我こそは十四番隊隊長(自称) 作:かなりゆっくりめ
空座高校1年3組担任・英語教師「GTT」。自称「護廷十三隊十四番隊隊長」。暗黒英語で生徒の全教科偏差値を謎に爆上げさせている。ドン・観音寺のポーズに共鳴し、ノリノリでロケ見学に参戦する。
戸川梢綾(とがわ しゃおりー) / 砕蜂(ソイフォン)
空座高校体育教師「シャオ先生」。二番隊隊長・隠密機動総司令官。新婚旅行を経てデレ期から少し落ち着いたが、古男への愛は深まるばかり。生徒をインターハイ級に鍛え上げる。
黒崎一護(くろさき いちご)
空座高校1年・死神代行。周囲のボケ当事者たち(古男、ルキア、白鷹)に振り回される唯一の常識人ツッコミ役。
朽木ルキア(くちき るきあ)
空座高校1年・十三番隊隊士。ドン・観音寺の『ぶら霊』にドハマり中。一護の婚約者(仮)の立場を保ちつつ、光四郎を顎で使う。
白鷹光四郎(しろたか こうしろう)
六番隊四席。朽木家の家臣。白哉の命により空座高校2年に編入。空手部に入部して圧倒的強者として君臨しつつ、一護とルキアを「若旦那」「若奥様」と呼び、貴族根性丸出しで観覧席を強奪する。
井上織姫(いのうえ おりひめ)
一護のクラスメイト。古男と一緒に全力で「ぼわーはっはっは!」を決める。
有沢たつき(ありさわ たつき)
空手部所属の一護の幼馴染。転入してきた白鷹の規格外の強さに惚れ込み、先輩として慕う。
浅野啓吾(あさの けいご)
一護のクラスメイト。ミーハー根性でロケ見学に同行する。
古男と梢綾が新婚旅行から戻り、空座高校には数日ぶりにいつもの騒がしさが戻っている。
一年三組では、古男が黒板いっぱいに英文と謎の図形を書き散らしていた。中央に大きく書かれているのは『I have a dream』。その周囲には文法上まったく必要のない円や線が幾重にも重なり、どう見ても英語の授業より怪しい儀式の準備に近い。
「良いか愚民どもよ!! 『I have a dream』……この言霊の真髄は、漆黒の深淵より這い出ずる魂の渇望である!! 括目せよ、これが暗黒構文第十三節だ!!」
何を言っているのか分からない部分を無視すれば、授業そのものは恐ろしく分かりやすかった。
英文を構造ごとに分解させ、文章の前後関係から意味を推測させ、分からなければ別の例を持ってくる。それを繰り返しているうちに、生徒たちは英語以外の文章まで以前より早く読めるようになっていた。
国語の長文で躓いていた者が急に点を伸ばし、数学でも問題文の条件を整理するのが上手くなり、歴史では古男が妙な語呂合わせを仕込んだせいで年号まで頭から離れなくなっている。
教師たちの間では理由を調べようという話まで出ていたが、本人に聞いても、
「暗黒英語とは万学の根源よ」
としか答えなかった。
グラウンドでは、もう一人の戸川先生が別の意味で生徒たちを鍛え上げていた。
「遅い!! 足さばきに迷いがある!! 敵の気配を殺し、風と同化して地を駆けるのだ!! ほら、もう一周!!」
普通の高校体育で敵の気配を殺す必要があるのかはともかく、梢綾の授業についていった生徒たちは目に見えて身体の使い方が変わっていた。
走れば以前より速く、跳べば高く、身体を崩してもすぐに立て直せる。運動部では早くも記録が伸び始め、顧問たちは戸川先生の指導法をどうにか部活へ取り入れられないか真剣に相談していた。
そして放課後。
一護が鞄を持って帰ろうとしたところで、教室の前から聞き慣れない高笑いが響いてきた。
「ぼわーはっはっは!!」
「ぼわーはっはっは!!」
見ると、織姫と古男が向かい合い、胸の前で両腕を交差させて同じポーズを取っていた。
「……うっ! お前ら、何やってんだ……」
「貴様、一護!! 担任に対する敬意というものがないのか!? 先生と呼べ、先生と!!」
「呼ぶかよこんな怪しい教師! ……で、井上、そのポーズは何なんだよ」
「ええっ!? 黒崎くん、知らないの?? 今、テレビで大人気なんだよ!」
織姫が本気で驚いたので、一護には嫌な予感しかしなかった。
「……まさか、あの毎週水曜夜にやってる……『ぶら霊』……?」
「クックック………その通りだ。巷で話題の霊能者、ドン・観音寺とやら……貴様の矮小な霊感では測れぬほどの、なかなかの暗黒オーラを秘めている……! さあ織姫よ、我が同志よ! 共に魂の雄叫びをあげるのだ!!」
「「ぼわーハッハッハッハ!!!!」」
「………………アホか」
呆れてそのまま帰ろうとした一護の横から、今度はルキアが勢いよく両腕を胸の前で交差させた。
「ぼわーハッハッハ!!! スピリッツ・アー・オールウェイズ・ウィズ・ユー!!」
「お前もかよルキアァァッ!! 貴族の令嬢設定はどこ行ったんだよ!!」
「ふん、世俗の流行を学ぶのも死神の務めだ! ――光四郎!!」
ルキアが教室の外へ向かって呼ぶと、ほとんど間を置かず引き戸が開いた。
光四郎が、まるで最初からそこで待機していたかのように姿を現す。
「はっ! お呼びでしょうか、若奥様」
「若奥様ではないと何度言えばわかるのだ!! ……だが、それはよい。今夜、空座町の廃病院で『ぶら霊』の生ロケが行われるらしい。我らも皆で繰り出すぞ!! 観覧の準備をせよ!!」
「はっ!!! 直ちに万全の手配をいたします!!」
「……おい待て。あの人は学校のどこに潜んでたんだよ……ていうか、なんで自然に学校の中にいるんだ……?」
「……若旦那」
真後ろから聞こえてきた声に、一護は思わず振り返った。
「ひっ!! な、なんだよ急に背後に立つな!!」
「ご挨拶が遅れました。私、白哉様の命により、本校の『二年一組』に正式に転入いたしましたので、今後ともよろしくお願いいたします」
「マ、マジかよ……!!」
隣家を買っただけでも十分だったはずなのに、とうとう学校まで付いてきた。
どう考えても逃げ場が減っている。
そこへ空手着を肩に掛けたたつきが教室へ入ってきた。
「あ、白鷹先輩! ここにいたんスか」
「た、たつき!? お前までなんで白鷹先輩とか呼んでんだよ!!」
「ん? 白鷹先輩、昨日に空手部にふらっと入部してきたんだけどさ……マジでめちゃくちゃ強いんだぜ? 私が一撃も触れられなかったんだから」
当然だった。
四席を相手に、現世の高校生が普通に組手をして勝てるはずがない。
一護が何とも言えない顔で光四郎を見ていると、肩へ古男の手が乗った。
「クックック……!! どうだ一護? 己の女が、優秀な家臣に取られそうで怖いのか? んん~~??」
「誰が自分の女だコラァァッッ!!!」
「おいおいお前ら! ぶら霊のロケ見に行くんだろ!? 俺と水色も連れてってくれよー!!」
廊下から圭吾まで話へ飛び込んできた。
「俺は行かねえよ! なんでそんな怪しいオッサン見に行かなきゃならねえんだ」
「む、一護行かぬのか? お父様……ゴホン、一心殿も遊子も大ファンで、すでに家を出発したらしいぞ」
「………………行く。家族の保護者として行くわ……」
何をするか分からない父親と、番組を信じている遊子を二人だけで行かせる方が怖かった。
「古男が行くなら、私も同行しよう!!」
いつの間に授業を終えたのか、梢綾まで教室へ来ていた。
「クックック………良かろう、蜂の子よ。廃病院の闇が恐ろしければ、いつでも我が逞しき胸に飛び込むがよいぞ!」
「死神が、幽霊なんか怖がるわけねえだろうが」
「……うん……」
「わぁ~~! シャオ先生、可愛い~~っ!!」
◇◇
夜になると、空座町の外れにある廃病院の周囲は昼間の学校とは比べものにならないほど騒がしくなっていた。
ドン・観音寺の生ロケを見るために集まった人々が道路沿いまで溢れ、スタッフが何度も観覧場所から出ないよう呼びかけている。
これだけ人間が集まれば、本来なら低級の虚が寄ってきてもおかしくなかった。
だが、その夜は一体もいなかった。
少し前まで周辺をうろついていた虚たちは、とっくに逃げていた。
古男と梢綾がいる。
光四郎がいる。
ルキアがいる。
一護までいる。
その中心へ近づけば近づくほど霊圧が濃くなり、低級の虚には番組のロケどころではなかった。遠くで気配を感じただけの虚まで進路を変え、空座町の別方向へ逃げている。
その事情など知らない観客たちは、ロープの前で少しでも良い位置を取ろうと押し合っていた。
そして、その人混みの中へ光四郎が入っていった。
「散れ!! 散れぇぇぇい!! こちらにおわす方々をどなたと心得るか!! VIP中のVIPであらせられるぞ!! 散れ、平民ども!!!」
「な、なんだよあいつ!? 俺たち昼過ぎからずっと並んでたんだぞ!!」
「黙れ!! 貴様らのような下賎な平民が、由緒正しき朽木家と志波家の若君・若奥様を差し置いて最前列に立つなど言語道断!! 速やかに道を空けよ、さもなくば不敬罪で斬首とする!!」
周囲の観客が本気で引き始めたところで、一護の手が光四郎の後頭部へ飛んだ。
「やめんかバカタレがァァァッッ!!!!」
「ぐはっ!? ……若旦那、なぜ私が制裁を……?」
「現世で貴族ムーブかますんじゃねえよ!! ここは江戸時代でも尸魂界でもねえんだよ!!」
暗黒英語
古男が教える謎の授業。厨二病全開の魔方陣構文を解説しているだけのはずだが、なぜか生徒の国語・数学・歴史など全教科の成績が飛躍的に向上する。
隠密機動養成体育
シャオ先生(砕蜂)が指導する体育の授業。本人は限界まで手加減しているつもりだが、ついていけた一般生徒はインターハイ出場レベルの身体能力を開花させてしまう。
ぶらり霊場突撃ルポ(ぶら霊)
最高視聴率25%を誇る超人気心霊番組。カリスマ霊能者ドン・観音寺が心霊スポットに突撃し、「バハハハ」と笑いながら霊を成仏(?)させる。
白鷹の転入と空手部制圧
白哉の命で空座高校2年に編入した白鷹光四郎。すぐに空手部へ体験入部し、全国レベルの実力を持つ有沢たつきを一瞬で圧倒、「強い先輩」として一目置かれるようになった。
霊圧による虚の逃走
古男、砕蜂、白鷹、ルキア、一護が一堂に会した結果、ロケ現場の廃病院周辺から虚が恐怖のあまり一匹残らず退散した現象。観音寺にとっては図らずも世界で一番安全なロケ地となった。
平民散れ
朽木家の家臣である白鷹が、現世の一般観客に対して無意識に放った貴族社会の選民思想発言。現世の法と常識を重んじる一護によって即座に物理制裁された。