天青の巫女 ~箱入り少女とおちゃらけ幽霊の死に戻り救済譚~ 作:あじのふらい
シルヴィアさんの部屋のティーテーブルを3人で囲む。
目の前には3人で作ったサンドイッチとシルヴィアさんが淹れてくれた紅茶が並んでいる。
……まぁ、3人で作ったなんていっても私とリーゼちゃんはシルヴィアさんが下処理とかをしてくれた食材をパンで挟んだだけなんだけど。
なんというか、いつもの食事もそうなんだけどシルヴィアさんにはお世話になりっぱなしな気がしてしまう。
「それでは、いただきましょうか。——……? ミコトさん、どうしたんですか?」
「あ、い、いえ。その、いつもの食事もですけど、お世話になり過ぎてるなと思って……このサンドイッチも、私挟むのだけしか手伝えなかったですし」
「わ、私も、あんまり手伝えなくてすみませんでした!」
「そんな、お二人とも気にしないでいただいて大丈夫ですから……」
私が落ち込み、リーゼちゃんがあわあわしながら頭を下げるのを見て、シルヴィアさんは困った笑顔を浮かべていた。
それもこれも頼りっぱなしな私が悪いとしか言えなくてさらに申し訳なくなってしまう。
「ほら、食べましょう? せっかくの紅茶も冷めてしまいますし」
「……そうですね、すみませんいきなり」
「私もいただきます。——! この紅茶、とっても美味しいです!」
「お口にあったようでなによりです。紅茶を淹れることに関しては少し自信があるんですよ」
私も紅茶を一口飲む。
……相変わらずおいしい。
どうして自信があるのかとか、トコヨ曰く超一流の淹れる腕があるのかとかは割と想像がつく。
「これって、やっぱりイリスさんと関係が……?」
「イリスさん? って、教皇のイリスさんですか?」
「えぇと、まぁ、そうです。リーゼさんに説明しておくと、私は6年ほど教皇猊下の側付きでしたので。猊下がお休み中や公務中問わず、息抜きをなさりたいときにはよくご希望なされたんです。そのたびに淹れていたら、自然と。ですので、リーゼさんは本当になんでも相談してくださって大丈夫ですからね。女王陛下にもお伝えしましたが、必要があれば私が責任を持って猊下や教会にお伝えするので」
「それは……とっても心強いです。ありがとうございます!」
シルヴィアさんは柔らかい笑みを浮かべてそう言い切った。
猊下とのお茶会の時に自然と紅茶を淹れ始めた様子からしてそうだと思ったけど、やっぱりそういうことだよね。
頼んだら側近がこの紅茶を淹れてくれるなら、私だったら喜んでたくさん頼んじゃいそうな気がする。
「紅茶はイリスさん関連として、お料理もそうなんですか? このサンドイッチもですけど、いつもの料理もすごく美味しいですし」
「料理に関してはこの集落に来てからですね。大聖堂にいた時は、軽食を作ることはあっても食事は猊下とご一緒に作っていただいたものをいただいていたので」
「ここに来てからとなると、1年であれだけ美味しい料理を作れるようになったんですか!?」
「1年……わぁ! このサンドイッチ美味しいですね!」
「ふふ、ありがとうございます」
1年……1年で、私がこんなに料理できるようになるだろうか。
『……トコヨ、私が1年お料理の練習したとして、これくらいの腕になると思う?』
『……いやぁ、厳しいんじゃないですか? シルヴィアの手際の良さとか飲み込みの良さがあっての話だと思いますけど。あとは……これは私の予測ですけど、多分シルヴィアの目的が絡んでの上達だと思いますよ? これ』
『目的?』
『ふっ……聞いてみればいいんじゃないですか? 面白い返しをしてくれると思いますし、私も興味はあります』
どういうことだろうか。
目的でそんなに上達速度が変わるものなのだろうか。
トコヨの半笑いみたいな変な顔もだいぶ引っかかる。
「えっと、お料理って、フリッカの分も作るから上達したとか、そういう感じですか?」
「まぁ、それもありますが……それよりもなによりも、重大なことがあったのです! そう、いつかクロード様をお招きして私の手料理をご馳走する日を夢見て、準備に準備を重ね、いつその時が来ても良いようにと! 日々試行錯誤していった結果が今の料理なんです! ミコトさんに美味しいと言っていただけたのも自信に繋がっています! これからはさらに男性向けの味付けなども研究しようと思っているところで——」
「あ、あー」
『あはははは! やっぱりそうでした! 恋する乙女は強いってことですよ、ミコト』
「えっと、これは……」
シルヴィアさんが凄まじい速度で口を動かして料理のことを語りだしている。
リーゼちゃんとか初めてこのシルヴィアさんを見て困惑しちゃってるし。
「えぇと、リーゼちゃん、クロードさんは覚えてます?」
「? はい。元締めさんですよね」
「シルヴィアさんはクロードさんに手作りのお料理をご馳走したいし、手編みのものをプレゼントしたりもしたいし、たくさんお話もしたいし、2人きりでお茶会もしたいって感じなんですよ。多分」
「……それってつまり……クロードさんがお好きってことですか! 恋愛的な意味で!」
「はぅ!?」
リーゼちゃんが核心を口にしながら目を輝かせてシルヴィアさんに詰め寄ると、シルヴィアさんの語りが止まって顔が真っ赤に染まった。
「わぁ! お好きな方のためにお料理を練習なさったってことですよね! すごいです! 尊敬します!」
「え、っと、その、あ、ありがとうございます」
おお、すごい。
リーゼちゃんの勢いでシルヴィアさんの勢いが相殺されてる。
「リーゼさん、恋愛にご興味が?」
「はい! お母様やオデットさんのお話とかを聞いて興味はあったんです。素敵だなぁって。私の周りに年の近い男性がいないのもあって縁がなく……私とお付き合いする方は必然的に王配になってしまうので、気軽にはできないのが難点なんですけど」
「それは……」
「……シルヴィアさん、もしかしてリーゼちゃんも、恋愛小説にはまったりしないですかね」
シルヴィアさんに耳打ちしてみる。
これは、仲間が増えるチャンスなのではないだろうか。
シルヴィアさんもハッとしたような表情になっている。
そのままスッと立ち上がると、彼女は少しだけ逡巡して本棚から一冊取り出してきた。
「……リーゼさん、恋愛にご興味がおありなら、こういうのにご興味があったりは……」
「これは……?」
「……今ここで、少し読んでみてください」
「……? はい」
それからしばらく、リーゼちゃんが読み進めるのを見守った。
彼女の耳と頬が赤くなってる辺り、つかみは悪くなさそう。
「こ、これは……」
「ど、どうですか」
「とても、興味深いと思います。……その、私、お母様やオデットさんからは本当に浅いところまでしか教えてもらってなかったんですね」
「……その本や他の同じような本、お貸ししましょうか」
「! い、いいんですか?」
「もちろんです!」
「ありがとうございます!」
シルヴィアさんと顔を見合わせてお互いに笑顔を浮かべる。
やっぱり大正解だった。趣味仲間が増えたよ!
——そうだ。それはそれとして私もシルヴィアさんにお願いしたいことがある。
「すみません、シルヴィアさん。さっき言いそびれちゃったんですけど、今度お料理とかを教えていただくことってできますか?」
「もちろん、いいですよ。ですがどうして急に? 手伝わないといけないと思ってとかでしたら無理にする必要はないですが」
「いえ、シスイへのお礼をしないといけないなと思いまして。この前、護衛として守っていただいたので。そのお礼として何がいいかを考えていたんです。それで、シスイよく鍛錬していますし、そこに差し入れを持っていくのはどうかなと思いまして」
戦時下の危険なところについてきてくれて、あれだけ身体を張って守ってくれたのだ。
お礼をしないと失礼な気がする。
「……ふふ、そういうこと、ではないですよね多分。でも、いいですよ。任せてください。それでは、夕食とかを一緒に作るところから少しずつ練習して、ある程度形になったら差し入れを作りましょうか」
「はい! ありがとうございます!」
これだけ料理がうまいシルヴィアさんに教えてもらえるなら百人力だ。
お礼の目途が立ってよかった。
『ミコト。あくまでお礼ですからね。私は認めてないですからね。余計なことはしないように』
『……? うん。余計なこともなにも、お弁当か何かを作ってあげるだけだよ?』
『うんうん、そうですね。ただお弁当を作ってあげるだけ。そういうことですね』
「んー……あの、シルヴィアさん? シスイさんって、私がミコトさんと森で会った時に一緒にいた男性のことですよね? ミコトさんって、シスイさんのことが?」
「……ふふ、いえ。多分ミコトさんは全く意識していないので、温かく見守ってあげましょう。シスイさんは分かりやすいんですけど、ミコトさんがいつもこの調子なので」
トコヨと話している間にシルヴィアさんとリーゼちゃんが何かを話していた気がしたけど、とりあえずいいか。
「そういえば、さっきミコトさんと一緒にシルヴィアさんに聞こうって言ってたんですが、箱入り娘ってどういう意味ですか?」
「あ、そうでした。私もリーゼちゃんも意味を知らなくて」
そうだった。
危うく聞き忘れるところだった。
「っ——そ、そう、ですね……箱入り娘、というのはですね……とても平易な言葉で言い換えれば、大事に育てられた結果の世間知らず、という感じでしょうか」
「な、なるほど……」
「それは、まぁ、はい。否定できないですね……お母様にも諭されてしまいましたし……」
せ、世間知らず……いや、自覚はあるしセシルさんにもそれを改善するために協力してもらってるから、そういわれもするか。
納得してしまった。
……お人好し箱入り娘って、そういう意味かぁ……
「あれ、それでシルヴィアさんが入るのっておかしくないですか? とっても色々な事情に通じてると思うんですけど」
「……そうですね。そう思いたいです。……まさか、私まで箱入り娘扱いされるとは……」
『……何気にシルヴィアも酷いこと言ってますねこれ』
『……そう?』
『いや、ミコトとリーゼが世間知らずなのは間違ってないって言ってるのと同じですよこれ』
『あ、あぁ……そっか。そっかぁ……うん、勉強、頑張る』
いい話題じゃないなこれ。悪口だし。
話を逸らすか。
他にも聞きたいことあるし。
主に聖都で聞いたリィスさんのこととか。
「そういえば気になってたんですけど、聖都で出店の方が言っていたリィスさんって——」
「っ!? けほっ」
私がリィスさんのことを聞いた瞬間、紅茶を飲んでいたシルヴィアさんがむせこんでしまった。
……そんなに突っ込まれたくないことだったのだろうか。
シルヴィアさんがここまで分かりやすく取り乱したり隠そうとしたりするのって恋愛小説のこととか猊下関連しかない気が……
あれ、猊下……?
リィス。イリス。
あ、あぁ。そういうことかこれ。
「あの、これまでのシルヴィアさんの反応からの推測なんですけど、もしかして……イリスさんのこと、です……?」
「……………………えぇ、まぁ、はい。そうです」
「イリスさんって、わざわざ偽名を使わないと街を歩けないんですか?」
「……いえ、そういうわけではなくですね……分かりました。大まかにならお話ししましょう」
「あ、は、話せる範囲で大丈夫ですよ?」
「もちろんそうですよ。側付き時代の話なので守秘義務で話せないこともとても多いですし。私が8歳の時にですね——」
————
簡素な年相応の服に身を包んで手を引かれながら聖都の街を歩いていた。
少女が2人で歩いていても、特に心配されたりする様子はない。
「ほら、シルヴィ! 早く早く!」
「待ってください姉様! 抜け出すなんてまずいですよ!」
この調子なら露見はしないかもしれないが、聖都には巡回の騎士も数多くいる。
猊下の顔なんて確実に覚えられている。
「どうせ分からないわよ。枢機卿たち、職務のこととかもちっとも教えてくれないし。自習の時間に抜け出したところで」
「そうかもしれないですけど……そもそもですね、私はまだこの“姉様”と呼ぶのも納得しかねているんですよ! 私は側付きなんですから、猊下と呼ぶべきで——」
思っていたことを口にすると、途中で猊下に口を塞がれた。
「今それで呼んだらそれこそバレちゃうでしょ。そうね……抜け出している間は私はリィス、シルヴィはリヴィアって名前にしましょう。あ、シルヴィ……リヴィアが私を呼ぶときは姉様でお願いね」
「あのですねぇ……」
平然と言い放たれる偽名使用宣言に何も言い返せなくなってしまう。
とはいえ、ここで文句を言い続けても何も変わらない。
私が側付きになったばかりであるように、このお方が教皇猊下になられたのもついこの間。
12歳での教皇即位なんていうのは、私からは考えられないような苦悩があるのは想像に難くない。
現に、本来なら若年即位でされるべき枢機卿様方からの会議や儀式での振る舞いの指導なんて、明らかにおざなりな指導のされ方をされている。
軽んじられているのは間違いない。
この間の枢機卿会議も、猊下は一切発言させてもらえなかった。
発言しようとしても、黙っていろというような内容を暗に言い返されてしまっていた。
この状態で数か月。
猊下は自習で振る舞いなどを習得できるように励んでおられるけれど……
「はぁ……分かりました、姉様。私はリヴィア、姉様はリィスですね。私だけ戻っても意味がないですし、ご一緒させていただきます」
「やった! じゃあ門の方まで行きましょ! 大聖堂にばかりいると息が詰まるのよ」
私が了承した瞬間に、猊下の表情は目に見えて明るくなった。
まぁ、これで猊下のストレス軽減になるならと納得することにしよう。
「ほら! リヴィア! これも食べましょう!」
「ここの書店は……大聖堂ではなかなか見ない写本が多いわね。リヴィアは興味あるのあった?」
「次はあそこの露店を——」
「……あの、姉様? もう結構なお時間遊ばれてますけど、本当にバレないですか? 大丈夫ですか? 私不安になってきたのですが」
大聖堂を抜け出したのが昼食後すぐ。
もう夕暮れになってしまっている。
書店で見つけた本とか、私的にも収穫がなかったわけではないけど流石に不安だ。
……書店で見つけた本は後で必ず買いに来ることにしよう。猊下と一緒に買うことなんてできない。
後で、絶対。
それはそれとして、流石にもう枢機卿様に不在がバレてしまっている気がしてしまう。
「もー。リヴィアは心配性ね。分かった。じゃああそこの屋台で最後にしましょ。続きはまた今度!」
「……今回だけではないのですか!?」
「えぇ! 当然でしょ!」
「あぁ……もう……好きにしてください……」
猊下が護衛もなしに出歩くなんて……それどころか、それを大聖堂のお歴々が誰もご存じないなんて……
何かあったら絶対に私の責任になりますよね……? と不安になってくる。
そんなことを考えながら猊下に手を引かれて、今日最後として猊下が選んだ串焼きの屋台に辿り着いた。
「おう、嬢ちゃんたち、食べるかい? 一本2シルだよ——……んー……? なんか、嬢ちゃんたち見覚えがある気が……」
「っ!? えっと、これは、あの、その」
串焼き屋の男性店員の方が私と猊下の顔を順に見て考え込み始めた。
戻ってからバレるのもまずいけど、ここでバレるのはもっとまずいのではないだろうか。
「最近即位なされた教皇猊下に似てるってよく言われるわ。私はリィス。こっちは妹のリヴィアよ。はい、4シル。2本ちょうだい」
「ね、姉様……!?」
「——あいよ、確かに。ちょっと待ってな」
自分から教皇猊下と言い出した猊下にさらに驚きを隠せなくなるが、店員の方はそのまま代金を受け取って串焼きを作り始めてくれた。
「あのね、リヴィア。こういうのは堂々としてると案外バレないもんなのよ」
「……いやいや、それは流石に無理が……」
猊下がこっそり耳打ちをしてきた内容に愕然としてしまう。
このお方の危機管理はどうなっているのだろうか。
「はいよ、お待ちどう。もうそろそろ暗くなってくる。女の子2人じゃ危ないからな。これ食ったらちゃんと家帰るんだぞ」
「えぇ、もちろん。心配してくれてありがとう」
「……ありがとうございます」
気づいているのか気づいていないのか判然としない様子の店員の方から串焼きを受け取って、その場を離れた。
結局大聖堂に戻ったのは暗くなってからだった。
猊下の私室の前に人影が見える。
「猊下……どちらに行ってらしたので?」
「ちょっとシルヴィとお散歩に行ってたの」
「お散歩、ですか。昼過ぎからこんな時間まで、誰にも告げずにですかな」
「あ、あはは……」
ほら見たことかと思ってしまった私は悪くないのではないだろうか。
猊下と私の前には怒り心頭といった顔のグレンマルク枢機卿が仁王立ちしていた。
「フェルト嬢。お主もか」
「も、申し訳ありません。グレンマルク枢機卿」
「おおよその予想はつく。猊下の命に逆らえなかったのだろう。だが、猊下に危険が及ぶようなことがあるのならフェルト嬢もきちんと意思を表明せよ。私たちでも誰でもいい、相談しなさい」
「返す言葉もございません。申し訳ありませんでした」
「……フェルト嬢はこれでよいとして……猊下!!」
「っ」
「このようなことは二度としないでいただきたい!!……不満そうな顔を為されるな!! 猊下の身の安全を考えて言っているのですぞ!!」
「……窮屈だったんだもの、仕方ないでしょう」
「そのお年で教皇位に就かれたのです。お気持ちは分かりますが、自覚してくだされ。現状猊下以外に教皇位を継ぐことができるお方がいないのですから。猊下にもしものことがあればそれこそ事ですぞ」
教皇位は教会設立時に貢献為されたエストルンド、ルーンブロム、リンデルスタの三家の中から年齢や業務遂行能力を勘案して選ばれる。
だというのに、リンデルスタは前教皇猊下の崩御で断絶、ルーンブロムは5歳の御子息と病に伏せておられる父君のみ、エストルンドは12歳の猊下のみという状況。
枢機卿がこう言ってしまうのも仕方ない事情があった。
とはいっても……ここから猊下とお説教されてしまい、部屋に戻れたのは1刻以上経った後だった。
————
「——というようなことがあってですね……」
「……イリスさん、すごい強引ですね」
「これで収まればよかったのですが、そこから月に1度程度は抜け出してその度に枢機卿に怒られていたのです。困った悪癖でしたよ」
「それでも、シルヴィアさんも毎回同行されていたんですよね?」
リーゼちゃんが純粋な瞳でシルヴィアさんを見つめてそう聞いた。
この状況でシルヴィアさんすら同行しなかったら一人でも抜け出しかねないし、仕方ないことだった気がする。
「まぁそうなんですが……その度に私まで枢機卿に叱られていましたからね。回を重ねるごとに私に対しての当たりまできつくなっていったんですよ?」
「そうだったとしても、私からしたらシルヴィアさんみたいな方がすぐ近くにいてくださったイリスさんは幸せ者だなと思ってしまいました。私でいうところのフランみたいな存在ってことですし」
「っ、そ、それは、その……そのような存在であれたのなら、よかったですけど……」
リーゼちゃんの主張に、私も一も二もなく頷いてしまった。
話を聞けば聞くほど私でいうトコヨみたいな気の置けない唯一の友人だった。
シルヴィアさんが返した側付きの証をイリスさんがずっと持っていた理由が分かってしまった。
シルヴィアさんも苦笑しつつも満更ではなさそうだし、気が進まなかったのは多分最初の数回だけなんじゃないだろうか。
そう思って笑みがこぼれた。
その後も話題は尽きなくて、結局数刻ほどシルヴィアさんとリーゼちゃんと一緒にお茶会をしてしまっていた。
……シルヴィアさん、昼食として軽食を食べに来たついでのお茶会だったはずだけど、教会の方は大丈夫だったのだろうか。
まぁ、フリッカが呼びに来なかったし大丈夫なんだよね、きっと。