(・・・・・・・・。)
ヤガミは夢の中で心地よい安らぎを得ていた。
それは、いつもあの日、あの雨の中、ああと共に歩いた遊歩道。
「!!!」
(・・・・・・・・・・・。)
いつも、何年、何十年たっても。
あの日の幼き日の記憶はずっといまも共に生き続ける。
「!!!!!」
あの日の母親の顔を今でも鮮明に思い出す。
そしてその眼差しが蘇るたび、いつも思うのである。
「おい、あんた!早く起きろ!」
(・・・・・・あの日に戻りたい。いつまでもいつまでも)
たとえ自分がどんなに年を取ろうが、あの幼き日の母の思い出は自分と共にあり続けるのである。
だからもう、自分はこのまま起きなければいいのにと、そう目覚めと共に絶望するのである。
「母さんじゃねーと~早く起きんか!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだ、どこ、ここ」
冷たい床でうつ伏せになって眠っていたヤガミは目を覚まし、流れていた涙を拭いながら
信じがたい光景に暫く呆然としていた。
「ようやく眼ぇ覚ましたか、よかった。死んでるんじゃないかと心配したんでなぁ」
傍らにいた自分と年の近い男性が安堵の息をついていた。
上半身裸であろうことかピチピチのボトムス一枚である。
「え、なにこれ。なんの冗談だよ?!」
気が付いたら自分も上半身は裸である。
下を見ると一応膝までのホットパンツは履いていたので安堵する。
ホットパンツを見ると、自分の苗字である”ヤガミ”と2期と書いてある小さなゼッケンが張り付けられている。
今、目の前にいる漢のボトムスもゼッケンがあり、”2期片桐”と銘打っていた。
気が付けば辺りには自分と同じような人間が数名こちらを食い入るようなまなざしで見つめていた。
「あ、あの、えと、すみません。俺酔った勢いでなんかよからぬことに参加とかしました?」
とりあえず状況を把握したいヤガミは眼前の片桐に声をかけた。
「まあ参加してるかどうかは知んないけど、とりあえずここにいる8人いきなり拉致られていることは確実だから」
「はあ?!なんだよそれ」
ヤガミは突然現実離れしたフレーズが耳に入り困惑する。
驚いて素っ頓狂な声を上げたので、周りは失笑したり、
ある者は鼻で笑ってはまたふさぎ込んでいた。
そして暫く辺りを見渡すと教室の様な作りになっており、奥には大きなグランドピアノと譜面の書いてある黒板、机などが散乱していた。
(拉致って・・・・何なんだよいったい)
ヤガミはいまだに状況を受け入れることが出来ず、いまだ困惑している様子であった。
そこへ突然驚いたような顔をした漢が立ち上がって声を上げた。
「おいちょっと待てみんな・・・何か聞こえないか?」
比較的若い、長身の漢が部屋の大きな引戸のドアまで近づいて聞き耳を立てる。
「ねぇ戸を開けて覗いてみてよ?」
「無理だ、頑丈に鍵が掛かっている」
場違いな声色のする漢の問いに聞き耳を立てている物はやれやれと言った様子で答えた。
聞き耳を立てている漢はジッと静止して聞くことに集中している、だがそれは直ぐに無駄に終わる。
ズン、ズン、ズン、ズン、ズン・・・・・。
「なんだ・・・デカいもんが歩いてくんぞッ!!!」
ズン!ズン!ズン!ズン!ズン!
ヤガミ達にもその地響きともいえる足音が迫ってくるのが嫌というほど耳に入ってきた。
「おいおいおいおい、なんかヤバいぞ、奧だ!部屋の奥に固まれ!」
一同は突然の事に恐れ慄き、へたり込むように奥へと逃げ惑った。
「早く、ほら、田中さん!」
「うううー」
田中さんと呼ばれた少年の様な声色を出す漢は身障者なのか、アスリート体系の若者に手を引かれて
うわ言を延べながら奥へと引き込んだ。
ズン!ズン!ズン!ズン!ズン!・・・・ガチャガチャガチャガチャ!!!
引き戸が激しく振動している。向こうにいる者が今鍵を開けようとしているのだ。
ガッチャン!!!シャーン!
引き戸は壊れんばかりに力任せに開き叩きつけられ、すごい音を上げた。
一同は目を見開き愕然とする。
「う――――――スッ!」
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
一同は入っていたものの姿に仰天し、思わず悲鳴を上げた。
扉からヌッっとその巨体を滑らせるように入ってきたのは
2m以上はあるであろう巨体の茶色いモップの様な毛で全身が覆われた雪男の様な化け物だった。
顔はチョウチンアンコウのような大きなぱっくりとした口とつぶらな瞳をしており、
その全身から出る臭気は、そのものがとても着ぐるみとは説明がつかないほどの物であった。
田中はその匂いに思わず顔をしかめる。
「おーし、全員めぇさめたなぁ。ったくおせーんだよこの部〇民どもが!
お前らが最後のチームだからな」
ぎろりと面子を見回した化け物の口からはドスの効いたくぐもった声と同時に想像もつかないようなセリフが飛び出した。
「部〇民って・・・なんなんだよこいつっ」
奥に居たの漢が目をむいて吐き捨てる。
だが化け物はなんら気にすることもなく、そして覇気のある声で呼びかける。
「とりあえず、今のお前らにはよくわからんだろうが結論から言ってやる。
よく聞け、お前ら社会の底辺どもに今からチャンスをやる」
それを聞いた、腰巻の付いた短パンにゼッケン”二期 掛”と縫い付けられた漢が鼻で笑い、言った。
「プ、底辺って・・・その顔のお前が言うなよ」
それを聞くないなや、ドスドスドスと掛まで歩み寄った化け物は眼前まで来ると突然片手でやすやすと弾き飛ばした。
バシン!ドス―ン!
「?!!!」
全員がそれを見て凍り付く、掛も血を吐いて呻き声を上げながら悶え、突然の事に朦朧とする。
「黙れ!!!!正直俺はお前らなんざどうでもいいのに、
わざわざチャンスを与えたいとか言うんだから仕方がないだろう!」
化け物は振り向きながら唾をまき散らし、訳も分からないようなことを怒鳴りだした。
「わ、わかった。とりあえず聞くけん、なんだよそのチャンスって」
ヤガミの直ぐそばにいた片桐がなだめる様に諭した。
「ふん、最初からお前ら屑どもは低姿勢で物事をほざけ、わかったな。ああ、後、俺の名前は”ゲロイム”だ。
よく覚えておけ、次に化け物呼ばわりしたら首がぶっ飛ぶからな!」
ゲロイムと名乗ったモップの化け物はそうして一同を背に少し距離を取ると改めて向き直り、
宣言した。
「よしいいか、これからお前らには”影我漢試験(えいがかんしけん)”を受けてもらう」
「映画・・・館・・・試験?」
ヤガミは耳に入ってきたフレーズをそのまま無意識に復唱する。
「間抜けなお前らの頭の中にはどうせ”見る。上映する映画館”が浮かんでいることだろう。だが俺が言う”えいがかん”は
”我の影”と書いて影我、漢字の漢で影我漢だ。漢はおとこだよ、お・と・こ」
「はあ?なんだそりゃ」
一同は呆然として各々顔を見合わせたり、多少興味を持った者も再びふさぎ込んでしまった。
「まあ突然、影我漢だの言われてもピンとこんだろうから生まれた時からやる気なしのお前らのために
先に優勝賞品を言っといてやる。この影我漢試験において晴れて影我漢なったものの優勝賞品は・・・」
(無理やりやらされるデスゲームに優勝賞品?そんなものあるのか)
ヤガミはマンガなどで見たデスゲームの内容をおぼろげに思い出していた。
そしてゲロイムは一旦間を置いて、誰一人期待してないにもかかわらずもったいぶったように溜めに溜めて、発表した。
「”国家権力”だ!」
一同は一旦静まり返る。
そこに唐突トレパンに”2期荒井”というゼッケンをつけた漢が声を呆れ声を上げた。
「ははっ、はははは、馬鹿馬鹿しい。おいゲロイムとかいうバケモンよ、ぬかしたこと言ってないでとっととここから出せよ
ってか誰がやってんのか知らないけどお前らのやってることは犯罪だからな、解ってんだろうなおい」
が、ゲロイムはそんな荒井の言葉など無視して手首に付けていた腕輪を長い爪の付いた指先で
巧みに操作し始めた。
「おい聞いてんのかっこの・・・・」
その時、部屋の至る所からブザーが鳴り、機械の軋む音が響き渡った。
「なんだっ?!」
「お、おい天井っ、危ないぞっ」
誰かが言ったその台詞と同時に一同が上を見上げると天井の石膏ボードがスライドし、長く黒光りする長い箱が
アームに支えられてゆっくり降りてきた。
アームが外れ一同を囲むように降り立ったそれは正に小ぶりの棺の様なもので側面にはそれぞれゼッケンと同じような
刻印がされており、その前部にはyabatanienと記載されていた。
「なんだこれ、棺桶・・・?」
「ya,ba,tani,やばたにえん、やばたにえーん!田中!」
ヤガミが棺に寄って観察すると横から田中が割って入って横の刻印を読み上げた、すると。
"チギレチャウ”――――ガシャーン!
不気味な音声と共に棺の蓋が開きアームが飛び出してきた。
アームが持っている物は、拳銃のようなものだ。
「なんだこれ、おい、これ拳銃か?!」
ヤガミが触ろうとすると、ゲロイムが急ぎ静止した。
「おい、まださわんじゃねーよ。それ、持ち主が”生きてるうちに”他の奴が触るとルール違反でお前らの胸の中に入れた
致死性の高い毒が回りだすからな。まあまあ別に全員死んだっておりゃあ一向に構わんのだけどよ」
一同はそれを聞いて愕然とし顔面蒼白になる。そして思わずそれぞれ自分の胸に手を当てたりゆっくり撫でたりする。
「毒だって?!冗談だろ!」
「で、でもまて。言われてみれば胸に少ししこりみたいなのが・・・」
「ふざけんな!」
「どういう事だ。毒ってなんだ?!それに生きているって」
「お、おいもうやめてくれよ、なんなんだよこりゃーよっ」
「わーったから!ちょっと黙れ!」騒ぎ出す一同を一喝するゲロイム。
そして笑っているのかすまし顔なのかよくわからないそもそも感情の取りようのない顔で答えた。
「どうもこうも、お前らはこの試験で命かけての死合をするんだよ。”死”に”合う”で死合だ、かっこいいだろうっ」
「ふ、ふざけないでちょうだいよっ。わ、私達が人殺しなんてできません、悪い冗談ならいい加減止めて頂戴」
それまで押し黙って事の成り行きを見ていた、少しなよっとした”2期大杉”とゼッケンしたスパッツを履いた
中肉中背の漢が言う。
どういう訳か胸の辺りを何故か腕で隠している。
「ちっ、黙ってろよカマ野郎・・・」
荒井が舌打ちしながら、大杉に睨みつける。
(お前が起きるまでかなりやり合ってたんだよ。どうもあの荒井とかいうやつはそういうの毛嫌いしててな)
片桐がヤガミに耳打ちする。
「あーあーいいか?今俺が出したやばたにえん武装も含めてこれから手短に説明してやっから、
黙って聞いてろ。あと、一度しか言わねーからよく頭の中に叩きこんどけよ!
この試験にお前ら底辺の拒否権はねーんだよ!」
ゲロイムはそう言うとまた腕輪を操作する。すると部屋の黒板にカウンターが浮かび上がった。
"LIMIT 29days 23:32:02 24-survivors"
「これが試験時間だ・・・これからこの”時間内”でお前らは今流行りのデスゲームをしてもらう訳だ」
「ふ、ふざけんなよ。殺し合いなんかガキの楽しむゲームじゃねーとよ!」
片桐が抗議するがそれをゲロイムはピシャリとたしなめる。
「黙れ!話の腰を折るんじゃない!いいか、お前らの知るデスゲームなんてのは戦って最後の一人になったらハイ終了。
でもみんなで力を合わせて首謀者を探してぶちのめそう、そして死にゆく仲間・・・友情・・・そして・・・愛・・・なんてね」
荒井はゲロイムの声が耳障りなのか拳を握りしめ何度も胸の前で掌にバシバシ叩きつけている。
「・・・なんてガキみたいなもん想像してんじゃねーよ、それにお前ら全員オッサンだろ。
中にはもういい歳した奴もいるんだ、体力的にも無理が有るしな」
ゲロイムはにやけているのかわからないがとりあえず声色から少し半笑いなのは一同に理解できた。
「影我漢試験はチーム戦だ。今お前らの履いている物にゼッケンついているだろう”2期〇〇”って。
お前らのチーム名は二期生だ、後他に一期生・三期生もいる。1チーム8人の計24人。
このチームで死合をして残り八名になればめでたく”影我漢誕生”という訳だ。
まあお前らはこのメンバーで仲良く生き残れって話だ、最初からお互い疑心暗鬼にならなくていいだろう、感謝しろよ」
無い鼻をほじりながらゲロイムは淡々と口にした。
そこに大杉がある疑問をたじろぎながら投げかける。
「ちょっとまって・・・チーム戦でしょ?仲間が死んじゃって8人も生き残れなかったらどうするのよ?」
「はぁ?んなもの知らねーよ」
「えっ・・・・」
大杉の質問にゲロイムは途端にイラつきを露わにした。
「いいか、俺は残り8人になった地点で終了といったんだ。チームで生き残れなんてことは一つも言ってねーよ!
そりゃー途中でチームでおっちぬ奴もでるのは当然だ。
じゃあどうする?そのまま残った人間で戦い抜くか?それとも他のチームの奴を引き抜くか?
んなもん俺の知ることか、お前らの好きにしたらいいんだ」
「ふざけんなよ・・・殺し合いしてる相手のチームの人間を引き抜けだって?出来る訳がない!」
ヤガミは当然の反応を示す。
「じゃあ、残った人間で好きにするんだな、まあかなーりしんどいとは思うけどな」
そしてゲロイムはそう言いながら前にあるピアノを弄りながら説明を始めた。
「頭の悪いお前らの事だ、あれやこれやと言っても覚えきれる訳ないから端的にルールを言ってやる。
まず一つ、お前らの周りある名前の書いてある棺の中にはそれぞれの武器が入ってる。
それが死合のための武器・武装”やばたにえん・〇〇”だ。
一人につき一台、名前の所有者以外は使えないが死んだ場合は所有権が無くなるから自由に使っていい。
ただしだ、死んだ奴の棺を使った場合は最初に使った奴が所有者になるからな。棺に金具が付いてるから
どこぞのRPGゲームみたいにいっぱい繋いで歩いてろ、こんゲーム馬鹿ども」
いちいち癪に障るような言い方をするゲロイム。
方や一同は命綱となるそれぞれ自分の棺に歩み寄り、手探りながら調べ始めた。
「ボタン類は付いていない。使いたいんならその棺の名前を呼べ、端折ってもまあ使えるだろう。
だが注意しなくてはならないのはその武器が使えるのは3分間だけだ。
3分過ぎると胸の毒薬が少しずつ回りだす、これは死んだ棺を使ったときも同じく連動するからな。
三分までに急いで棺の中に仕舞えよ、最初の様に元に戻せばいい」
ゲロイムは次に窓を眺めて辺りの景色を眺めながら言う。
その窓からの景色はとても美しい森林が広がっていた。
「ああ、それとお前らがいるここはとある元福祉施設として使われていたまあそれはデカい洋館だ。
一見あちこち廃屋の様にぼろそうだが窓ガラスはハメ殺しで
徹甲弾を近距離で撃ってようやくひびが入る程度の代物に交換してる、壁も扉も同じく”リフォーム済”だ。
試験が終わったときのみ出口が解放されるからまあそれまでに逃げたかったら自殺でもすりゃあいい、幽体になって出られるだろうよ」
そういって目線をまた一同にもどして、口の涎を手で拭った。
「それと前を見て解る様にリミットが切れると全員毒が回ってジ・エンドだ!
後もう始まっているぞ、過ぎてってるだろ時間。じゃあ、また試験終了後に会おうぜ、チャオ」
そっけなく扉へ向かうゲロイム、急にそっけなく過ぎ去るので一同は仰天した。
「えっ・・・それだけかよ?」
「当たり前だろっ!お前ら馬鹿どもにこれ以上の説明してどうするっ、なあ田中?」
田中は急に話題を振られてもたじろぎブツブツ何かつぶやくことしかできなかった。
「フハハハッまあまあ、お前らの事は拉致ってここに連れてくる前からよく知ってるよ。
前科モンに収監中、統失に疾患もち、社会不適合者に底辺労働者が多数・・・因果なもんだな。
でもまあ、恨むんなら”お・前・ら・の・親”を怨むんだなっ」
その最後の意味ありげな言い方に一同は思わず固唾を飲んだ。
「おいゲロイム、お前・・・」
「じゃあな」
反応することもなく踵を返して過ぎ去り行くゲロイムにヤガミはその背中に皆が思う疑問に思う一番の質問をした。
「待てッ、最後に、最後にだ、”影我漢”って一体なんなんだ?”影の我”って事は生き残った奴は誰かの―――」
最後まで聞くことなく、ゲロイムは答える。
「それはな・・・生き残ったときに解ることだ。”ヤガミさん”よぉ」
最後の名前を口にした時のニュアンスは、それはまるで自分を知っているような口ぶりだった。
ヤガミはそんなふとした疑問を持ったが次の瞬間にそれは無造作にかき消されることになる。
ゲロイムが帰る最中、最初に入ってきた扉の引き戸を豪快に開けこれまた豪快に閉じたため
完全には閉じられず、十センチほどの隙間が空いた。
そこから、音もなくスッと拳銃を持った手が飛び出してきた。
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Selection test of eiga
First group-2/8 touru matumoto (age 33)
Equipment weapons Double-column(GUN)
############################################
ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!
「うわぁっぁぁぁっぁっぁあああああああ!!!!!!!!!」
隙間から荒れ狂う火を噴く黒光りの長物。
二期生の部屋の中は絶叫に渦巻いた。
「ひっ!!」
大杉の頬をかすめた弾丸は頬に鋭い赤い筋を立て、それが現実であることを周りに知らしめた。
「ひひぃいいいいい!!くそ!くそくそくそくそ!!!」
扉の隙間からニョキッと飛び出たそれは破裂音と火花を部屋中にまき散らす。
「ダボかよ!いきなりか!?ふざけんなよ!」
荒井は二期生の中でも一番のアスリート体系であったためか
素早く身を翻して自身の棺の後ろへ回転する様に回りこみ盾に取る。
「なんだ、何て言ってた、あれだ!”やばたにえん・荒井”!」
”トーキョートッキョダレトク?”
不気味な機械音声と共にバン!キュイーンとアームが伸びて武器が表れる。
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Selection test of eiga
Second group-5/8 seiji arai (age 33)
Equipment weapons Silver Batons
############################################
「おいちょっと待てふざけんなよ、なんだよこれ?!」
荒井の棺から現れたのはそれは三十センチほどの伸縮式の銀色の警棒である。
手に取るとズシリと重く手になじんだので武器にはなりそうだったが銃相手には分が悪すぎた。
「おいクソなんで銃じゃないんだ?!お、おい誰か、武器を出せ、武器だ!銃は無いのか!」
「そうだ、田中だ!田中の棺は!確かピストルみたいなの入ってたんじゃないのか田中!
出せ!武器だ!早く早く!」
ヤガミは先程の田中の誤作動で飛び出した武器を思い出し田中に促す。
「ひぃぃいぃい、怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!」
「おいおい冗談だろ、しっかりしてくれよ俺ら死んじまうだろ!」
田中は恐怖のあまり自分の棺を盾にうずくまり、耳を塞いでしまっている。
バン!バン!といまだに部屋のあちこちに弾が飛び交い、収まる様子がない。
そこに地面に這いつくばっていたヤガミが身を僅かに起こして扉を伺いながら叫ぶ。
「荒井さん俺がやってみる・・・”ヤガミ”出ろ!」
”オネガイタスケテ”
ヤガミは決死に叫ぶと機械音声と共に棺からアームが二本飛び出た。
「これは・・・・斧か?」
柄の短い斧の様なものが付いており、棺の開いた蓋の裏には小さく”双子の手投げ斧”と記載してあった。
ヤガミはそれを無造作に取って、弾が飛び交う中も臆することなく扉の隙間目掛けて
思いきりスイングして投げつける。
それは奇跡的か、その斧は意思があるかの如く扉の隙間へ勢いよく滑り込んだ。
”うぐぅつつつ!”斧が入り込んだと同時に扉の向こうで射撃者の悲痛なうめき声がくぐもって聞こえる。
「いいぞ、ヤガミさん!」
片桐が拳を握り締めヤガミにエールを送る。
そのチャンスを見計らったかのように、先程までは存在感の出さなかった他のメンバーの一人が淡々と歩いて扉に向かって行った。
その漢は長身で体格もよく、同じ上半身は裸ながらも髪型といい履いているスラックスといい品の良い人間性を感じた。
「”やばたにえん加古”」
”ハヤクタスケロ!ハヤクタスケロ!”
ガシャンと音を立て傍らにあった棺の蓋が輝きを溢れさせながら開かれた。
############################################
Selection test of eiga
Second group-8/8 syouma kako (age 32)
Equipment weapons Gold pruning shears
############################################
加古は棺から出た眩いばかりに輝く金色の大きな剪定鋏を動じることもなくスッと取ると扉の側面に回る。
そして片方の手で鋏を持つと少しだけ開いていた覗かせていた隙間をもう片方の手で勢いよく開いて全開する。
そこには銃を構え膝をがくがくさせながら脅えた表情をする禿げの漢がいた。
ズボンには”一期松本”と書かれている。
「ひっぃぃぃいぃいぃ!畜生!畜生、動くな!う、撃つぞ、撃つぞ!」
肩から血を流しながら、顔面蒼白で息巻いていこちらに虚勢を張る。
その刹那。
「!!!!!!!!!!! ぐうぅううう・ぞ、ぞ、ぞんなぁァ・・・・!!!」
それは一瞬だった。
加古はもう一方のてで構えていた鋏を自身をスイングさせながら突き出し、瞬く間に相手の喉元へ突き刺した。
「ふんっ!」
加古は突き刺した鋏を相手の身体に蹴りを浴びせて引き抜いた。
と、同時である。
バン!
骨髄反射なのか、松本の銃から渾身の一撃が放たれた。
それはスーーーーーっと一直線に、吸い込まれるように後ろの人間の額に直撃する。
「え、えな、なんだ、こぃ、あれ?」
目をむいて膝から崩れ落ちる漢。
それは、最初にゲロイム噛みついていた掛だった。
「お、おい嘘だろ。しっかりしてくれっ」
直ぐそばで怖気ついていた漢が咄嗟に駆け寄り、崩れゆく掛を抱きとめる。
最後の一発を合図に、静まり返る室内。
突然の襲撃者、松本が死んだことにより事態は一応の収束を得た。
加古は片手には鋏を持ったまま警戒を解くこともなく、まだ首から血の噴き出る松本の体を力任せに中へで引き入れる。
「ボケっとしないで、手伝って、早く」
加古は振り向いて目の合ったヤガミに声をかける。
ヤガミは事の成り行きに暫く放心していたが直ぐに気を取り戻し松本の棺を中に引き入れようとする加古を手伝った。
「か、片桐さんっ。とりあえずドア閉めてなんかで塞いで!」
「お、おうっ!荒井・・・さんか?あとそこのなよなよした人もそこにある机持って手伝って、扉を塞ぐぞっ」
荒井は大杉と共に呼ばれたことに不快感を露骨に露わにしながらも自身の武器を棺に仕舞って片桐を手伝った。
暫くの後、一同は状況判断もままならぬ中一応の籠城としての態勢を何とか整えた。
「おいっ彦!血なんて防いだって何にもなんないだろうっ。死んでるんだよそいつは!」
「ううっ、で、でも。まだあたたかいしっ・・・・い、生きてる可能性も・・・」
「額をぶち抜かれてそれは無いと思うよ」
彦と呼ばれた漢(海パンのゼッケンには”二期小堺”とある)は、荒井に叱責されながらも包帯や手当てする物が周りにない中、
仕方なく掛自身の身に着けていた物の一部を引き裂いて額に巻き付けて無駄とわかる手当をしていた。
「ちっ・・・どうすんだよこれから」
先程の襲撃から暫く経ち、落ち着きを取り戻した二期生一同は誰となくそれぞれ名前だけの自己紹介を
して、今後の対策を思案していた。
既に一人やられ、残り七人になった二期生。
知的障害を持つ田中大輝。
おせっかい焼きのガタイのいい片桐征也。
アスリートで潔癖症の荒井誠二。
ゲイで愛嬌のある大杉 仁。
無駄にやさしい性格の小堺 彦。
冷静沈着でメンバーの中で唯一優等生株がうかがえる加古 翔馬。
そして、切れるとおっかない”ヤガミ”太郎。
そして喧嘩っ早く、既に故人と化した掛 一騎。
彼ら二期生と銘打たれたメンバーはショッキングな出来事も重なり今はただ現状を憂いていた。
そこに片桐が切り出す。
「なあ、加古さんだっけ?あんた・・・よく人なんか殺せたな。あんたもしかしてゲロイムが言ってた前科持だとか」
「いや、前科は持ってませんよ。もっとも、恐喝罪で逮捕勾留中だったけどね。安心して、殺人は犯したことないから」
そう言いながら長身の加古は鼻で笑った。
「嘘だろ・・・」唖然とするヤガミ。
「まあ、それよりもだよ。これからのこと考えないと、ほら、調べよう?情報収集は大事だよ」
そう言って加古は襲撃者の松本の身体チェックや棺を調べ始めた。
「マジかよ、でもそうも嫌がってもいられんか。腹をくくらないとどうやら現実の様らしいしな」
片桐もしぶしぶ松本のズボンのポケットをまさぐったりした。
「とりあえずこれはしまってたら大丈夫かな。どうする、これ?・・・ヤガミさん使う?」
そう言って、加古は松本の手に握られていた拳銃を拾い上げた。
「弾、後何発か残ってるみたいだけど」
「い、いや無理だ。俺はそんなもの使ったこともエアガンすら持ったことも無いよ」
「そ、じゃ、とりあえず保留で。」
元々ドライな性格なのか、加古は取り止め気にする様子もなく興味の対象を棺に移した。
「こいつの毒の事はもう気にしなくていいからとりあえず武器は後で仕舞うとして・・・と、これは・・・」
すると何かを見つけたのか加古は棺に有った一枚のクリアファイルを見つけ、それをつまみ上げると
眼前に持ち上げてジッと眺めていた。
(・・・・・・・。)
その加古の目は冷徹そのもので、それを傍らで見ていた片桐は思わず固唾を飲んだ。
「・・・・ふっ、やっぱりだ。母さんの言った通り。ねぇ荒井さん!これ見てみなよ」
そう言って後ろで様子を伺っていた荒井に声をかけ、ファイルを渡す。
「なんだこれ・・・・・・・ちっマジかこれ、冗談じゃない!!」
荒井は見るや否や声を荒げ、不機嫌な態度をあらわにした。
「おい、何が書いてあるんだ。俺にも見せてくれ!」
ヤガミは”母さんの言った通り”と聞いたことに何か引っかかる事もあるのか荒井に要求した。
「ふん、まあ見てみろよ」
「ちょっとヤガミさん、私にも見せてっ」
荒井から無造作に渡されたファイルを、不自然なまでに身体を寄せてくる大杉と共に凝視する。
(・・・・・!!!これは!)
ヤガミはそのファイルの内容に、思わず動揺する。
3, 掛 一騎(かけ いっき) 27歳 180cm 82kg
父親はグレース邸に出入りしていた買春野郎、会員番号・・・○○市議会議員。
母親はグレース女子児童福祉施設寮生二期生。
学生時代は父親の権力、金と地域住民への権力を盾に周りに出張っていたが
父親が事故死になったとたん自身の立場は底辺へと落ちる。
その後は度々不良の餌食にされ想像を絶する青春時代を送る。
現在はフリーター。無職とバイトを繰り返す。屑。
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Selection test of eiga
Second group-3/8 ikki kake (age 27)
Equipment weapons Blue Slingshot
############################################
「わかった?ヤガミさん。僕はこれで確信したよ」
(そんなまさか、これは俺たちの生い立ちか?だったら母さんや、もしかして・・・)
加古は棺を調べ終えたのかスッと立ち上がると腰に手を当て黒板を眺めた。
「ここに集められたのはグレース女子児童福祉施設の関係者の人間。そしてここは間違いなくその渦中の施設だ。
もちろん君もそうでしょ、ヤガミさん?」
誰に伝える訳でもなく、只、虎視眈々とつぶやいて加古は少し遠い目をしていた。
黒板に浮かび上がる赤い電子文字が少しずつ時をまた刻む。
"LIMIT 29days 22:52:00 23-survivors"