「どういうことだ?さっきまでは動いていたのに」
ロン毛でガッチリ筋肉質の半裸の漢は小声で呟く。
ここは片隅にある理科実験室から繋がる準備室。
様々な瓦礫と器具の残骸に埋もれており、その直ぐ近くの片隅に隠れる様に漢がいる。
手には小指程の小さな電子機器。そのダイアルを回して点灯する周波数を弄る。
(くそっ、やっぱりこいつが原因か?だからと言ってこの数少ない生命線から離れる訳にもいかんし・・・)
漢はドアを塞ぐように立てかけていた棺を忌々しく見つめた。
そこには”やばたにえん・真毅(まがい)”と銘打たれたプレートがつけられていた。
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Selection test of eiga
Third group-8/8 shin magai (age 28)
Equipment weapons A revolver with only four shots in it
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(せっかく探索と称してあの双子を煙に巻いたというのに、これではせっかくのチャンスを生かすことが出来ん)
真毅の持つ物はどうやら超小型無線機の様で必死に外部と連絡を取ろうとダイヤルを回しては
ロン毛の奥に隠された骨伝導イヤホンを指で押さえた。
「くっ・・・早く連絡を」
真毅は焦りを押さえることが出来ぬままここに連れてこられる数時間前の出来事を思い出していた。
「にわかには信じがたいのですが・・・」
真毅は数年前より、ある県警での特別編性チームに配属させられていた。
念願の刑事。
警察大学校を首席で卒業。
幾つもの教育課程、試験、指導を受け、28歳の若さにして刑事になった所謂エリート・キャリア組である。
今、真毅はその命令権を持つ直属の上司による依頼を聞いていた。
「潜入捜査に不安が有るのは当然だ。だが安心したまえ、サポートは万全を期す。
身に危険が生じた場合はもちろん事件よりも君の保護を優先する」
「いえ部長、そうではありません。単独での行動は構いません、それよりも気になるのが・・・」
重厚な椅子に腰かけて腕を組みながら背もたれに仰け反っていた真毅の上司は低いうなりと共にいう。
「ああ、拉致した人間を”コロシアムの様”なものに参加させるという奴だろう。わしも最初目を通したときは疑ったよ」
「出処はロシア拠点の密輸入グループのファイルの一部ですよね。それがなぜ日本のことが・・・」
部長は体を起こして立ち上がると真毅の持っていたファイルをひったくり、パラパラ捲りながらうろうろし始めた。
「総数は24名・・・拉致する者は全て”旧アガツマ製薬”の関係者の”息子”であること・・・・すべてロシア語だ。
関係するロシアンマフィアに全員通達している。これはかなりデカい金が動いていてまず間違いないんだが・・・・」
それを聞いた真毅は既に調べ上げましたと言わんばかりに意気揚々と部長に報告する。
「旧アガツマ製薬・・・現在はアガツマホールディングスですが、先月東証2部に格下げ、
旧経営陣は全て退任しており現在当時の関係者もほとんど在籍しておりません。
在籍者も目立った犯歴などもなく、ロシアへの渡航歴もございません」
「そうなんだ、これがなぁーおかしな話なんだよなあ。アガツマは昔こそ黒いうわさが絶えなかったが今は鳴りを潜めて
吸収合併の話まで上がっている万年経営難の会社だよ、いくら大企業と言ってもねぇ・・・」
部長はため息交じりにファイルを応接セットの机に放り投げた。
「そう言えば、”あれ”。今でも仕込んでるの?」
部長は左手を突き出すとその小指を右手の指でわっかを作りスポスポ出し入れした。
「部長・・・妙な言い回しは止めてください。通信機ですよね、仕込んでますよ。常に充電も完璧」
「アノ時の怪我の功名とはいえ・・・お前もよくやるよ。今度飲みに連れて行ってやるからな」
「茶化さないでください」
ははは、と部長はから笑いすると今度は応接セットの椅子に腰かける。
「とりあえず、ファイルでは連中の決行日は来月の予定だ。だが時期が早まるかも念のため用心しておけよ」
「ということは既に情報を?」
「ああ、一応お前は旧アガツマ製薬の人間の家族という情報を流してもらっている。
今のお前の肩書は医学大学の浪人生だよっ、くくく」
部長はニヤニヤしながら煙草に火をつけた。
「警察よりよっぽど給料良くなるんでしょうね、お医者さん」
「どうだろうな。忙しさの日は俺らの比じゃないってきくぜ」
二人は些細な冗談に花を咲かせる。
「それでは、今日は事務関係が残っておりますので失礼します」
真毅は部長に挨拶をし、執務室を出ようした矢先。
「真毅、今回は大トリになるかもしれん。覚悟しておけ。何かな、胸騒ぎがするんだ。
俺も若い頃カチコミ先が事前に知らされた情報とはまるで真逆で背筋が凍ったことが有る、くれぐれも、用心だ」
「わかってますよ、了解いたしました」
真毅はいつも気にかけてくれる部長に笑顔と覇気のある声で答え、敬礼した。
「はは、ならいいんだ。ところでさっきお前が入ってきたときに”後ろに連れてきた女性”はお前の新しい部下か?
隅に置けんなお前も~俺は全然そんな話聞いてないぞ、人事部の奴ら怠慢だぞ」
それを聞いた刹那、真毅は背筋が凍った。
「え、な に い っ て る ん で す か ?」
おもむろに背後を振り向きそこで視界は暗転した。
(・・・すでに捜査関係者がバレていた?何にせよ早く本部に連絡を――)
そう思い、更に無線を弄っていた矢先。扉を挟んだ奥の理科実験室から物音が聞こえた。
(!!!誰か入ってきた?!)
じゃり、じゃり、っと足の踏みしめる音が僅かに聞こえる。
真毅は予め部屋に入る前に床に音の付くような瓦礫の破片を集めてはこちらに至る通路に撒いていた。
(こっちにくるか・・・)
徐々に迫る音、真毅は急いで用意しておいた瓦礫を潰して作った目つぶし用の砂利を握りしめドアを防ぐ棺にそっと手を置く。
(相手が銃などの場合に備えて出来るだけ距離を詰めたい。それに・・・)
真毅は大きく喉を鳴らす。
(任務とはいえ、殺しなどしてたまるものか・・・)
一呼吸おく、相手の足音が止まり、急に聞こえなくなった。
全身を研ぎ澄まして、神経を集中する。
だが暫くしても相手の動く気配がない。
(なぜだ、俺に感づいているからか?)
2分、3分と経過するうちに、焦りからか真毅はついにしびれを切らして棺で押さえていたドアの隙間を少しだけ作って
実験室を覗くと。
「何か見える?」
ドアの隙間から、目と鼻の先に顔が表れた。
ニヤッと笑いそのごつごつしい顔は、顔とは明らかにギャップの有るその清らかな声で真毅に問いかける。
「うぉおおおお!!」
思わず叫び仰け反り、尻もちをつく真毅。
その瞬間を見逃さないかのようにドアは力任せに勢いよく押し倒され、真毅は反撃の隙も無く足首を掴まれ
実験室へと引っ張り出された。
「酷いなぁ、一人でこそこそ引きこもり?あーわかった”しこって”たんでしょ?俺にも言えよぉ一緒にしこるのにぃ」
夕闇に差し掛かる中、その漢はその巨体を捩じらせた。
真毅は顔面蒼白になりながらも、その聞き覚えのある声と態度に一応の安堵をついた。
「ど、弩羅(どら)か。脅かすなっ」
「ふふふっ何慌ててるんだ?真毅君、急にいなくなっちゃって、探したんだよぉ」
筋肉隆々の体に短パン、ゼッケンには”神郡(かみごおり)3期”と記載されている。
その巨体の漢は窓から見える夕日を見ながら、真毅に満面の笑みで答えた。
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Selection test of eiga
Third group-7/8 dora kamigo-ri (age 29)
Equipment weapons Civil engineering hammer
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その漢は鍛え上げられた上半身に2m近くある身長、それは正にプロボディビルダーそのものの体系であった。
(この化け物が俺のチームでよかった。敵のチームなら終わってるぜ・・・)
真毅は弩羅を見るたびに恐れおののく。
自身も警察学校などで鍛え上げているが、弩羅の”それ”はすでに並の比ではない。
「で、真毅君なにしてるの?引きこもり?」
「い、いや、もしもの時の籠城戦に備えていい場所を探していたんだ」
「へぇー凄いな、おれも一緒に引きこもっていい?ねぇ?」
冗談なのか本気なのか、いまいちつかみどころのない弩羅は他のメンバーからも煙たがられていた。
「そうだ、こうしちゃいられないよ。真毅君に伝えなきゃならないことが有って」
弩羅はわざとらしく顎に手を当てて深刻そうに言った。
「あのね、さっき俺が真毅君を探しに行っている間に図書室が襲撃に合ったみたいでね、向山君が連れていかれちゃったみたい
さっき一度戻ったときにあのオタクが教えてくれたんだ」
「なんだと?!そんな馬鹿な!」
真毅は仰天した。
殺されたのではない、連れ去られたのだ。
なぜ?一体どのチームに?一期、二期?そもそもなぜ連れ去る?と真毅は不安と疑問を隠し切れない。
「それで、他の奴らは無事なのか?」
「鮎川君がボコられたみたいだけどね。アイツ口ばっかりで気に食わなかったから丁度いいよ・・・」
(拉致った奴らといい、こいつといい・・・どうもここには狂ったやつが多いようだ)
そうして真毅は体のほこりを払うと自分の棺を引っ張り出して弩羅を促した。
「解った。とりあえず一緒に・・・」
と言いかけた矢先だった。
弩羅はいきなり何を思ったのか床に落ちていたガレキを拾い上げると身を翻して凄い勢いで部屋の廊下側の窓の方に投げつけた。
内窓は防弾ではなかったのか、ガシャーン!と大きな音を立て崩れ落ちる。
そこにはいかにも顔つきが欧州系の赤毛の漢が微動だにせずこちらを凝視していた。
「こいつ、さっきからずっとつけてきてたんだよね。おい、お前馬鹿?気づかないとでも思っていたの?」
赤毛の漢はゆっくりと部屋の中に入ってきた。
夕日が落ち、部屋が闇に染まる直前、自動的に照明が点灯する仕組みなのか室内中に青白いライトが付いた。
青白いライトに照らされた漢の美しい妖艶な肉体が二人の目に飛び込む。
「もちろん気づいていたとも。神郡弩羅君?」
「あれこいつ俺の本名知ってる?何者?」
抜群のスタイルにトレーニングパンツ。ゼッケンには”ブレア1期”と記載されていた。
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Selection test of eiga
First group-8/8 Christopher"B"eguti (age 35)
Equipment weapons Lavender jade-colored clubs
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「色々知ってるよ、君のことも、他の人たちのことも、ね」
ブレアは冷静に、只虎視眈々とこちらを見つめ微笑んでいた。
「へー、で、なに、俺ら殺しに来たの?止めといたほうが良いよ?逆に死ぬから、うん」
弩羅はブレアの言うことに興味を抱くこともなく、ただ獣の様な目つきでブレアを睨みつけた。
「ふふ、怖いね。まあ、いいや。殺し合うのはいいんだけどさ、ちょっと聞きたいことが有ってね?」
「質問なんか受け付けねーよ、おま―――」
「―――なんだ、言ってみろ?」
有益な情報を得られるかもしれないと悟った真毅が弩羅を手で制止してブレアの質問を促す。
「君は・・・真毅?知らないなぁ・・・どうも僕の知らないことも多いようだ。ふむ。まあ兎も角として」
一呼吸置いたのち。
「君たちのチームにさ・・・・・・・”アガツマ”って人いない?」
真毅の背筋が凍り付いた。全身に鳥肌が立つ。
(なぜだ、なぜこのハーフは事件についての核心の情報を持っている?)
真毅の疑問を他所に弩羅は身を乗り出して張りのある声で答える。
「アガツマなんて知らねーよ!二期の連中に居るんじゃねーの、知らんけど」
「待て弩羅!!名前はブレア・・・・で良いな?そのアガツマは何者だ、知ってどうする?」
真毅は出来るだけ情報を引き出そうと強引に前に出る弩羅に割って入る。
「なに?何なの真毅君?こいつの事なんかどうでもいいじゃん。それより一人の内にとっととぶっ殺そうよ」
(この筋肉馬鹿!邪魔すんなよ、この屑が!)
真毅は話に何かと首を突っ込もうとする弩羅を睨みつけたが弩羅は何か訳が分からず困惑していた。
「知らないならまあいいや、直接その二期生に聞いてみよう?ねえ?そこのひと?君は二期生じゃないの?」
ブレアは自分の入ってきた方とは真逆の方向のドアへと大きく問いかけると
ゆっくりとこちらを偲びよる影が表れた。
「あーまたきたぁ、ほら~真毅君がもたもたしてるからまた敵が増えちゃったじゃないか」
(お前の声が馬鹿デカいからだろう!)
真毅は常にズレている弩羅に対する怒りを抑えながら新たなる襲撃者に釘付けになる。
「・・・・・・・バレてた?まあいいか、どのみちおっぱじめたら横槍入れられると思ったんだがなー」
「あ、当たり前よ、皆普段とは違って常に緊張状態なのよ、気付かないわけないわよ」
「チッ、うっせーんだよ黙ってろ」
威風堂々と入ってきたのは二人。
一人は雄々しく、敵意をむき出しにしてこちらに不敵な笑みを浮かべている。ゼッケンには”二期荒井”。
もう一人は・・・何だかナヨナヨしており、身体をくねらせては弩羅たちを見て身を竦ませていた。ゼッケンには”二期大杉”。
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Selection test of eiga
Second group-5/8 seiji arai (age 33)
Equipment weapons Silver Batons
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Selection test of eiga
Second group-6/8 jin osugi (age 27)
Equipment weapons Bulletproof panel
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二期生が引っ張ってきた棺二つのうち一つは更に後ろにもう一つ棺が繋がれていた。
それを見たブレアは直ぐに感づく。
「それは・・・松本さんの棺・・・へえ、君たち松本君殺したんだ。やるじゃん。
でもまあ、松本さんちょっと”あれ”だから当然だよね」
ブレアはチームメイトの松本の棺を見てほくそ笑んだ。
「で、俺達二期生に何か聞きたいことが有るとか聞こえたんだけど、ああ、後こいつはおまけだから気にすんな」
「ひ、酷い。わざわざ自分から誘っておいてっ!」
「黙れ!このカマ野郎!わざわざ俺が引っ張ってんだから感謝しろっ」
大杉は荒井に窘められ、しゅんとした。
「うわーなんか楽しそうっ、ねえ真毅君。良いねあれ!」
(こいつ・・・何がいいって言うんだ馬鹿が)
真毅は状況が劣勢に近づくことに焦りを感じ始めていた。
一期生の登場に続き三期生。
真毅は通じるかどうか半信半疑で弩羅の腰を連中に解らないように突いて、棺の方に目配せした。
すると弩羅は何を思ったのか身体ごとこちらに向き直り、にかっと笑うと真毅に言った。
「大丈夫!俺と真毅君で全員ぶっ殺せるよ!」
(ダメだこいつは・・・・俺は馬鹿というものを見くびっていた)
呆然とする真毅と弩羅のやり取りを気に留めることもなく、ブレアは本題を二期生に尋ねる。
「いやね、君たち二期生のチームにアガツマって人いるかい?」
「いや、アガツマってやつはうちにはいない」
「そうねー私達の他はヤガミさんや加古さん達だけだし」
その時、ブレアの眉が僅かに動いた。
「ちょっと待って、ヤガミに、加古・・・?」ブレアは大杉に尋ねた。
「ええ、そうだけど」「余計なこと話すなよ!」大杉と荒井のやり取りを他所にブレアは顎に手を当て、深く考え込む。
そして、ブレアはある結論にたどり着いて答えた。
「そうか そういうことなら ああ よかった なら ここにいる人間に 用は無いよ」
ブレアが背中に手をやった刹那、紫色の輝きを放つ物体が宙を舞った。
「クッ!!」
狙われたのは真毅だった。
真毅は訓練で鍛え上げられてたその瞬発力を生かして即座に身を翻し、その紫色の物体を避けた。
「はは、いいね、元気で、やばたにえん弩羅!!」
”アノヒノコトオボエテナインデス”
機械音と共に棺から飛び出すは半身ほどあろうかという大きな土木工事用ハンマー。
「クソっ、真毅、出ろ!」
”モウコレイジョウハ”
真毅の棺からアームに掴まれたリボルバー式拳銃が飛び出た。
弩羅がハンマーを掴み、ブンブン振りながらまずは先制攻撃を繰り出したブレアへ足早に歩み寄った。
(いまだ、弩羅が前に出てる間にさっきアイツが投げた武器を・・・)
真毅は拳銃を掴んで這うようにしてブレアの投げた紫色のこん棒を取りに行く。
(なに?!)
そしてそのこん棒の柄を掴んだと同時に掌にねっとりとした感触が伝わり身の毛がよだつ。
人間的な本能なのかすぐさま棒を向こうへ勢いよく放り投げるが、ブレアは自身の投げた武器を慌てて取る様子もなく
触った真毅を見てせせら笑った。
「ふっ、触ったね」
「罠か?!」
それが危険物だと察知するのにいささか遅かった。真毅はその掌が見る見るうちに熱を帯びていくのを感じた。
「どこ見てんのかな?オラぁ!」
走行してるうちに距離を詰めた弩羅はハンマーを素早く振りかぶって、払うようにブレアの頭目掛けて横打しようとした、が。
「ふっ!」
ブレアはガレキが散乱する部屋にも関わらず身を軽やかに側転で回避し、そのまま後退して間合いを取った。
その直後、間髪入れずに。
「荒井!松本!出ろ!」
”トーキョートッキョダレトク” 棺から飛び出したのは警棒。続けて松本の大きな拳銃。
「やばたにえん”大杉”!」
”リケンカンケイハ” 棺から飛び出したのは警察機動隊の持つ様なクリアのシールド。
二期の二人はバディーを組むようにシールドを持つ大杉を”盾”にしてそのすぐ後ろで松本拳銃と警棒を構えて弩羅に拳銃を向けた。
ブレアに向かっていた弩羅ではあったが二期の動きもしっかり瞬時に捉えていた。
前転する様に二期の二人に瞬時に距離を詰めて、今度は下から上に捲り上げる様にハンマーを振る。
バゴンッ!と凄まじい音を立ててシールドを持っていた大杉がもろ食らって尻もちをつく。
「死ねこのっ!」
荒井は振りかぶったことでスキが生まれた弩羅の身体に目掛けて、松本拳銃の残り数発を一気に撃ち尽くした。
バンバンバン!と乾いた音が響くがいずれも弩羅の身体には命中せず、最後の一発だけが僅かに肩の肉をえぐった。
たとえ近距離であったとしても、拳銃は訓練を積まなければ当てるのは極めて難しいということを弩羅はわかっていて二人に飛び込んだのである。
「ぐっうううう!やるじゃん!あらいくうぅぅぅぅん!!!」
受けた傷を物ともせず、再び今度は荒井の側面に向かって身体ごとスイングさせたハンマーを勢いよく打ち込んだ。
「ガハッ!!!!!」
酷い嗚咽が口から飛び出し、荒井はその衝撃で身体を壁に打ち付けられた。
「ひひぃいいいいいい!!」
その刹那、足元に這いつくばっていた大杉が荒井が攻撃を食らったのを目の当たりにして恐怖で絶叫した。
「ヲヲヲヲヲヲオヲヲヲヲ!!!」弩羅の雄叫びと共に大杉の顔面目掛けてハンマーを大きく振りかぶる。
(?!)
弩羅はそのハンマーが天に達したときに振り下ろすことなく、そのまま武器を離してその場を瞬時に飛び退く。
その瞬間、こん棒を持っていたブレアの一撃が弩羅の居た所で空を切った。
「チッ!」
いつの間にか自身の武器を回収したブレアが迫っていたのである。
舌打ちしながらブレアは下部へ目をやる。すぐさま恐怖に慄いた大杉と目が合った。
「死ね」
ブレアは声と共に紫色こん棒を大杉の口目掛けて突っ込んだ。
「ぐふっっぅぅっぅうぅ!むぐぅ!」
歯が折れるのも構わず、喉に届くぐらい強く押し込んだ後、勢いよく引き抜いた。
「うげぇぇぇぇぇええ!」
大杉は喉への激痛と不快感で条件反射の様に嘔吐した。
すると今度はブレアに向かって荒井がカラになった拳銃を投げつけるがそれをこん棒で難なく払いのけた。
「何してるの!早く撃てって!チャンスチャンス!」
弩羅が真毅に向かってまくし立てる、が、真毅は既に顔面蒼白になっておりリボルバーの持っている手の震えが止まらない。
「く、くそっ、くそっ、こんなっ、こんなところでっ」
真毅は上唇を噛みしめ、かすみゆく目を凝らしてブレアに向かって引き金を引いた。
ドンッ!!と凄まじい破裂音。それは先程の松本拳銃とは明らかに異なる威力の高さを感じる拳銃の発射音であった。
その弾はブレアの顔のすぐ横をかすめ、壁にぶち当たった。
衝撃で壁の一部が崩れる。
流石のブレアも息を飲んで目を見張った。
その時ー---。
ビィ―ビィ―ビィ―とブザー音が廊下側から聞こえてきた。
「時間だね。じゃあね、有益な情報ありがとう」
ブレアはそう言うと踵を返して脱兎の如く部屋を飛び出した。
「真毅君!二期のやつ!早く撃って!」
弩羅がブレアの出た方とは真逆の方を指差す。
指差した方を見ると真毅は棺を引いてよろめきながら部屋を出ようとする荒井と目が合った。
「くそっ、覚えていろよ・・・・!」
荒井はまだ大杉が部屋にいるにもかかわらずその場から逃げ出してしまった。
「うううぅうぅ」
真毅は決死に追撃を試みようとしたが狙いは定まらず、遂には拳銃を手放してしまった。
先程の喧騒から一転、部屋は一気に静寂に包まれた。
聞こえるのは既に床にひれ伏し、息を引き取ったと思われる大杉と冷汗を垂れ流し体が震えだしている真毅と
ただ呆然と立ち尽くしている弩羅だった。
弩羅は自身の武器を棺のアームにかけてしまい込むと大杉の所まで歩み寄り、足で顔を蹴った。
「死んでるね、毒かなぁこれ」
その後、開きっぱなしになっている大杉の棺をごそごそいじってファイルを探し当てた。
「ううううぅ・・・・」もがき苦しみ、嗚咽を漏らす真毅。
「ふむ」
だが弩羅はそれを気に留めることもなくファイルに目を通し始めた。
6. 大杉 仁(おおすぎ じん) 27歳 168cm 60kg
母親は旧厚生省勤務だったが突然解雇され、その後失踪。
生まれ持っての同性愛者。そのため幼少期は激しいいじめにあう。
現在は工場勤務。過酷な現場の為離職者や事故が後を絶たない。
やや筋肉質。 馴れ馴れしい。なよなよした性格。人懐っこい。きもい。
使用武器は防弾パネル。
「旧厚生省・・・?」
弩羅は顎に手を当てて何やら考え込むような仕草をした。
「弩羅、どら、助けて、くれ、なんとか・・・・」
真毅は視界が定まらないのか宙を向いて弩羅に弱々しく懇願する。
「あ、忘れてた。今行くね」
弩羅は真毅の所に急ぐこともなく歩み寄る。
「とりあえず、武器仕舞おっか」
落ちていた拳銃を拾い上げる。生きているうちに他人が持ったためかブザー音が鳴りだすが弩羅は構うこと事なく武器をしまおうとする。
が、そのとき、弩羅の動きが止まる。
視線の先には、真毅の棺の中にあるファイルがあった。
真毅は辛うじて見える視界で弩羅が何を企ててるのか瞬時に理解した。
「やめ・・・どら・・・・・それ・・・そ・・・そ」
弩羅は銃を仕舞うのをやめて床に置くとそのファイルとおもむろに取り出して眺めだした。
「・・・・・・・」
8. 真毅 信(まがい しん) 28歳 176cm 78kg
表向きはグレース研究所に出入りしていた業者の息子ということになっているが、
それらは虚偽であり、実際は警視庁刑事課に所属する刑事。
秘密裏に調査・密偵していた特別編成チームの一人で、ワザとフェイク情報を流して
小指の儀指の中に小型無線機を入れて影我漢試験に無理やり参加したようだが。
筋肉質。柔道家。すぐ人の心に付け込む屑。バレないと思ったの?
使用武器は4発しか入っていないリボルバー
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Selection test of eiga
Third group-8/8 shin magai (age 28)
Equipment weapons A revolver with only four shots in it
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弩羅はファイルのプロフィール部分を広げて真毅の眼前にずいッと向けた。
「俺さぁ・・・ここに来る前は色々風俗店経営してたんだけど・・・・」
(うううぅぅぅうっぅ、うごけ、この、から・・・・)
「”お前んとこ”にはホント随分お世話になったんだよなぁ~」
そう言う弩羅の表情は鬼の表情だった。
(せめ、、毒、、、、死、しなせ、、、、)
「お礼しなきゃね、”まがいもの”君」
そしてファイルが下げられたとき、眼前にはニカッと笑う弩羅が銃口を構えていた。
その銃口から火が噴き出して・・・・。
"LIMIT 29days 04:23:26 17-survivors"
「あーやっぱ楽しいわ、クソどもを殺すのって。まあ、俺も大概クソなんだけどね」
理科室での一戦とほぼ同時刻、レッスン室。
「おい、ボーっとすんなヤガミさん。急いで戻るぞ、ここでの騒ぎを聞きつけてくる奴が来るかもしれない」
「・・・っ、ああそうだ。行こう片桐さん」
一期生の三上を仕留めた二期生ヤガミと片桐は三上の棺をとりあえず片桐の棺に取り急ぎ付けた。
「この状況で刃物は有難いぜ。今までの鉄球とは安心度がケタ違いだ」
棺に取り付けが終わり、片桐は胸をなでおろす。
「そうだ、今のうちにこれも見ておこうぜ」
そう言うと片桐は三上の棺から取り出したファイルを開いた。
1. 三上 静也(みかみせいや) 30歳 182cm 82kg
父親はグレース研究所によく顔を出していた政治家。
長身筋肉質の大男 食肉加工センターに勤務で長時間労働を毎日強いられる。
内気の性格のためいじめを受けていた。
ナルシストでゲイ。 使用武器は輝く牛刀。
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Selection test of eiga
First group-1/8 seiya mikami (age 38)
Equipment weapons Shining chef's knife
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「ゲイでナルシスト・・・・」
ヤガミは怪訝なした顔をした。
だがそれよりも片桐は手前の方が気になっていたようだった。
「いや、それよりもだ。ヤガミさん、あんたグレース研究所って知ってるか?」
ずいッと身を寄せて声のトーンを押さえつつヤガミに問いかける。
「いや、知らないよ。今まで聞いたこともない」
ヤガミは頬を指で掻きながら神妙な面持ちをした。
「うん、俺、クソガキの頃に親がいきなり蒸発してからあんまり昔の事思い出すの嫌なんだ。だから興味ないよ。
そのグレース研究所ってなんなの?ここがそうなのか?どう見ても学校みたいな所だけど」
「いやな加古の奴がチラッと言ったろ”ここにいる奴らはグレースの関係者”って。どうもそれが気になってな」
言いながらボリボリ”無い”髪をボリボリ掻きむしる。
「片桐さんはどうなの?」
「俺は親も含めてグレース研究所って所には無縁のはずだ。両親は製薬会社に勤務してたし、俺自身初めて聞くことばかりだ」
片桐は少しバツの悪そうな顔をして軽く陳謝した。
「・・・・いや、悪いこと聞いたな。あともう一つだけ、そのヤガミっての苗字なんだよな、カタカナ?」
そういってゼッケンに目をやる。
「ああ、これ。なんでだろうな?もしかしたら”当て字”みたいな苗字だから拉致った奴らも解らなかったんじゃね」
「どういうことだ?」
「まあ、それは追々な・・・」
そう言って足早にヤガミは歩き出した。
「なんだよ、気になるじゃねーか教えろよ」
そう言って、片桐はいそいそとヤガミの後を追った。
四階、温室は一般的な教室三つ分はあろうかという広さで既に枯れ果てた植木や花々で生い茂っていた。
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ・・・うぅ」
無造作に生い茂る草木の中にひとりの漢が息を潜めて震えている。
「チッ、こんなところに隠れやがって・・・おーい、どこですかぁ」
その部屋の入り口に立つ大男は素っ頓狂な子供のような声を上げながら温室に向かって叫んだ。
(くそっ、バケモンかぁアイツ。しかも引っ張っている棺が二つ、一人殺したのか?
あんな奴に見つかったらひとたまりもない)
茂みの間から見える僅かな相手のシルエットを見て身震いした。
(まだ、まだだ、まだ武器は出せない・・・さっき出くわした驚きで咄嗟に武器を出して牽制したせいだ。
畜生が、せめて加古さんがここにきてくれたら)
男はそう言って傍らにあった棺に目をやる。
棺には”二期小堺”と言うプレートがつけられており、カウントが1:30余りを刺していた。
############################################
Selection test of eiga
Second group-7/8 hiko kosakai (age 28)
Equipment weapons Old Japan sword
############################################
身を潜めるその漢はメンバーから彦と呼ばれていた二期小堺彦(こさかいひこ)であった。
数時間前の事、二期生は松本の襲撃後から話し合いの末メンバー内で二人一組のバディを組んで館内を捜索する作戦に出た。
その理由は一つしかない。
”水”である。
既に一日目が過ぎようとする中、ここに居る人間は飲む・喰う・休むが全く出来ておらず、
疲労と枯渇が徐々に限界になりつつあった。
そこで本来こういう状況で固まらずに行動するのは極めて危険だが、
何とかしてそれらを得なければならないと苦渋の決断のだったのだが
それは二期生だけでなく一期生・三期生も同じ考えだったようである。
奇しくもそれぞれのチームが捜索中、加古とはぐれてしまった小堺は丁度その時運悪く三期弩羅と鉢合わせしてしまったのである。
(ううううううううっ・・・・・だめだ、意識がもうろうとする)
小堺が目を伏せるとちょうど地面に落ちている鉢植えの隅に僅かな泥水が溜まっていた。
(・・・・・・・・・・・・・・)
思考が止まる。もはや、理性もクソもなかった。言うなれば本能。
小堺はその鉢植えをゆっくり掴むと何のためらいもなく口にした。
(染み渡る・・・・・体中に電気が走っているみたいだ)
僅かな水を飲みほした後も、その鉢植えを名残惜しいように口で吸った。
「わぁ、汚いなぁ、惨めだなぁ」
小堺はやや距離のある背後から聞こえたその声に硬直した。
「でも気持ちは解るよぉ、俺も水飲みたくてしょうがないもんね」
小堺は鉢を口に付けたまま固まっている。
「でさぁ俺、少し考えたことが有るんだけど聞いてくれる?」
少し間を置いて。
「血なんてどう?吸血鬼っての。喉も潤して栄養補給も出来て一石二鳥」
本気なのか冗談なのか、弩羅はニヤニヤさせながら小堺に向かって呼びかけた。
小堺は振り向き様に持っている鉢植えを相手に勢いよく投げつけた。
顔面目掛けてくる鉢植えを弩羅は難なく腕で弾き飛ばす。
ガシャーンと音を立てて鉢植えは勢いよく地面で砕け散った。
「人の話聞けよ、この屑」
「ヲヲヲヲヲヲオォォオォオオオォオ!!!」
小堺は雄叫びを上げて弩羅に向かう。
「やばたにえん弩羅」”アノヒノコトオボエテナインデス”
機械音と共にガシャンと棺から弩羅の大きな木工ハンマーが飛び出す。
それをすぐさま掴むと小堺の顔面に向けて大きく横振りした。
しかし小堺は弩羅へと距離を限界まで詰めると同時にバッと前転する様に懐に飛び込み弩羅の膝裏目掛けて
ラリアットですくい上げる様に仕掛けた。
「ぐっ!このっ・・・」
ハンマーを力任せに振ったこともあって足元をすくわれる様な形になり大きくよろめくが、しかし転倒させるにはいたらず。
次に小堺は傍らにあった土を拾い上げて弩羅の顔目掛けて礫の様に投げつけた。
大きく目を開いていたためか弩羅は土が直撃し目をくらませるが姑息な手段に怒り心頭になり怒号を上げた。
「こいつ!くそが!!!!!」
弩羅はすぐさま態勢を立て直し凄まじい力でハンマーを振る。
「ううううぅっ!」
小堺は間一髪で避けるものの直ぐそばの枯れ木にハンマーが当たり、バキィ!と凄まじい音を立てて折れた。
(嘘だろ?!こんなのもろに食らったら一撃で死ぬじゃないか!)
小堺は慌てて距離を取りまた茂みの中に隠れようとするが弩羅はすぐさま追いかけてきた。
「コロス!コロス!面出せダボが!」
枯れ枝が自身の裸の上半身を傷つけようがお構いなしに弩羅はあちらこちらをなぎ倒していった。
(後、あと30秒もないはずっ・・・早く!)
小堺は室内をグルグル回る様に逃げ惑い、自身の棺のカウントが切れるのを待った。
その時である。
ガラッ!!っと大きな音を立てて温室のドアが開かれた。
「加古さぁ・・・ううっ?!」
小堺の心は加古が来たものと思い込み思わず安堵の叫びをあげたが、入ってきたシルエットに顔面蒼白になる。
「・・・弩羅!!ここだなっ!くそっこいつ誰だ!この大変な時に」
(ああ、終った・・・絶望だ・・・)
温室に入ってきた恐ろしい形相の漢は先程三島たちと一戦を繰り広げていた”3期大手前”だった。