我こそは十四番隊隊長(自称) 作:かなりゆっくりめ
空座高校1年・死神代行。精神世界のオッサンと自然に念話できるようになり、無意識に「滅却師の始祖視点」によるハイレベルな専門知識を垂れ流して石田のプライドを粉々に砕く。
石田雨竜(いしだ うりゅう)
空座高校1年3組・学年3位。「最後の滅却師」としてカッコよく名乗りを上げたはずが、一護から「学年3位」「弓の名前も知らない」「固定が甘い」と煽られ、さらには「お袋も滅却師」という特大の爆弾発言を喰らって卒倒しかける。
朽木ルキア(くちき るきあ)
十三番隊隊士。石田がクラスメイトであることに気づいていない一護に呆れつつ、滅却師の知識に疎い一面を見せる。
白鷹光四郎(しろたか こうしろう)
六番隊四席・朽木家家臣。鉄斎の回道により全身の炭化から驚異的なスピードで回復。一護の滅却師に関する深すぎる知識に「さすが若旦那様」と全肯定の称賛を送る。
オッサン(精神世界のユーハバッハ)
一護の内なる滅却師の力。始祖としての視点から石田の未熟な弓の技術を容赦なく辛口添削し、それを一護がそのまま石田へ横流しする。
「……しかしアンタ、さっきまで全身黒焦げの消し炭になりかけてたってのに、もう平然と動けるようになるんだもんな……。化け物かよ」
街灯が照らした白鷹の顔に、火傷は残っていなかった。
鉄斎は肉体を治したが、命を粗末に扱う癖までは治療の対象にしていない。
「なに、私は昔から慣れておりますから。これくらいの肉体損壊は日常茶飯事でございます」
「……全身が黒焦げになることに慣れている奴など、護廷十三隊広しといえどもお前くらいのものだぞ、光四郎……」
光四郎への説教を中断したのは、ルキアの伝令神機だった。
画面には、近くに現れた虚の反応が点滅している。
「むっ……虚の反応か……?」
ルキアが位置を確かめる前に、光点が消えた。
「あっ……消えたぞ? 近くにいた死神が倒したのか?」
「戸川先生かシャオ先生じゃねえの? あの二人なら、出てきた端から消し飛ばすだろ」
「いや……あの二人は啓吾や井上たちを連れて行ったはずだぞ。まだ戻ってはおるまい」
「流石にこの時間だぜ? とっくに飯食い終わってその辺うろついててもおかしくねえだろ」
「まあ、そうですね。ではやはり、お二人が片付けられたので――」
「――違うよ。僕だよ。僕が今、消滅させたんだ。……こんばんは、黒崎君、朽木さん、白鷹先輩」
塀の陰から現れたのは、高校の制服を着た眼鏡の男子生徒だった。
一護の記憶には登録されていないが、男子生徒は三人の名前を知っていた。
「てめえ……誰だ? なんで俺たちの名前を知ってやがる……」
ルキアは一護の脇腹を肘で小突いた。
「こんばんは、石田君」
「ルキア……なんで平然と挨拶してんだよ!?」
「クラスメイトだ、バカモノ! 毎日顔を合わせておろうが!」
「……石田雨竜だ。黒崎君、君はクラスメイトの顔すら覚えていないのかい?」
「あ……思い出した! 期末テストで井上に負けて学年三位だったやつか!」
顔と名前を忘れた一護の記憶には、井上に負けた順位だけが正確に残っていた。
「……っ……! ……ああ、そうだよ。その学年三位の石田雨竜だよ……!」
学年順位の話は、ビルの上に現れた新しい虚の霊圧によって打ち切られた。
「……来たようだね。新しい虚だ」
今度は伝令神機に頼らず、一護も同じ位置を捉えていた。
「………本当だ。あっちのビルの上だな」
「よく分かったな、一護……。もう霊圧感知まで使いこなせるようになったのか」
忘れられていた石田は、滅却師として名乗り直すことにした。右手へ集めた青白い霊子が、弓と矢を作り上げる。
「………どうやら、死神の真似事でも霊圧の探知くらいはできるようだね。……改めて、自己紹介をさせてもらおうか。僕の名は石田雨竜。――死神を憎む、最後の『滅却師(クインシー)』だ」
死神への憎しみを語られた一護が気にしたのは、石田の事情ではなく、右手に現れた弓の名前だった。返事の代わりに精神世界のオッサンへ話しかける。
『……おい、オッサン。滅却師って、さっき精神世界でオッサンが言ってたあれのことか?』
『……ああ、そうだ。……それにしても一護よ、己の精神世界を介して、こうも造作なく私に話しかけられるようになるとはな。驚嘆に値するぞ』
『なんとなくな……感覚で繋がったわ。……で、あいつが今手に出してる、あの青白く光る弓は……』
『ああ。あれは我ら滅却師の基本兵装――神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)だ』
「なるほどな……それが『神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)』ってやつか……」
「…………??? ……は? な、何だいその仰々しい呼び名は……? 『霊子兵装』のことかい……?」
最後の滅却師は、名乗った直後に死神から滅却師の用語を教えられていた。
「……?? ハイリッヒ……? 滅却師……? なんだそれは?」
白鷹の評価では、知らない石田ではなく、知っていた一護の教養が称賛の対象だった。
「若奥様は四十年前に朽木家へ入られたばかりですのでご存知ないのも無理はありませんが……若旦那様は流石でございます。滅却師の失われし古い言葉まで網羅しておられるとは……実に、実に誇らしき見事な教養でいらっしゃる……!」
「へ? あ……ああ! ありがとよ白鷹! ……っておい石田! お前、自分が使ってる弓の正式名称も知らないのかよ!!」
「な、何をわけの分からないドイツ語みたいな単語を口走っているんだ君はァァッ!! これは僕が極めた霊子の弓だ!! ――しっ!!」
石田は用語の議論を矢で打ち切った。青白い矢がビルの上に現れた虚の仮面を射抜き、虚は悲鳴を上げて消滅する。
虚を消した一射にも、滅却師の始祖は合格を出さなかった。
『……フッ、まだまだ未熟だな。霊子の収束速度こそ悪くないが……放つ瞬間の「霊子の固定」が甘い。あのような不安定な矢では、上位の虚の鋼皮(イエロ)すら貫けまいよ』
「……おい石田。霊子の収束スピードは悪くねえけどよ、放つ瞬間の『固定』が甘すぎるってよ。あんなブレブレの矢じゃ、もっと硬い上位の虚には通じねえぞ」
講評の出所を知らない石田には、一護が勝手に指導者を名乗ったとしか思えなかった。
「うるさい!!! 指導者面して上から目線でケチをつけるなァァッッ!!!! 僕は死神を憎む……! そして今この時、黒崎一護、僕は君のことが心の底から大大大っ嫌いになった!!!!」
「おいおい、そうカリカリすんなって。いや……さっき知ったんだけどよ、うちの死んだお袋も滅却師だったらしいからよ。お前とは親戚みたいなもんだろ? そうツンツンすんなよ」
「………………な…………なにいいいいいいいいいっっっ!!!????」
「最後の滅却師」の名乗りは、死神代行が持ち出した家系図によって再審査へ回された。
神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)
滅却師が霊子を集束させて作り出す弓の正式名称(見えざる帝国基準)現代の現世で独学修行していた石田雨竜は単に「霊子兵装」や「弧雀」と認識していたため、一護から突然本場の上級用語をぶつけられて激しく混乱した。
精神世界の超感覚通信
一護が修行を経て習得した、内なるオッサン(滅却師の力)とのリアルタイム脳内通話。始祖ユーハバッハによる的確かつ辛辣な軍事指導が、一護を通じてノータイムで石田へダイレクトアタックされるシステムと化した。
霊子の固定(オッサンのダメ出し)
霊子を集めて矢の形にする際、大気中の霊子をどれだけ高密度に凝縮・安定させられるかの技術。未熟な石田の弓を、滅却師の始祖であるオッサンが一目で見抜いて辛口採点した。
石田雨竜のメンタル崩壊
「学年順位で負ける」「弓の技術をケチつけられる」「唯一の生き残りと思っていたのに、目の前の死神の母親が滅却師だったと告げられる」という多重のショックにより、石田の誇りと世界観が一夜にして崩壊した現象。