裏世界の空と表世界の空と 作:星海
日曜日。
いつもと違う姿で1人待つツナの元に京子が走り寄る。
「あの……ツナ君?で合ってますか?」
「あ……うん。合ってるよ、京子ちゃん」
「……確かに似てるけど」
いまいち信用できない様子の京子に困った表情になる。
「……一応リボーンからこの姿でいる時は高い声維持してろって言われてるんだ…それでも気を抜くと外れるんだけど」
「えっ……ホ、ホントにツナ君だ……声、すごい」
ツナの変声に驚愕する京子。
「…じゃ、なかった。ごめんね、ツナ君。待たせちゃって。」
「ううん、今さっき来たところ。別に急がなくてもよかったんだよ?」
女声に戻したツナの言葉に首を横に振る。
「そういうわけにはいかないよ。…その姿もあるし、1人でいるのは心細いよね?」
「……う」
その姿───地毛と同じ髪色のウィッグを着けた女装姿のことを指摘されて言葉に詰まる。
どうしてこんなことになっているのか。それは4日前である水曜日にまで遡る。
───水曜日
「帰ってきたか。唐突だがな、ツナ。お前に女装技術を教え込む」
「……はぁ?」
ツナの帰宅早々そう言うリボーンに、何言ってんだコイツ、というような目線を向けるツナ。
「変装技術の一環でな、女に化けるんだ」
「そりゃ分かるけど……なんでだよ」
「お前はプリパラに行けるから丁度いいからな。」
「意味分かんないんだけど!?」
「うるせぇぞ」
リボーンに蹴られるツナ。
「どの道いずれは教えるつもりだったんだ、それが早まっただけだぞ」
「はぁ?…ってか、マフィアにも関係ないだろ!?」
その言葉にリボーンが少しきょとんとする。
「何言ってんだ、マフィアにも変装技術は超重要だぞ。オレも何度か変装してんのは知ってんだろ」
「知って……てか、あれお前の趣味じゃなかったのかよ!?」
「まぁ半分は趣味だな」
「おい!?」
「うるせぇぞ」
またリボーンから蹴られるツナ。
「何度も蹴るな!!…てか、
「オレは殺し屋だからな。変装ってのは標的を欺く技になる。話を戻すが、マフィアのボス…並びにボス候補ってのは刺客から狙われやすい。それはツナも知ってるだろ。」
そう言われてツナの脳裏に浮かぶのはジャンニーニが来た時のこと。
「そこで姿を変えて刺客から身を守るわけだ」
「は、はぁ……でもなんで女装から……」
「教える理由としては異性に変わったほうが敵の目を欺きやすいってのがあるが……ひとまずはツナがプリパラに入りやすくするためだな」
「プリパラに?」
「あぁ。……男の姿だと目立つからな。らぁら達とも協議して最優先で教えることにしたぞ」
「SoLaMi♡SMILEも噛んでんのー!?」
そういえばみれぃに脱がされたあと着方教えられたな、とか思い出す。
「まぁ、らぁら達はオレと違ってプリパラに行きやすくしてあげたいだけらしいけどな。」
「そ、そうなんだ……じゃあリボーンは……って、さっき言った通りか」
「まーな。あとツナの場合、ママン似なのもあって単純に磨けば光りそうなのもある」
「おい?」
「冗談だ」
本当に冗談なのかがいまいちわからないツナであった。
「んじゃ早速始めるぞ。」
「いややるなんて一言も言ってないんだけど……」
「とりあえずは声と話し方だな。まぁこれはオレが教えられるか。」
「聞けよ!!」
「化粧は……ビアンキよりもママンに教わったほうがいいだろうな、話を通しておくぞ」
「いやだから……って母親に女装習うってどんな拷問だよ!?」
てか母さんまで巻き込むのか!?とツッコんだ矢先。
「服は日曜日に一緒にツナの服見繕ってもらえるよう京子に頼んであるからちゃんと行けよ」
「………………ぇ?」
リボーンが更なる爆弾発言をかました。
その後、京子が妙な噂されたくねーなら死ぬ気で覚えろと言われてどうにか4日ほどで女声と話し方、軽い化粧を形にしたツナだった。
……ということで
「……その。改めて、今日はお願いします」
「う、うん……」
首を傾げる京子。
「ええと、なんて呼べばいいかな…?流石にその姿でツナ君はなんか違うような気がするんだけど……」
「……京子ちゃんが好きな呼び方で…」
そう言われて京子が悩む。
「うーん……じゃあ、ツーちゃんで。いいかな?」
「……うん」
「それじゃあ、行こう?」
「……うん」
「…といっても、ツーちゃんもいきなり女の子の服見に行くのは流石に恥ずかしいかな……」
そう言って時計を見て頷く。
「時間はあるから、少し遠回りして行こっか」
「……うん…ごめんね、京子ちゃん」
「大丈夫だよ。」
そうしてしばらく歩く。
なお、今回は獄寺はおろかリボーンもついてきていないため、以前動物園に行った時よりもデートらしいのだが……今回の目的が目的なだけに集中できていないツナであった。
歩いている内にどうにか慣れ、ちゃんと並んで歩くようになった。
「そういえば、リボーンから服を買うお金とか渡されなかったんだけど大丈夫かな…」
その心配に京子が小さく笑う。
「お金はらぁらちゃんから預かってるからツーちゃんは気にしないでも大丈夫だよ。」
その言葉にツナが首を傾げる。
「らぁらから?」
「あれ、知らないの?プリズムストーンショップ前のお店……は知ってるよね?」
流石のツナも獄寺と昨日行ったお店を分からないはずもなく頷く。
「プリンチペッサアドルメンタータ……で発音合ってる?獄寺君がそう言ってたと思うけど……」
「うん、合ってるよ。」
「よかった。……名前の意味はわからないけど」
「眠っているお姫様、みたいな言葉になるみたい。」
「お姫様……?」
ツナの聞き返しに京子が頷く。
「それでね、らぁらちゃんってあそこの店長さんなんだよ?」
「そうなの!?」
あんまりいないから女の子じゃないと知らない人も結構多いのかな、と京子が言う。
「プリパラ外のお店は狭いけど、プリパラ内のお店は本店だから結構広いよ。」
「そうなんだ……あの時はあんまり施設とか見れなかったから…」
その言葉に納得したように頷く京子。
「イガイガモンスターも出たんだっけ……ハルちゃんが言ってたよ。」
「イガイガモンスター……ねぇ、あれ私びっくりしたんだけどプリパラだとよくあることなの?」
「んーとね……らぁらちゃんしか対応できない特級はあんまりかな?半年に1回くらい…?」
それ以外は基本的にめが姉ぇさんが対応してくれてるよ、と京子が言う。
なお、イガイガモンスター自体は世界中のプリパラで出現するため出現報告や出現予報が出れば早急に赴かないといけないのは別の話だ。
「そうなんだ……」
「せっかくだからお買い物終わったら一緒にプリパラ行こう?」
「……う…大丈夫かな」
「大丈夫だよ、ツーちゃん可愛いもん。」
「……きょ、京子ちゃんがそう言うなら……頑張る」
京子が答えに微笑んだあと、前を見て気づく。
「あ、らぁらちゃんだ」
「えっ」
「ほら、あそこ」
京子が指差した先に確かにプリパラチェンジ前のらぁらの姿があった。
そしてほぼ同時にらぁらも京子達に気づく。
「あ、京子ちゃんだ。……と?」
「ツナ君だよ。」
「あ、綱吉さんなんだね。2人とも、こんにちはのかしこまっ!」
「こ、こんにちは……」
「こんにちは。らぁらちゃんは何かこっちに用事?」
京子の疑問にらぁらが頷く。
「昨日の営業でトマトがほとんど切れちゃってたからその買い出しと……そろそろそふぃさんのレッドフラッシュが切れちゃうからその買い足しに来たんだ。」
「そっか……どっちも重要だもんね」
その会話にツナが首を傾げる。
「レッドフラッシュ……?」
「あ、綱吉さんは知らないよね。レッドフラッシュっていうのは梅干しのことだよ。そふぃさんは梅干しを食べるとライブの時みたいなクールモードになるの。」
その話を聞いて死ぬ気丸と死ぬ気モードのようだ、と思ったツナは恐らく悪くない。
「トマトの方はいつも結構余裕持ってるんだけど、唐突に増えると足りなくなる時もあるんだよね……」
「唐突に増える……」
「昨日は少し多かったからね。 」
らぁらが苦笑いする。
「一応、数個だけだけどこの近くの八百屋さんに用意してもらったんだ。注文したトマトはお昼くらいに届く予定だから、今お店に残ってるのと八百屋さんに用意してもらったのを合わせれば何とかなるよ。」
「……忙しそう…」
「確かに忙しいけど、何もしてないよりはいいかなぁ…って。」
何から何までめが兄ぃさんやティモッテオさんに頼るわけにもいかないと思うし、とらぁらが呟く。
「と、店主さん待たせてるからあたしそろそろ行かなくちゃ。またね、京子ちゃん、綱吉さん。」
「うん、またね、らぁらちゃん。」
「また……あっ、らぁら!待って!」
ツナの声にらぁらが動きを止めてツナを振り返る。
「うん?」
「えっと……なんか色々頭の中が混乱してて何がとかうまく言えないんだけど……せめてこれだけでも言わせて!…ありがとう!」
その言葉にらぁらがきょとんとする。
「えっと……どういたしましてのかしこま……なのかな?何が言いたいのかはなんとなく分かった気がするけど……」
元々全部あたしが無茶言ってるようなものだからどうなんだろう、と思うらぁらだった。
「…ま、いっか。それじゃあまたね。」
そう言って今度こそらぁらは去っていった。
「……だいぶ慣れたみたいだし、そろそろ行こっか、ツーちゃん。」
その京子の言葉に顔を引きつらせる。
「……が、頑張ります」
「ふふ、ちゃんとツーちゃんに似合うの選んであげるから、任せて?」
その後、目的地に着いた後着せ替え人形にされたことは割愛しておく。
「うぅぅ……」
「あの……ツーちゃん、ごめんね……?アユミさん、男女問わず可愛い子に目がないから……」
「だ、大丈夫……」
買った服を抱えたツナがそう答える。
「あとはプリパラに───」
行こう、と言おうとしたところで京子の持つ鞄から音がする。
「携帯に電話…?誰からだろ……」
鞄から携帯電話を取り出す京子。
「あれ?ハルちゃんから?」
「ハルから?」
「うん。プリパスじゃないのは珍しいんだけど……えっと…」
何を気にしているのか察したツナは頷く。
「出てもいいよ?」
「…ありがとう、ツーちゃん。」
そう言って京子が電話を取る。
「もしもし……?はい、そうですけど…」
少し様子のおかしい会話にツナが首を傾げる。
「……え?ハルちゃんが?」
この女装が未来で役に立つなんてこの時の彼は知る由もなく……
このせいもあって各パラレルワールドの荒廃時期や未来のツナさんの処刑時期にズレが生じているとかなんとか
………まぁ、荒廃時期と処刑時期のズレは適当な話ですが実際女装技術が未来で役に立ってるのは事実という…