数十年後――――――――――――――
降りしきる雨の中、合羽を着た小さな男の子を連れた若い母親が傘を差し、遊歩道を歩いていた。
「お母さん」
「なあに?」
「おかあさんだいすき」
「ふふ、ありがと。でも本当はハンバーグが楽しみだからそんな調子のいいこと言っているんでしょ」
母は子供を優しくたしなめた。
「今日は、ハンバーグ。めちゃくちゃうれしい!」
男の子は母親の手を振りほどいて前に出てはしゃいでいた。
「こら、危ないよ。怪我するわよ」
男の子は天を仰ぎ、降りしきる雨を見ながら母親に恥ずかしそうに伝える。
「僕な―。早く大人になりたい。もし大人になったらお母さんに―――」
そういって母へ振り返ったとたん、母親は消えていた。
「あれ、お母さん?」
突然いなくなった母親。
最初はいたずらされているかと思い男の子は辺りをくまなく探した。
「お母さん、どこ?ねぇオカアサン!どこに行ったの?」
・
・
・
「貴方のすぐ後ろよ!もう、直ぐどっかに言っちゃうんだから!」
「ごめんごめん」
そういってはしゃぎ男の子は再び母親と手を繋ぎなおすと遊歩道をゆっくり歩いて行った。
その親子が過ぎていった遊歩道から程なく離れた後ろには人目を忍ぶように共同墓地がある。
その共同墓地の片隅で膝をついて肩を落とし、降りしきる雨に打たれるのも気に留めることもなく
一つの古ぼけた墓を呆然と眺める漢の後ろ姿があった。
漢は呟く。
「・・・・・・・お母さん、生きるって・・・こんなにも辛かったんだね」
やがてゆっくり顔を上げ曇天を仰ぎ見る。
「・・・子供の頃には、思いもしなかった―――――――――」
降りしきる雨は更にその勢いを増した。
人里離れた山の麓に古びた洋館。
それは朽ち果てた旧・グレース女子児童福祉施設。
その日は雲一つない晴天だった。
青空には渡り鳥達が一斉に飛び交う。
やわらかな木漏れ日は優しくその洋館を包み込んでいた。
しかしその朽ちるに身を任せた洋館は窓が全て見るからに強固なものにすべて置き換えられており、
館の内装は壁や床など要所要所が改修されている様子が見受けられる。
館の中、その一つの部屋”レッスン室”。
見るからに屈強そうな長身の上半身裸の漢は
自身の姿をくまなく映し出す姿見を見つける。
履いているビキニの後ろに”1期三上”と記しているゼッケンが片隅に縫い付けられている。
「おやおやぁーこれーはこれーは、なーんておおきくてすてきな・・・」
一方、そのレッスン室に続くであろう廊下では棺を付けたロープを引きずりながら。
これはまた中々筋肉質の漢が苦渋に満ちた、しかし敵意をむき出しにした表情でレッスン室への扉へ向かっていた。
ホットパンツには”2期ヤガミ”とゼッケンが縫い付けられていた。
「・・・・・・・・・・・かがみぃ!」
レッスン室の漢が目をむいて鏡に向かって叫び、その前でポーズを取っては己の肉体美に酔っていた。
やがて廊下の方の漢はレッスン室のドアの前までたどり着く。
臆することもなく勢いよくレッスン室のスライドドアを開いた。
影我・八幡二炎
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Selection test of eiga
Second group-4/8 taro yagami (age 35)
Equipment weapons Twin Throwing Axes
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「フォォォォオオオオオオオ!!!!」
ドアを開いたヤガミは目標の漢を見つけるや否や吠えた。
すると、それまで鏡を見て己に酔っていた三上も足のつま先をくるっとひねってヤガミに向き直ると
ドスドスドスと力強く、しかし急ぐことなくヤガミに向かってきた。
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Selection test of eiga
First group-1/8 seiya mikami (age 38)
Equipment weapons Shining chef's knife
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「やばたにえん三上」 ”コロスゾオメー”
いきなり三上がそう口にすると傍らに置いてあった小さな棺から不気味な機械音声と共に
妖艶な光を放つ牛刀をもつマシンアームが飛び出してきた。
「ヤガミ!出ろ!」 ”オネガイタスケテ”
ヤガミは引きずっていた棺に向かって叫ぶと三上と同じく二本の極めて柄の短い斧が飛び出してきた。
それをまるで引きちぎる様に取ると一直線に三上に向かってなりふり構わず全力疾走する。
そして声も発することもなく三上に向かって両手の斧を袈裟切りする。Xを描くように。
しかし三上は大柄な身体の割に身軽にバックステップし、それを避けた。
ヤガミはそれに臆することもなく、今度は傍にあった教室机のようなものを思いきり三上に向かって蹴り押す。
三上は流石にそれまでは避けきれなかったのか下半身で受け止めるが、
少したじろいだ程度で、鬼のような形相でヤガミを睨みつける。
両者は第一打を終えてお互い牽制し合う。
そう、二人は今殺し合いをしている。
殺し合いに漫画やドラマ、映画の様な余裕こいたセリフなどはない。
現実など、喉が裂けんばかりに奇声を上げるか、無言しかない。
それだけ全身全霊・一か八か、なのである。
ヤガミは噛みつくような勢いで相手に向かってゆく。
両手の手投げ斧を強く握り直し、今度は左右同時に素早く一文字切りを放つ。
三上はそれを今度は何と巨体であるにもかかわらず無謀にも前転してヤガミの懐に奇麗に飛び込んだ。
「オラ!おら!オラぁ!」三上は殺意をむき出しにして牛刀で何度もヤガミを突こうとする。
決して斬ろうとはせず、鼻から突きによる即死を狙っての事だ。
「ちっ!」舌打ちしながらヤガミは小柄な身体を生かして巧みにかわしてゆく。
ドンッ(しまったっ!)
ヤガミは避けるのに夢中で自身が壁に追いやられているのに気づくのが遅かった。
「オオオオオォ!」三上は雄たけびを上げてヤガミの首を掴んで、牛刀を持つ手の腕を後ろに大きく引いた。
そして、ヤガミに向けて刺そうとした矢先、ヤガミは叫ぶ。
「片桐さん!」
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Selection test of eiga
Second group-2/8 seiya katagiri (age 35)
Equipment weapons Ace's Iron Ball
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ヤガミの眼前で三上の側頭部に横からすごい勢いで飛んできた野球ボールの大きさの鉄球が命中する。
そして、命中したと同時にまた素早く後ろへと鉄球が引き戻されていった。
鉄球には軽量鎖のようなものがつけられており、片桐と呼ばれた肩の筋肉が異常に発達した漢が急いで引き戻していた。
「ヤガミ!早う早う!」
片桐は血相を掻いてヤガミを急かす。
「うぉおおおお!」
鉄球を食らってドタンと倒れこんだ三上の身体へ乗り掛かる。
そして片桐も直ぐに三上の所へ滑り込むと鎖を三上の首にかけ、腕で抵抗されないように脇を両足で抑え込んだ。
「グゥウウウウウウウウ!!!ヤメロ!ヤメロ!殺すぞ!ダボ!ダボ!」
鉄球を食らったにもかかわらず、頭から血を流しながらも信じられないような力と怒号で抵抗する三上。
「ヤガミ!早くしろ!お前が死ぬぞ!斬れ!首や!ぶった切る必要はない言うたやん!」
片桐は抑え込むのに必死でもはや顔からは苦渋の表情がにじみ出てる。
「ダボ!ダボ!離せやおらっ!!」
その時、三上の抵抗で片桐の片足が弾かれた。
十頭を持った腕が自由になる。
(!!)
サクッ!!プシュッ!!!!!
ヤガミは頭で決断する前に身体が既に動いていた。
三上の首の頸動脈を深く斧が切り込んでいる。
首からあふれ出る血を暫く眺めていると、自身の頭の横が激しく厚くなるのを感じた。
「ヤガミさん、もう!危機一髪や!早くやらんからそないなるけん・・・大丈夫か!?
止血するんやったらもうこいつの履いている物剥がして使うしかない」
片桐さんがヤガミを見ながら心配そうに呟く。
そこで初めて自分は三上の決死の一撃を寸でかわせたことに気が付いた。
三上のその一撃を放った腕は暫く硬直していたが、やがて身体を痙攣させると同時に床に打ち付けられた。
「あ、急がな!早く、こいつの武器仕舞わんとっ」
片桐は急いで三上から牛刀を取り上げ三上棺(ギミックが有るであろう)に仕舞いに行く。
ヤガミは持っている斧を自身の棺に投げる様に放り込むと、棺はそれを飲み込み再びアームが仕舞われ
蓋が固く閉ざされた。
頭から流れ出る血を掌で抑え、暫く痙攣して絶命してゆく三上を眺める。
そしてふとその止血している掌を自身の顔の前まで向けて呆然と眺めて、ヤガミはただ思った。
(でも、こんなに汚い自分を見られなくて済んで・・・本当に良かった・・・・)
「そうだよね・・・・・・・お母さん・・・・・・・・」
掌を眺めるヤガミの後ろ姿は悲壮に満ち溢れていた。
そしてレッスン室の黒板に浮かび上がるホログラムのカウントが切り替わる。
"LIMIT 29days 04:23:26 18-survivors"