跡に沿って白い円が浮かび上がり、その円の内側が
朝の日差しのような
次の瞬間、男のいた場所に、
あたしが想像していた、金ピカに作られただけの甲冑なんかじゃない。
深く激しい怒り──あの男の眉間のシワのような──を表す金の狼の鎧。
黄金の騎士に向かって振り下ろされた邪悪な爪は、その騎士の右手に受け止められ、そのまま握りつぶされた。
悲鳴とも取れる奇声を上げながら、エーテリアスは騎士から距離を取り、エーテルと泥を混ぜて圧縮したような玉を騎士に向かって射出する。一つや二つではなく、幾つも。
その攻撃を受ける騎士は、まるで何ともないかのようにエーテリアスへ向かって前進していく。
ガシャリ、ガシャリ、と、鎧の音がまるでカウントダウンのように聞こえる。
エーテリアスでも恐怖を覚えるのかしらね。騎士に背を向けて逃げようとしたエーテリアスが、それよりも疾い騎士の一太刀によって斬り伏せられた。
エーテリアスは消滅し、騎士は剣を鞘に納める。すると鎧は役目を終えたかのように男から離れ、消えていった。
「ホラーがエーテリアスに憑依すると、斬った時に返り血が飛び散らないのか。便利なもんだな」
「封印も問題無い。帰るぞザルバ」
「あ、ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」
さっきと同じように去ろうとした男を、咄嗟に引き止めてしまった。
「なんだ」
「その……助かったわ」
「すっげーカッコよかったぜ!アンタが噂の金色の騎士か!?」
「あなたの太刀筋、とても見事だった」
「……そうか」
それだけ言ってまた行こうとした男の前に何とか回り込む。
そうよこの男、きっと優秀なプロキシがバックに居るか、精度のいいキャロットを持っているハズ!
何とかして一緒に連れ出してもらわないと!
それに、あんな化け物を瞬殺できるくらい強いんだから、道中を安全が確約されたようなものでしょう!
「で、できればホロウを出るまで一緒に行かせてくれないかなー……なんて……」
「あ?おい嬢ちゃん達、まさか案内人も無しにホロウに入ったのか?」
機械音声をこの男の近くで聞くと、微かに『カチカチ』と音が聞こえるわね。
「仕方ないでしょ……ねぇ、この声ってどこから聞こえてるのよ?誰かと遠隔で話してる感じはしないし、そもそもホロウ内外での通信なんてそうそうできるもんじゃないのに」
男は左手を握り、その拳を──正確には、その左手中指に着いている指輪を見せてくれた。
……趣味の悪い、髑髏の指輪。
「趣味の悪いとは随分なご挨拶だな嬢ちゃん」
「え、喋った!」
「ビリーと同じ知能構造体?」
「そうか?そうかなぁ……いやアンビー、多分別のな──」
「そういうモンだと思っといてくれ」
「喋りすぎだザルバ。……着いて来るのは良いが、あまり騒ぎすぎるな。それと、鎧とあの化け物の事は他言するな。いいな」
そう言う男の目には、有無を言わせぬ圧があった。あたし達はとりあえず、首を縦に振るしかなかったわ。
これが、あたし達と冴島鋼牙──黄金騎士ガロとの出会い。
あれから数日後。
あの時、ホロウを出てすぐあの男──冴島鋼牙に改めてお礼を言おうと思ったんだけど、もう既に姿を消してしまっていた。
あんな真っ白で目立つロングコートなんか着てる癖に、どうやって居なくなったのよ。
「あはは……なんでその愚痴を
そうこぼしたのは、あたし達邪兎屋が贔屓しているビデオ屋の店長その二のリン。超凄腕プロキシ兄妹パエトーンの妹の方で店番中の方。
店長その一の兄の方、アキラは裏で仕事をしているらしい。
「いいでしょプロキシ。そもそもアンタ達が仕事手伝ってくれればあんな目に会わなかったかもしれないのよ!」
「ごめんごめん。でもツケは払ってよね」
「払ったでしょ!」
「それは前回の分。前々回と前前々回と前前前々回の分はまだ──」
「あーーーー!きこえなーーい!」
「ちょっとニコー?」
まさかプロキシ、それ利息とかついてないでしょうね?
なんてプロキシと話していると、店のドアが開いた。客が来たみたいね。
「あ、いらっしゃいませー」
プロキシは客対応で離れるでしょうし、せっかくだからあたしも何か借りようかしら。上手くいけばツケをチャラに──
「知り合いの紹介で来た。腕のいいプロキシってのはアンタか?」
「へ?え、えっとぉ……」
聞き覚えのある男の声。目を出入口に向けると、目に写ったのは純白のロングコート。
「あぁーー!!冴島鋼牙!」
「……またお前か」
「カオルといいこの女といい……鋼牙、お前はこういう少しやかましい女と縁があるのかもしれないな」
「これ以上はいらん……」
本作をご拝読頂き、ありがとうございます。
後書きで触れておきたい事がありますので手短に。
世界観等についての設定です。
ゼンゼロ世界に鋼牙が入り込んだ転移系ではなく、牙狼の世界観がゼンゼロ世界に混ざっている系のクロスオーバーです。
遥か昔から魔戒騎士がホラーを狩り続け、ホロウ災害が発生してもホラーも陰我も関係なく人々を襲う。
魔戒騎士は闇に忍び、闇を斬り裂く。
そういうのを思い付いて、書きたくなったのです。だから書きました。
牙狼・牙狼〜MAKAISENKI〜で起きることは全部拙作でも起きますし、ゼンゼロ本編で起きる事もそのままです。そこにちょっとだけ混ざる部分がアルヨというSSです。
ゼンゼロ本編への過干渉は無いし、逆も然り。
思いついたSSを形にできればなと思っています。
以上です。よろしくお願いいたします。
じゃあ私はREDREQUIEMをもう一周してきますから!