我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

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黒崎一護
空座第一高校一年生にして死神代行。現在は十番隊隊長代行も務めている。尸魂界で戸川古男に完敗して以降、自身の戦い方を見直している。

朽木ルキア
十三番隊所属の死神。一護とともに現世で生活している。恋次とは流魂街時代からの幼馴染。

阿散井恋次
六番隊副隊長。斬魄刀『蛇尾丸』を持つ。一護とは親しい間柄となっている。

白鷹光四郎
六番隊四席。表向きの席次以上の実力を持ち、卍解『光翼天回蝋』を修得している。

石田雨竜
一護の同級生である滅却師。現在は『滅却師最終形態』を実戦で運用するための修行を続けている。

茶渡泰虎
一護の親友。全身を完現術で覆う『勝利の悪魔』へ到達している。

有沢たつき
一護の幼馴染。戸川古男から暗黒魔闘術を学び、独自の近接戦闘能力を身につけている。

井上織姫
一護の同級生。盾舜六花を操り、攻撃、防御、回復を組み合わせた戦闘を得意とする。


大所帯の夕飯と朝まで大乱闘

「――月牙……天衝ッッ!!!!」

 

振り抜いた刃の先で、虚の仮面が割れた。

消えていく巨体を見届け、息を吐く。これで帰れるか。腹が減った。

 

「よし一護! 次はあそこの地区に湧いた……」

 

「遅えッ!! 吠えろ! 『蛇尾丸』ッッ!!!!」

 

頭上から刃が伸び、背後の虚へ食い込む。

振り返る前に片づいていた。ありがたい。今の一体を任せられた分、夕飯が近づいた。

 

「よしッ!! 見たかルキア! 俺もなかなかのもんだろ!?」

 

「一護、帰ったら討伐報告書は私が作ってやろう。貴様は手でも洗って休むが良い」

 

そこ、聞こえなかったふりで済ませるのか。

蛇尾丸が、持ち主の手元に収まる。自慢げだった口元が、そのまま固まっている。

見ているこっちが辛い。

 

「……おいルキア、少しは恋次にも返事してやれよ……。あいつ尻尾振って待ってるぞ」

 

「……断る。どうも最近、あやつに付きまとわれているような気がしてならんのだ……。気味が悪くて敵わん」

 

「いや……つきまとってるっていうかよ……」

 

完全に惚れてるだけなんだが、こいつ本当に色恋に疎いな……。

ちらっと後ろを見る。

まだ返事を待っている。

 

言ってやるべきか。やめておこう。お前、気味悪がられてるぞ、なんて親切な顔で教えられるか。

 

隣では、報告書に書く討伐数を指折り数えている。恋次の一体も数に入っていた。

仕事は認めている。本人を褒める予定はなさそうだな。

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

「ふぅー! おかわり!!」

 

空の茶碗を差し出すと、すぐに受け取ってもらえた。

 

「はいっ! 黒崎君、大盛りだよ! たくさん食べてね!」

 

湯気の立つ山が戻ってくる。

ありがてえ。今なら、このくらいあっさり食える。

 

「んー! 今日の一心特製……じゃなくて、このとんかつめちゃくちゃ美味いな!」

 

「ああ。肉屋で、いい豚肉が手に入ったからな」

 

「言っておくが、下ごしらえから油の温度管理、揚げの作業まで全部僕が一人でやったんだぞ。ちゃんと感謝しろよ!」

 

礼を言おうとして、口に肉を入れた直後だったことを思い出す。

頷くと、眼鏡の奥からじっと見返された。

 

分かってる。ちゃんと飲み込んだら言う。

料理の感想を求められる時に限って、口が塞がっているのは何なのだろう。

 

「白鷹さん、ちゃんと食べてる?? お肉足りてる?」

 

「はい、美味しくいただいておりますよ、妹御」

 

「お父さん、どうしたの?? ずっとお箸止まってるよ?」

 

「いや…………いくら何でも………な」

 

親父の隣へ目を向ける。

白衣の袖を汚さず、黙々と食事を進める姿に、こっちの背筋も少し伸びる。石田の親父さんとは、まだ気軽に話せない。

 

「……何だ黒崎。私がここにいるのが、そんなに不思議か?」

 

「ああ……心底不思議だし、心底居心地が悪ィよ!! なんで平然と家族団欒に混ざってんだよッ!!」

 

「女子生徒たちの親御さんに対し、『現世の医師二名が責任を持って生活と健康を監督している』という名目を作っているのは我々だろう。……それに、雨竜の生活態度を見張る義務もある」

 

「名目って言ってもなぁ……。親御さんたちも『医者二人が見てるなら安心ね』くらいのノリで外泊許してんだろーが……」

 

あまり目を合わせない方がよさそうだ。親子の話へ巻き込まれる前に、自分の飯を進める。

 

「俺もおかわりだ!! ルキア、頼む!!」

 

差し出された茶碗が、食卓の上を横切る。

 

「……自分でよそえ。貴様に手足はついておらんのか」

 

恋次。お前、さっきあれだけ無視されて、よくもう一度行けるな。

茶碗を持つ腕が下がっていく。声は出ない。こっちを見るな。俺がよそったら、余計に悲しくなるだろ。

 

「……はぁ、まったく。そんな情けない顔をするな……ほら、大盛りにしてやったぞ」

 

「おおッッ!! サンキューな、ルキアッッ!!」

 

よかったな。

ご飯のおかわりで、これほど救われる奴もいるのか。

 

こちらも茶碗を持ち直す。大盛りの加減は、ほとんど同じだ。

妙なところを比べちまったことが、少し後ろめたい。

 

「……まあ、なんだかんだで皆、ここにほとんど住み着いてるよな、もう」

 

「現世の平穏もいつまで続くか分からんからな」

 

「私も明日、朝から病院のオペがあるのだが……」

 

「俺もだ……。過労死させる気か……」

 

だったら早く寝ろよ、とは言わなかった。

隣に実家があるのに、妹たちもこっちで飯を食っている。長い食卓を見渡すと、誰かしらと目が合う。

 

騒がしいが、嫌ではない。

こんなことで安心するようになったのは、あの牢に入れられてからかもしれなかった。

 

「一護! 飯を食い終わったら地下で勝負だ! 今日こそテメエを叩きのめしてやる!!」

 

……食休みくらい欲しいんだが。

 

「へぇ……。恋次、テメエ……もしかして『卍解』できたのか??」

 

「おう!! バッチリ仕上がったぜ!!」

 

箸を置く。

その顔を見せられたら、断れねえだろ。

 

「…………なら、やるしかねえな。皆も付き合ってくれ。藍染の野郎が何企んでるか分からねえ以上、俺ももっと強くならねえと話にならねえ」

 

「うん!! 私も全力で行くよ!!」

 

「アタシも暗黒魔導術を組み込んだ『気鋼闘衣』を、もう少し大胆なデザインに改良してみたんだ。動きやすさと出力、どっちも試したいから見てくれよ!」

 

「僕も、最終形態の実戦慣らしには丁度いい相手だ」

 

「……俺も、『勝利の悪魔』の感覚をさらに進化させたいと思っていたところだ」

 

全員、やる気か。

飯を食いながら、そんなことを考えていたとは。

 

「――白鷹!! 今日の稽古には、お前も必ず参加しろ!!」

 

「……おや、若奥様。私はただの六番隊四席、でございますよ……?」

 

茶を飲む手が、やけに落ち着いている。

その言い訳は前にも聞いた。聞くたびに信用できなくなるのは、どういうことだ。

 

「戯言を抜かすなッ!! 貴様が卍解を隠し持っていることは、兄上から全て聞いているのだぞ!! 貴様が本気で戦わねば、私の卍解の修行にならないではないかッッ!!」

 

「……白哉め……余計なことを……。やれやれ、手加減が難しいのですがね……」

 

今、隠すことを諦めたな。

いい機会だ。俺も、その本気を見ておきたい。

 

食卓へ戻した茶碗が空になっているのを確かめ、立ち上がる。腹は満たされた。あとは、先生に叩きのめされた時の借りを、少しずつでも返していく。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

 

地下へ下りると、岩山が並ぶ向こうに広い空が見える。

家の下に何を造ってんだ、と最初は呆れた。今では、遠慮なく月牙を撃てるのがありがたい。

 

地上では、遊子が食器を洗っている頃だろう。

ここで負けて、明日の朝飯に響くほど落ち込みたくはない。

 

「『狒狒王蛇尾丸』ッッ!!!!」

 

巨大な顎が目の前へ迫る。

受けると、踵が地面を削った。

 

でけえ。伸びる速さも、蛇尾丸とは違う。

押し合うのをやめ、横へ抜ける。直後、立っていた場所が砕けた。

 

「『気鋼闘衣・絶華』ッッ!! 砕け散りやがれェッッ!!」

 

横から飛び込んできた蹴りを躱す。

闘衣の裾が頬を掠め、背後で岩が割れる。見るように頼まれたが、ゆっくり眺めていたら顎を持っていかれる。

 

動きやすいのは、よく分かった。

 

「『滅却師最終形態』――刻限は十四分三十秒!! 乱れ撃てッ!!」

 

さらに矢が来る。

 

おい、開始三十秒でこれかよ。

刀を返して二射を弾き、残りを跳んで避ける。着地した先から白金の刃が迫り、咄嗟に身を伏せた。

 

頭上で轟音が響く。

 

「――『勝利の悪魔(ディアブロ・デ・ラ・ビクトリア)』」

 

顔を上げると、黒い装甲で覆われた右腕が刃を受け止めていた。

チャドの背中越しに、地面の亀裂が伸びた。

 

助かった、と言いかけて飲み込む。

また任せるところだった。稽古に来て何をやっている。

 

「ほう……! 私の霊圧の刃を、純粋な『打撃』へ変換して受け止めましたか……!」

 

「……耐え切ってみせる……! そして……悪魔の左腕《デセンラセ・デル・ディアブロ》ッッ!!」

 

右腕で受けたまま、左拳が伸びる。

白金の防壁に触れた箇所から穴が開く。背後の岩山も崩れ、砂埃が噴き上がった。

 

あそこへ、こちらも撃ち込む。

今なら、チャドの進む先を空けられる。

 

「うおおおおおおおおっ!! 月牙ッッ!!!!」

 

「若旦那、容赦がありませんね……! 『光翼天回蝋』ッッ!!」

 

光翼が回る。

月牙が押し返され、慌てて刀を立てる。腕から肩へ衝撃が抜け、視界が跳ねた。

 

痛え。

容赦がないのは、そっちもだろ。

 

歯を食いしばって着地し、もう一度踏み込む。受ける位置も、斬り込む角度も変える。

一発で駄目なら、次を試す。

 

背後から蛇尾丸が来る。躱した先へ矢が通る。さらに足元へ闘衣の裾が伸びる。

味方同士で相談して俺を狙ってないか。

 

手応えがあった。

喜ぶより早く、脇腹へ蹴りが入る。

 

息が止まった。地面を転がりながら、今の一発を頭の中で繰り返す。

斬れたと思って、そこで止まった。

 

くそ。もう一度。

腕に力が入らない。肩から先を見て、ようやく痛みが追いつく。

 

「――『双天帰盾』!! 私は、皆がボロボロになった事象を拒絶するッッ!!」

 

橙色の光に包まれる。

指が動く。息が吸える。

 

相手から目を離すな。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

教室の戸が、いつもより重い。

 

「………………おは…………よう…………」

 

誰の声も、まともに出ていなかった。

机が遠い。たった数歩を歩くのが面倒くさい。

 

寝たい。

何も考えず、何も避けず、目を閉じたい。

 

「お前ら全員、揃いも揃って特大の遅刻じゃねえかァァッッ!!?? しかも何その凄まじい寝不足の顔ォォッッ!! 一体どんなプレーを繰り広げたらそうなるんだよッッ!!!!」

 

声が頭に響く。

殴り合っていた。説明はそれで済むが、信じてもらうための会話をする元気がない。

 

机へ額を伏せる。

痛い。

 

「……うる……せえ……。肉体は完治しても……精神の疲労までは……戻らねえんだよ…………」




■ 狒狒王蛇尾丸

阿散井恋次が使用する蛇尾丸の卍解。

巨大化した蛇腹状の刀身を操り、始解を大きく上回る攻撃範囲と破壊力を持つ。

■ 気功闘衣・絶華

有沢たつきが用いる気功闘衣の発展形。

高密度の霊力を身体へ纏い、身体能力の強化、防御、衣の延長部分を利用した攻撃や姿勢制御を行う。

■ 滅却師最終形態

石田雨竜が散霊手套を外すことで到達する滅却師の極限形態。

本来は使用後に滅却師としての力を失うが、現在は織姫の能力を利用した再運用方法が研究されている。

■ 勝利の悪魔

ディアブロ・デ・ラ・ビクトリア

茶渡泰虎の全身完現術形態。

右腕は霊圧攻撃を物理的な打撃へ転換して受け止め、左腕は直接触れた対象を破壊する。

■ 光翼天回蝋

こうよくてんかいろう

白鷹光四郎の卍解。

六番隊四席という現在の席次に対して、極めて高い戦闘能力を持つ光四郎の切り札。

■ 双天帰盾

井上織姫が使用する事象拒絶の能力。

対象へ生じた損傷そのものを拒絶することで肉体を回復させる。

一方、衣服など本人の肉体とは別の物体については、同様に復元されるとは限らない。
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